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胸に甘えて

 幼子を安心させるには、母の乳が一番。
 そう聞いてはいても、世話役の片倉小十郎は男で、乳母を求めるほどには主は幼くはない。
 不安があれば意識が幼子に戻ってしまうということを、小十郎は姉やその他の侍女らから聞いて知っていた。
「梵天丸様が、落ち着かなくなられておられる」
 それは、右の目を失ってしまった後のことだった。
 小十郎の主、梵天丸は大病を患い、右の目を醜く腫れさせた。美しいものを好む彼の母は、醜い息子を嫌悪した。美醜は古今東西、度合いの違いはあれど人の意識に作用する。美しさゆえに、ろくな働きが出来ぬ者が出世をする事もあり得た。
「伊達の嫡男が、あれでは――」
 大人が気を付けていたとしても、子どもの耳に知らぬうちに入る。梵天丸は全て自らを口に出さぬままに責めたてた。静かに沈んでいく幼い主を救うため、小十郎は腫れた瞼を切り落とした。主に刃を向ける覚悟を全身で感じた梵天丸は、表向きは持ち直した。勉学に励み、剣術にいそしみ、片眼となった不自由を一刻も早く克服しようと、様々な事に励んだ。
 けれど、心身ともに捧げる覚悟を見せた小十郎と二人になれば、その心根に嘘偽りの無いことを知っているからか、弱さを垣間見せる。
 年よりもずっと幼い不安顔を向け、眠るまで傍に居てくれと願う。むろん、それに応えることは、やぶさかではない。けれど小十郎は知っている。梵天丸が不安を全てさらけ出しているわけでは無いという事を。幼い主は、必死に母恋しさを堪えているという事を。
 そこで、小十郎は梵天丸のことと知られぬように気遣いつつ、二人目の子が生まれた時に、上の子が突然に赤ちゃん返りをするという話を姉や侍女に向け、その返答から主の孤独を癒す術を見つけようとしてみた。
 そこから導き出されたのが、乳吸いであった。
(どうしたもんか――)
 小十郎は、そっと自分の着物の合わせ目を開いて胸乳を見下ろす。鍛え上げられた胸筋は、みっしりと盛り上がってはいるが女の乳房とは似ても似つかない。
(梵天丸様に、いまさら乳母をと言っても適当な相手なんざ見つからねぇのは明白だ。――姉上に頼むのも、憚られる)
 梵天丸は、小十郎にしかその弱さを見せないのだから。
(男の胸で事足りるのかはわからねぇが)
 試してみてもいいと、思っていた。
(だが――)
 どう切り出せばいいのか。
 ため息をついた小十郎の耳に、軽い足音と襖を開く音が届いた。
「梵天丸様」
 不安そうに眉根を寄せた梵天丸が、そこに居た。
「――いいか」
「どうぞ」
 両腕を広げれば、梵天丸がほっとしたように硬くしていた頬を緩めて飛び込んでくる。それを愛おしく思う胸があたたかくなり、小十郎はしっかりと幼い主を抱きしめた。
「小十郎」
 見上げてくる星々を湛えた夜空を思わせる瞳は、ひとつ。もう片方は、真っ白い布で覆われている。
「いかがなさいました」
 無垢な瞳が揺れていることに、小十郎は優しく問いかけた。
「迷惑か」
「何がです」
「俺が、小十郎の部屋に来ることが、だ」
 きゅっと、梵天丸が小十郎の襟を握りしめた。
「この小十郎が、梵天丸様を迷惑だと思うはずはありません。何ゆえ、そのように感じられたのですか」
 縋るように、梵天丸が小十郎を見つめる。
「人知れず、悩んでいるんだろう。侍女らが、俺のせいで小十郎が困っているのだと話していた」
 梵天丸の瞳が、きらりと不安に輝く。うるんだ瞳に微笑み、小十郎は愛おしさを指先に込めて主の髪を撫でた。
「私が悩んでいるのは、梵天丸様の心細さを払拭できぬわが身の不甲斐なさゆえ。けっして、迷惑だなどとは思っておりません」
「俺は、小十郎がいるから……頑張れるんだ」
 梵天丸の額が、小十郎の胸に押し付けられた。
「小十郎は、いかに逆立ちをしても男でしかありえません。梵天丸様が母御を求めておられることを、承知しております。代わりに母を思わせる乳をと考えても、やわらかな女の胸や腕のぬくもりを、梵天丸様に差し上げることが出来ぬことが、歯がゆいのです」
「俺は、小十郎ならなんでもいい」
「梵天丸様」
 じん、と胸が悦びに震えたが、それでは足りぬことを小十郎は知っている。
「ですが――」
「なら、小十郎の乳を俺に差し出せ。乳吸いをさせれば、子どもは落ち着くと聞いたんだろう。俺がそれで深く眠れば、小十郎は悩む必要が無くなる」
 驚く小十郎に、梵天丸が侍女らの噂話を耳にしたのだと言った。どうやら、梵天丸の事と知られぬように気を使ったつもりが、聡い女子(おなご)らには筒抜けだったらしい。小十郎の考えも、見通されていたようだ。
 苦笑した小十郎が、襟をくつろげる。
「硬い男の胸ですが、梵天丸様が心安くなられるのであれば、お好きにお使いください」
 まさかそれが、後々の困りごとになろうとは、若い小十郎は思いもよらなかった。

