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秋侘慕

 折入って話がある、という旨の、やたら回りくどく長々しい手紙が、毛利元就から長曾我部元親の元へ届いた。
「ったく。なんで毎回毎回、やたら長ぇ手紙を送ってくるんだ? 暗号かなんかかよ」
 そういいながらも、用件の部分のみを読み解くのではなく、すべてをきっちりと読んでいる元親の唇に、ほんのりとした笑みが浮かんでいるのを、文を運んできた郎党は見て取った。
「兄貴。毛利んところに行くんなら、先触れをしておきやしょうか」
「ああ、いや。先触れなら、ピーちゃんを行かせるから、かまわねぇよ」
 ゆったりと立ち上がった元親が顔を向けると、元親の愛鳥が羽ばたき、彼の肩に乗った。胸の羽毛を指の背でなぜながら、元親がピーちゃんに笑みかける。
「毛利んところに、俺がすぐに行くって伝えてきてくれ」
 クックックッと首を曲げたピーちゃんが、元親の肩で大きく羽ばたきクチバシを広げた。
「モトチカ、イク、モトチカ、スグイク」
 声を上げながら飛び立ったピーちゃんは、元親の頭上をぐるぐると旋回してから、外へと飛び出した。
「さて、と。手ぶらで行くのもナンだしな。なんか、土産になりそうなモンでも見繕うか」
「へいっ。良い秋の魚が、獲れてますぜ兄貴]
「そんなら、それを持っていこうか」
 出かける準備のために、元親は腰を上げた。

 ごろり、ごろりと手押し車を押して、元親は供も連れずに元就の元へと進んでいた。手押し車の上には、立派なカツオやサンマ、カンパチなどが山と積まれている。いずれも元親自慢の『野郎ども』が釣り上げた、新鮮なものだ。
 元親が門のそばに寄れば、声をかけずともそれは開かれる。出迎えの者たちが、ずらりと並んでいた。
「おうおう。相変わらず、辛気臭ぇ行儀のよさだなぁ」
 元親の親しみのこもった揶揄になれているらしく、並んだ者たちは頭を下げたままで微動だにしない。人の並びで作られた道を進む元親の前に案内役が現れ、元親は手押し車を置いて足をすすぎ、屋敷内へと上がった。
「長曾我部元親様、おいでになりました」
「入るが良い」
 音もなく開いた襖の先に見えた景色に、元親は思わず感嘆の声を上げた。見事な秋の庭が、そこには広がっている。切れ長の目で鋭利な刃物のような軌跡を空気に残し、振り向いた元就の涼やかさが、夏よりもいっそう遠く澄んでいた。まるで秋の空のようだと思いながら、座敷に踏み入れる。
「俺を呼び出してぇんなら、用事があるから来いって使いを出すだけでいいだろう。あんな、長ったらしい手紙をわざわざ書かなくともよぉ」
 どっかと間近に胡坐をかいた元親に、ふんと元就が鼻を鳴らす。
「一応は、貴様も他国の領主ということで礼を示してやったまで。海賊を招いたと、我の品位を貶められるのも、面白くないのでな」
「ったく。ほんっと、口が悪ぃな」
「嬉しげに、それを受け止める貴様に言われたくは無いわ」
「失礼致します」
 和やかな雰囲気の中に、あたたかな茶と茶菓子が届けられた。紅葉を模した生菓子に、ほうっと元親が目を細める。それに、元就の唇があるかなしかの笑みを浮かべたことに、茶を出した者は気付かなかった。
「失礼致しました」
 足音が遠ざかってから、元就が冷ややかな声を出す。
「貴様にも、風雅を解する心があったとは、な」
「鬼のほうが、山河や海に触れる機会も多いだろう? 書斎に引き篭って書物ばっかり読んでる奴よりもよぉ」
 八重歯を見せた元親が、生菓子を手にして一口に放り込む。租借し、うんうんと目じりを下げて頷き、茶をすすって息を吐いた。
「甘味がすげぇ細かいな。すっげぇ甘いのに、嫌味がねぇっていうか、なんていうか。体の隅々にまで甘さが広がって、疲れが取れて体が緩んじまいそうだぜ」
「ほう。わかるか」
「ふふん」
