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I can't let you go, even if I die
 潮風に髪を焙られながら、小十郎は宣教師と会話をしていた。体格の良い小十郎よりも頭一つ分高い彼を、少し見上げる形にして話しかける横顔は親しげで
「こじゅ――」
 声をかけようとした梵天丸を、とどめた。
 宣教師は、海外に興味を持ち始めた梵天丸に、彼の国の言葉や文化を教える教師のような役割をしていた。その彼が数日後、出航する船に乗って祖国に帰る。元服を控えた梵天丸に、今後自分の代わりに教師となる者を用意すると話していたので、今はその話をしているのだろう。
 ――あんなに、親しげだっただろうか。
 梵天丸は、彼と宣教師が会話をしている姿は、あまり見たことが無い。宣教師を梵天丸の傍に連れて来る時、送り出す時に添ってはいるが、必要最低限の言葉しか発さず、送り出すのも途中までで、梵天丸の傍にすぐさま戻ってきていた。
 考えれば、親しくしていても不思議はないはずなのに
 ――近すぎる。
 二人の立ち位置に、梵天丸の眉は顰められた。
 宣教師の国では、この国よりも人と人との距離が近いと、そう認識している。スキンシップ、という相手に触れる行為も日常であると教わっている。実際、彼は梵天丸に挨拶をするとき、両手を広げて抱きとめるようにしながら、左右の頬を交互に重ねる。去るときも、だ。けれど、小十郎にそれをしたことは無い。
「では、お願いいたします」
「Ok」
 目じりを柔らかくして言う小十郎に、軽い調子で返した宣教師が
「――ぁ」
 小十郎の体を包み込み、左右の頬を交互に重ね
「Bye」
 離れる一瞬、ほんのわずかに――小十郎も気付かぬほどに唇を髪に寄せたのを、梵天丸は大きく目を見開き、瞳に映した。
「――ッ」
 唇を引き結び、宣教師を睨み付け――こみ上げてくるものを堪えるために、そういう目になってしまい――踵を返し、走り出す。
 ――小十郎。
 自然に、抱きしめられることも頬を重ねることも、受け入れていた小十郎が脳裏にこびりついている。その瞬間、ひりつくような痛みを感じたことに戸惑い、殺意に似たものを宣教師に感じ――小十郎が彼と出国してしまうのではないかという恐怖に駆られるまま、必死に走り、部屋に飛び込み、喉の奥から絞り出すように唸り、激情の奔流に耐えた。

 宣教師を迎え入れ、ぎこちなくもいつも通り、両頬をあわせる挨拶を交わした後
「それでは、お願いします」
 小十郎が一礼をし、去っていく。その背中を見送り、ぼそりと宣教師が言った。
「彼は、いい」
 え、と顔を向けた梵天丸を見もせず、見えなくなった小十郎の姿を壁を透かして見るように目を細め
「できうることなら、傍に置いておきたいと思うほどに」
 意味深な笑みを浮かべ、目だけを梵天丸に向けた。
「そう思うのは、きっと私だけではないでしょう」
 背骨を毛虫が這いあがるような不快に、梵天丸は総毛立った。
「覚えていますか――人を縛るのは、何であるかと初めてこうして我が国のことをお教えするときに伝えたことを」
 ゆっくりと、宣教師が梵天丸に体を向ける。
「信頼と、情愛と、恐怖」
 たっぷりと時間をかけて、宣教師は首を縦に動かした。
「我らが神は、愛を持って人々を救おうとしていらっしゃる。そして、それがゆえに我らは彼の人を信じ、尊さを伝えるために危険を冒してまで船旅を続けています」
 両肩に、そっと宣教師の手が乗った。
「けれど、そのために悪魔の所業を行わなければいけないことも、あるのです」
「悪魔の、所業」
「人は、生命の欲には逆らえない――それを、無理やりに利用するのです」
 彼が何を言わんとしているのかがわからずに、梵天丸は首をかしげた。
「彼が、欲しいのでしょう」
 甘く、とろりとしたものが梵天丸に注がれる。
