やばい、と猿飛佐助は冷や汗を掻いていた。(やばい、やばいやばいよ俺様やばい。) 頬を引きつらせて、困っていた。(最近、ちょっと仕事、忙しかったしねぇ) 仕方が無い、といえば仕方が無い、のかもしれない。(昨夜も忙しくて、かえってスグに、捕まっちゃって、一緒に寝たもんねぇ) ぷぅぷぅと、愛らしい寝息をたてている日なたの香りがする主に目を向ける。昨夜、帰るやいなや飛びついてきた主は、しがみついたまま離れず、こうして共に眠ることになってしまった。(俺様が、忍ってこと、わかってんのかなぁ) ほほを掻きながら、口元を緩める。(って、和んでいる場合じゃないって。どうにかしないと) そうっと身を起こし、しっかりと自分の着物を掴んでいる小さな手を離そうと、指に手を添える。一本一本、起こさないように外していく。全て外し終え、安堵の息を吐いた瞬間、その手は何かを求めて動き出す。再び捕まらないように背を向けて離れようとした佐助に、不機嫌な唸りが聞こえた。「うぅうぅうう〜」 後ろ髪をひかれながら、立ち上がる。「さすけっ!」 名を呼ばれ、反射的に振り向いてしまう。しまった、と思った瞬間には、腹部に飛び込んで来たものを抱きとめていた。「うっ」 衝撃に、思わず呻く。痛かったのではない。離れようとした理由の箇所への刺激に、思わず声が上がったのだ。「べんまるを置いて、どこに行くのだっ」「あ、あぁ、いやぁちょっと、その、厠に、ね」「べんまるも、ついてゆく」「えぇえぇええ、いいよいいよ大丈夫、一人で行けるから」「ついてゆくぞっ」 ぎゅううっとしがみつかれ、顔を腹に埋められ、佐助が滝のように汗を流す。(やばいヤバイやばいヤバイってほんと、マジでカンベンしてっ) 忍の忍耐力にも、限界がある。それを、この小さな主はいとも簡単に突き崩そうとしているのだ。無意識に。「――――ん?」 何かに気付いた弁丸が、首をかしげておもむろに佐助の着物の裾をまくりあげた。「わぁああ、ちょっと」「はっ、腫れておるっ!」 慌てた佐助の声と、弁丸の声がかぶった。「さ、さすけっ、ちんちんが、腫れておるぞっ」「あぁあぁああ、もぉ」 顔を覆って天を仰ぐ。そう、佐助は朝勃ちをして、それを気付かれないように処理をしようと思っていたのだ。「す、すぐに手当てをせねばっ」「い、いぃいいいっ、いいって、ちょ、待っ――――」 止める前に、下帯をはがされてしまった。ぶるり、と立ち上がったものが現れて弁丸が目を丸くする。「あぁあぁあ、もぉおぉおおっ」 今すぐこの場から逃げ出したいのに、掴んできている弁丸を乱暴に剥がしてしまうことも出来ず、羞恥に耐える。「こ、こんなに、腫れて……痛くはないか」「っ!」 そっと、慈しむように小さな手が青い繁みに触れる。 両手で包まれている。 顔が近い。 心配そうな表情。 それらが、佐助の忍耐力を突き破った。「――若様がそうやって撫でてくれると、痛みが和らぐ気がするよ」「ほんとうかっ」 ぱっと顔を上げた弁丸に、わざと痛みを堪えているような顔を向ける。「んっ――舐めてもらえると、もっと、いい、かも」「まかせておけ」 自分の出来ることがあることが、嬉しいらしい。気合十分の鼻息を出すと、両手で撫でながら舌を伸ばして懸命に舐めてくる。「は、ぁ――そうそう、全体的に……んっ、ぁあ、きもちいいよ」「そうか。すぐに、ラクにしてやるからな、さすけ」「ごめんねぇ、若様――――」(うわ、これ、やっばい) 小さな口が、手が、自分の欲の熱を懸命に奉仕する姿に眩暈がする。