どうして、こんなことになっているんだ。 薄暗い室内で、いつから始まったのかすらわからぬほど、徳川家康は意識を混濁させながら、求められるままに動いていた。 鼻孔に、口内に、牡の香りがこびりついている。 ワシは、どうして――。 そんな考えが、浮かんでは快楽に邪魔をされて砕けた。「ぁ、はぁううっ、んっ」 内壁を穿たれるたびに、根元と亀頭の括れに着けられた皮製の首輪が食い込む。「ひっ、ぃい、ぁはあ」 留められた子種が、それでもなお外に出ようと、力なく溢れる。「ほら。まだまだ、アンタと絆を結びてぇヤツは、たくさんいるんだぜ」 ああ、そうだ。絆だ。これは、絆を繋ぐための行為だ。 涙に滲む視界に、大勢の男たちが下半身をむき出しにし、猛る牡を自分に向けているのが見える。彼らの牡を全て、この身に受ける。それが、彼らと絆を結ぶということ。「待ちくたびれちまったぜ。手も口も空いてんだから、使ってくれよ」 家康の鼻先に、ずいと牡が突き出された。「ぁはっ、あむっ、んっ、はむぅ、じゅっ、んぅう」 気持ちいい――。 幾度も口内を擦られ飲まされているうちに、しゃぶることで快楽を得ることができるようになていた。「ああ、すげぇイイぜぇ。もっと、吸ってくれよ」「じゅるっ、ぁふ、は、ぁんううっ」「腰、もっとホラ。でねぇと俺が、アンタの奥に絆の証を放てねぇだろう」「は、んぐぅあっ、はひっ、ぁ、んううっ」「は、ぁ。たまんねぇ」「はうっ」 びゅる、と手淫で放たれた男たちの子種が、家康の顔に、肩に、胸にかかった。家康の体は無数の男たちの子種で、ぬらぬらと輝いている。「可愛そうになぁ。こんなにギンギンになってんのに、一回もイッてねぇんだからよぉ」 下卑た笑いを浮かべながら、男の一人が家康の牡を撫で、しゃぶりはじめた。「んはぁあっ、ひっ、ぁはぁううっ」「おうおう。そんな声だして。腰の動きが激しくなったぜ。気持ちがいいのかい。家康さんよぉ」「ぁはっ、ぁあ、イイッ、は、きもちぃ、ぁあっ」 放てぬ快楽が逆流し、家康の肌の内側をのたうちまわる。冷静な判断など出来ようはずも無く、家康の脳は淫蕩に浸され煮え切っていた。「どこが、気持ちいいのか言ってくれよ。そうしたら、俺らもアンタに奉仕が出来るんだからな」 横から伸びてきた手が、家康の乳首を抓み、ねじった。「ぁひぃいいっ、ひっ、ぁあ、ちくびぃ、きもちぃ、魔羅もっ、はぁあ、あっ、ああ」「くっ、キツッ」 のけぞり叫んだ家康の内壁が、内部の牡を絞り上げる。「んはぁああっ、熱いっ、奥っ、は、ぁあ、いっぱ、ぁ、子種ぁあっ」 男が放ちながらも腰を振り、家康の中に残滓も全て注ぎ込む。うっとりと目を細めた家康の唇は薄く笑んでいた。「出したんなら、変われよ」 家康の中にあったものが抜かれ、どろりと複数の男の子種があふれでた。「ひゃは。すげぇな。次は、俺の絆を、しっかり飲んでくれよ」「がはっ、ぁはぁあううっ」 休む間もなく、次々に新たな牡が突き立てられ、家康の秘孔は媚態を示す淫花と咲いた。「ワシとぉ、ぁ、はっ、絆っ、ぁ、もっと、ぁあっ、絆をしてっ、あぁあ」 鍛え抜かれた肉体の弾力は、男たちの欲を柔らかく包み込むための肉と化していた。家康の体の、ありとあらゆるところが無数の牡で突かれ擦られ、どのような刺激にも反応するように、短時間の間に育てられた。 ああ、ワシは――。 今、多くの絆をこの身に受けている。自分に突き付けられている無数の牡は、自分と絆を結びたいと望むもの達だ。こうして絆を繋いでいけば、無血で全土を治めることが出来る。 まともな思考など、もはやできなくなってしまった家康は、志だけを残した淫具だった。「はぁあっ、もっとぉ、ぁ、疼くんだっ――体中が、絆が欲しいと疼くっ、だから、もっと、あはぁあっ」 家康の望むとおりに、男たちがそうなれと望んだとおりに、家康は犯し乱され続けた。「ん――」 目を開ければ、粗末な夜具の上に寝かされていた。裸身の家康は身を起こし、自分の肌を撫でた。 大雨の日に濡れたのと同じくらいに、男たちの子種に濡れた肌は、綺麗に拭われていた。