押し付けられるように渡された手紙を、伊達政宗が陣中の仮宿で広げていると「かまわないか」 徳川家康が、顔を出した。「明日の相談でも、しに来たのか」 伊達政宗が口の端を上げれば「いや――呑まないか、と思ってな」 徳利を見せながら、家康が横に座った。 共闘をすることになってから、こうして家康は彼の元へ訪れる。ほんのりと現れている――おそらく本人は無自覚であろう寂しさが、そうさせているのだろうと政宗は思っていた。 彼のしようとしていることは、絆を説きつつ、自分のそれを犠牲にせねば成り立っていかぬ。 そのように、見えていた。 だからこそ、無意識の孤独感に突き動かされ、こうして自分の元へ来ているのだろう。 天下を二分する戦いに臨もうとするまでに成長した家康だが、芯の所は変わらぬ幼さを抱えている。それを、政宗は嫌ってはいなかった。「その手紙は」「昼間、押し付けられたモンだ」 読んでみるかと差し出せば「いいのか?」 受け取り、広げる。 戦の折、里の者の協力なくしては、成り立たぬことがある。その時に見初められる里の娘は、少なくない。また、娘の方が良き子種を求めて、一夜で良いからと求めてくることもあった。金のために、身を与えると言ってくるものもいる。政宗が昼間に押し付けられ、家康に見せた手紙は、そういうたぐいの――政宗の姿に心を浮足立たせた娘からの、想い文であった。「ぁ――」 率直な文面に顔を赤らめた家康が、あわてて手紙をたたんで返してくる。「ど、独眼竜は、おなごに人気があるな」 目を泳がせながら、何かをごまかすように笑う姿は初心な政宗の好敵手、真田幸村を思わせて「アンタだって、そうだろう」 政宗の、からかいの虫を湧きあがらせた。「いや、ワシは……」「今までのアンタとは、ずいぶんと違っているんだ。体つきもたくましくなっていやがる。顔だって、悪かねぇ。部下からの信頼もある。――恋文ぐれぇ、わんさと届いているんじゃねぇか」「独眼竜は、そうかもしれんが、ワシにはそのようなことは」 家康の言葉を遮るように、身を寄せて目を細め「奥手そうなアンタに惚れた女は、こうやって積極的にのしかかってくるかもな」「え、わ――」 覆いかぶさるように身を寄せて、丸く開いた目を捉える。政宗の表情に艶を見てとり「そ、そんな事をするようなものは、一人も……」「家康」 目を逸らすのを留めるように、ささやいた。「アンタ、まさか口吸いもしたことが無ぇとか、言わないよな」「うっ」 家康の顔色が、酒を食らったようになった。「Fum」 ニヤつく政宗を、照れた顔のまま睨み付ける。「怖く無ぇよ」 喉で笑った政宗が「教えてやろうか」「え」 唇を重ねた。 目を白黒させる家康の、油断をしたままの唇に舌を割り込ませ、逃れられぬよう顔を抑えて深く探る。「んっ、ふ――ふ、んっ、んっ」 息の逃し方がわからないらしい家康の目に滲む涙に(――やべぇかも、な) 政宗の嗜虐心が、頭をもたげた。「ぷは、はぁ、はっ、ど、独眼竜ッ」 真っ赤になって抗議の声を発する家康の「なんだよ――気持ち良かっただろう?」「え、わ、ちょ――ッ」 下肢をするりと撫で上げた。「なんだ。硬くなってんじゃねぇか」「し、仕方がないだろう」「ああ――仕方が無ぇな」 低く、熱っぽくささやきながら握りこむ。「独眼竜――何を」「教えてやろうと思ってな」「な、何をだ」「ここまできて、わからねぇほど初心なのかよ」 布の上から扱きあげ「自分で、したことぐれぇ、あるんだろう」 耳に直接吹き込めば、肯定するように家康の体がこわばった。