 わずかに目を開いた元就に、元親が得意げに逞しい胸をそらす。盛り上がったその胸筋に目を向けて、元就は息を吐いた。
「その筋肉のように、脳みそも鍛えすぎて風雅など理解できぬと思うておったわ」
「なんだよ。うらやましいか? アンタはヒョロヒョロしてんもんなぁ」
 呵呵大笑する元親に、元就のこめかみがひくついた。
「貴様のように、無駄なものをつけておらぬだけよ」
「なんだよ。拗ねんなよ」
「どこをどう見れば、拗ねたように見える。やはり貴様の脳みそは、筋肉で出来ておるようだな」
 生菓子に手をつけず、元就は茶を啜った。
「俺の頭が筋肉じゃねぇことは、アンタも知ってんだろ」
 元就が首を傾げる。
「筋肉な脳みそじゃ、富岳なんざ作れるはずがねぇっつってんだよ」
 両の八重歯をはっきり見せてきらめかせた元親に、ふむと元就が鼻から音を漏らして、もう一度、茶を啜った。
「富岳といえば……新しきカラクリを製作したのでな。貴様に見せてやろうと思って、呼び出したのよ」
「へっ? アンタが、俺に新しいカラクリを見せるなんざ、どういう風の吹きまわしだ」
「見たいのか、見たくないのかはっきりしろ」
「いや、見てぇけどよ。何か、たくらんでんじゃねぇだろうな」
 ぐっと前にのめり、元就の顔を覗き込む元親の視線を受け止める。
「カラクリの技術を共有すれば、効率が良い。それまでのことよ」
 はぁん、と元親が顎をなでて背を戻した。
「こっちの技術も教えろってことか」
 ぽん、と元親が膝を打った。
「よっしゃ。そういうことなら、見せてもらおうか!」
 元就の目の奥が、わずかに剣呑な光を帯びた。
「そうか。ならば、来るがよい」
 音も無く立ち上がった元就に続き、元親が腰を浮かせて首をかしげた。
「どうした?」
「ああ、いや、なんでもねぇ」
 足の力がわずかに緩んでいるような気がした。けれど歩き出してみても、何の支障も無い。まさか先ほど生菓子を食べた感想そのままに、体が緩んでしまったなんてこともないだろうと、元親は先を進む元就の後を追った。

 薄暗く、西日が差し込む離れの中に件のカラクリが置かれていた。それは、西洋の椅子にも似ていて、奇妙な形をしていた。
「なんでぇ、こりゃあ」
 離れの中の明かりをすべて灯していく元就に、カラクリを眺め回しながら声をかける。
「体をほぐし、鍛えるものよ」
「ほぐして鍛える?」
 多量の明かりに包まれた室内は、昼のように明るい。
「そこに、座してみよ」
「は?」
「貴様の体をほぐし、鍛えてやろう」
 それに、元親がニンマリとした。
「なるほどなるほど。これは、あれだろ。西洋の格闘技かなんかの、体を鍛えるためのカラクリかなんかだろ。やっぱ、アンタも俺みてぇな隆々とした体躯に、憧れてたんじゃねぇのか」
 ふふんと得意げに、肉体美を見せつけるように力瘤を作って胸を張って見せる元親に、元就は半眼になった。
「くだらぬ。さっさと座らぬか」
「へいへい。で、こりゃあ、どうやって座るんだ?」
 カラクリには支柱があり、そこから左右に台が伸びている。支柱の上部には、天秤のように鎖につながれた板がぶら下がっていた。
「そこの、支柱に背を当てて足を板に乗せるがいい」
「ん? こうか」
 支柱に背を持たせ掛け、左右の板に太ももを乗せれば尻が浮いた格好になる。膝のところで板は折れており、支柱に背を真っ直ぐにあて尻と太ももに力を込めねば、座りが悪い。自然と腹にも力が入り、なるほどなと心の中で元親は得心した。これならば、下半身と腹筋を座るだけで意識することになる。近づいてきた元就が、板から元親の足が外れぬよう、しっかりと布で出来た縄で固定した。
「座るだけでも、結構あれだな。ちょっと力を込める感じになるんだな」
 足首もしっかり固定された元親の腕を、元就が軽く叩いた。
「手を上げて、その板の上部を握れ」
「ん? こうか」
 腕が、板に沿う。それも固定した元就が、鎖の長さを調節し、元親の顔の横に腕が上がるようにした。