家康の手は首に伸び、そこに着けられている首輪に触れた。ちりん、と涼やかな鈴の音が響くと、次の間につながる襖が開かれ、少年が緊張した面持ちで盆を運んできた。 怯えたような顔の彼に、安堵させるように人好きのする笑みを、家康が浮かべる。ビクッと震えた少年は、唇を噛みしめて家康の前に盆を置いた。 盆には、すっかり冷めきっている芋粥が乗っていた。「ああ。ありがとう。調度、腹が減っていたところだ」 さわやかな声で礼を言い、家康は冷めた粥を食べ始める。決して旨いとは言えなかったが、まずくも無かった。少年は、じっと家康の顔を窺うように見つめている。「ふう。ごちそうさま」 食べ終えた家康が、粥の横にあった湯呑を取って口に含めば、少年はごくりと喉を鳴らして立ち上がり、急いてもたつきながら半袴を脱いで下帯をずらし、若い牡を取り出した。「っ、はぁ、はぁ」 胸を荒く上下させる少年は、期待と不安の入り交じった目を、家康に落とす。それを柔らかく受け止めた家康は、目じりを下げて湯呑を置き、食後の甘味を手にするように少年の牡に手を添えて、口を開いた。「ワシと、絆を結びたいんだな」「うっ」 ぬらりと温かな口に含まれた少年は、短い息を吐き、股間でゆらめく家康の頭を見ながら、心地よさそうに目を閉じた。「んふぅ、んっ、んじゅっ、ふ」 舌をからめ、上あごで、頬裏で茎を擦りながら喉奥で亀頭を愛撫する。生理的に滲む涙を浮かべながら、少年に奉仕する家康は股間を疼かせ、内壁に寂しさを覚えた。「くっ、う」「んぶっ、んんっ」 やがて少年が放ち、家康は吸い上げながら飲み下す。「は、ぁ」 口を離した家康は、まるで慈悲の神のような笑みの中に淫猥さを滲ませて、少年を見上げた。「さあ」 家康が足を大きく開き、下肢を彼に見せる。少年はごくりとつばを飲み込むと、拳を握って頭を振った。それに、きょとんと家康が首をかしげる。「どうした。ワシと絆を結びに来たんじゃないのか」 家康はそれが、まるで当たり前の行動であるかのように口にした。「まだ、食べたばかりだから体に障る。少し横になって、腹が落ち着いたくらいに、兄者らが迎えに来る」「そうか。気遣い、ありがたい」 少年は盆を手にすれば、頭を下げて逃げるように家康の元から去って行った。そうして、兄者らの所へ走り込む。「おう。どうだった」「オイラの魔羅を見たら、しゃぶりついたよ」「そうか、そうか」 座にいた男たちは、ニヤリと口を歪めて頷いた。「簡単なものだな」「ああ、簡単なものだ」「薬で痺れさせ、犯しながらでたらめな大義名分を言い含めれば、従うんだからな」 ゲラゲラと、男たちが笑う。「古来より、本能のままに無防備に互いをさらけ出し、睦みあうことは最大限の絆を結ぶ行為だ」 胸を張り、わざとらしくすまし顔をして声高に言った男に、やんややんやと喝采が上がる。「より深い、離れがたい気持ちを繋ぐため、その身を重ねあうという事は、ゆるぎない絆を結ぶという事だ」「おうっ、そうだそうだ!」「俺らは、家康の尻孔で繋がった、兄弟だ!」 また、ゲラゲラと下卑た笑いが湧き起る。少年はそれに、誰にも気づかれないように眉根を寄せた。「しかし。こんなガキの魔羅を見せられて、しゃぶりつくようになるとはなぁ」「あんだけの男をしゃぶり続けりゃあ、欲しくてたまんなくなるさ」「おい。アイツはどんな様子だった。欲しがって、足を開いて突っ込んでくれとでも、言ったか」 ニヤニヤとする男に、少年は首を振った。「絆を結びに来たんだろうって」 足を開いた。「それで、オマエはヤらずに帰ってきたんだろう」「芋粥を食べた後だから、それで揺さぶって、吐かれたら困るからさ」 少年はわざと嫌そうな顔をして、肩をすくめた。「そりゃ、そうだ。で、それでも欲しいと縋られなかったか」 少年の脳裏に、穏やかに微笑む家康が浮かんだ。「吐かれたら困るって言ったら、休んでからって言ったら、お気遣いありがとうって」 男たちは目を丸くして、顔を見合わせた。腰を浮かしかけた者がいることに気づき、少年は慌てた。