セミの声がうるさいくらいに響く昼下がり。 右の袖を抜き、片肌を晒した状態で興味もなさそうに手紙に目を落とす主、伊達政宗の元へ「政宗様」 野良着姿の腹心、片倉小十郎が笊にキュウリを乗せて現れた。「Ah――」 気だるげに手紙を脇へ置く政宗へ「いずこより、ですか」 問えば、そこに座れと政宗が濡縁を示す。坐した小十郎の傍に、障子にもたせ掛けていた体を起して「読んでみるか」 文を渡し、自分はキュウリに手を伸ばし、かじった。「Ichilled よく冷えてんな」「喉も、潤せましょう」「悪く無ぇ」 目を細めてかじる政宗に笑み、受け取った手紙に目を落とす。その額に皺がよっていくのを、面白そうに政宗が眺めた。「これは――」「ずいぶんと、積極的だろう」 クックと喉を鳴らす政宗に、分別くさい顔をして「このような文は、人に見せる物ではございますまい」 きちんとたたみ、返してくるのを受け取らずに顔を覗き込む。「嫉妬、したか」 にやつく政宗が、挑発するように口を開け、舌を出し、キュウリを舐めてみずみずしく沸き起こる水を吸った。「ぅ――」「小十郎」 熱っぽく名を呼べば、小十郎が目を逸らす。「そのようにして食すものでは、ありません」「こうやって食うのは、キュウリじゃなくて……」 政宗の手が下肢に伸びるのを、あわててとどめると「チッ」 舌うちをして、キュウリをかじる政宗が、憮然とした。「いかがなさるのですか」「何がだよ」 乱暴にキュウリを食べ終えた政宗に「――この、返事を、です」 いいよどんだ小十郎が、再び手紙を政宗に差し出し、今度はそれを受け取った政宗が、あぐらをかいた膝の上に開いた。 それは、恋文と言うには少々過激すぎる内容で「一度でいいってんなら、相手をしてやってもかまわねぇがな」 一夜限りでも共にしたいという具体的な事柄が、こまごまと美麗な歌を織り交ぜて、書かれていた。「豪気な姫さんだぜ」 同意を求めるように言えば「少々、はしたなくはありますが」「少々――? Ha――ずいぶんと、だろう。真田幸村あたりなら、半分も読めないんじゃねぇか」 政宗の脳裏に、破廉恥でござると真っ赤になって叫ぶ、色恋にはおそろしく初心な好敵手の姿が浮かび、笑いがこみあげてきた。「小十郎」「は」「どう思う」「――は?」「コイツだよ。一夜忍んで望みをかなえたとして、どれほど役に立つ」 そういう政宗の顔は、軍議に臨むのと同じものとなっていて「一度で済む相手ではないかと」 小十郎が答えた。 姫の父は、捨て置けるほどの身分では無い。娘に一度でも奥州筆頭が通ったとなれば、さまざまに手を尽くして取り入ろうとするだろう。そして、それを受け入れてしまった後に起こる伊達軍への影響がどうなるのかと、政宗は問うている。「だが、つよく結びつくほどの相手でも、無ぇ」 この時代、婚姻は同盟の手段と言っても良かった。「迎え入れりゃあ、面白そうだがな」 奔放な性の記述を臆面も無く文にして寄越す女など、珍しい。ふたたびキュウリに手を伸ばした政宗の横顔に、困惑と非難を交えた小十郎の視線が向かった。「なんだよ」「いえ……迎え入れるのならば、それ相応の手筈は整えねばと、思案しておりました」「Fum」 少し首をかしげ、笑みを消して「小十郎」 手を伸ばし、襟首を掴み、胸元へ顔を寄せる。「政宗様」「――汗臭ぇ」「野良仕事を終えたばかりですので」 胸に顔をうずめたまま、目だけをあげる政宗が「あの文にあったような、Maddening Dance――俺がしてぇと思うのは…………」 ゆっくりと顔を上げた政宗の目に、情愛が滲み「政宗様」 吐息のように呟き、小十郎の唇が吸い寄せられるように、落ちた。