「彼にハグをした私を見た目――あれは、そういうものだったのでは、ありませんか」
 からかいと嘲りを含んだ笑みを、睨みつける。
「彼を、誰にも奪われたくはないでしょう」
 幼い背中を、大きな宣教師の手が撫でた。
「私は、貴方から彼を奪える術を、持っています」
 ハッと、梵天丸が男の顔を凝視した。
「けれど、貴方から彼を奪い取るのは、どれほど酷なのか、十分に理解しています」
 そのようなことはしないと告げた唇が
「私の次に来る者が、それを彼に施してしまわないという保証は、できませんが」
 身を固くした梵天丸の体を、そっと抱きしめて
「その技――彼が戻れば実地を持って、教えて差し上げましょうか」
 暗く甘美な誘惑に、梵天丸は喉を鳴らし
「頼む」
 掠れた声を出した。

 梵天丸と宣教師に出す茶と茶菓子を持って、小十郎が戻ってきた。部屋を見ると、いつもよりもずっと真剣な様子の梵天丸に、おやと眉を上げる。
「ああ――小十郎」
 宣教師が顔を上げ、梵天丸が緊張した面持ちで小十郎を見た。
「ちょっと、今教えていることの手伝いをしてもらいたいのですが、良いですか」
「手伝い――」
「そう。どうしても、手伝ってもらわなければ、ならないのです。――少し、痛かったりするかもしれませんが、図面では伝わり辛いので」
 申し訳なさそうに眉尻を下げて笑う宣教師の言葉に、首をかしげながらも
「私で、よろしいのなら」
 請け負うと
「では、さっそく」
 立ち上がり、ぴっちりと障子を閉めた宣教師は、梵天丸を促した。
「さぁ」
 緊張した面持ちの梵天丸が
「そこに坐し、手を後ろに回せ」
 命じ、小十郎がしたがう。その背後に宣教師が立ち、何処から取り出したのか、縄で手首を縛り付け両足首も繋げてしまった。
「一体、何を」
「人を縛る術を、お教えするのですよ」
 にこりとした宣教師が、小十郎の耳に唇を寄せ
「彼は、わずかにでも貴方が自分から離れるかもしれないという疑念を、持ちたくないそうです」
 え、と聞き返そうとした小十郎の口に、宣教師の指が押し込まれる。その先にあった丸薬が直接、喉の入り口にあてがわれ、飲み込まざるを得なかった。
「んっ――何、だ」
「じきに、わかります」
 人の好さそうだった宣教師の気色が薄暗いものを含んだものに変わり、ぞわりと蛇が肌を這うような悪寒に、小十郎が身を震わせた。
「さぁ、どうぞ――梵天丸様」
 こくり、と硬く頷いた梵天丸がゆっくりと小十郎に近づき、思いつめた目で瞳を覗きながら幼い手で小十郎の頬を包み込み
「こじゅうろ――」
 うわごとのようにささやくと、唇を重ねた。

 部屋の中に、牡の香りが漂っている。
「ぅ――んっ、は、ぁ、ぐ、ぅう」
 着物を乱され、大きく足を抱えられた小十郎の下肢に、梵天丸が手を添えていた。
「すごい、な」
 うっとりとした目に映るのは、布団針で穴をふさがれ、そこに通された紐で縛られ、痛いほどに張りつめた陽根があった。梵天丸の指は、先端の柔らかな部分を、弄っている。
「これほどに、精神力が強い者であれば、成した後はもう二度と、離れられなくなるでしょう」
「て、めぇ――梵天丸様に、ぁ、くだらねぇ事……ぃ、吹き込――ひっ、いい」
 梵天丸がしやすいように、宣教師が自分の足に小十郎の背を乗せる形で寝かせ、手を添えて膝を開かせている。
「そうそう――上手いですよ、梵天丸様。次は、たっぷりと舐めてあげましょうか」
「あ、な、なりません――梵天丸様、梵天丸さっ――ぁ」
 舌を伸ばし、梵天丸が小十郎の牡を舐める。丹念に両手を添え、紐の隙間の脈打つ肉に吸い付きながら、指で扱く。
「ぁ、は――ぁ、ぁあっ、ふ、ぼ、んて……ま、さま」
「ふふ――薬の所為だけでは、ないようですね。これほどの高ぶりは、小十郎も梵天丸様を欲していた、ということでしょうか」
「ぁ、違――ッ、は、ぐ」
