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小十郎×佐助
 何かが自分に覆いかぶさっている。
 あるかなしかの気配を感じて、片倉小十郎は薄く目を開けた。
 何も見えない闇に、夜明け前だと悟る。夜更けは、ここまで暗くはならない。朝に追いやられた夜が凝る時間帯の来訪者に、薄い溜息をこぼす。長い髪が頬に落ちてくる。慣れてきた目に、女のような姿が見える。青白く発光しているような顔が、酷く近い。薄笑いを浮かべている相手にため息をつき、呆れた顔を向けた。
「何の用だ、猿飛」
 覆いかぶさっている女は、少し目を丸くしたあと嬉しそうに目を細める。
「趣味の悪いいたずらはよせ。それとも、この俺の首を取りに来た、とでもいうつもりか」
 女の手が、そっと小十郎の目を覆う。次にそれが外れた時、見慣れた顔が現れた。
――――武田軍真田忍隊・猿飛佐助。
 佐助は唇をムニュリと曲げて、何かを含んでいるような顔で笑いながら首を傾げる。
「片倉の旦那が最近退屈そうだからさ、ちょっと刺激でもあげようかなって。任務のついでに寄ってみただけ」
「そうか」
 特に何の感情も含まずに答えた小十郎の手が、佐助の頬に伸びる。親指が、目の下を撫でた。
「ちゃんと、眠って無ぇんじゃねぇのか」
「えぇっ、クマとかできちゃってる。男前が台無しぃ」
「あぁ、いや――そうじゃねぇ。疲れているように、見えたからな」
 いたわる口調に瞬きをして、甘い顔で佐助が肩をすくめる。
「ま、忍ですから」
「真田は、そういうことを言う奴じゃねぇだろう」
「旦那が言わなくったって、大将の命令とかもあるし。ほら、俺様ってば結構律儀っていうか、仕事はきっちりしたいからさ、余計なこともしちゃうって言うか――――」
「そうか」
「うん、そう」
 ふふっと笑う佐助に笑み返しながら、小十郎は佐助の目の下を親指で何度も撫でる。
「急ぎじゃ、無ぇのか」
「ん。調査書は他の奴に持って帰らせたし、ついでに奥州の様子を見てくるって言ってきたから」
「そうか――――なら」
「わっ」
 小十郎の腕が佐助の腰に周り、くるりと体を回して自分の横に寝かせる。
「男二人じゃ狭いだろうが、少し休んでいけ」
「やだなぁ。そんなに疲れた顔、してるんだ」
 そう言いながらもおとなしく、佐助は小十郎の腕に抱かれて横になっている。その顔が、親に甘える子どものようになっていることに、小十郎は目を細めた。
「ん、何」
「――――いや、ゆっくり休め。何も気にせず、な」
 その言葉に、困ったように眉を寄せて佐助が身を寄せてくる。小十郎の首に頭を擦り寄せ、うっとりと呟いた。
「久しぶりの―――片倉の旦那の匂いだ」
 すんすんと匂いを確かめている姿に苦笑する。
「おめぇは犬か」
「ん。天狐仮面だよ、天狗仮面」
 くすくすと笑う佐助の目が、闇の中で光って見える。そこに艶を見つけた小十郎が息をつめたのを見てとりながら、佐助は小十郎の襟を掴んだ。
「久しぶりに、こんなに沢山嗅いだら――――切なくて仕方がなくなって、眠るどころじゃ無いよ」
「猿飛……」
「胸も、ここも、すごく――切ない」
 佐助が腰を寄せて、下肢を絡めてくる。わずかに立ち上がり始めている彼の牡を感じ、小十郎の瞳にも艶が浮かんだ。
「ねぇ、癒してよ――片倉の旦那ぁ」
 甘い声で強請ると、柔らかい苦笑が返ってきた。
「仕方の無ぇ奴だ」
 唇が重なる。甘やかすような触れかたに、佐助が目を細める。もっと欲しいと言うかわりに、首に腕を回して頭を抱きかかえるようにした。
「んっ、ん――片倉の旦那ぁあ」
「どうした」
「んぅう」
 首を伸ばして舌を伸ばしてくる。それを舌で絡めて口内に引き入れ吸うと、小さく背中を震わせた佐助の瞳が濡れる。全身で擦りよってくる体をあやすように、背中を撫でてやりながら素肌に触れる。もどかしそうに体を揺らす佐助の手が、小十郎の着物を脱がし、何かを確かめるように体を撫でてきた。
「――――なんだ」
「ん。目立った傷は増えてないようだなぁって」
「猿飛も――」
「はっ、ぁ」
「増えていないようだな」
「んぅうっ――――は、ぁ」
 掌で腰から背中、胸を撫で上げると恍惚とした顔で佐助がほほ笑む。
「あぁ、ダメ――俺様が本当に狐だったら、しっぽ振ってそう」
「しっぽの代わりが、嬉しいって言ってきているだろう」
「ふぁ――――変態っ」