むらむらと、ほの暗い欲が沸き起こる。「んっ、ん――――わっ、さすけ、膿が出てきたぞ」「うん、そう――それを出さないと、痛みが治まらないんだ。若様、吸いだしてくれるかな」「わかった」 ぱくり、と大きな口を開けて早速吸い始める弁丸に、佐助が泥のように粘ついた笑みを浮かべる。「そうそう――そのまま、吸いながら頭を上下させて、喉の奥まで飲み込んだり出したりして…………は、ぁ、すごく……気持ちいいよ」 ため息交じりの呟きに、がぜんやる気を見せる弁丸が言われたとおりに、苦しさを堪えながら頭を動かす。「んっ、ぶっ、ふっ、ふぁ、んっ、んっ、んっ、ぁふっ、んぐっ、んっんん」 弁丸の息が上がる。濡れた音が、飲みきれない液が、幼い口から溢れ出す。(うわ、もう、これ……ごめん、若様ッ)「ふっ、くぅうっ」「んぶっ、ごふッ、げはっ、げっ、げふ、ごほっ、ごふっ――ぅ、ぅぅううぅうう」 でろ、と佐助が放ったものを口から流し、弁丸がべそをかく。「あぁあ、ごめんね、ごめんね若様。すっごい気持ちよくて……ありがとね」「ぅうぅう、さすけぇえ」 ぎゅう、と体中でしがみついてくる背中をあやす佐助に、罪悪感が生まれはじめた瞬間、そんなものを微塵にしてしまうことを、弁丸が涙目で見上げてきながら言った。「さすけぇ、べんまるのちんちんが、う、うずうずして……さすけのちんちんも、まだ、治まっておらぬ」 ぶつん、と何か太いものが切れてしまう音が、佐助の脳内で鳴り響く。一瞬で雰囲気が変わってしまった佐助に、弁丸が首をかしげた。「さすけ?」「若様のおちんちん、どうなってるか、ぬぎぬぎして、見せてくれるかなぁ」 平たく重い声音に、怪訝な顔をしながらも素直に従う弁丸は、襦袢を脱ぎ、下帯を解いた。ぷるり、と愛らしいものが姿を現す。「ん、どれどれ」 少し恥ずかしそうにしながらも隠そうとしない彼の前にしゃがみ、検分するように繁みの無い箇所を、しげしげと眺める。「う〜ん」「ひゃんっ、ぁ、ぁ」 そっと指を這わせ、先端をクリクリと指の腹で摘んで捏ねると震えながら声を上げる姿に、唇を舐めてから真剣な顔を作る。「うぅん、これは……あの方法を取るしか無いかなぁ」「あの、方法?」 わずかに上がった息と、うわずった声で弁丸が問うてくる。「でも、これは……すごく、難しいんだよね――――もし、してしまったことがバレたりしたら……でも、若様と俺の両方をいっぺんに治すには、これしかないんだけど、でもなぁ」 ひとりごとのように言いながら、弁丸の様子を確認する。目の奥に力を込めた姿に、内心でほくそ笑みながら不安そうな顔を作った。「さすけ、何か、よき方法があるのであれば、それをしよう」「でも、若様――これは、若様の体に負担がかかるし、それに……」 気弱そうに目を反らした佐助の両頬に手を添えて、弁丸が顔を覗きこむ。「べんまるは、大丈夫だ。誰にも、言わぬ。さすけ――」「若様…………じゃあ、何があっても、耐えられますか」 しっかりと、覚悟をきめた顔で頷く弁丸の頬に手を添えて、それではと言いながら口から零れた佐助の液と弁丸の唾液の混じったものを指で拭う。「何があっても、俺を信じていてくれるよね」「べんまるが、さすけを信じぬことなど、ありえぬ」「それじゃ」「ひゃんっ、はっ、ぁ、ぁあ……さすけ、ぇ」「大丈夫、大丈夫」 拭ったものを、弁丸の尻の奥、小さな洞窟へと塗りこめる。