固い床板の上で、長曾我部元親は目隠しをされ後ろ手に縛られて、梁から吊るされていた。 東軍の勝利で終わった天下分け目の戦で、西軍に組みしていた西海の鬼は捉えられ、地下牢に押し込められて処遇が決まるのを、待っている。 おそらく、処刑をされて首を晒されるのだろうと、元親は覚悟を決めていた。 弟のようであり、友である徳川家康は東軍総大将となり、自分をそのように罰するだろうと、判じていた。それが戦国の常であり、彼の威光を人々に知らしめるために必要の事と理解している。いまさら、元親は命乞いをしようとは思わなかった。するとすれば、領民たちの安堵を乞う事くらいだ。 家康は、それを承知するだろう。そうして、鬼の首を取り、世を平定するのだ。(とうとう、鬼が退治される日が来ちまったか) 静かに、ひやりと肌にまとわりつく湿気のように思考が冷めている。少し見ないうちに大きく成長した家康は、その手でこの首を介錯してくれるのだろうか。武器を捨てて拳で挑むと決めた彼は、人に介錯をさせて眺めているのだろうか。 ぎ、と重い音がして、地下牢への道が開かれたことを知る。いよいよか、と元親は細く長く息を吐いた。 現れた気配は、ひとつ。よく知ったそれに、気を緩める。「わざわざ、一人で来るたぁな」 口を開けば、相手の動揺が湿気を震わせ元親に伝わった。目をおおわれているせいか、肌の感覚が鋭敏になっている。「元親」 さまざまなものをにじませた声に、一番強く漂っているのは、哀切。それを振り払ってやりたくて、ことさら明るめの声を出した。「家康。覚悟は、出来てるぜ。この鬼にふさわしい最後を、飾らせてくれるんだろ」 空気が、硬直した。「元親」 絞り出すような声の後に、錠前が外される音がした。ゆっくりと、家康が近づいてくる。 目の前で気配が止まった。そっと、肌に家康の手が触れてくる。その掌は存外に大きくて、元親は彼の成長を思い知った。 忠臣である本田忠勝の背に隠れてしまっていた少年は、日ノ本を背負い立つ青年に、成長していた。 それに、胸が熱くなる。「ずっと、憧れていたんだ」 ぽつりと、家康が言った。「元親の、大きさに」 するり、と胸筋の上を掌が滑る。「――家康?」 吐息と共に、胸に顔を寄せてきた男の名を、問うように口にした元親へ「体格だけじゃない。器の大きさにも、だ」 独白しながら、腕を回して抱きしめる。「包み込む大きさに、人々を支えられる強さに、ずっと――あこがれていた」「家康」 彼は今、どのような表情をしているのだろうか。頼りなげに聞こえる声音に、肌に触れるぬくもりに、元親は笑みかけ抱きしめてやりたいと望む。家康が酷く、孤独な存在に思えた。「元親」 吐息と共に呟かれた自分の名前に、足元から這い上がってくる言いようのない感覚が肌身を震わせた。「ずっと、欲しかった」 その声に得体のしれぬ暗いものを感じて「家康」 呼んだ名は、掠れていた。「今から、手に入れる」「家康――どういう、ことだ」「元親……誰にも、渡さない」「っ――おいっ」 衣擦れの音がして、衣服を脱がされたのがわかる。冷えた湿気に肌身が触れて、身震いをしてしまったのは「元親」 呼ぶ声に、狂気を感じたからだ。「っ、あ」 ぴちゃ、と濡れた音が耳に届いた。胸に、温かみのある濡れたものが触れている。「何を――」「元親を、今からワシのものとするんだ」「ひっ」 何の反応も示していない元親の牡を握りこみ、やわやわと刺激しながら乳首を舐める。誰にも邪魔をされずに鬼を凌辱するために、家康はこの場所に誰も近寄らぬよう強く言い置いていた。元親の感覚が鋭敏になる様、目隠しをし自由を奪い、じっくりと触れる事のできる頃合いを見計らい、今日という日を待っていた。「元親……」「っ、は、ぁ――家康、やめろ…………何を考えて、ぅあ」 元親の、海の男にしては白い肌の上に家康の所有物である標を刻み付けていく。「はぁ……元親。素晴らしいな――みっしりとして、弾力のある筋肉は吸い付きたくなる」「んっ、ぁ――こんな、ぁ、辱め……ッ、らしくねぇじゃねぇか」「辱め? それは違う。