はらはら――ひらひら…………舞い落ちる姿は夕日のかけらのようだった。 ふかりと踏みしめる足元の夕日のかけらに目を細め、伊達政宗は息を吐く。 蒼天の下にある夕日を見つめる彼の心中に浮かぶものは、今はもうこの目に見ることの出来ない男たちの姿だった。 遠く、遠く高く昇ってしまった男たちの姿は、声は、思いは政宗の背中にある。――強く、高く戦国の世のうねりを昇りあがれと、背中を押してくる。 拾うことの出来なかった屍の代わりに、彼らの思いを、夢を抱えて政宗はどのようなときでも膝を付くことを自身に赦さず、大地を踏みしめてたっていた。 あるかなしかの風に吹かれて、枝から夕日のかけらが落ちてくる。 その中の一枚が、政宗の胸へと落ちた。それをつまみ、くるり、くるりと回してみる。 その度に、胸の奥で彼を呼ぶ、敬愛と希望と親しみに満ちた声が聞こえた気がした。 『筆頭!』 『筆頭ぉ!』 『筆頭〜!』 ふ、と政宗の唇を懐かしさが柔らかくゆがめた。 「OK guys……」 もう少し……あと少し、待ってくれ。 必ず天下をこの手に掴み、共に目指した――いや、共に目指している夢を叶えてみせる。 「違うな――」 心に浮かべた言葉を、政宗は軽く首を振って打ち消した。 待っていてくれ、ではない――彼らの魂ごと背負っているのだ。 共に天下に向かって駆けようじゃねぇか…………。 「政宗様」 裡にある声に耳を傾けていた政宗は、意識を現実へと引き上げた。 聞こえた声に顔を向ければ、誰よりも、何よりも側に魂を寄り添わせ、半身と言っても過言では無い男――竜の右目、片倉小十郎の姿があった。 「そろそろ、お戻りください。日が落ちて後の冷え込みで、お体を害されませぬよう……」 「Ah――わかってるよ。ちっとばかし、あいつらの様子を確認したくってな」 懐かしそうに銀杏の幹に手を乗せて、散る葉の隙間から空を見上げる政宗の横顔に、小十郎は目を細める。 その目は、政宗の見つめている裡の景色を写しているように、柔らかかった。 「小十郎」 「は――」 「今夜、一杯付き合えよ」 振り向く政宗の顔は、哀愁を抱きとめた微笑に彩られていた。 「……今宵は、良い月夜となりそうですな」 近づいた小十郎が、手にしていた羽織を政宗の肩にかけた。 ふかり、と夕日のかけらのような銀杏の上を歩いていく。 二匹の竜が、夕空の上を進んでいく。 『鎮魂』はまだ早いと、銀杏の木から離れて天下へと歩を進め……。