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※リク主様のみ、お持ち帰りOK※
リクエスト者:アンゾ〜様


涼やかな悋気

  戦の後の祝杯をあげる面々の、お祭り騒ぎのような様相を少し離れたところから見つめ、伊達政宗は月光を杯に浮かべながら唇を湿らせる。その横に、彼の失われた右目――片倉小十郎が控えていた。
「ったく――ハメを外しすぎねぇようにと、伝えてあるんだろうな」
「無論」
 ならいいんだが、とつぶやく彼の顔が戦勝の将に見えず、小十郎は酒を注ぎながら問うた。
「納得がいかぬご様子ですな」
「Ah――? ああ、そうだな……納得がいかねぇというか、つまんねぇというか」
 わずかに、小十郎の眉が持ち上がる。
「温い戦は、好きじゃねぇ」
 ぽつり、とつぶやいた若い主の肌に抑え込まれた躍動に、小十郎は柔らかく困った顔をしてみせた。
「アイツらを危険にさらさねぇには、簡単に勝てる戦のほうがいいんだろうぜ――けどな」
 これ以上ないほどの高ぶりを――遠慮というものを捨て去り、すべてのタガを外して対峙できる相手を、呼応しあえる男を見つけてしまった。
「真田、幸村」
 呼気とともに吐き出された名に、小十郎が眉根を寄せる。
「――足り無ぇ」
 こぼした呟きを飲み下すように杯を煽った主に、複雑な心中を抱えた小十郎の瞳を、宵闇が溶かした。

 真田幸村。
 甲斐の若虎。紅蓮の鬼。――そう称される彼は、小十郎の目から見れば政宗が固執するには多少なりと不足している部分があるように見受けられる。
 出自の身分からが違うので、育てられ方、心構えも違ってくる。そこを差し引いたとしても、未熟であると言わざるを得ない部分があった。
(だが――)
 と、記憶の中の彼を思い出す。それを補って余りある何かを、彼は内包しているように思われた。
 決着が、主の勝利で終わることを疑ってはいない。だが――危ぶむ瞬間が無いとは、言いきれなかった。
 大地のような男の薫陶を受けた彼の伸びやかさと素直さは、武将にしては甘すぎるくらい甘いと言える。だが、真っ直ぐに太陽に顔を向けて進める眩さに、伊達軍の間でも彼に一目置き、好感を持っている者も少なくない。当の小十郎も、憎からず思っていた。
 やれやれと、畑仕事を終えて一息つきながら、この後の軍議のことを考える。チチ、と小鳥のさえずりが耳に入り、ふっと頬が緩んだ。戯れるように飛んでいる二羽の姿に、楽しげに仕合う政宗と幸村の姿が重なる。――このように、穏やかなものではないが。
(ああ、そうか)
 真田幸村は、愛されることに慣れている。その屈託さが、人を惹きつけるのだろう。人は、不足しているものを持つ相手を、本能的に求めるという。幼少期の経験や思想が生んだ人となりは、死ぬまで変わらない――三つ子の魂百まで、ということわざもある。
(だから――)
 主は彼を求めるのか。そして、主の危うさを感覚として肌に受けるらしい聡さを持つ幸村は感じ、無邪気に寄り添おうとしているのか。
 それだけではない――全力でぶつかりあえる安堵と高揚を、与え合える。
 そこまで考えて、チリ、とわずかに小十郎の胸が焦げた。そんな自分に苦笑する。――悋気など、ばかばかしい。
 喜ばしいことではないか。自分以外に、政宗の何も含まない子どものような笑みを引き出せる相手が出来たことは。――奥州筆頭という責務を忘れ、どのような形であれ無償の何かを受け取れるということは。
 小鳥を見送り立ち上がった小十郎は、胸に燻るものを燃やすことなく抑え込み、冷えた炭に変えた。