「人の手のほうが、自分でするより万倍、イイぜ――覚悟を決めて、俺に委ねな」「んっ、し、しかし――ッ」「うるせぇよ」「んうっ」 抗議の言葉を口で塞ぎ、手淫をしながら口内をまさぐる。性にはまだまだ未熟らしい家康の反応に目を細める政宗の下肢に、熱が疼いた。「ふっ、んっ、んんっ、んっ、んはっ、ぁ、ど、どくがっ、んんっ、んむっ」 押しのけようと掴んだはずの手が、政宗に縋りつくようになってしまった家康に「覚悟を決めな」 言えば、解放された唇で「んぅ、独眼竜――その、な」 ためらう言葉に拒絶が消えていることを感じ「言ってみな」 囁けば「その、よ、汚してしまう……」 耳の裏まで赤くして、消え入るような声で告げられた。「Ah――たしかに、このままじゃあ下帯がグチャグチャになっちまうだろうな」「い、言わないでくれ」 身を縮めた家康に「なら、脱がせてくれって言ってみな」 告げた。「そ、そんなことは――」「言えねぇんなら、このまま出させるまでだ」「はぅ、ぁ、あっ、ま、ぁ、あ、どくっ、ぁ、どくがんりゅ、ぁ」 胸をはだけ、尖った場所を吸えば、腰が跳ねる。じわりと湿った感覚が、下肢を握る手に伝わり「ぁ、も、ぁ、ぬ、脱がせてくれっ!」 たまらず、家康が叫んだ。「OK――Good」「ううっ」 恥ずかしそうにする家康に、褒めるような口づけを与え、一気にひん剥く。「♪〜 ずいぶんと立派なモン、持ってんじゃねぇか」「あぁ、み、見ないでくれ」 隠そうと伸びた手を掴んで止めて「しゃぶりがいが、ありそうだな」「へっ? ぁ、ああっ」 身をかがめて口をつければ、驚愕と快楽を同時に家康が発し「な、ななっ、なにをっ、まっ、ぁ、はうっ」「気持ちがいいだろう」 それを楽しむかのように、上目づかいに見上げながら、ゆっくりと舌を這わせて見せた。「うっ――」 その姿に硬直した家康の目を捉えるように見つめ、丹念に牡を舐め上げる。「は、ぁ――独眼竜」 その顔が欲に支配されたとたん「ふぁあっ」 すべてを口内に収め、吸い上げながら舌と上あごで押しつぶし、擦った。「はっ、ぁ、あっ、ぁ、あっ、ど、どくがっ、ぁ、あっ、あっ、あ」 狂おしいほどの快楽に、家康の意識が呑まれていくのを感じながら、高めていく。「あっ、ぁ、ああっ、も、もぉ、あっぁ」 口内の牡が破裂寸前というところまで来たと感じ「っ、ぁ――?」 口を離した。「な、に――」 欲に潤んだ目の前に、前をくつろげ猛った自分を見せる。「一人だけ好くなろうってぇのは、虫が良すぎるだろう」 牡の先で家康の唇をつつき、髪を撫でた。「舐めろよ」「し、しかし――」「嫌か?」「うぅ」 すこしためらってから、舌を伸ばした家康が「ふっ」 先端を含んだ。「ん――そのまま、ゆっくりでいい」「ん、ふ、ふんっ、んっ、ん――」 ぎこちなく、家康が政宗に奉仕する。時折腰を動かして上あごを擦ってやれば「っ、はぁ」 そこで生まれた甘いものが、家康の下肢に走った。手を伸ばし、胸に触れて尖りを捏ねれば「ぁは、ぁうっ、う、ぁ」 家康が首を振り、口からこぼれた牡が彼の頬を打った。「おいおい、しっかり咥えてくれよ」「んっ、だが……」 もじもじとする家康に「ま、初めてなら、仕方が無ぇな」 顔を寄せて「これから、憶えていけばいい」 目を細めた。「独眼竜」「Ah?」「その、な――」 内腿を擦り合わせながら顔を伏せ、何かを期待するように目を上げてくる姿に唇がゆがむ。「辛ぇか」 恥ずかしそうに頷かれ「なら、犬みてぇに尻を突き出して這えよ」「えっ」「開いてやるよ――Heaven's Doorをな」 頼もしげに言う政宗に、性欲が羞恥を越えた家康がしたがった。