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陰―小十郎(蘭丸×小十郎)
 早朝の野良仕事を終えた片倉小十郎は、納屋で農具を片付けていた。そこここにある道具類の状態は、すこぶる良好で、彼の性格を物語っている。片付けついでに刃こぼれなども点検し、いざというときの荒縄も腐っていないかと眼を向ける。納屋にある小さな窓から見える空は快晴で、平和であることを伝えているようであった。
 戦国の世の、束の間の平穏。
 どの国も動きを見せていない。放っている斥候からの連絡も、とくに注視すべきような報告は見当たらなかった。
――――この調子では、今朝あたりの軍議は、政宗様がご不在になりそうだな。
 若い当主は、どうにもまだ幼い部分が見え隠れする。退屈だと言って、軍議を放り出しかねない。どこかに飛び出してしまう前に、少し手合わせを願おうか。
 そんなことを思いながら片付けをしていた小十郎に、殺気が向けられた。ハッとして手近にあった鎌を持ち、飛来してきた無数の矢を撃ち落とす。おびただしい数の矢は、なれない鎌では完全に落としきれず多少のかすり傷を負ったが、致命傷などは全くない。矢の雨がやんでから周囲に意識を配り、思い浮かんだ顔と同じ人物が唇を尖らせて自分の前に現れるのを見た。
「ちぇ。一本も刺さらないでやんの」
「―――織田の……やはりテメェか。いったい、何のマネでこんなことをしやがる」
 怒気を瞳に含んでみても、平気な顔の矢を放った人物――森蘭丸は、頭の後ろで腕を組み、ぷぅっとふくれて見せた。
「お前らのせいで、蘭丸はコンペイトウを貰えなくなっちゃったんだよ」
「コンペイトウ?」
「そうさ。蘭丸が、たっくさん矢で敵をやっつけたら、信長様がコンペイトウをくださるんだ。その信長様をオマエら弱っちぃやつらが集まって殺しちゃったから、コンペイトウを貰えなくなっちゃったんだよ」
 小十郎は、警戒の態勢を保ったまま片目を細めて相手を見る。本当に、それが理由で襲ってきたというのだろうか。
「テメェは、コンペイトウのために命を奪ってきたって言うのか」
「だって、おいしいんだぞ? コンペイトウ! それなのにさ、だぁれももう、くれないんだもん。どこに行ったって、蘭丸は子どもだからダメだって雇ってくんないんだ。蘭丸は子どもじゃないのに」
 くるりと弓を回している姿に、その先にまだ言葉があることを知って、小十郎は先を促すでもなく中断させるでもなく、蘭丸が続きを口にするのを待つ。
「そしたらさ、松永ってやつが、好きにすればいいって蘭丸にいいものをくれたんだ。いろんなことを教えてくれてさ」
 自慢げに胸をそらす姿は、微笑ましく無邪気な子どものそれに見えなくもないが、相手はただの子どもではない。しかも、松永という名前が出てきたことで小十郎は警戒の色を一層強めた。
「大人っていうのは、どんなことをするのかとか――――どういうことをされたら、くやしいのかとか」
 蘭丸の目が、邪気を放つ。薄く笑みの形を作った唇が、うすら寒い印象を与えてくる。仕掛けてくるとふんだ小十郎が身に力を込めようとし、逆に力が抜けていくことに気づいた。
「な――んだッ……」
 まるで血液が体外へ流れ出すかのように急速に弛緩してゆく。それに抗うことができず、小十郎は片膝をついた。
「やぁっと効いてきた。松永ってやつが、変わった薬を蘭丸にくれたんだ。その代わりに、奥州の宝物を持ってきてほしいって。そうしたらさ、みぃんな蘭丸をスゴイって誉めてくれて、米俵みたいにしてコンペイトウをくれるだろうって」
 だんだんと膝をついていることもつらくなり、座り込みたい衝動にかられる。なんとか鎌の柄で体を支えているが、抜け落ちていく力は止まらない。おかしなことに、蘭丸の声がやけに鮮明に聞こえはじめている。パキリと矢を折って、歩み寄る彼の足音も。
「この薬、どのくらいの効き目があるのかわからなかったけどさ、すごいんだな。みんなが怖いって言っている、竜の右目がかすっただけで動けなくなるんだもん」
 くすくす笑いながら、地面に刺さっている矢を一本引き抜くと、蘭丸は小十郎の顔を覗き込んだ。
「この薬、たくさんもらったんだ。オマエに全部使ってやってもいいと思ったんだけど、この分じゃ、いらないみたいだな」
「ぐ、ぁああああッ」
 無造作に野良着から出ている小十郎の太ももに矢を突き立てる。このくらい普段ならば叫ぶことのないような痛みであるはずなのに、神経が過敏になっているらしい。足に焼けつくような痛みが走った。