「これで、腕を下ろすかなんかして、背筋を鍛えるってことか?」
「鍛えるは、まったく別のことよ」
 準備を終えた元就が、元親の下唇を人差し指でなぞる。ぞくりと元親の背骨が震え、首をかしげた。
「何を、鍛えるってぇんだ」
 元就の指が顎を伝い首を滑り、鎖骨をあやして胸筋の筋をなぞった。背骨の疼きが強くなっていく。
「毛利?」
「貴様の体をほぐし、菊花を鍛えてやるためのカラクリよ」
「っ?!」
 驚き目を見張る元親とはうらはらに、元就は平素と変わらぬ様子で元親の腰帯を解き、下帯をはがした。太ももの戒めギリギリまで袴を引きおろし、下帯を投げ捨ててカラクリの背後に回る。
「毛利、何を考えてんだよ。冗談だろう? なあ」
「酔狂で、貴様に薬を盛ったりはせぬわ」
「薬?」
 はっ、と元親が気づく。それに、クッと元就が喉を鳴らした。
「貴様の、あの感想。体が緩んでしまいそうだとは、よう言うたものよ。気付かれたかと危ぶんだわ」
「ひっ」
 ぬらりと、冷たいものが尻に触れた。それが秘孔の入り口に押し当てられて、元親が息を呑む。
「楽に、しているが良い」
「出来っ、ぁ、かよぉおっ」
 にゅるりと冷たく、ぬめったものが秘孔に押し込まれた。ぐいぐいと奥まで飲まされたかと思えば、カチャリとカラクリのねじが回る音がした。
「っ、何を」
「ここまでされて、どんな扱いを受けるか想像もできぬほど、阿呆ではあるまい」
「毛利っ、やめっ」
 手を固定されている板を握り、立ち上がろうとした元親の二の腕が盛り上がり、胸の筋肉が膨らむ。太ももにも力がみなぎるのに、身動きが取れなかった。
「くそっ」
「そう怯えるでない。すぐに、心地よくなろう」
「心地よくって、ひっ、ぃい」
 つぷりと、細い何かが秘孔に押し込められる。カチャリカチャリとカラクリを動かす音が聞こえる。
「まずは、このあたりから始めるとしよう」
「っ、あ、何っ、ひっ、あぁあ」
 カチリと何かがはまった音がして、元親の秘孔に入ったものが回転をしながら上下に動き始めた。それは、人の指ほどの太さに細かな凹凸のある、獣の皮をなめした張型であった。
「ふむ。このくらいならば、痛くもなんとも無いようだな。長曾我部よ」
「っ、く、痛ぇよっ」
 歯を食いしばり板を握り締める元親に、元就がわずかに首をかしげた。さらりと、首の動きを追うように艶やかな髪が流れる。
「っ、奥にっ、ぁ、当たるときっ、痛ぇ、ぁ、こんなことしてっ、ぅ、何になんだよ」
「何になるかは、我のみが知っていれば、それで良い。奥に当たるのが痛いのは、堪えろ。じきに、そこを突いて欲しくてたまらなくなる」
「っ、ならねぇよっ、ぁ、くぅ」
 元就が、今度は違うカラクリを持ち出してきた。鳥の羽がついているそれを元親の胸に当てて固定し、ねじを回す。すると、鳥の羽が元親の胸の色付きをなぞるように円を描き始め、その中心にある鳥の骨が、乳腺に突き立ち回転し始めた。
「ぅあっ、何、ぁっ、あ」
「さまざまな箇所をほぐして鍛えてやろう。貴様の、忍耐力もな」
 薄く笑んだ元就の凄みのある美しさに、灯明の明かりがはかなさを添える。ごくりと、元親の喉が鳴った。
「っ、ぁ、まだ、何かするつもりかよぉ」
「急所を、鍛えてやらねばなるまい?」
「ぁひっ」
 ゆるゆると持ち上がり始めた元親の陰茎に指を滑らせ、淫嚢を掴んだ元就が、たっぷりと香油を垂らして揉みしだく。勢いを増した陰茎が天を向いたのを確認し、元就はカラクリの上部から自分の腕ほどの太さのカラクリを引き寄せて、その先に銀色の先を潰した針をつけた。
「ぁ、まさか、毛利……っ、は、それ」
「さすがに、気付いたか。その通りよ。貴様の蜜筒も、ぞんぶんに鍛えてやろう」
「っ、やめっ、やっ、ひ、ぎぁあ」
 眉一つ動かさず、元就は元親の蜜口に針をあわせ、カラクリを動かした。カラクリは針を動かし、元親の蜜口を犯し広げる。それが抜き差しされるたびに、こぷこぷと先走りがあふれ流れた。
