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陰―小十郎
   知っているのです。竜の右目と呼ばれる貴方が、とても優しい瞳をする事を――。その瞳に、いつも俺は胸を切なくさせてしまう。
「テメェ、いったい何の真似だ」
 強く睨み付けてくる瞳。俺だけにむけられているということに、鼓動が喜びに打ち震える。ドスの効いた低い声で呼ばれて、俺がどれほど喜んでいるのかわかりますか。片倉様。
「チッ――さっさと解かねぇか!」
 牙をむいて怒る姿も、俺だけのものだと思うと愛おしく感じます。片倉様――貴方は戦場ではあんなに鋭くスキの無い方なのに、ひとたびそれを解かれると無防備になってしまわれるのですね。薬入りのお茶を、何の疑いも無く飲み干されてしまうなんて。
「いってぇ何のマネだ、てめぇ」
 何って、片倉様と二人だけの時間を共有したいと思っただけのこと。だからこそ、田畑に出た貴方の帰りをまち、用意しておいたお茶を出して馬屋へ運んだのではありませんか。
「ワケのわかんねぇ事を言ってんじゃねぇ。どこのモンだ」
 どこ――って、自軍の者を……ああ、いちいち全員を覚えているなんてムチャですからね、仕方ありません。俺は、正真正銘この奥州の者で他のどこにも内通などしていません。
「じゃあ、なんでこんなマネをする」
 言ったじゃないですか。貴方との時間を持ちたい、と――
「イミが、わからねぇな」
 これから、わかりますよ。ああ、逞しいですね。貴方の胸はとても、力強い。俺も、自信はあるのですが片倉様にはかないませんね。
「っ――何してんだテメェ」
 何って、着物の中に手を入れて、貴方の素肌に触れているのです。片倉様、こうして貴方に触れて、俺の跡を残したいと願っていたのですよ。こんなふうに――
「――ッ」
 ふふ、胸――くすぐったいのですか? 舌先でくすぐられるのは、初めてですか――片倉様ほどの方なら、経験がおありかもしれませんね。
「ッ、やめろ――何を考えてンだ」
 だから、俺の跡を残したいとお伝えしたじゃないですか。ああ、貴方の体は本当に、雄々しくて羨ましい。こちらも、さぞや雄々しいのでしょうね。
「ッ?! おいッ――」
 そんなにあわてないで下さい。ほら、暴れると縛っている縄が食い込んで傷が付いてしまう。――――ああ、やはりこちらも、とても男らしい。もっと、もっと雄々しくなったところを見せてください。
「てめっ、おい――ッ、…………ァ」
 いいんですよ、声を出してください。出して欲しいんです。だから俺は、こんなことをしているんですから。貴方の間に入って、こうして貴方の胸から順にたどり、中心のくぼみを経て男の印へ接吻をしているんですから。
「ッ――くぅッ」
 貴方にそんな顔をさせているのが俺だなんて、目がくらみそうです。片倉様、もっと――もっと俺を感じてください。
「ぅ――いい加減ン…………ッしやがれ」
 酔狂でしているわけでは無いんですから、今更止められませんよ。ずっと貴方に触れられたいと望んでいたのです。触れたいと、望んでいたのです。
「てめぇ――が、望んでッ…………のは、こんなッ、――じゃ……」
 ええ、こんな形ではありませんでした。でも、仕方がないでしょう。こうでもしないと片倉様は筆頭のことしか見ないんですから。俺のようなものなど、気にもかけないのですから。
「ッ――!!」
 ああ、すみません。刺激が強すぎましたね――でも、息を呑む貴方もとても、素敵ですよ。こんなに猛って、口に収まらないくらい――――気持ちが、いいんですね。
「こんなッ――モンで……」
 気持ちがいいとまではいかない、と言いたいんですか。でも、こんなに膨らんでいるんですから、まったく良くない――というわけでは無いのでしょう? ねぇ、片倉様。
「違うッ――――テメェは、こんなモンでっ……満足、ァ――クッ」
 満足、なわけ無いじゃないですか。仕方が無いんです。貴方が筆頭しか見ないから。筆頭しか、望まないから。そういう意味じゃなかったとしても、俺は、俺は――
「ッ、ァア――ッふ」
 ここが、気持ちいいんですね。ここ――こうされるのが、いいんですね。
「あふっ――ンッ…………」
 首を振っても、意味がありませんよ。ここはこんなに素直に反応して、甘い蜜をしたたらせているんですから。瞳が、少し虚ろになってきましたね――頭を振るから、髪が乱れていますよ。
「解けッ――ァ」
 解いたら、貴方に触れられなくなるじゃないですか。こんな、一介の足軽のことなど気にもかけないでしょう。こうするしか、貴方に触れることなど出来ないじゃないですか。こうしなければ、片倉様は俺のことなんて見てもくれないでしょう。
「ぅあ――ッ、くは……ッ」
 肌が濡れて、艶っぽいですね。そんな顔をするなんて、知りませんでした。俺のほかにも、そんな顔を見たことがある人が居るんですか。居るとしたら、すごく、妬けますね。
「ァ……も、やめっ――」
 ここばかりを責められて、辛くなりましたか。――こんなにして、辛くないというほうがおかしいですね。片倉様、ああ――貴方の香りで満たされそうです。本当は、接吻をして、その頬の傷跡に唇を寄せて――もっと、もっと沢山貴方に優しく、ゆっくりと触れたいんです。――でも、そんな余裕なんて俺には……こんなことをしているくせにと思われるかもしれないんですが、貴方に接吻をする勇気が、無いんです。ここにはこんなに激しく接吻が出来るというのに――
「ひぐっ――ァ、は……ア、ァ」
 そんなに体を震わせて、ああ――なんて姿を――! 片倉様、このまま、この俺の口内で果ててください。貴方の欲を飲み干したいのです。俺を感じて、その証を俺に――。
「は、ぅン――ッ、く、アァアアアアア!!!」
 んっ、ぐ――ごふっ……ああ、すごく濃くて熱くて――片倉様、ああ――俺は、俺は貴方をッ――――!
「――、もう、止めろ」
 切なそうな、苦しそうな声で、そんな――そんな声で貴方は…………俺の、名前を知って――?


――片倉様、貴方はなんて――――大地のように広い方なのだろう…………


2009/08/9



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