「おや――違うそうですよ。梵天丸様。それでは強く、彼に技を施さねばなりませんね」
「も、ぉ、ぁ――やめ、ぁ、あぐ、ぅ」
 これ以上ないほどに張りつめた牡に、紐が食い込んでいる。震えるそれを慰めるように梵天丸が舌を這わせ、針を呑んでいる場所を吸った。
「ふっ、ぁ――ぁ、は、ぁふ、も、ぁ、あ」
 媚薬を含まされ、常よりも鋭敏な感覚が脳を揺さぶる。それに流されぬよう抗える強さが、小十郎の根底に望まざる記憶と快楽を深く刻みつけた。
「ぁ、はぁ、ぁ、も、ぉ――い、いけませ……ッ、ぁ、い、いけま、ぁ、ぼんて――ぁ、はっ、ひっ、ひ」
「そうですね。穴をふさがれ、縛られていては、イけませんね――梵天丸様、そろそろ戒めを解き、杭を抜いてあげましょうか」
「小十郎――辛いか」
「ぁ、はっ、ぼ、んて――まる、さま、も、ぁ、これ以上は――も、ぁ、いけません」
「すぐ、楽にしてやる」
 梵天丸が伸びあがり、そっと小十郎の唇を自分のそれで押しつぶす。両手で紐を解き、針を抜くと乱暴に扱きあげた。
「ひっ、ひぃ――ぼんっ、ぁ、ぼ――ぼんて、ぁ、あぁ」
「小十郎、小十郎」
 繰り返し呼ぶ梵天丸の声が、熱い。欲に濡れた幼い顔に、小十郎の腰が疼き
「ぁ、はっ、ぁく、ぁああ――」
 堰き止められていた快楽が、噴出した。
「はぁ、ぁ――ぁあ]
 恍惚とした顔に、梵天丸が喉を鳴らす。
「すごいな――小十郎、いっぱい……吹き出てる」
「梵天丸様、そのまま手を緩めず、昇らせ続けてください」
「このまま――?」
「堰き止められていた分、奥に凝っているものがあるでしょう。それも、出させて差し上げましょう」
「わかった」
「ふ、ぁ――ぼんっ、ぁ、ぼんて――ふ、ぁう」
 放ち終えていない小十郎を、梵天丸の両手が再び昇らせようと動き、彼の唇が尖り震える胸の実を捉える。
「小十郎――はぁ、すごい……こんな風に、なるんだな」
「ぁ、は、ぁあッ、ぁ、ん、ぅう――ひっ、や、も、ぉ、ぁ、あ、はぁ、も、ぁあっ、あ」
 小十郎の下肢に、子種とは違うものが集約されていく。それが生み出す、体感したことのないうねりに首を振る小十郎の姿を、宣教師は唇を舐めて眺め、梵天丸を促した。
「ああ――そうです、もう少し……そう、ほら、先に爪を立てて促して」
「ひっ、ぁ、ぁはぁああああ――」
 言われるままに従った梵天丸の爪が鈴口を掻き、ふたを取られたように、子種とは違う、さらりとしたものを小十郎が吹き上げる。それが出終るとすぐに、宣教師は抜かれた針で再び栓をし、縛り付けた。
「ひぎっ、ぃ、ぁ――あぁ、あ」
「いいですか、梵天丸様。こういうものは、すぐに処置をして体に刻まなければなりません――おや」
 宣教師の目線が、もどかしそうに擦り合わさっている梵天丸の腿に向けられた。
「そうですね――それが、正しい反応です。恥ずかしがらず、全てを小十郎に晒し、どれほど貴方が彼を欲しているか、見せてあげましょう」
「は――ぁ、梵天丸様」
「――小十郎」
 仁王立ちになり、梵天丸が自分を覆うすべてを剥いだ。少年のすべらかな肌に似つかわしくないものが、へそにつきそうなほど反り返り、荒々しさを示している。
「――ぁ」
 見つめる小十郎の脳が、梵天丸の姿態が与える酔いに揺らいだ。心中の奥底に留めていた欲と愉悦が、のそりと頭をもたげる。
 ――この方の傍にあり、深く信頼され、求められるのは、俺だけだ。
 急速に渇きを覚え、口を開いた小十郎が身を起すのを、宣教師が助ける。首を伸ばした小十郎が、梵天丸の欲を含んだ。
「んっ、ぁ、こじゅ――」
「ふ、んっ、んむ……はぁ、ちゅっ」
「ふふ――良い光景ですね」
 小十郎の口淫にわななく足が崩れ、梵天丸が尻をつく。それにかぶさるようになった小十郎の尻が、宣教師の前にさらされた。
「んぅ――ッ」
 双丘が開かれ、隠れていた箇所があらわになる。
「良い、色をしていますね――梵天丸様。ここに貴方の杭を打ち込むための準備を、私がさせていただいても、よろしいですか」
