移りゆくものだからこそ、美しいと言える。壊れるからこそ、愛でる価値がある。「そうは、思わんかね」 松永久秀の声が、薄い笑いに震えている。「突如として海に現れ、海賊たちを平定し、束ねたどころか民にも慕われているとは――実に、興味深い」 手にした器を眺める目は、別のものを眺めていた。「慕っているんだろう――あの、鬼を」 目を細め、見た先には荒縄に縛られた頑強な体躯の男が数人、転がっていた。「敬愛は時に、どす黒く抗いがたい支配欲へと変じてゆくものだ。その瞬間は、実に美しい」 縛られた男たちが、さるぐつわの奥で呻きながら松永を睨み付ける。それを一瞥し「さて――崇高な事を謳う鬼とその仲間たちは、どのような姿を見せてくれるのかな」 大切な仲間を取り返しに来る鬼を、もてなすための準備を、始めた。 その頃、松永よりの文を目にした鬼――長曾我部元親は単身、指定された荒寺の門を見上げていた。阿吽の像の間を抜けて、本殿へ向かい「なん、だぁ?」 扉を開けた先に会った光景に、あっけにとられた。 手紙の内容には、かけがえのない宝と引き換えに男たちを返す、と書いてあった。具体的なものは、何も書かれていない。そこで彼は、富岳をはじめとしたカラクリの設計図ではないかと判じ、それを携えて来たのだが「ようこそ、西海の鬼。歓迎するよ」 にこやか、と言えなくもない様子で本尊の前に立つ松永が用意していたのは、酒肴であった。 戸惑いつつも足を踏み入れた元親へ「まあ、座りたまえ」 うながし、向かいの座へついた。元親も、いぶかりながら膳の前に胡坐をかく。「こうして、差し向かいつつ酒を飲むのは、かの魔王以来だよ」 徳利を差し出す松永を「どういうつもりだ」 睨み付けた。「どうもこうも――手紙にしたためておいたはずだが」 杯を取れと、徳利を揺らしてうながす。睨むように伺いながら杯を手にした元親に、松永が注いだ。「飲みたまえ。特別に造らせたものだ」 薄い笑みを絶やさぬ松永が「この徳利を全て開けたころに、預かっている者たちと対面をさせよう」「無事、なんだろうな」「安心したまえ――かすり傷ひとつ、つけてはいない。縛りあげてはいるがね」 元親の目の光が強くなり「貸せ!」 松永から徳利を奪い取ると、咽るような花の芳香を漂わせる液体を、一気に飲み干した。「っは――飲んだぜ」 手の甲で口を拭い、徳利を逆さに振って見せる。「そんなに、会いたいかね」「当然だ」「ふむ」 ぱちん、と松永が指を鳴らし「ゆっくりと、酒宴を楽しみたかったのだが――」 彼の手勢が、男たちを連れて現れた。「おめぇら、無事か!」「んぅうっ、んううー!」 さるぐつわに阻まれて、叫ぶ声がくぐもっている。縛られてはいるが、乱暴をされた様子の無いことに安堵し「ここに、カラクリの設計図がある」 差し出した元親へ「そんなものに、興味は無いのだよ」「え」 つまらなさそうに松永が言うと同時に、手勢が刀を抜いて縛られている男たちの首へ、刃先を向けた。「っ! じゃあ、何が欲しいってんだ!」「おとなしく従えば、命を取るつもりはない」 目的をはっきりとさせないまま「ただ、卿は私に従ってくれれば、いい。なに、ずっと従え、と言っているわけでは無い。この場でのみで、かまわない」「何が、目的だ」「従えば、おのずと知れよう――いや、わからないかもしれないな。ともかく、従うかね、従わないのかね」「――――言えよ」「んーっ、んんーっ!」 必死に止めようとする男たちを「黙ってろ!」 恫喝し「安心しな。すぐに、解放してやっからよ」 すぐに柔らかい声音に変じて、告げた。「美しい、主従愛というところか。――では、西海の鬼。すまないが、身に着けているものを全て、外してもらえるか」「武装を解けってか」「裸身になるようにと、言っているのだよ。