 最近、小十郎の様子がおかしいように思う。けれど、どこがどう――とはっきりと言えるような状態では無い。ただ漠然と、おかしい――と思った。
 両手を袖口に入れてふらふらとあぜ道を歩く政宗に、里の者たちが親しみと畏敬を持って声をかける。それに応えながら、村人と談笑をしながら野良仕事の合間の時間をすごす小十郎の姿を見止め、迷い――声をかけずに去ろうかと思い至ったと同時に
「政宗様」
 彼が気付いた。
 そのまま引き返すわけにもいかず、あいまいな笑みを浮かべて近寄ると、政宗の場を開けるため初老の男が尻をずらす。小十郎と男の間に座を作られ、腰を下ろした政宗に娘と思しき女が茶を差し出し、それを受けた。
 穏やかな景色に、ほう、と息を吐く。
(何をやってんだ、俺は)
 息をつくと同時に、自分への呆れが浮かんだ。漠然とした小十郎への疑念――そんなものに押されて動き、こんなところまで目的もなくふらふらと歩いて
(これじゃあ、ガキみてぇじゃねぇか)
 それがわずかに顔に乗ったのか
「政宗様」
 問うように名を呼ばれた。自分の右目の聡さを、時折恨めしく思う。
「ちょっと、散歩がてらにな」
「そうですか」
 はぐらかしたことは、明らかすぎるほどである見当違いの返答に小十郎が引き下がり、胸をなでおろす。
「今年は良いものが出来そうです」
 男が、政宗に話しかける。
「まぁ、油断はできませんが、皆様が戦働きめざましくされておられるのに負けぬよう、老体に鞭打って精を出し、舌つづみを打っていただけるようなものを、作らせていただきます。わしらぁの戦場は、田畑ですからの」
 ほっほ、と笑う男の目が、刻まれた皺の一つに見えるほど細められる。その笑みに、自分の感じている疑念などどうでもいいように思われた。
「楽しみにしておくぜ」
 腰を上げた政宗に、小十郎が追従した。

 軍議の席で、川中島への出陣の話が出た。冬の間に力を蓄えた軍神と大虎が、雪解けを待ちわびてぶつかることは想像に難くない。その折の余波や、それに合わせて蠢くであろう諸侯の動向を斥候に探らせていたものが、軍議の場に提出されている。
「横っ腹からしかけてやりましょうぜ」
 そんな声に、腕組みをして報告書に目を落とす政宗の胸中に、初めて真田幸村と対峙をしたときが思いこされていた。
「今度は、真田の動きも考慮して、策を練らねばなりませんな」
 小十郎の言に、場から納得とも畏怖とも、敬愛ともとれる息が漏れる。
 彼らにとって唯一無二の存在である伊達政宗が好敵手と認めた男――それを意識しない伊達軍の者はいないだろう。
「真田の、ひたむきに作戦を遂行しようとする気概は、侮れません」
「Ah――バカみてぇに、食らいついてきやがる」
 政宗の唇に、野生の獣の気配が漂う。
「あの胆力は、賞賛に値しますな――無謀とも言えなくもないことをやってのける、並ではない力量とを併せて虎の若子と称される器なのでしょう」
「この俺がCoolじゃいられなくなるぐらいに、な」
 目を細め、瞳にきらりと切っ先の鋭さを乗せた瞬間、ふと引っ掛かるものがあることに首をかしげる。何か――違和感が――――
「それに、真田は思うよりも人望がある様子……幼いように見えて礼節をわきまえており、素直すぎるほどな所と幼い顔立ちが人心を掴む手助けをしている様子。――まぁ、素直すぎると言うことは諸刃の剣ともなりましょうが、あの純朴さと折れぬ意志、他を寄せ付けぬ力が重なれば、ある種の崇拝的なものを受けてしかるべし、かと」
 冷静な顔で、淡々と述べる小十郎の言葉に、小さな苛立ちが生じる。常ならば気付くであろう些細な政宗の変化に、気付かぬ風で小十郎の言葉は続いた。
「紅蓮の鬼と称されるほどの戦働きと、普段の落差が魅力であるとも言え、あの武田信玄の薫陶を受けていることも、なるほどとうなずけます」
 ほう、と感心したような同意の息が場に漏れた。
「川中島での二雄の邪魔をされるおつもりなら、真田と、あの忍の動きにも目を配らねばなりませんな」
 至極もっともである意見に、憮然とするのを押しとどめ
「I See」
 喉から漏れた声は、思う以上に不機嫌だった。