「はひっ、ひっ、ひぁ、あっ、も、ぉり、ぁ、なんでっ、こんな」
「理由は、我だけが知っていれば良い」
「ひぐっ、ぁ、ぉおおっ」
 秘孔を突き上げていた張型を止め、今度は指を三本あわせたほどの太さのものに付け替える。それも飲み込んだ元親の秘孔を眺め、元就は唇をゆがめた。
「やはり、鬼は貪欲なものよ。この程度では足らぬと、ひくついて求めておるわ」
「ひっ、ひぅうっ、や、ぁ、求めてなんざっ、ぁひぅうぅ」
 回転しながら奥まで穿つ、凹凸のある張型に責められ、鳥の羽に胸を責められ、蜜筒を容赦なくかき回されて、元親は首を打ち振り腕を固定する板を握り締め、腰をくねらせ逃れようともがいた。
「ぁはっ、ぁ、も、ぉおおっ、もぉりぃいい」
「あさましい姿よな。長曾我部元親よ。もっと、強い刺激が欲しいと望むか」
「んぁ、違っ、ぁ、外しっ、ふはっ、ぁ、外してくれぇえっ」
 元親の白い肌が朱色に染まる。身悶える鬼の姿を、てろてろと弱い炎が照らしている。それに目を細め、元就は自ら着物を脱ぎ、裸身となった。その体の中心にあるものが、逞しく育っている。
「長曾我部よ。貴様の鬼の角。だらだらと漏らすばかりで、はしたない。少しは、堪えぬか」
「ひっ、ぃい、ムリっ、は、ぁほぉおお」
 元就の指が元親の陰茎を撫でれば、心地よさそうな声があがった。
「ふっ、ふぅ、んっ、ぁ、イキッ、ぁ、イキてぇ」
「放ちたいか。これほどに凝っていれば、それも道理。ならば、赦してやろう」
 肉筒を犯され乱れながらも、元親は射精欲が満たされると胸をなでおろした。元就は蜜筒を犯すカラクリを持ち上げ針を抜き、元親の陰茎をしごき、蜜嚢を揉みながら先端を舌でくすぐる。
「ぁ、はっ、んふぅうっ、毛利っ、ぁ、あ」
「心地よいのか」
「は、ぁあ、いいっ、きもちぃ、ぁ、も、でるっ、でるぅう」
 甘い声を上げた元親を、元就の両手が促す。
「ぞんぶんに、放つが良い」
「っ、ひはぁあああああ!」
 元親が背を反らし、欲の蜜を吹き上げる。それが彼の胸まで飛散し濡らしたのを見届け、残滓をこぼす元親が射精後の気だるさに浸りきる前に、元就は肉筒を覗き張型をより太いものに付け替えて、元親の肉筒をさらなる媚肉に熟れさせようと、カラクリのねじをめいっぱい絞った。
「んひぃいぃいいっ、ぁ、や、ぁああうっ、まだっ、ぁ、イッてる途中っ、ひっ、はぁうう」
「長曾我部よ。奥が突かれるのは痛いと言うておったが、今はどうだ。深さを、ゆるめてやろうか?」
 顎を突き出し見下す元就に、快楽の涙をあふれさせた元親が大きく口を開いて叫んだ。
「奥っ、ぁあ、奥っ、当たってんのっ、きもちぃ、からぁ、あっ、はぁあっもっと、ぁあ」
「そうか」
 満足そうな冷笑で、元親の頬を撫でた元就は、胸を弄るカラクリを外し、自らの手で彼のたくましい胸を撫で、つかみ、絞るように揉みながら尖りに口をつけた。
「んはっ、はぁ、あっ、はぁあうっ、ひ、もぉりぃい」
 呼ばれて目だけを持ち上げれば、元親は天を仰いであえいでいる。胸から口を離し見れば、彼の目は淫蕩に濁り、唇は笑みのように歪んでいた。目を落せば、先ほど放ったばかりの牡は逞しさを取り戻している。
「そろそろか」
 つぶやいた元就はすべてのカラクリを止め、元親の戒めを解いた。
「っはぁ、はっ、ぁ、あ」
「疼くか、長曾我部よ」
 荒く浅い呼吸を繰り返しながら、元親が床にくず折れる。全身をわななかせる彼の目が、元就の猛る牡を映してきらめいた。
「ああ、疼いて、仕方ねぇ」
「ならば、しゃぶれ。出来れば、奥まで貫きかき回してやろう」
 元親が、弾かれたように動いた。
「んぶっ、はふ、じゅっ、んぐぅう」
「っ!」
 淫蕩に毒されているはずの元親に、力強く腰を引き寄せられて喰らいつかれ、元就が目を丸くする。そんなことはお構い無しに、薬とカラクリで野欲の花を強引に咲かせられた元親は、元就の牡にむしゃぶりついた。