「すごい! 松永の言った通りだ! 力は抜けるのに、感覚は鋭くなるって嘘だと思ってたけど」
「ぐ、ぅうう」
 喉の奥でうめきながら、痛みをこらえようとするが奥歯を噛みしめることもできなくなり始めている。加えて、今刺された矢にも薬がたっぷりと染み込まれていたのだろう。先ほどよりも急速に抜けていく力を感じながら、小十郎は壁に背を預けた。
「んぐぅッ」
 矢を抜かれ、ビクリと体が跳ねる。それを面白そうに見ながら、蘭丸が小瓶を取り出した。
「これも、おまけで貰ったんだ。大人がさ、心も体も屈辱にまみれて恥ずかしくてどうしようもなくなること、なんだか知ってるか?」
 ポンッと間抜けな音をさせて、栓が抜かれる。甘い香りが漂ってくる。体を完全に壁に預けて動けずにいる小十郎の口に、それをあてがい流し込みながら蘭丸は囁いた。
「蘭丸みたいな子どもに犯されるって、相当屈辱に感じるんだろう?」
 体内に、甘露が沁み込んでいく。
「さっきの薬で力が抜けて、敏感になって――この薬でイヤラシイ心地になるんだってさ。我慢できなくて、蘭丸におねだりして這いつくばる姿を見るの、楽しいだろうなぁ」
「な、にを―――考えてやがるッ」
「何って。さっきも言っただろ。蘭丸は、信長様を殺しちゃったお前たちに、復讐してやるんだよ」
 ドクン、と心臓が跳ねる。かと思うと、じわじわと甘いうずきが体中を這いまわり始めた。なんとか腕を動かし、蘭丸を睨みつけながら襟首をつかもうとする。
「なんだよ、生意気な目だな」
「ッ――!」
 ギュッと容赦なく股間を握られ、息が詰まる。その顔が面白かったらしく、蘭丸はニヤリとしてギュッギュと何度も股間を握っては放した。
「や、やめ――ねぇかッ」
「やぁだよォ。―――もっと苦しめよ。蘭丸に許してくださいって、言わせてやる」
 子どもの手で握られた男根は、甘い波を小十郎の精神に届ける。それをなんとか押しとどめてみるも、力の入らない体ではやめさせることもできない。膨らんだ男根はやがてはちきれんばかりになり、野良着の上からでもはっきりとその存在がわかるほどに起立した。
「わぁ、おっきいな。蘭丸のもこんなにおっきくなるんだろうなぁ」
 目新しいものを見つけて関心している――という程度の感想に、応えるように小十郎の男根はビクビクと震える。こぼれそうな声を必死に押しとどめるのが精いっぱいで、小十郎は口を引き結び、眉根に深くしわを刻んだ。
「あっ、なんだか濡れてきたぞっ」
 はっとして、子どもに握られている箇所を見る。先端に、じわりと染みができていた。
「なぁ、出したいんだろ。お漏らししてさぁ―――蘭丸様、お願いですからイかせてくださいって言えば、してやってもいいよ」
「ッ――まだ……テメェにそのセリフは十年はえぇ、ぜ」
 ふっと笑った小十郎に、悔しそうに顔をゆがませて立ち上がった蘭丸が、彼の股間を踏みつけた。
「が、ぁああああッ」
「なんだよ、えらそうにッ! こんなになってるくせにッ」
「くふぅう」
 抑え込めなかった声が、納屋に響く。グリグリと踏みつけられ、気を失いそうな快楽が体を駆け巡る。それでも冴えたままの理性は、薬の所為だろうか。それが羞恥を呼び、小十郎はもどかしさに歯咬みした。
「このやろっ、こうしてやる」
 ぐいと乱暴に小十郎の着物を引き脱がせ、下帯も取り去り一糸まとわぬ状態にして意地悪くほほ笑んだ蘭丸は、手近にあった荒縄を手にし、それで赤く膨れ上がった小十郎の胸をゴシゴシとこすりはじめた。
「んぁ、―――や、やめッ……ねぇか」
 痛みをともなった快感が男根に伝わり、触れられてもいないソコが震えてトロリと汁をこぼす。
「あはははっ。やめろって言ってるくせに、本当は気持がいいんだろ。蘭丸が子どもでわからないって思ってんだったら、間違いだからなッ」
「は、クッ――んぁあッ」
 再び男根に足が乗る。乳首を荒縄で擦られ、男根を踏みつけられ、小十郎は顎をそらして声をあげた。気持ちがいい、と脳内に走る言葉を懸命に打ち消し、精神の蹂躙を阻む。
「ほらほら、蘭丸に気持ちがいいので、もっとしてくださいって言ってみろよ」
「戯言ぉ―――ふ、ぉおぁああアア」
 荒縄から指に変えた蘭丸が、思いきり両の乳首をつねる。その瞬間、ひときわ大きく跳ねた男根が、はじけた。
「なんだよ、まだ蘭丸はイッてもいいなんて、言ってないぞ」
 ビュクビュクと欲を吐きだす小十郎の男根に文句を言い、そうだと呟いて小十郎の体を引きずり膝を立て、足を開いた格好で菊花が晒される形に動かす。