「こ、これでいいか」「ああ、上等だ」 突き出された尻をわしづかみ、左右に広げ、そこにあった秘孔へ唇をつける。「ひぁッ――ど、どどどどど、独眼竜ッ?」「うるせぇよ」「だっ、だが、そこはっ、そんな所――ッ」「どうせあげるなら、俺の腰に響くような、イイ声にしな」「ふ、ぁううっ」 舌をねじ込まれ、家康が拳を握る。震える牡に指をからめれば「ぁ、は、ぁあ、う、ふぁ、んっ、ん」 抗議が消えた。「そうだ――素直じゃねぇか」「はっ、ぁ、あう、どくがんりゅぅう」 情けない声で呼ばれ「意識もふっとぶぐれぇ、気持ちよくさせてやる」 家康の先走りを絡めた指を、秘孔へ挿れた。「ぁ、はっ、ぁ、あっ、どく、がんりゅっ、ぁ、あ」 浅く喘ぐ家康の内壁を探り「ここか――」 あたりをつけて強く押せば「っ、あぉ!」 家康が仰け反り、牡から先走りを噴き上がらせた。「make a hit 」 唇を舐めた政宗が、そこを中心に掻き乱す。「っ、ぁああ、ぁひっ、ひぁおっ、ぁ、あううっ、ひっ、ひぃい」 逃れようとする腰を抱えるように腕を回し、足を絡めて引き止め、乱し続けた。小刻みに吹き上げ続ける牡が「ぁ、はぁあああああっ」 決壊し、欲をほとばしらせる。それがわずかにも残らぬよう、擦りあげれば「ぁ、はぁ、あぁんっ、んぁ」 だらしなく舌を出し、意識を混濁させた家康が腰を振る。「まだ、終わっちゃいねぇぜ」「――え」 呆けた意識を政宗に向けた瞬間「ぁ、ぃあぁああああッ」 熱の杭で頭の先まで貫かれたような衝撃が、走った。「ふっ――少し、キツイが、十分ほぐれてんな」「あっ、ぁ、あふ、ぁ、あう」「飛ばしていくぜ」「っ、はぁあぁああああっ、ぁ、あおぉっ、ぁ、ひぃっ、あつ、ぁ、あついっ、ぁあ」「は、は――く、すげぇ、絡み付いてきやがる」「ぁあ、あぁああっ、はふっ、は、ぁ、い、いくぅ、ぁ、ああっ」「イイぜぇ――好きなだけ、出し続けな」「っ、はぁああっ、ぁああ、あ、ああ――〜〜〜〜ッ」 放つ瞬間、家康の内壁が政宗を絞り上げ「く、ぅ」 熱いものを、注ぎいれた。余韻に浸る間もなく腰を打ち付け「っはぁ――まだまだ……こんなもんで終わるほど、ヤワじゃねぇだろう」 言いながら尻を叩けば「ぃひぃいんっ、ぁ、あはっ、ぁあん」 家康が啼き声を上げる。 そのまま政宗は存分に未熟な家康を味わい、家康は眠っていた性を揺り起こされ続けた。 互いの精液に汚れた裸身のまま、二人は床に寝転がっている。息の整ったところで体を起した政宗が、家康が持ってきた徳利を引き寄せ、そのまま口をつけた。「旨ぇ」 横顔に、抗議するような視線を感じて顔を向けると、家康が子どものように頬を膨らませていた。「なんだよ」 酒を含み、口移しで呑ませる。素直に受け入れた家康が「少し、やりすぎだったんじゃないか」「好く無かったか?」「そういう問題じゃ――」「好かったんだろう」「う――」 目じりを染めた家康が、目を逸らした。がしがしと乱暴に髪を乱すように撫でて「さみしくなったら、いつでも来な」「え」「肌身を使って最高の絆を、繋いでやるよ」 額を合わせ、悪童のように政宗が笑う。「独眼竜」「だから、しっかり前を見て、進んでいけばいい。俺の背を小十郎が預かり、奥州の奴らが支えているように、アンタの背中を支えている奴らが、いるだろう」 とん、と胸を拳で叩く。「忘れそうになったら、思い出させてやる」「独眼竜……」 吐息のように名を紡ぎ「ありがとう」 意固地になりかけていた家康の寂しさが、ほぐれた。 孤独を知る魂が、掌からこぼれる絆で見失いそうになる優しさを、思い起こさせて――――。2012/7/25