ああ、左目の覆いは、かまわんよ」 怪訝な顔をしながらも、元親は全てを脱ぎ去り「これで、いいか」 惜しげも無く、見事な体躯を晒した。「美しいな」 松永が、目を細める。「鬼と呼ばれるにふさわしい体躯だ。――みっしりとした肉に、陰茎の形も好ましい。茂みの濃さも猛々しく、じつに見事だ」「人の体を鑑賞してねぇで、さっさと望みを言いやがれ」「そう、急かさないでほしいものだが――では、おとなしく縛られてもらおうか」「なっ」 十字の磔台が用意され「さあ、上りたまえ」「んーっ、んんんーっ、んぅうーっ!」「騒ぐんじゃねェ、野郎ども!」 首を振る男たちを一喝し、上り、手を掲げて松永配下の者におとなしく縛られた後「な、に――」 足を持ち上げられ、膝を折る形で手首と同じ場所へくくりつけられ、困惑した。「何を、するつもりだ」「すぐに、わかる」 ゆっくりと近づく松永に、得体のしれぬ悪寒を感じつつも「くっ」 彼の肩越しに見える男たちの姿に、奥歯を噛みしめた。「ふむ、素晴らしいな」 松永の手が、元親の首に触れ、胸筋の形を確かめるように滑る。「んっ――」 腹筋の筋をなぞられ、脇腹の筋肉を確かめられ、太ももをなぞられて「っ、ん」 妙な気配が肌に走るのに、手足の指を握った。「ふむ」 丹念に、茶器をいつくしむように元親の筋肉の流れや盛り上がりを指先で確かめる。そうして触れられる間に、じわじわと生まれては広がっていく感覚に(なんなんだ――) 元親は心中で首をかしげた。「先ほど飲んでもらったものは」 元親の肉を確かめながら、世間話でもするように「極上品の、媚薬だよ」 こともなげに、告げた。「徐々に染みていくほうが、ずっと楽だと思うのだが」 松永の目が、わずかに持ち上がった牡に止まった。「効果が噴き出すことに悶える姿を見るのも、また、一興……か」「っ、ぁあ――ッ!」 括れを囲うように指で輪を作り、もう片手の平を先端にあてがって、くるくると回し始めた。「どうだね――西海の鬼。このような永続的な刺激は、初めてだろう」「っ、ぁ、あ、やめっ、ぁ、あ」「やめてほしくば、あの者たちの首をはねるが?」「ッ――」 ぴたり、と松永が手を止める。「どうする」「――――ッ、続けろ」 それに、松永は不満を示した。「立場をわきまえた口の利き方を、すべきではないかね」「んっ、んんーっ、んっ、んっんー!」 男たちが、必死に元親へ従うなと訴えてくる。その声を受けて「……続けてくれ」 静かに低く、元親が言った。「そうか」「っ、く、ぅ、……ッ、ふっ、ん、んぅッ」 再び、松永がくるくると回し始める。括れと先端に、途切れることのない刺激を与えられた牡は猛り、すぐに蜜を漏らし始めた。「もっと、素直に声を上げたほうが楽だと思うがね」 奥歯を噛みしめた元親が、首を振った。「強情なことだ」「っ、〜〜〜〜〜〜!」 強く先端を握りこめば、顎をのけぞらせた。それでも声を殺している彼に「ふむ」 面白そうな目を向けた。「どれ」 元親の先走りで濡れた手を、みっしりとした胸に色づく箇所へ動かし「んぃッ」 尖りを摘まんで捩じりあげる。「悪く無い」 そのまま左右をこね回し、ふと気づいて「見たいかね」 振り返り、言った。 欲ににごりかけた元親の目が男たちへ向き、彼らの顔に欲の色を見とり「ッ」 息をのんだ。「どれ」 松永が背後へまわり、元親を抱きしめるようにして胸を摘まむ。「っ、ぁ――っ、ぅう」「どうかね。自分たちを束ねている男が、このように胸を弄られ、牡から蜜をあふれさせる姿というのは」 男たちの首にあった刀が下され、袴と下帯を切った。そこから、ぶるりと立ち上がった牡が顔を出す。「大切な者たちが、卿の乱れる姿に興奮をしているらしい」 耳に注ぎいれると「んぁ――ッ、は、ぁ、うう」「見られて熱が上がるとは、良い趣向だな」 手を離し、男たちが良く見えるよう、磔台を前に出す。