元親……ワシは、元親に求められたいだけだ。ワシが憧れ、求めてやまなかったように、元親にワシを求めてもらいたいだけだ」「意味が、わからねぇ」「ワシがわかっていれば、それでいいんだ」「ひっ」 ぬる、としたものが牡に触れた。一瞬の後に、それが家康の舌であると気付いて「何を馬鹿な事をしてやがるっ!」「馬鹿――そうかもしれないな……んっ」「は、ぁ、あっ、あう、やめ……んっ、ふ」 ぷちゅぷちゅ、と濡れた音が耳に響く。身を捩るが、家康の口が自分から外れる様子は無い。舐め上げられ、吸い取られ、元親の牡はへそにつくほどに反り返って「はは、流石は鬼の珍宝だ」 くりゅ、と先端を押しつぶすように爪を立てられ「ひはっ、ぁ、家康……も、いいかげんに」「ああ、そうだな……いいかげんに、元親の意識を繋ぎとめるのはやめておこう」「――え」 何を言われたのかが、理解できない。次の瞬間「ひっ、い、ぃい」 牡に、ぐるぐると細いものが巻きつけられ、きつく縛られた。「意識を保ったままじゃあ、辛いだろう――元親。すぐに、溺れさせてやろう」「何――っ、ぁ、家康ッ、やめろ、やめっ、ぁ」 何かの栓を抜く音が聞こえたかと思うと、尻の奥に濡れたものが触れた。「い、えやす――?」 背中に、冷たい汗がつたう。「元親……大丈夫だ。痛くは、しないから」 悲しげな響きに滲む劣情に気付き「待てっ、待て家康ッ! やめっ、ぅ、ぁくぅう」 出した制止の声は、排せつをする器官に家康の指を挿れられたことで、途切れた。「ああ、元親のナカは、温かいな」「ひっ、やめ、ぁ、家康ッ、ぁ」 濡れた指が、元親の内壁を探る。太く硬い男の指が掻きまわしてくる感覚から逃れたいはずなのに、目隠しをされ自由を奪われた元親の肌は、状況を知ろうと与えられる感覚を拾い上げた。「敏感だな、元親」「ぃ、ぃあ、やめっ、ぁ、あうっ」 膨らみ切った牡が、縛る紐を食い込ませる。その痛みに顔を歪めれば「ああ、こんなに苦しそうに」「ひ、ぃんっ」 咥えられた。「やめっ、ぁ、あう、家康っ、家康」 地下牢に、自分の声が響いてくる。それが甘さを含んでいることに、元親は愕然とした。「ぁはっ、やめ、ぁ、うふ、ぅああ」「ああ――元親……」 うっとりとつぶやく家康の声に、おののく。縛られ、逃げ場を失った欲は元親の意識を侵食し、理性を揺さぶった。「元親……」「ひぁっ、ぁ、あぁうう」 家康の指がある一点を捉え、元親の腰が跳ねた。「ああ、ここか」「家康ッ――やめろ、そこはっ、そこっ、そっ、ぁ、あはぁあっ」 内部の泣き所を捉えた家康は、嬉しげな吐息を元親の牡に絡めながら、そこを攻め立てる。身を捩り、逃れられぬ劣情の渦に飲み込まれた元親は「はっ、ぁ、も、もぉ、ぁっ、あ、や、ぁあっ、あ、はぁあうううっ!」 のけぞり、縛りあげられた牡を震わせながら、放たずに果てた。「はぁ、ぁ、ああうっ、ぁ、あは、ぁあ」 声を震わせる元親に「そのまま……溺れていてくれ」 優しく声をかけ、戒めを解いて床におろし、目隠しをはずせば欲に目を潤ませた元親が現れた。「はぁ、あ、ひぅう」「元親……この口で、ワシを慰めてくれ」 親指で元親の唇をなぞり、口を吸って身を離す。薄い皮膚の下で暴れまわる欲に震える元親へ、反り返った自分の欲を見せた。「元親……咥えてくれ」 口を開けさせ、突き入れる。「うぐっ」「はぁ……そう、そのまま」「ぅぐっ、んっ、ふぁむっ、ぁ、はぁあ」 頭を掴み、腰を打ち付け、元親の顔を歪ませる家康の唇は、寒々しい笑みを浮かべていた。「ああ――元親。いい気持ちだ。……はぁ」「んぐっ、おぶぅ、んむぉ、ぁうう」 口内を穿たれ、息苦しさに生理的な涙をこぼす元親をいとおしそうに撫でながら「くっ」「ごぶっ、げはっ、はぁ、はっ、ぁ、あ」 彼の喉に放った。「元親」 家康の子種をこぼす元親の唇に唇を寄せ「達きたいだろう」 優しく牡を撫で上げれば「はっ、ぁ、ああぅ」 うっとりと目を細めて、元親が啼いた。