「よいしょ、ちょっと重いな――と。縛られてもいないのに動けないで、好き勝手にされるのは、最低な気持だろ」
 鼻歌でも歌いそうな口調で、蘭丸は小十郎に飲ませた小瓶を覗き、まだ中に液体が残っていることを確認して、瓶の口を無造作に小十郎の菊花に突っ込んだ。
「ぁぐっ」
「力、抜けてるから痛くないだろ」
 グリグリと瓶で小十郎の菊花を広げ、液体を流し込む。すべておさまった頃合いに瓶を引き抜き、先ほど小十郎が手にしていた鎌を持ち上げた。
「これ、挿れてやるよ。蘭丸がいいって言わないのにイッちゃったお仕置きだからな」
「よせっ―――おいッ」
「動けないくせに、蘭丸を止められないのが悔しいだろ。ほらほら、入っちゃうよ」
 クスクス笑いながら鎌の柄で菊花をつつく蘭丸に、なんとか体を起して止めさせようと思うが薬の作用と放った後の脱力感とで腕が持ち上がらない。身じろぎ程度の抵抗に、勝ち誇った顔の蘭丸が言う。
「ほらっ、叫んじゃえよ!」
「く、かぁあああッ!」
 気遣いのかけらもない挿入に、小十郎が吠える。
「ほらほら、どうだ。蘭丸様、ごめんなさいって言ってみろよっ」
「くひ、ぃいい」
 押さえたくとも、脳の芯にまで響く快楽が声を上げさせる。声を出してケラケラ笑う蘭丸の手が、ぷしっぷしっと小刻みに欲を放つ男根の先端を握り込み、手のひら全体で揉みだした。
「気持ちがいいんだろ。もっとしてくださいって、お願いしてみろよ。なんでもしますからって、言ってみろよ」
「―――はひっ、や、はぁあああ」
 体全体を震わせながら小十郎が吠える。無茶苦茶に柄で内壁をかき回していた蘭丸が、ある一点を突いた時の相手の反応が過剰であることに気づいた。
「もしかして、ここ、グリグリされると気持ちいいのか」
「んはぁあッ!」
 グリ、と強く的を刺激され、体を折って苦悶する小十郎に満足そうな顔をして蘭丸がささやく。
「蘭丸は、優しいからな。たくさん、ここをグリグリしてやるよ」
「んはっ、らめ―――らめへぇええッ」
 舌がきちんと回らない。小十郎の静止の言葉は、蘭丸の行為をさらにひどくさせる。
「あははっ、すごい――ちんちんから洪水みたいに噴き出して、ヌルヌルしてら。あははははっ」
「んひぅ―――や、はぁあ、んんッ」
 髪を振り乱し、小十郎が身もだえる。ひくつく指先が、納屋の土に爪痕を残してゆく。
「んふぉッ―――ぉ、あぁああッ!」
 叫びが絶叫に変わった瞬間、高く高く、小十郎の男根から噴き出した液が彼の体に降り注ぐ。それに一瞬目を丸くした蘭丸が、すぐに歯をむき出して笑い、乱暴に男根をしごいた。
「あははははっ、すごい。すっげぇ高く飛ばしてら」
「んっ、ぅふ―――ぁ、お」
 達した後の残滓までもを吐きだした小十郎の目はうつろによどみ、締まりのない唇からよだれがこぼれる。鎌の柄を引き抜き、小十郎の液で濡れた手を、小十郎の野良着でふき取りながら、一仕事を終えたような顔で蘭丸が言った。
「子どもだって言ってる蘭丸に、こんな恥ずかしいことされて、悔しいだろ。それとも、もっとしてほしいくらい、気持よかったって思ってんのか? 蘭丸のことを、蘭丸様って言うなら、もっといっぱい、してやってもいいんだけどなぁ」
 クスクスと笑いを含んだ声で言いながら、しゃがんで小十郎の顔を覗き込む。うつろな小十郎の目がゆっくりと焦点を結び、蘭丸を認識した。
「……ぁ、な―――」
 かすかに動いた唇が、何かを伝えようとする。
「なんだよ。蘭丸様、もっとしてくださいって、言ってんのか?」
 ニヤニヤしながら耳を近づけた蘭丸に、小十郎がもう一度、つぶやいた。
「あ―――い、され方、を……知ら、ね―――だ、な」
 バッと飛びのき、信じられないものを見る目つきで小十郎を見た蘭丸の顔がゆがむ。
「蘭丸の、なにを知ってそんなこと―――」
 小十郎の眼は、深く哀惜をたたえて蘭丸を見つめている。わなわなと肩を震わせ、うつむき走り去る蘭丸の顔に、涙色がにじんでいたのを見て取った小十郎は、瞼を閉じる。――――瞼の裏に、ある人物の顔が浮かんだ。
「……―――」
 その人の名を呟き、ゆっくりと小十郎は意識を深く静かな闇に沈ませた。

 愛された記憶のない人は、愛し方を知らないままで――――
――そうは、させねぇ
 闇に沈む意識の奥、小十郎のつぶやきは全身に沁みた。


2010/06/08



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