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登場:慶次・真田主従・双竜
似たもの同士
  うららかな昼下がり。伊達政宗と真田幸村が、誰にも邪魔されないようにと人 里離れた場所で対峙している。互いが怪我をする前に止めるべく、二人に付いて きた者が交差した刃に終了の合図を告げた。
 楽しそうな顔で舌打ちをする政宗と、普段にはない獣の瞳をした幸村が武器を 収めて声をかけあうのを、前田慶次は相棒の夢吉と楽しそうに眺めている。
 彼の傍らには、大きな重箱がある。出かけてくると伝えると、前田家を出る際 に「迷惑をかけては、なりませんよ」と小言つきで渡されたものだ。フラリフラ リと雲に誘われながら、上杉謙信の下へ向かう途中、馬が駆ける音を聞き、赤と 蒼が激しくぶつかるのを眺める事に決めた。
 やれやれと、二人を止めた片倉小十郎と猿飛佐助が戻ってくるのに手を振る。
「なぁ、飯にしないかぁ!」
 重箱を持ち上げて見せる。
「まつ姉ちゃんの飯は、美味いぞ!」
「旦那達が、帰ってきたらね」
 佐助の言葉に見ると、二人は傍の小川に向かっている。
「内緒で出てきてるからね、戦ってましたって痕跡を流してもらわなきゃ」
 疑問が顔に出ていたらしい。慶次に説明をしながら佐助が立ち止まり、小十郎 も傍に立ち止まる。種類は違えど、似通った瞳で小川を見つめる二人を見上げ、 慶次が言う。
「なんか、似てるね。アンタたち」
「「は?」」
 同時に振り向き、言う姿に慶次が吹き出す。なんとなく居心地が悪そうに、だ が嫌ではなさそうな顔をして、小十郎と佐助は視線を互いに向けた。
「まぁ、手のかかる主がいるっていうのは似てるかもしんないけどね」
 頬をかく佐助に、小十郎が片眉を器用に持ち上げる。
「無茶をする主がいると、苦労するな」
「無茶というか、暴走というか――――」
「無鉄砲というか」
「真っ直ぐというか」
「なんか、楽しそうだね」
 ニコニコと慶次が言い、夢吉に同意を求めると夢吉が頷く。はっとした二人は 、ばつの悪そうな顔を見合せた。
「――――交代、してみたら面白そう」
 ぽつりと言った慶次の言葉に、二人は振り向き互いの主を見る。二人は小川に 素足を入れて、何やら騒いでいる。ニコニコと、その様子を見つめる慶次に、佐 助は肩をすくませ、小十郎は笑みながら息を吐いた。
「悪いが、政宗様以外には考えられねぇな」
「旦那んとこって、けっこう楽しいんでね」
 同じような事を言う二人に、さらに笑みを深くした慶次は飛び跳ねるように立 ち上がった。
「やっぱ似てるよ、アンタたち」
 言いながら、小川に駆け出す。
「何やってんだぁあ」
 声を張り上げながら走り、器用に靴を脱ぎ捨てながら小川に到着した慶次が、 幸村と政宗の間に乱入する。驚く二人は、楽しそうに慶次を受け入れ三人で何や ら騒ぎ始めた。
「あーあ、あんなにしたら、ずぶ濡れになるってのに」
「――まだまだ幼くていらっしゃる」
 ふう、と笑顔でため息をつき顔を見合せる佐助と小十郎。
「ま、たまにはこういうのも、ね」
「ああ、悪くねぇ」
 慶次が二人に手を振って、幸村と政宗が顔を向ける。
 両手を振る幸村。
 片手を上げて呼ぶ政宗。
 遠目でもわかるほどの主の笑みに眩しそうな顔をして、二人はゆっくり歩き出 した。


――時には、穏やかに――

2009/07/28



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