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陰―小十郎自慰(政小テイスト)
 穏やかな昼下がり。土をいじりながら汗をかく片倉小十郎の姿を、女たちはうっとりとした瞳で見つめながらささやく。
――――片倉さまは、ああしてみると柔和なお方なのに、戦場では鬼のようだと言われるんですって。
――――とってもお強いらしいのよ。
――――ああ、片倉さまに守られたいわぁ。
 そのような事を言われているとは露知らず、汗を拭うため身を起こし女たちを視界に収めた小十郎が反射的に笑みを浮かべると、彼女たちはキャアキャアと騒ぎ頬を赤らめた。
「まったく、騒がしくてすみませんなぁ」
「――――元気があるのが、何よりも良いことだ」
 話しかけてきた初老の農夫に答える。戦だなんだと殺伐としている世の中で、明るく笑い合うことが出来るということが、どれほど大切なのかを小十郎は身を持って知っている。それを素直に表した彼に、苦笑を浮かべた農夫が言った。
「片倉さまは、ちいとばかし戦と畑以外の事も知らねばなりませんなぁ」
 怪訝な顔をする彼に、農夫は苦笑を柔らかく変化させて言った。
「お茶が、入りました。一休みいたしましょう」
「ああ、すまない」
 背を向けて歩きだす農夫について、小十郎は畦道に上がり腰掛ける。農夫が差し出した茶を受け取り口をつけ、目が向いた空にゆっくりと厚みのある雲が流れているのが見えた。
「最近は、あまり戦が無いようで」
「――――ああ、おかげでゆっくり畑を見ることが出来る」
「早く、このような時間が当たり前のようになる時を皆願っております」
「そうだな…………」
 両手で湯飲みを包み覗くと自分の顔と空が見える。血なまぐささなど欠片もない時間。耳に届くのは鬨の声ではなく、風にそよぐ草の音や、鳥のさえずり。穏やかな人の声――――子どもの喚声。生活の声と音。小十郎の頬を、ふわりと緑の風が撫でてから、彼は茶に映る空を飲み干した。

 城に戻り執務をこなした小十郎は、主の伊達政宗に挨拶を済ませて城内で自分にあてがわれている部屋に戻った。襖を後ろ手に閉めて息を吐く。耳に、先ほど挨拶に行った時、政宗が呟いた言葉が蘇った。
――――まったく、こんなに平和じゃあ体がなまっちまう。
 本来ならば戦など無いほうが良いのだと、今のうちに政などに精を出していただきたいと言った自分の胸のうちに、言葉とは逆の感情があることを小十郎は知っている。それに気付いていたのかいないのか、政宗は拗ねるような顔で舌打ちをしながら、鋭い瞳を小十郎に向けていた。
 自覚はしている、が口に出して認めるわけにはいかない。戦場を思い起こし、血を滾らせているなどと―――――――。
 強く唇を噛み締めて、一歩、また一歩と部屋の奥へ進む。ひどく喉が渇いている――――渇いているのは、喉、なのだろうか。
「は、ぁ――――」
 熱く、渇いた息が漏れる。戦場での感覚が――――生死の狭間の肌の泡立ちが蘇る。体が、熱くなる。
ゆっくりと部屋の奥へ歩く。壁に手を当てて、額を当ててそのままズルズルと座りこんだ。体の中心が熱い。
 このようなことで、このような状態になるなど――――。そうは思っても意識とは裏腹に小十郎の体は熱を帯び、外へ出せとせがむ。壁に額を当てたまま、ゆっくりと帯を解き袴をずらすと下帯の上から指の腹でソコをなぞった。
「っ――――」
 びくん、と跳ねるソコをゆっくりとあやすように指を這わせるたび、小十郎の息が上がる。
「は、ァ――――ぅ」
 猛るソコを自らの手であやしながら、小十郎の理性が欲を責める。戦は、あれは太平の世を求めるための、政宗の天下を求めるためのもの。あれは、民を苦しめるもの。人の命を奪うもの。無くさねばならぬもの。それなのに、それなのに何故体が猛るのか。これではまるで――――――――。
「ン、っ…………う」
 意思とは逆に、小十郎の手は下帯の上から先端をつまみ、擂り潰すように動く。もう片手は熱を上げるように、滾りの生まれる場所を掌で包み揉みしだく。
「は、ぁ…………ッ、う」
 じわりじわりと滲む欲が、下帯を湿らせる。湿った布が絡みつく。
「クッ――――ぅ」
 額を壁に擦りつけながら、理性に罪悪感を与えられながら、小十郎の手は体の望むままに指を絡める。絡めるくせに、理性が最後の最後で動きを抑制する。それがもどかしく、小十郎は尻を強く締めながら腰を揺らす。そんな自分の動きに恥じ入って、歯を食いしばる。それなのに手の動きは止まらない。それどころか、激しくなっていく。
「ァ――――はっ、ウ…………くッ」
 壁にこすり付けた髪が乱れる。胸の蕾がうずき、小十郎は片手をそこへ伸ばした。なぞり、つまみ、転がし、爪を立てる。
「ン、アァ――――――ッ、くふ、ゥ…………」
 中心を攻める手が下帯からそれを取り出す。ブルンと飛び出したそれは熟しすぎた柿のように、むせかえるほどの芳香を撒き散らした。
「は、ぁッ、――――ン、ふぅッ」
 もどかしさに体中が震え、熱が走り回る。わずかに残った理性が動きを抑圧する。絶頂を阻む。
「ア…………ゥ――――イ、んはっ」
 液体と空気の交じり合う音がする。ソレが熱をさらに上げる。それなのに、意志の強さが仇となり欲に流されるのを阻む。自らの果汁で濡れた指はすべらかな動きで小十郎を責める。理性を責める。
――――ヨクボウノママニ、ウゴケバイイ。
 頭を振り、どちらに行けばいいのかわからなくなる。吐く息は白いくせに、肌が汗ばんでいる。どろりとした熱が体中に溜まっている。それなのに、それを吐き出すことを拒んでいる。
 その時――――――
 遠く聞こえた声に――――自らの命など塵芥に等しいと思える相手の自分を呼ぶ声に、小十郎は息を呑んだ。瞬間、脳裏に戦場を駆ける蒼い竜の姿が浮かび、弾ける。
「ハッ、アァアアァ―――――――!」
 小十郎の中にあった糸がちぎれ、壁に頬を擦りつけながら熱い迸りを吹き上げさせる。ビクンビクンと脈打つソレは、吐き出してもまだ足りないと天を向いたままで、小十郎は壁にすがり付くように体を寄せて倒れそうになるのを支えながら両手で猛り狂う自分を掴んだ。
「は、ぅッ――――ぅく、ァ」
 胸の蕾が壁に擦れる。それに思わず仰け反った瞬間、雄の先端が壁に擦れた。
「ンふぅうッ―――――!」
 次の瞬間、小十郎は壁に雄を押し付けながら腰を振り、絶頂を迎えた。
 精を放ちながら恍惚とする小十郎の顔に、月光が降り注ぐ。瞳に、月の姿が浮かぶ。自分の名を呼ぶ声が近づいてくる。
 小十郎の唇が、音もなく彼の名を紡いだ。



2009/12/20
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