 軍議を終え自室に戻り、むかむかとしながら胡坐をかく。まったくもって、面白く無い。
「Damn it!」
 吐き捨て、寝転がる。苛立ちの原因が――何か様子がおかしいと思っていた原因が、軍議の席ではっきりとした。
 小十郎が、妙に真田幸村をほめている。
 常ならば固執しすぎないようにと、やんわり諌めてくるはずが、政宗に同調していたのだ。そして先ほどの褒めすぎではないかと思えるほどの、発言。
 一つ一つは至極もっともだとうなずける洞察と言えるだろう。冷静に聞けば妥当な意見であるとも思われる。けれど――
 「An unpleasant feeling has come over me」
 忌々しげに低く唸る政宗を無視するように、あでやかな夕日が部屋を染める。それが真田幸村の姿を思いおこさせ、先ほどの小十郎を思い出させて吐き捨てるような舌打ちを政宗に打たせた。
「失礼いたします」
 小十郎の声がする。主が不機嫌であることに気付かない訳が無い彼が如才なく訪うであろうことは、想定済みであった。――自室で、誰にも邪魔されぬ時間であれば、政宗はひどく素直になると知っている。
 常ならば「入れ」と声をかけるのだが、そうすることも腹立たしく無視をする。しばらくすると障子が開き、よどみない所作で入室をするとピタリと隙間なく竪框を合わせた。
 ふいと顔をそむける政宗に、寄り添う。
「ずいぶんと、ご機嫌が悪うございますな」
「――――」
 だんまりを決め込むらしい主に苦笑し、手を伸ばすと払われた。
「気安く、触ろうとするんじゃ無ぇ」
 怒りよりも拗ねた調子が強く出た声に、小十郎は胸に貯めた息を勢いよく吐き出し
「ッ――」
 乱暴に政宗の肩を掴み抱き寄せた。
「何を、拗ねておられるのですか」
「拗ねるなんざ――」
「政宗様」
 真綿に包むように呼ばれ、唇を尖らせる。ごまかしも嘘も、通用しないことは承知しすぎるくらいに知っていた。
「――最近、おかしいだろう」
「何が、おかしいと」
「テメェだ、小十郎」
 思い当たる節がない、と首をかしげる鼻を思い切り掴む。
「ばっくれてんじゃ無ぇよ」
 言いながらも、主は膝の上から下りる気配は無い。舌を伸ばし、手首を舐めると今度は唇をつままれた。
「shit――らしくねぇ」
 それは、どちらに向けられたのか。胸に顔をうずめる主を、幼いころによくしたように抱きしめ、背をあやす。
「政宗様」
「なんで、最近やたら幸村をほめだした」
 ぼそり、とつぶやかれた言葉に笑む。
「不機嫌の理由は、悋気――と解釈してよろしいか」
 舌打ちをした政宗の腕が、小十郎宇野腰に回される。
「悪ぃかよ」
 拗ねているのを隠そうともしない主の髪に唇を寄せ、ささやいた。
「意趣返し、とは思われないのですか」
 疑問を浮かべて見上げた瞳にも、口づける。
「私とて、悋気を燻らせることもございます――ここに、燃え上がることを許さずにいた悋気が、炭のようになって疼き、いつまでも熱を帯び続けていることに、一度たりとも気付かれては居ないのでしょう」
 ぽかんとして言葉の意味を脳に染み込ませ、理解をした政宗が小十郎の心臓あたりへ唇を寄せる。
「――――くだらねぇ」
 ぽそりと落ちた声は、互いの胸にある悋気を夕日に染まる茜の部屋へ溶かし、甘く静かな夜へと沈んだ。