「逃げたりは、しないと思うよ。だって、兄者らが迎えに来るって言ったら、嬉しそうだったからさ」 家康が逃げるのではないかと言う危惧が、緩んだ。少年は、家康を休ませるため、嘘を口にした。「それに、オイラが戻るとき、すっごく物欲しそうだったからさ。大丈夫だよ」「そうか、そうか。そうだろうな。なんせ俺ら全員を、いっぺんに相手したんだからな」 動きかけた男が座り直し、男たちは酒を呑み始める。彼らに酌をして回りながら、少年は彼らに捕らえられ、乱され、狂って死んだ母と姉を思い出した。 犯してほしいと、耳を覆いたくなるほど淫らな言葉を口にして、壊れて死んだ美しい姉。 貧しいけれど平穏な、泥にまみれ作物を育てて過ごす日々は、戦で壊れた。 戦勝者が略奪の限りを尽くすのは、世の習い。その中で、父は殺され母と姉、少年は彼らに捕らえられ、兄者と呼ぶ彼らの世話を、母と姉は性欲の世話を、少年は身の回りの世話をすることとなった。最初は嫌がっていた母も姉も、好きに穿たれ舐られるうちに、ただの性欲に忠実な獣となった。少年の事すらわからないほどに狂い、犯されながら死んだ。男らは、死んだ二人が硬くなるまで犯し続け、仕えなくなったらゴミのように捨てて燃やした。 あの人も、徳川家康という人も、おなじようになるのだろうか。 底の無い沼に落ち込んでしまったような心地がして、少年はブルリと身を震わせた。 男たちが酒宴を終え、仕上げに肉を楽しもうと、家康の休んでいる部屋へと連れだって向かった。眠っていたらしい家康は、彼らの気配に起き上がり、すでに隆起した牡を見せながら入ってきた男らに微笑みかけ、手を伸ばし、自らしゃぶり、しごき、腰を揺らめかせ始めた。「は、ぁ――もっと、ぁあ、ワシに絆を」「ああ。たっぷりと、絆を結びあおうぜ」「はっ、ぁああっ」 すぐに壊れてはつまらないからと、男らは潤滑油を惜しげも無く家康の秘孔に塗り付け、丹念に広げ始める。さんざんに銜え込まされ続けたそこは、すぐにその折の感覚を呼び覚まし、淫らに蠢き媚態を晒した。「たまんねぇ。もう、いいだろう」「ぁ、はやく……奥にっ、ぁあ、太い絆を、はやくっ」 切なそうに家康が甘い息を漏らし、腰を掴んだ男が一気に貫く。「はぁぁああっ、はぁあ、イイッ、はぁ、おくぅ」 鼻にかかった声を出し、嬉しげに腰を振る家康は、両手で牡を扱きながら、目の前の牡をしゃぶった。「はむぅうっ、んじゅっ、は、ぁあ、牡臭いのぉ、もっと、ぁあ、呑ませてくれっ」 少年は、家畜のように彼を扱う男たちと、彼らを愛しみの対象としているような家康の姿に、言い知れぬ恐怖を覚えた。 絆――。 絆とは、何だろう。「はぁあんっ、きもちぃっ、ぁあ、もっとぉ、はっ、ちくびぃ、ぁああっ」 恍惚と叫ぶ家康に、欲が群がる。「ひんっ、ひっ、ぃいいっ、いくぅうっ、いくっ、いくぅうう」 放つ家康の、しなやかな肢体に下卑た男たちの欲が降りかかった。「んぁあっ、もっとぉ、は、ぁあうっ、絆ぁ、もっとぉお」 身をくねらせて求める家康は、母や姉たちが狂う姿とは、何かが違っていた。「はんっ、ぁはぁううんっ、いっぱ、ぁあ、どくどくぅうっ、ぁ、子種ぇ、すごぉ、ぁあっ」 奥に子種を放たれた家康が、心地よさげに目を細め天を仰ぐ。その顎が下りる間に、少年は家康の視線を受けて強張った。 まだ、濁って無い。 家康の目は、母や姉のように濁ってはいない。 駄目だ。このままじゃ、駄目だ。あの人を壊しちゃいけない。嘘の絆で、汚しちゃいけない。 唐突に、考えるより先に、情動が少年を突き動かした。 少年が走り出ても、家康の体に夢中になっている男たちは、誰一人として気が付かない。 誰か、誰か――。 家康を兄者らから引き離せる、誰か。 それを呼ぶために、少年は夜気の中を走る。その背中を押す様に、ひときわ大きな家康の嬌声が響き、彼の耳を打った。「ぁはぁんあぁあああっ!」 門を飛び出し、道を進み、意識を失うまで走り続けた少年がたどり着き、助けを求めた相手は――――。2012/6/10