首にしがみつき、必死に耐えている髪に甘く唇を寄せながら指を入れ、力を抜くように下肢を指で弄くる。「あ、はっ、は、ぁ、ぁあ――――さ、すけ、さすけぇ、ぁ、ぁあ」「若様、若様――大丈夫、大丈夫だから」「は、んっ、んんっ、ぁ、ぁあ、か、からだが、あ、あつ、ぅ」 がくがくと膝を震わせ始めた体を布団に寝かし、丹念に洞窟の入り口をほぐしていく。体を揺らし、こみあげる快楽をもてあます姿に、佐助の息が荒くなる。「ああ、若様……ごめんね、若様」「はっ、ぁ、ああ……さすけ、ぇ――だいじょうぶ、だ、だいじょうぶ」 謝る佐助を安心させようと、小さな手が頭を撫でてくる。たっぷりと時間をかけてほぐした箇所に、佐助は牡をあてがった。「息を、しっかり吐いて――今から、俺と若様は、一つになるんだよ」「さすけと、ひとつ、に」 呆けた瞳に、頷いてみせる。薄く笑みを浮かべた弁丸が、頷いた。「はっ、ぁ、ぁああっ、あ、ぁああああああ」 ズッ、と佐助が埋もれていく。仰け反る弁丸を弛緩させようと、乳首に舌を這わせ、魔羅を弄る。「はっ、んはっ、はふっ、あぅううっ、は、ぁくぅううん」 声に痛みが含まれていないか確認しながら、ゆっくりと進み、全て埋め込んでから額に口付けた。「あはっ、はぁ……ぜんぶ、埋まっちゃった」 ほら、と手を取って繋がりに触れさせると、目をまん丸にして見つめてくる。「いやなら、抜くよ」 ぶんぶんと首を横に振り、弁丸が肩に額を擦り付けてきた。「こ、これで、べんまるのちんちんも、さすけのちんちんも、お、おさまるの、だろう」「うん、これで、二人とも、気持ちよくなって、治まるよ」「ならば、かまわぬ」 ぎゅう、と強くしがみつかれ、愛おしさが募る。「それじゃ、動くよ」「えっ、ぁ、ぁあっ、はっ、あんっ、ぁ、ぁああ」 繋がるだけで済むと思っていたらしい。驚き、顔を上げてすぐに突き上げられ、緩慢な動きに声を上げる。弁丸の様子を確認しながら徐々に速度や角度を変化させ、広げ、探る。「ひあぁあっ、さ、さすけぇええっ」 ある一点で、甲高い声が上がった。くすり、と笑った佐助は、そこを重点的に擦るように掻き回す。「はひっ、やんっ、あ、あぁあっ、ひっ、ひぅううんっ、さすっ、さすけ、ぇえっ、さ、さしゅけっ、えぇええっ」 佐助の背を、肩を、頬を、唇を、探るように動き回る弁丸の指を口に含む。泣き出しながら下肢も濡らし、声を上げている姿に胸が甘い痛みを訴えてくる。「あぁ、若様、若様――すごく、気持ちが良いよ……ね、ねぇ、若様も、きもちい?」「はぅ、あ、あぁあ――しゃしゅけぇ、あぅうっ、は、ぁうあぁああ」 必死に自分を求めてくる姿に、締め付けてくる刺激に、佐助の背骨が快楽に溶けていく。「あ、もぉ、くっ、ぅうっ」「ひはぁああっ」 ぐっ、と奥に突きたて放った佐助と共に、弁丸も果てる。「は、ぁ、はひゅ、は――ぁ、は、はぁ…………はぁ、は、あ、ぁ」 痙攣し、酸素をむさぼるような呼吸を繰り返す弁丸が、ゆっくりと意識を手放していく。蕩けるような顔をしながらも、完全に意識を失っていない彼の瞳に口付け、佐助はゆっくり自分を抜いた。「若様――若様、ダイスキだよ…………ダイスキだよ、若様」 力なく微笑んだ弁丸が、佐助の頬を撫でる。それに誘われたように唇をついばむと、瞼が閉じられる。佐助の首に、しっかりと腕を回して――。 安心しきった寝顔に、佐助はそっと、口付ける。 いつか、この行為が赦されないことと知ってしまった彼に、手打ちにされてもかまわないと思いながら。2011/02/23