 湧き上がる悪寒のような快楽に、政宗が震える。
「っ、は――ぁ」
 こみ上げた息を奪うように、小十郎の唇が乱暴にかぶさった。
「んふ、うっ、ぁ、あぅう」
 貪るように口内を暴かれ、乳首をつぶすように捏ねながら牡を乱暴にしごかれる。それぞれの動きの合間にできるはずの呼吸すら、叶わない。
「ぁ、ふ、はぁ、んむっ、ぁ、い、ぃあ」
 腰を浮かせ、両足が床の上で泳ぐ。達しそうになるたびに緩められるのに、もどかしさだけが募り、許しを請うよう政宗の牡は蜜をこぼし続けていた。
「ひっ、ぁい、はぁあ――ぁく、ぅああ」
 首を振り、ぎりぎりと小十郎の肩に爪を食い込ませる。限界など、とうに越していることは明らかで、それでも小十郎は彼を許そうとはしなかった。
「はっ、ぁ、あ――こ、こじゅっ、ぁ、こじゅ、ろぉ」
 政宗の目にたまった涙が流れ落ちる前に舐めとり
「政宗様」
 呟く小十郎の声が熱く、政宗の脳を愛撫する。
「ぃ、ぁあぅ――う、はぁ、あっ」
 最初は、互いの悋気にそろそろと触れるような、やけどを恐れながらの口づけだった。それが互いの嫉妬の熱に煽られ爆ぜて、情動のままにちぎるように衣服を取り去り腕をからめ、今に至る。
「ぁあううっ、ぁ、こじゅ、ぁ、も、もぉ」
 触れられていない、小十郎にしか触れることを許していない双丘に咲く菊花がひくついている。小十郎を求め、暴かれることを望んでいる。
「はしたのうございますな」
「ぁは、ぁ、あ――くんっ」
 たっぷりと政宗で濡れた小十郎の指が入口を撫ぜて沈むと、甘えた犬のような声が出た。肩に食い込ませていた爪を解き、首にしがみつく。
「私が指を進めなくとも、内壁が奥へと導いてくださいます――そんなに、欲していたのですか」
「ぁ、あぁッ――」
 するりと政宗の腕から逃れた小十郎の頭が、下肢へと動き茂みの下に実っているものをチュルリと吸った。
「んひっ、ぁ、く、はぅう」
「おかわいらしい」
 うっとりと呟かれた声は、政宗に届かぬほどに低く小さい。
 内壁を乱され、実を吸われ幹を扱かれ乱れる政宗が、両手で小十郎の頭を押さえるように掴み、足で頭を抱え込んだ。
「あ、ぁあ、は、ぁ、も、ぁ、こじゅ、あ――で、でるっ、ぁ、も、ぁ、ああ」
「存分に――」
「ひっ、ぁはぁああっ」
 先端を爪で掻かれ、内壁の一点を押し上げられて仰け反り吹き上げる政宗を、淫蕩なまなざしで唇をなめながら見守る。
「はっ、ぁ、あっ、あ」
 腰を浮かせたまま、残滓をこぼす政宗を助けるように先端を含み、吸った。
「ふぁあ、ほっ、ぅあ――っは」
 ビクビクと震えながら、凝っていた全てを吸い上げられ、弛緩する政宗の足を持ち上げ体を折りながら、小十郎は立ち上がった自分を菊花の入り口に添わせる。
「はんっ、ぁ」
 期待に濡れた睫毛を震わせた政宗に、口づけた。
「お覚悟、めされよ」
「テメェこそ――俺の悋気の熱で、溶けんなよ」
「なれば、この小十郎は悋気の熱で爛れさせてみせましょう」
 ちゅ、と軽い音をさせて唇を触れ合わせたのを合図に、深く小十郎が政宗の内部へ押し込まれた。
「ひぐっ、ぁお、ぉ、ぁあっ」
 容赦なく開かれ、脳天まで貫かれたような圧迫に政宗が吼える。常ならばそこで主の息が治まるまで待つはずが、今日はそのままかき乱された。
「くっ――」
「ぁあぐっ、ぁ、お、ひっ、ぁあ」
 声に痛みのないことだけを気にしながら、思うさま想いを穿つ小十郎に、政宗の内壁が絡み付き絞り上げ、強請るように蠢動した。
「く、ふっ、ふ――」
「は、ぁ、あふ、ぁ、あつ、ぁ、ぃ、ぃあっ」
 自分の高ぶりが頂点に達そうとしている――小十郎は抱きしめる手を片方外し、政宗の牡を握りこんだ。
「あ、はぁあ――っ、ふぁ、こじゅっ、ぁあ」
「政宗様――ッ、共に」
 欲に浸る政宗の目が、欲におぼれ苦しげに顔をゆがませた小十郎を映す。強くしがみつくと、小十郎がはじけながら政宗を促し
「くっ、ぅう――」
「っ、はぁああッ」
 愛欲のマグマを吹き出し、互いの悋気を受け止めあった。
「――っ、は、も……つまんねぇ嫉妬なんざ、ぁ――すんじゃ無ぇよ」
「それほど貴方に溺れていると、承知していただきたい」
「ばぁか」
 額合わせ、鼻をつけ、唇を重ねる――そして――――

2012/4/07
アンゾ〜様より
【お題】
“自分はいつも『さなださなだ』言ってるくせに、何かの理由(理由はお任せします)で、小十郎が政宗の前で、幸村の事を必要以上に褒めるので、 『ちょっと!何か、いつもより“さなださなだ”言いすぎじゃないの!?(オネェ語なのは気になさらず)』 …と、自分の事は棚に上げてプンスカ状態になっている政宗と小十郎のお話(小十郎×政宗)”
……す、すすすすすみません
もっとラブラブにするつもりだったのが
なんか……なんか……Coolに(´・ω・`;)
戴いた胸熱幸村に報いたいと思うて気合だけは、十二分に詰め込んだ……の、です、が…………
お納めいただけますと、幸いです!



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