「んっ、ふ――ぁ、ま、政宗様」
 悩ましげな低い声が、臥所の闇に浮かぶ。
「Oh――小十郎……have a sweet voice――もっと、聞かせろよ」
 壁に背を預けた小十郎の、膝を立て開いた足の間に居るのは、政宗と名を改めた梵天丸であった。うっとりと目を細めた政宗が、小十郎の胸乳に舌で甘え、指でもう片方を弄っている。
「ぁ、は……も、政宗様――っ、ん」
 瞳を潤ませ官能を示す小十郎の下肢は、隠すものを全て奪われていた。ゆれる灯明に、そそり立ち先走りを滲ませる姿を浮かばせている。
「もう、何だ――? 我慢できねぇか」
「ぁはっ――ぁ、ひぅうっ」
 ニヤリとした政宗が、強く胸の色づきを絞った。小十郎が胸を反らし、高い声をほとばしらせる。
「ビンビンに膨らませて、だらだら子種をあふれさせて……乳首をいじられただけで、こんなふうになっちまうなんて、誰にも見せられねぇ姿だよなぁ――小十郎」
「んっ、ふ……ううっ」
 ぞくぞくと背を震わせ、羞恥に目を伏せた小十郎の鼻を、政宗が舐めた。
「普段、サラシを撒いているのは、着物に擦れるだけで感じちまうだなんて、誰にも言えねぇよな」
「はっ、ぁ……い、意地の悪いことを申されますな」
「言われるほうが、感じるだろう」
「ヒッ――」
 両の胸の実をねじられて、小十郎の腰が跳ねた。ぷしっ、と子種が少量吹き出し、床を濡らす。梵天丸をあやすため、胸乳を吸わせ弄らせている間に、小十郎のそこは刺激に過敏となってしまっていた。
「たまんねぇ」
 したなめずりをした政宗が灯明皿を傍に寄せ、開いた小十郎の足の間に置いた。浅ましく震え猛る小十郎の陰茎が、はっきりと闇夜に浮かぶ。
「扱きてぇんだろ。いいぜ――小十郎。扱いて、出した子種で奥を開け」
 自らを捧げる準備を行えと、政宗は小十郎から身を離し、胡坐をかいて頬杖をつく。胸を喘がせる小十郎は、主の視線に絡め取られ、羞恥に快楽を押し上げられながら、足を更に大きく開き、手淫を始めた。
「はっ、ぁ、は……ぅ」
「もっと、いやらしく指を絡み付かせろよ」
「んんっ、ぁ、は……っ」
 下肢に主の視線を感じながら、小十郎は足の指を握りしめ、自らの指に先走りを絡ませながら扱きあげる。
「ぁ、はっ、ぁ――んっ、ふ……政宗様――っ、ぁ」
「イク前に、ちゃんと俺に見ておいてほしいと強請れよ?」
 喉の奥で、政宗が笑った。
「ぁ、は……政宗様っ、ぁ、く……こ、小十郎がっ、あ――自らの手で放つさまを……ご存分にっ――ご覧ください」
「Ah――見ていてやるよ。俺の前で、子種を吹き上げる小十郎をな」
「ぁ、はっ、ぁ、ああっ、あ」
 小十郎の手淫が早くなる。声が高く細くなっていく。灯明の灯りに、濡れた陰茎を擦る指が照らしだされる。
「くっ、ぁ、はっ、ぁ、ああ――政宗様っ、ぁ」
「いいぜ――イケよ」
「はっ、ぁ、あぁあああ――〜〜〜〜ッ!」
 腰を浮かせ突き出した小十郎が、勢いよく欲を吹き上げる。それを片手を添えて受け止めながら、小十郎は残滓も全て絞り上げるように、自らの陰茎を根元からきつく擦りあげた。
「はぁ――は、はぁ……ぁ」
 濡れた目で、射精後の気怠さに胸を荒く上下させながら、小十郎が政宗の顔を窺う。野欲をにじませた獣の瞳に、どくりと小十郎の胸が鳴った。
「ぁ、は……ま、さむね――さま」
「たまんねぇな」
 低いつぶやきに、小十郎の腰が甘さに震えてくずおれる。切っ先のように細められた政宗の目が、小十郎の淫欲を高め、彼の喉を鳴らさせた。
「小十郎……俺を、全身で慰めてくれるんだろう?」
 立ち上がった政宗が、着物を落とし下帯を脱ぐ。現れた陰茎が隆起していることに、小十郎はぶるりと全身を震わせた。
「は――い…………この小十郎のすべてを持って、政宗様をお慰めいたす所存にて」
「なら、早いとこ俺を治める準備をしてくれよ」
「はい」
