メニュー日記拍手

夜想曲


  広間に、多くの人間が集まっていた。静かな熱気に包まれた者たちは、待ち遠しそうにも、恍惚としているようにも見える。
 皆が顔を向けている場所――祭壇にあたる場所には、神々しいとは言いがたい、顔の異様に大きな像が鎮座していた。そこに、法衣をまとった男が一人、それに従うように黒衣をまとった男が二人、現れた。小さなざわめきが起こるのを、法衣の男が手を上げて沈める。
 すべてが鎮まるのを待ち、全体を見渡して、法衣の男は奇妙な像に体を向けた。
「おお、ザビー様。あなたの姿が消えてから、我らに愛を授けてくださる方がおらず、迷える子羊となっておりました。けれど、嗚呼、あの伝説のタクティシャンが…………タクティシャンが帰ってきてくださったのです!」
 黒衣の男二人が、手にしていた奇妙な形の錫杖を掲げると、呼応するように唄が始まる。
 ♪ザビザビザビザビザビザビザー
 歌声が渦巻き、広間に充満する。それらが大きなうねりとなり、それに乗るように黒衣の男が姿を現した。
 ♪ザビザビザビザビザビザビザー
 広間の真ん中に、彼が祭壇に向かうための道が出来る。
 ♪ザビザビザビザビザビザビザー
 唄が彼を包み、祭壇へ押し上げた。
「我が名は、サンデー毛利! 迷える駒どもよ! 我の光で浄化されよ」
 ♪ザビザビザビザビザビザビザー
 歓声のように、歌声が高まる。法衣の男が恭しくサンデー毛利に傅き、頷く彼は黒衣をさらりと床に落とした。透けるような白い肌が、皆の前に晒される。
 ♪ザビザビザビザビザビザビザー
「これより、皆の不浄をタクティシャンが受け止めてくれます!」
 さぁ、と促され、ザビー像の胸元で組まれている手に毛利が乗る。祈りの形をまたぎ、腕にそれぞれの足をかけ、背を像の胸に預ける。大きく胸に息を吸い込み、細く長く吐き出す。法衣の男にうなずいて見せると、男は黒衣の男二人に手を上げて合図をした。
 さっと錫杖が突き上げられ、歌が止む。そこに、錫杖を持つ男たちと同じ姿の男たちが、大きな筒を手に捧げながら現れた。
「ここに、皆から集めた不浄があります! タクティシャンが今から、これらを大きな愛で受け止めてくれるのです」
 ♪ザビザビザビザビザビザビザー
 唄が、再び響き始める。ふいごのような物が運ばれ、そこに筒の中にあった不浄――どろりと白濁した、誰にも受け止められることの無かった愛液が移された。
 ♪ザビザビザビザビザビザビザー
 高らかに、広間に居る信者達が歌い上げる。ふいごの先が像の組まれた腕の下をくぐり、毛利の尻に触れた。ゆっくりと、その先が秘孔に差し込まれ、ふいごから液体が押し出される。
「うっ――ふ」
 ゆっくりと、広間に集まった者たちの愛液が毛利の中に注がれていく。短く呻き、眉根を寄せて受け止める毛利に、次の筒が運ばれ愛液が再び注がれる。
「んっ、ぅ――う」
 ♪ザビザビザビザビザビザビザー
 唄が、熱狂的な響きに変わる。次々と運ばれる信者達の液を飲まされた毛利は、苦しげに顎をそらせ、口を開く。
「皆の餓えた愛が、今、タクティシャンの体内に全て受け止められました!」
 ♪ザビザビザビザビザビザビザー
 高らかな法衣の男の声に呼応するように、歌声が大きくなる。奇妙な二本の錫杖が、毛利の前に交差された。
「今から、タクティシャンが全てを愛へと昇華させてくださいます」
 交差された錫杖が下ろされ、法衣の男が男性器を模した剣を携える。
「わずかでも昇華の苦しみを和らげるために」
 その言葉に、錫杖を持った男が毛利の両脇に立ち、唇を薄紅に染まった胸の突起へ添えた。
「は、ぁ、あぁ」
 毛利の足が震える。それを見て法衣の男は剣を像が組んでいる腕の下――毛利の秘孔へと挿し入れた。
「っ――ぁ、ああっ、ぁあ」
 ゆっくりと、傷をつけないように埋め込んでいく。大量に注がれた愛液が溢れ、床に滴り落ちる。
「は、んぁ、あ、あ、ああっ」
 苦しげに声を上げる毛利を慰めるよう、胸に舌を這わせる男たちの目に、立ち上がり、震える彼の牡が映った。
「さぁ、皆さん。これより順に我らがタクティシャンへの祈りを捧げましょう」
 法衣の男の宣言で、胸に這っていた舌が離れる。階下の信者達を導くように、門のように再び男たちが錫杖を掲げた。その間を、整列した信者たちがくぐり、祭壇へ登る。
「さぁ、望むままに一突きずつ、祈りを込めて行うのです」
 法衣の男が手を離し、先頭の信者が毛利に埋め込まれている剣の柄を握る。ゆっくりと、ぎりぎりまで引き抜き、一気に突き刺した。
「っは、ぁ」
「さぁ、次」
「んはっ、ぁ、ああ」
 像の腕で隠されている毛利の秘部に、信者達は剣を引き、突き立てる。あるものは一気に。あるものはじわじわと。中心を穿つ者もいれば、上向きにする者、下向きにする者、捻りながら行う者が居る。抜くときにも趣向を変える者が多く、一突きごとに違う刺激を、毛利は受け止めていく。
「ひぃっ」
「さぁ、次」
「はっ、ぁう」
「次の方」
「ふ、ぁああっ」
「どうぞ」
「んはぁっ」
 信者の数が三分の一を過ぎた頃、毛利が腰を揺らしはじめた。色づく胸の蕾は固くしこり震え、皆の目から隠されている牡からは、液が滲み始めた。
「さぁ――」
「ひふっ、んぅう」
 床に落ちる愛液に、毛利のものも混じる。それに、感極まったように大げさに両手をひろげた法衣の男が叫んだ。
「タクティシャンの愛の泉が、湧き出しました!」
 何処からとも無く歓声が上がり、法衣の男が高らかに歌い始める。
 ♪ザビザビザビザビザビザビザー
「はっ、ぁ、ああっ、ぁ」
 あふれ出したものを止めることのないよう、信者らが一突き、また一突きと毛利に穿つ。けれどそれが決定的なものとはならず、もどかしさに身を震わせる毛利の肌は桃色に染まり、耐える拳が掌に爪を食い込ませている。気がふれそうになるほど、愛欲の波に晒された彼に最後の信者が穿ち終えると、法衣をまとった男が大きく手を広げて高らかに声を上げた。
「さぁ、今こそ愛の泉を!」
 広げた手で、毛利に埋め込まれている剣を掴むとがむしゃらに動かし始める。
「んぁっ、はっ、く、んぁあっ、ぁ、ああっ、ひ、ひぃいっ」
 細い顎を仰け反らせ、身もだえる毛利を左右から錫杖を持っていた男が押さえ込む。
「おお、もうすぐ――もうすぐです」
「ハァあっ、ァ、ふぁあっ、ぁ、んぁ、あっ、あっ、あ、あぁあああ――――ッ」
 ひときわ高い声をあげた毛利が、もどかしく垂れ流すだけだった情を吹き上げた。信者からは、ザビーの像の組まれた手から噴出すように見える。
「祈りの手から、愛がほとばしっていますよ!」
 法衣の男が絶頂の最中の毛利を責め続ける。
「あぁ――は、ぁああ、も、ぁあ、ひふぁああぅうう!」
 悶絶する毛利を左右から押さえつけ、男たちは淫具の剣で彼をかき回し続ける。
「ぁはあっ、も、ぉ、はひぃいいっ、ぃああぁああああっ!」
 声を限りに叫び、放ち続ける毛利の意識が途切れるまで、儀式は続いていく――――。