「存分に、楽しみたまえ」 軟膏薬を取り出し、たっぷりと指で掬い「これもまた、極上の媚薬だ」 耳元でささやいて「っ、ぁ、ああ――ッ」 鬼孔へ塗り込めた。「ふむ、このあたり、か」「ひっ、ぃいい」 ツボを見つけて掻き毟り「ぁ、っ、はっ、ぁ、ぁああああ――!」 子種を噴出させた。「卿の子種が、大切な者たちの上に降り注いでいるのが、見えるかね」「ッ――!」 射精後の余韻に浸る間もなく、告げられた言葉に息をのむ。「どれ」「ぁ、ぁおぉ」 何処からか取り出した、陰茎を模したものに媚薬を塗り付け、押し込んだ。「良い、反り具合だろう」「く、ぅ――ッ」 数度、形を覚えさせるように抜き差しをし「さて。西海の鬼は媚薬にまみれ、体中がもどかしくてたまらないはずだが…………そんな彼に、奉仕をしたいとは、思わないか」 とらえている男たちの、さるぐつわを外して立たせ「しゃぶって、やりたまえ」 彼らの顔を、元親の下肢へ押し付けた。「っ、ぁ、おめぇら」「兄貴……」 ごく、と男たちが喉を鳴らし、恐る恐る舌を伸ばして牡に、袋に、足の付け根に、触れた。「んっ、ぁ」 熱のある声を元親が漏らしたのと同時に「ッ、兄貴!」 目の前の肌にむしゃぶりついた。「ぁ、やめっ、ぁ、あ、はっ、ぁ、ああ」「兄貴のッ、子種の味――ッ]「ひっ、ひぃ、そんっ、ぁ、吸う、な、ぁあ」「兄貴の肌、ッ」「やめっ、ぁ、くすぐってぇ」「銜え込んで、ひくひくして――」「見る、な、ぁああ」「乳首、すげぇ、硬い」「ぃひっ、ぁ、あぅう!」 下肢からあぶれたものが伸びあがり、胸へ吸い付く。大勢の男たちに肌を吸われ、元親は意識を混濁させた。「良い心地かね――西海の鬼」「やぅ、ぁ、あっ――ふ、ぅう」「奥は、疼かないか?」「お……く?」「そう、ここだ」「ひぎぃ」 男たちの口の合間を縫い、埋め込んだ玩具を掴んで掻きまわした。「ぁ、ぁあっ、おくっ、おくぅう」「そう、ここだ――足りなくは、無いかね」「ぁ、はぁあっ、ぁ、も、ぁ――」「もっと、熱く淫らに掻きまわされたいとは、思わないか」「んぁあ――ッ、はっ、ぁ、もっと、ぁ、ああ」 うわごとのように言う姿に「素直なのは、良いことだ」 頷き、元親にしゃぶりついている男たちを引きはがし、彼らの縄と、元親の縄を解くと「さあ、彼らに乱してほしい箇所を晒し、言えばいい」 淫蕩に濁った眼を向けてくる元親の耳に「ぐちゃぐちゃに、犯してほしい、とね」 注いだ。「ぁ――ふ、ぅう」 媚薬に爛れた尻を、触れられてもいないのに震える牡を男たちに見せて「お、犯して――くれ」 喘ぎながら元親が言うのに「兄貴ッ!」「たまんねぇ!」 男たちは群がり、埋め込まれた玩具を抜き取り自分を食ませ、あぶれた者たちは牡に、胸に、指にしゃぶりつき「おぐっ、おぶぅ」 彼の口に、猛る自身を突っ込んだ。「あぁ、すげぇ、ぁ、兄貴ぃ……ッ」「おぶっ、ん、んぐっ、ぇ、あ、ぁあ、ひっ、ひぐっ、ぁ」 男たちが、欲に突き動かされるままに、元親を貪り喰らう。それを、目を細めて眺め「鬼の舞を見ながら、飲むとするか」 つぶやき、自分の膳の前に坐して手酌で口を潤し「混ざりたいかね」 手勢の様子に、声をかけた。「は、いえ――」 目を逸らす彼らに「私の目を、楽しませてくれ」 下知に喉を鳴らし、それが待ち遠しかったらしく、もどかしげに前をくつろげながら元親へ向かった。「人気者だな、卿は」「っ、はぁ、ああう、も、ぁ、ひ、ぃい、ぁはぁあ」 注ぎ込まれた子種があふれ、元親の尻を伝う。順番を待ちきれぬ者たちが彼の口へ注ぎ、それでもあぶれた者たちは、手淫で放ち、降りかけて鬼を穢した。「良い、啼き声だ」 静かに杯を傾ける松永の前で、淫蕩地獄の舞が披露され続ける。「も、もぉ、ぁや、ぁあ、らめ、ぁあ、ひっ、ひぃい――ッ!」 鬼が狂い、許しを乞うても止まらぬほどに。2012/6/26