 政宗に背を向けた小十郎が、壁に胸を預けて足を開き、自らの子種で濡れた指で尻の谷に咲く花に触れた。
「んっ――」
 政宗の視線が、痛いほどに小十郎の肌身に突き刺さる。
「ふぅ、く……うっ」
 指をうずめ、秘孔を媚肉に変えていく。節くれだった、刀や農具を扱うたびにできた豆がつぶれ、ところどころ硬さのある自らの指で、内壁を探り政宗を受け入れられるように解していく。
「ぁ、は……はぁ、あ、あ――」
「小十郎……わかってんだろ。もっと、手っ取り早く感じられる場所があるってことを」
 政宗の両手が小十郎の尻を掴み、割り広げた。ひくつく菊花と埋まった指が、政宗の眼前にさらけ出された。
「ぁ――まっ、政宗様」
「ほら、弄れよ。もっと、狂える場所があるだろう」
 ぐっと小十郎が奥歯を噛みしめる。そして
「っは、ぁああ――!」
 内壁の泣き所を自らの指で抉り、仰け反った。
「OK――そうだ、小十郎。もっと、自分で狂って見せろ」
「あはっ、ぁ、ああっ、ま、さむっ――さまっ、あ、は、ぁああっ」
 狂ったように、小十郎が指を動かし声を上げる。痙攣する尻肉をしっかりと掴んだ政宗が、自らの指を銜え込み、赤く熟れた媚肉に舌を伸ばした。
「んっ、ふ、ぅう……ぁ、政宗様っ、まさ……ね、さまっ」
「もう、大丈夫だろう……我慢できねぇ――なぁ、小十郎」
 熱っぽいささやきに、小十郎は指を引き抜き尻を掴んで割り開いた。ひくひくと、小十郎の熟れた淫孔が政宗を誘う。
「政宗様――どうぞ、ご存分に」
 首をめぐらせ微笑む小十郎に、政宗が深く頷く。腰を掴み、猛る陰茎を秘孔にあてがうと、一気に奥まで貫いた。
「くっ」
「ひはっ、ぁ、は、ぁあああうっ――ぁおっ、ぁ、はひゅっ、はがぁああっ」
 指とは比べ物にならぬ熱と質量に、小十郎が獣のような声を出す。彼が落ち着くのを待たず、政宗は若い性の促すままに腰を激しく打ち付けた。
「ふっ、う……小十郎――ギチギチに、っ、締め付けてきやがる」
「ぁはっ、ぁ、ま……ね、さまっ、ぁあっ、ひっ、ぎぃ」
 腰を打ち付けながら、政宗が手を伸ばし小十郎の胸乳を探り弄ぶ。
「すげ……っ、食いちぎられま――っ、小十郎」
「んぁあっ、まさっ――む、ねさまぁあっ、ぁあ、もっと、ぁあ――この小十郎の奥にっ、熱を……はぁ、もっと、激しく――ぁ、小十郎の肉で、ぁあ、若き猛りをお慰めくださ――っ」
「I will.……存分に、受け止めてくれ」
「ひぎっ、ぁ、が、ぁおお――」
 容赦なく、政宗の熱杭が小十郎を抉り突き上げる。いつの間にか小十郎の手は自らの陰茎に触れ、扱いていた。
「はひっ、はっ、ぁ、はぁあ、も、ぁ、もぉっ――政宗様っ、政宗様……っ!」
「んっ、小十郎――はっ、イクぜ」
「ぁ、ごぞんぶんにっ、ぁあ、小十郎に、注いで――っ、注い……っ、は、ぁああああぁあああ」
 どぷ、と奥に熱を放たれ、小十郎が仰け反り自らも欲をほとばしらせる。小十郎の胸を弄りながら、政宗は放ちつつ腰を緩やかに打ち付け、小十郎の快楽を引き延ばす。
「はぁ、は――ぁ、あ」
 涙を流し、口の端から唾液をこぼし、淫蕩に目を濁らせながらも、小十郎は主を気遣う光を浮かべて背後に顔を向けた。
「ま、さむ――ね、さま」
 荒い息もそのままに、慈しみを含んで名を呼べば
「小十郎」
 愛おしさを滲ませて、政宗が唇を重ねた。

 あらゆるものから解放されて、子どものように無垢な寝顔を晒す主を、小十郎は愛おしそうに目を細め、そっと髪を撫でる。
「ん――」
 もそりと動いた政宗が、小十郎の胸に顔を寄せてくるのに胸をあたため、小十郎は主の体を腕で包んだ。
「いかなることも、この小十郎の前に示してください」
 そっと耳にささやけば、政宗の唇が笑みにゆがんだ――ように見えた。

2013/04/15



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