 がらんとした広間に、ザビー像に身をゆだねたままの毛利だけが残されている。傾き始めた日が差し込み、白い彼の肌を浮かび上がらせていた。
「ぅ――」
 長い睫が震え、閉じられていた瞼が持ち上がる。ぼんやりとした視界に、法衣をまとった男と錫杖を持っていた男二人が枷を手にやってくるのが見えた。
「お目覚めですか、タクティシャン」
 恭しく彼の体を抱き上げ、床に下ろす。
「信者の皆さんへの愛溢れる儀式、お疲れ様でした。――――ひと休みなされたことですし、次は我ら幹部の待つ部屋で、直接の施しを願えますよね」
 しゃら、と鎖が涼やかな音を立てる枷が、毛利の首にかけられる。するりと法衣を落とした男が、毛利の眼前にいきり立ったモノを見せた。焦点の合わない瞳のまま、毛利は手を伸ばし、それを両手で掴み、唇をよせる。
「ん――は、ぁ」
 慈しむように舌を這わせる姿に、法衣の男は熱く、柔らかく下卑た息を吐き出した。
「おお、タクティシャン――存分に愛してくださるのですね。我らも、全力を持って愛して差し上げましょう」
 錫杖の男二人が毛利の尻を持ち上げ、それぞれが秘孔と牡に口をつける。
「んっ、は、あぁ」
 白い毛利の肌に、再び朱が挿し始め――――教団幹部との愛の儀式と成っていく。
「我らの後は、幹部の控える晩餐の席へ、参りましょう」
 虚ろな毛利の頬に、聖母のような笑みが滲む。
「は、ぁ、ぁあ――んっ、ふ」
 愛を説かれ、愛を求めた盲目の太陽は、闇に沈みながら歪んだ輝きを増していく――――。

2011/12/25



メニュー日記拍手
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送