「口にも」 瞳に触れたそれを、首に腕を絡めて自ら迎えに行く。柔らかく触れあい、ふと我に返った小十郎が「なりません」「やめらんねぇ」 全身で甘えてこようとする主の背に腕を回し「ここでは、なりません」 抱き上げ、部屋に上がると障子を閉めた。「奥の間へ」「ん」 唇を重ねながら寝所へ入り、襖を閉める。政宗の手が小十郎の髪を乱すように撫で、喰らうように唇を求め、足が絡んできた。「は、ぁ――小十郎」「んっ、政宗様」「日差しよりもずっと、熱くさせろ」「承知」 立ったまま、唇を貪りあいながら互いの着物を奪い去り、背を、脇腹を、太ももを撫であいながら腰を擦りつけあう。下帯を落として猛る牡を重ねあい、互いの腹に擦りつけながら「はっ、ぁ――」「政宗様」「んぅっ、あ、こじゅ」 耳を舌で探れば、政宗の睫毛が切なげに震える。尻を掴み、体を落として口を開け、臍まで反り返った若い政宗の欲を、強く吸い上げた。「はっ、ぁあぁあう」 吸いながら先端を舌先でくすぐれば、政宗の腰が揺れる。髪に指を絡ませて、快楽に首を振る主をより高めるため、小十郎は尻を探った。「ぁ、あううっ」 体を一人で支えきれなくなったらしい。小十郎に覆いかぶさるようにした政宗が、彼の背に歯を立て、あえぎを向ける。「はっ、ぁ、こじゅ、ぁ、あっ、ぁあう、ぁ、も――ッ、は、ぁ、でる」 その声に、小十郎は口内の政宗を揉むように甘く噛んだ。「っ、は、ぁ、あぁああああ」 小十郎の背に爪を立て、仰け反りながら放った政宗の欲を受け止め、飲み込まずに全て吸い上げると、口に含んだまま政宗の体を反転させ床に寝かせ、尻を持ち上げた。「は――ぁ、こじゅ、んぅっ、ぁ、あはぁあ」 尻を開き、竜洞に唇をつけて吸い上げた精を流し込み、舌で押し込めながら唾液と共に湿らせる。「んぁ、あ、ぁお、おふ、ぅ、くぅうん」 やわやわと袋を揉み、緊張をほぐしながら丹念に入口の皺を伸ばすよう、舌先でなぞれば「ぁ、は、ぁう、ぅ、ふぁ、こ、じゅぅ」 好いらしい政宗の手が下肢に伸び、何かを探すように動く。「こじゅ、ぁ、こじゅうろっ」 求める物を察し、政宗の腰を引き寄せ自分の腰をまたがせると「ふっ、ぁ、硬ぇ」 うれしげに、政宗が小十郎の猛りを掴んだ。「ぁ、ん、口、届かねぇ……から、ぁ」 もっと傍に引き寄せろと言う主を「はしたのうございますな」 揶揄すれば「あの手紙よりゃあ、マシだ――ッ、ぁあ」 言われた。「あそこに書いてある事をしてぇと思える相手は、小十郎……てめぇだけだ」 欲に乱れた息を整えて言う主に「小十郎も、同じ思いにございますれば」 背を床に着け、政宗を引き上げる。「っ、は、ぁ――すげぇ、でけぇ」 顔の前に来た小十郎の牡に、うっとりとつぶやき舌を伸ばして含む政宗の腰がくねる。丹念に形をなぞる舌が先端をつつき「は、ぁ」 熱い吐息をかけて、口内へ飲み込んだ。「ふっ、んむっ、んっ、んじゅ、んっ――ぁ、は、ばかっ、ぁ、んっ、邪魔すんなっ、ぁ、あっ、ん」 小十郎の指が、濡らした竜洞に侵入し、解きほぐしていく。「しておかねば、繋がれぬでしょう」「ぁ、んはっ、ぁ、あっ、ぁん、んじゅっ、ちゅる、んっ、んんっ、はふっ、あ、こじゅ、ろ」 政宗の声から余裕が消え、甘えた色香がにじみ出る。その声に性欲を煽られて「政宗様、そろそろ」 達しそうだと、政宗を自分の牡から離そうとすれば強く握られ「うっ」 呻いた。