「は――ぁ、あ? な、に」
 初めての口淫、しかも小十郎にされているということに呑まれた梵天丸が、喘ぎながら宣教師を見る。
「今日のところは、私がさせていただきましょう――初めてで不足があり、痛みのみとなれば、元も子も有りませんからね」
 ぬら、と宣教師の舌が小十郎の菊花に差し込まれた。
「ひっ――ぃ、ぁ、やめ」
「しっかりと慣らせば、貴方がしゃぶっているソレを、胎内に収められるのですよ」
 ぞわ、と小十郎の肌が泡立った。
「んふっ、んっ、ぁ、んむっ、は、ぁんぅうっ、が、ぁぐ、ぅう」
「はぁっ、ぁ、こじゅ、はふ、ぁ、ああ」
 梵天丸の声が、口内の熱が、小十郎を高ぶらせる。尻を開かれ繋がる準備をされているのだと耳に注がれる声に、理性が剥ぎ取られ、逃げ場を封じられた快楽が体中を駆け巡る。
「ひっ、ぃぁ、お、ふぁ、ぁ、ぉ、んぶっ、んぐっ、んっ、ん」
「はっ、ぁ、ぁああ――」
 強く吸われ、小十郎の頭を押さえつけるようにして、梵天丸が放つ。
「ふぐっ、んぶっ、んっ、ん――げはっ、はぁ、はぁ」
 どっ、と吹き出し流し込まれたものにむせ、吐き出しそうになるのを堪えて喉に流す。
 ――梵天丸様の、子種が。
 体内に入ったのだと思うと、体の芯から熱くなった。もっと、と何処からか欲する声が響いてくる。
「さぁ、梵天丸様――準備は整いました。どうぞ、存分に彼に貴方の慈悲を注いであげてください」
 手を引かれ立ち上がった梵天丸の牡をつまみ、宣教師が広げた孔に押し当てる。
「そのまま、埋めて」
「んっ――」
「はっ、ぁ、ぁ、ぁぉおっ、ぁ、ひ、ぃ、あ」
 ひくつく小十郎の肉に招かれ、梵天丸が奥まで進む。しっかりと繋がったことを確認した宣教師が
「さぁ、好きなだけ、御暴れなさい」
「ひっ、いぃいいいいッ!」
 梵天丸が腰を振るのに合わせ、牡を縛っていた紐を解き、針を摘まんで抜き差しを始めた。
「ひぁ、はっ、かはっ、ぁ、ふぁ、ぉ、ぉぁあっ、ぁぎぃ、ひ、ぁあお」
「くっ、はぁ、あっ、こじゅ、ぁっ、あ、は、ぁあ」
「そう――二人とも、いいですよ……そう、もっと、獣になっておしまいなさい」
 高ぶりを抑え込んだ声に促されるまま、二人は欲の命ずるままにつながり、自分の中にある浅ましい欲を自分自身に突き付けた。
 ――小十郎は、誰にも渡さない。
 ――梵天丸様に求められるのは、俺ただ一人。
 それを満たすための行為に、二人は深く、のめりこんだ。

 数年後。
「軍議の資料、すべてまとめてお持ちいたしました」
 奥州筆頭となった梵天丸――伊達政宗の私室へ、小十郎が訪う。
「Ah――入れ」
 南蛮語交じりで話すようになった彼の許しに従い、そっと障子をあけて入り、ぴたりと閉める。膝をつき、いざりながら資料を運ぶ小十郎の息が、わずかに荒い。
「政宗様」
 呼ぶ声が、かすかに震えていた。
「それで、全部か」
「――は」
 受け取り、すぐ脇に置いた。
「小十郎」
「は」
「軍議は、楽しかったか」
 口の端を歪めた問いに、小十郎が目を伏せる。わずかに、ふとももが擦り合わされた。
「脱いで、見せろ」
「――は」
 ひゅ、と息を呑んでから返事をし、立ち上がり、帯を解く。落ちた布が隠していた箇所は――小十郎の牡は生糸で縛られ、埋められた針の先が灯明に光っていた。
「そんなにデカくしてたんなら、アイツらにバレてたのかもな」
「そ、のような……ことは」
 震える声は、羞恥からか期待からか。
 くっ、と意地悪く頬を歪めた政宗の手が伸びて、誘われるように小十郎が頬を寄せる。
「I can't let you go, even if I die」
 魂が、肉体を通じて重なり、繋がる――――。

2012/05/21



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