牡を撫でた手で彼の足を開き、放ったばかりの自分の牡を、鬼孔へあてがう。「まだ、勃ちあがりきっていないものなら、それほど苦しくは無いと思うが」 ゆっくりと、腰を進めて自分をうずめた。「ひっ、ぁ、あう、ふ、ぁうう」 元親の声に苦痛が無いことを気にしながら、根本まで入り込む。「はぁ、元親……やっと、ひとつになれた」 心底嬉しそうに、吐息と共にこぼして抱きしめる。「ぁひっ」 深く繋がったことに声を上げた元親へ「共に、溶け合おう」 告げて、腰を打ち付け始めた。「ひはっ、ぁっ、ぁ、ああっ、ぁうっ、ぁあ」 指で探った時に見つけた箇所を擦るように、内壁を暴いていく。打ち付けるたびに膨らんでいく家康の牡は元親の熱を高め、放てぬ彼の牡をのた打ち回らせた。「ぃひぃいっ、らめぁ、らめっ、あひぃ」 髪を振り乱し、涙をこぼす元親へ「可愛そうに……すまない、元親」 心底悲しそうな顔をして、縛るものを解くことも穿つことも止めずに、彼を苛み続ける。「ひぁ、あうううっ、ぁあああ」 穿ちながら胸を吸えば、内壁の締め付けが強くなった。「くっ」「はっ、ぁぁあぁあああっ」 どく、と家康の牡が脈打ち、元親の内壁へ欲を注ぐ。仰け反る元親の牡は、二回目の放てないままの絶頂を迎え「はひっ、はひゅ、ぁは、あぁあう」 いっそう肌をわななかせ、色づかせた。「ああ、色っぽいな」「ひ、ぃあんっ」 放ったばかりだというのに、家康は再び腰を動かし始めた。こんどは、ゆるゆると甘えるように元親を味わう。「元親……ワシだけを求めてくれ――誰にも渡さない。もう、二度と……対峙など、したくない」「い、ぇあす……ぁ、は、ぁあ」 震える手を伸ばして、元親は家康を撫でた。はっとした家康が元親を見れば、彼が不安になった時、必ず見せてくれた笑顔がそこにあった。「元親] その笑顔を、自分の欲が穢していることに胸を詰まらせ「ずっと、あこがれていたんだ」 強く、強く抱きしめる。「誰にも、渡したくないと――ッ!」 噛みしめた唇からこぼれたものを、元親の唇が受け止めた。「――もと、ちか……?」 目を見開く家康に「は、ぁ――いつまでたっても、ぁ……不安がりの寂しがり屋なところは……んっ、か、かわんね、ぇな」 困ったような顔をしてみせて「紐、解いてくれよ……千切れちまう」 苦しげに呻けば「あ、ああ」 家康が、あわてて戒めを解いた。「ふぅ」 息をついた元親が「うわっ」 両手で家康を抱きしめて「ったく――くだらねぇことを考えてねぇで、正面からきやがれ」「元親」「あっ」 家康が身じろぎし、内壁を擦られ声を上げる。「ふ、ぅ……ったく。しちまったモンは、ぁ、仕方ねぇから……は、ぁ……満足するまで相手してやる。ん、から……自分だけイってねぇで、俺もちゃんとイかせろよ」 にぃ、と歯を見せて笑った元親に「ッ――ああ!」 胸を詰まらせて泣き笑いを浮かべた家康が、頷いた。「ワシが欲しくてたまらないと、言わせて見せよう」「ガキが、調子こいてんじゃ無ぇよ」 わしわしと乱暴に家康の頭を撫でた元親が、ふと恥ずかしげに目を逸らす。「その、なんだ……まぁ、俺はコッチは初めてだからよ――あんま、無茶はしねぇでくれよ」 すでに、けっこうな無茶を強いられているというのに、そんなことを口にする元親に「そんなことを聞かされて、はりきらない男は、居ないだろう」 嬉しげに答えて、彼の足を抱え上げた。「うぁッ」「イキッぱなしで止まらないと啼くまで、乱してやる」「おいおい、冗談じゃ……ぁひっ、ぃ、ふ、ぁ」「くっ、ん――」「ッ、本気っ、ぁ、かよ……ッ、そこ、ぁ、やっ、あうぅ」 宣言どおり、家康は体力の続く限り元親を啼かせ続け、自分の味を彼の芯に刻み付けた。 そうして憶え込まされた地獄の蜜に、元親は溺れきる。「ひぁ、あううっ、いっぱ、ぁ、いっぱいぃい、くるっ、くるぅうっ、ぁ、ああッ」 あられもない声は地下牢に響き、東照の抱える闇を癒し続けた。「元親――」「ふ、ぁうんっ、いえ、やすぅう」 身を重ね、唇を添わせて鼓動を合わせ、天岩戸へ鬼を捕らえる――――。2012/8/27