「政宗様」「は、ぁん……ん、一回出しとかねぇと、こんな状態で突っ込まれ、ぁ、たら……キツイ、だろっ、は、ぁ……おとなしく、ぁん――ヌかれろ」 そう言われて、無理にはがそうとは思えず、また口淫が心地よく「それでは……政宗様、遠慮なく、口内に注がせていただきます」「んっ、はぁ――たっぷり、濃いモンを飲ませてくれよ」 政宗が口をすぼめ、吸い上げながら頭を上下させる。手で袋を揉みながらの行為は性急で「く、ぅ」「んぐっ、ぶ、げはっ、ぁ、ふぅ」 配慮の暇も無く、小十郎が果てたものを受け止めきれぬ政宗が、むせた。「んっ、すげ、ぁ――大量すぎんだろ」 身を起した政宗は、小十郎の液に汚れた顔をそのまま彼に向け「自分で汚したんだ――舐めとれよ」 挑発的に見下せば「承知」 小十郎の手が政宗の頭を包み、引き寄せて自身の精に舌を伸ばす。「は、ぁ、こじゅ――んっ」 うっとりと、喉をなでられる猫のように目を細めながら小十郎の牡に手を伸ばし、自らの尻にあてがい「ふ、ぅく……」 腰を落として飲み込んだ。「っは――政宗様」「んっ、突き上げろ」 命じられ、腰を掴んで突き上げながら、主の体を落とした。「ふぁあッ」 仰け反る顎を口で吸う。背を伸ばして震える政宗が「ぁ、は――さっき、ぁ、出したばっかだってのに、ぁ、は、ぁ、すげ……でけぇ、ぁ、あ」「まだまだ、これくらいで根を上げられては、困ります」「ぁ、わかって――ッ、は、ぁあう」 上体を起し、政宗の胸を吸えば、鼻にかかった叫びが上がる。そのまま舌で弄べば、政宗が腰を動かしはじめた。「ぁ、は、はっ、ぁ、あっ、こじゅ、ぁ、あっ、ぁんっ、ぁ、あ」 胸に吸い付く小十郎の頭を抱きかかえ、もどかしそうに腰を振る政宗が「もっと、ぁ、熱くッ、あ、溶かせ――ッ、は、ぁ」 望めば「お覚悟を」「いまさら、ぁ、だろう」「では」「ひっ、ぃあぁああっ」 小十郎が、政宗の望む以上の動きで応えた。「ぁあっ、あつっ、あ、あ、こじゅっ、あ、こじゅうぁああ」 体内を駆け巡る熱に浮かされ泣き叫ぶ政宗を「はっ、ぁ、政宗様、ぁ、ふっ、食いちぎられそうですっ、ぁ、く」 小十郎が、狂おしく掻き抱く。「こじゅ、ぁ、はやくっ、ぁ、おくっ、ぁ、おくにっ」「はっ、は――ッ、んっ、ぁ、お望みの、ままにっ」「ぁ、ひっ、ひぁ、ぁおおっ」 灼熱の太陽に負けぬほどの熱を伝えあい、噛みつき、喰らわれ――触れる肌と匂い以外のすべてを、忘れ去った。 すっかり温くなってしまったキュウリを、裸身のまま床に横たわりつつ、かじる。「っはぁ……」 渇ききった体には、冷えていなくともキュウリの水分は、この上も無い美味に感じられた。「小十郎」 気だるげに名を呼べば、余韻に浸ることもせずに身を整えた小十郎が「いかがなさいました」 政宗の体を拭く手を、止めた。「あの、手紙、な――」 食べかけのキュウリを振りながら「うまいこと、断れるように計っておけ」「――承知、いたしました」 ふたたび、小十郎の手が政宗の身を清めはじめる。「小十郎」「は」「てめぇの所為だからな」「――は?」 主の顔を見れば、得意げな顔で食べかけのキュウリを鼻先に突き付けられた。「刃を交えて、最高に俺を熱くさせられるのはアイツだが――この俺を溶かせられんのは、小十郎ただ一人しかいねぇんだよ」 片方だけ、口の端を引き上げた政宗に「まったく」 嬉しげに困った顔をして見せながら、突き付けられたキュウリをかじる。「この小十郎の、理性も何もを奪えるのは、三界を探し回ったとしても、政宗様しかおられません」 当然の顔をして待つ政宗の鼻に鼻を重ねれば「嫉妬、したか」 答えを出さぬままの問いを、再び向けられた。「いたさぬとでも、お思いか」 答えに、満足そうに緩んだ唇へ、愛おしさを乗せた唇を、重ねた。 2012/07/25