「んじゅっ、んっ、んぐっ、ふはっ」
 あまりの必死さに、そのまま本当に食われてしまうのではと危ぶむほど、元親は元就の陰茎をしゃぶりつくす。戸惑いながら、冷ややかなものを胸に吹きすさばせながら、元就は彼の温かな口腔と愛撫に昇らされた。
「くっ」
「んぶっ、げふっ、んっ、んっ、ふ、はぅ」
 むせた元親が、吐き出すまいと吸い上げて、苦労をしながら飲み下す。獲物となったはずの鬼の顔が上がり、その目が挑むように笑いきらめいていることに、元就は息を呑んだ。
「――貴様」
「はぁ、毛利ぃ、ぁ、呑んだぜぇ。だから、ふ、早く」
 目の前で、逞しく妖艶な鬼が足を広げて淫靡に笑みながら、元就を誘う。ぎり、と奥歯を噛み締めた元就が、彼に圧し掛かった。
「あさましく猥らで、下劣な鬼よ。我に犯されるを、至上の喜びと受け止めよ」
「ごたくはいいから、さっさと突っ込んでくれよ」
 忌々しそうに片目を眇めた元就が、媚肉へと育てた箇所に、欲を突き立てた。
「はぎっ、ぁ、が、ぁお、ぉふっ、ふっ、ぁ」
 顎を仰け反らせてあえぐ元親が、手を伸ばして元就の髪をなでる。
「ぁ、やっぱ、生身のほうが、すげぇ、ぁ、熱くて、たまんねぇ。は、ぁ毛利、ぁ、もっと、奥まで突いてくれよぉ」
「言われずとも」
「ひ、ぃいいっ」
 がつがつと、普段の冷静さとはかけ離れた動きで、元就が元親を責め立てる。それを受け止め身をくねらせる元親が、元就の顔を両手で包み、首を伸ばして唇を唇に押し付けた。
「んっ、はぁ、毛利っ」
 包み込むような温かな笑みを、元親が浮かべる。それに、元就が不覚にも泣き出しそうな、頼りなげな子どもの顔になった。
「っ、ぁ、毛利」
 荒々しく突き上げてくる元就の、その表情に胸を絞られた元親の媚肉も、彼の野欲を抱きしめるように絞られた。
「くっ」
「ひっ、は、ぁはぁああぁああっ!」
 奥を突かれ吹き上げられて、元親の意識が白くはじける。脈打ち放つ元就の熱を受け止める元親の胸は、彼への愛おしさに熱せられた。

 気がつけば、とっぷりと日が暮れていた。手触りの良い寝床に頬を摺り寄せてから、身を起こす。星明りのほかに、部屋の隅にちろちろと揺れる炎を見つけ、几帳の裏に顔を見せれば、元就が能面のような顔をして座していた。
「起きたか」
 顔も向けずに、元就が声をかける。
「ああ。起きたぜ」
 足腰に力が入らず、元親は這って彼の傍に寄った。
「とんでもねぇカラクリだぜ」
 元就は、答えない。眉一つ動かさず、暗がりに視線を投げている。
「毛利よぉ」
 元親の腕が伸び、元就の髪を撫で頭を抱え、自分の胸へと導いた。元就は抵抗もせず、すんなりとそれに従い、すっぽりと元親の腕の中に抱きかかえられる。
「とんでもねぇカラクリのせいで、変に体が鍛えられちまった。あんなこと、他の誰にも望めねぇ」
 胸にある、さらりとした絹のような髪に、元親が唇を押し付けた。
「だからよぉ、毛利ぃ。カラクリなんか使わずに、アンタの手で、妙なクセがついちまった俺の体を、慰めてくれよ」
 頼むぜ、と耳元にささやけば、元就が怜悧な目を持ち上げた。
「鬼は、やはり阿呆よな。簡単に篭絡される」
「ああ。だから、篭絡したんなら、きっちり後の面倒も見てくれよ」
 八重歯を夜気にきらめかせた元親に、元就が呆れたような息を漏らした。
「面倒な」
「自業自得だ」
「ふん」
 元就の顎に指をかけて見上げさせ、柔らかく唇を押し付ける。閉じられる前の元就の瞳に、慈しみと喜びがひらめいたのを、元親は見止めていた。
 ったく。素直に欲しいって、好きだって言えねぇなんざ、難儀な野郎だぜ。
 そんな元就の強がりも全て、元親は暴いて受け止め胸の奥深くに抱きしめた。

2013/09/23



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