 小十郎の掌が佐助の牡を包み、腫れものを触るように撫でる。淡い刺激に痙攣しながら、寝具の上で佐助の足が泳ぐ。
「違ったか」
「ふ、ぅうん――――違わないっ、けど…………言い方が、なんか――は、ぁ」
「なんだ、気に食わないか」
「ひゃ、ぅん」
 くすくす笑いながら、小十郎が唇を佐助の胸に落とす。
「ここも、サンザシの実のようじゃねぇか」
「ふぁあっ、も――――そんなことばっか……おやじくさ、ぁくぅうん」
 舌先で転がされ、吸われて細く高い悲鳴を上げる佐助が、小十郎の肩を叩く。
「もぉ、そんな触れかたっ……ぁ、足りないってわかって――は、あぁ……」
 きゅっと胸に歯を立てられ、牡の先を潰されて顎をのけぞらせる佐助が、思いきり小十郎の頭を叩いた。
「っ――――何だ」
「すっごい、意地が悪いよ。こんな――――久しぶりだってのに、こんなやり方」
「だから、だろう」
「へっ」
「猿飛が、正体を無くすくれぇに乱れるところが見てぇんだよ」
「ばっ――何…………っ、もぉっ。そういう片倉の旦那だって、こんなにしてんのにっ」
「うっ」
 佐助の手が、小十郎の牡を握り締める。そこは、十二分に熱くそそり勃っていた。
「こんなになってんのに、冷静でいられるってんだから大した人だよね、ほんと。尊敬しちゃうよ俺様っ」
「あ、おいっ猿飛―――くっ」
 佐助の腕が小十郎の腕を絡めて体を入れ替える。彼の上に覆いかぶさった佐助が、ぱくりと小十郎の牡を咥えた。
「んっ、ふ――むぅ、んっ」
 わざと音を立てて口淫を始める。頭を動かし、口腔すべてを使って愛撫しながら自らの牡を弄り、あふれた液を奥まった場所へ塗りながら広げる佐助の姿に、小十郎は喉を鳴らした。
「ぁんっ、じゅ――ぅぐ、む、ぅう……も、そんな暴れないでよ――口からはみ出るっ」
「――はっ、ぁ……猿飛」
「んぅう――すっごい、その声……もっと、ねぇ――聞かせてよ、片倉の旦那のヤラシイ声」
「猿飛、尻を、こっちに持ってこい……」
「えぇ、それしたら、俺様――――うぅん、まぁいいか」
 佐助が小十郎の顔をまたぎ、口淫を再開しながら小十郎の眼前で自慰をする。強張る牡から溢れるものが小十郎の頬に落ちる。それをぬぐい、小十郎の舌が牡の先端に伸びた。
「んはぁああ――――」
 うっとりとした叫びをあげた佐助の口内から、牡が飛び出て頬を打つ。それに頬ずりしながら赤子が乳を求めるように袋を吸うと、小十郎の口から熱い息が漏れた。それに返礼をするかのように、小十郎が愛撫を返す。
「んっ、は、ぁあ――ダメ、だって……そんっ、ぁ――俺様がっ、できな――はっ、ぁあん」
「こんぐれぇで、根をあげるのか」
「だってっ、んんっ、や、そこっ――はぅう」
 小十郎が舌を佐助の奥まった場所に伸ばし深い口づけをしながら、手のひらで袋ごと牡を捏ねまわす。太ももを戦慄かせながら、必至に耐えて小十郎に愛撫をと思いつつ、かなわぬ佐助が太ももにしがみつきながら啼き続ける。
「んひっ、ぃいん」
 小十郎の指が狭い菊花を広げ、ほぐしていく。収縮する内壁が、痙攣を続ける牡と同じ旋律を刻む。
「いやらしいな――猿飛…………爛れたように赤く熟れてやがる」
「はっ、ぁあ――ほんとっ、変態……ぁんぅううっ――も、ぁ、や――ダメだって、ダメっ、や、は――あぁああああ」
 佐助の内部を探る指が鉤状になり、一点を強く掻いた瞬間、全身を瘧のように震わせて欲まみれの笑みを浮かべた佐助がすべてを放つ。噴き出す蜜が自分の顔に、首に、胸に散る姿に獣の笑みを浮かべながら、小十郎は内壁を暴く指の動きを強くした。
「ひぅ――や、ダメっ……だって、も、それダメ――あぁっ、お、おかしくなるっ……はっ、あぁああ、くふぅう」
「なっちまえば、いいだろう――正体無くす姿が見てぇと、言ったはずだが」
「だ、だからって、こんっ――こっ、んぅうっ」
 いやいやと首を振る佐助を容赦なく追い立てる。放ったばかりの牡はすぐに膨れ上がり、蜜をあふれさせ始めた。
「はっ、ぁあ――ダメっ、尻だけで……こんっ、や、ぁあ――も、あっ、あぁんっ、んぁあああああ――――」
 再び、佐助が絶頂を迎える。それを手助けするように牡を掴み、絞り上げると腰を揺らしながら快楽を追いかけてくる。すべてを吐きだし終えた佐助の体が弛緩したのを確認して抱き起し、呆ける瞼に口づけてから膝に座らせた。
「ふぅ、ん――かたくらの、だんなぁあ」
 ぼんやりとした呼びかけに軽い口づけで返事をした後、足を広げさせて十分に熟れた奥の果実に牡を突き立てた。
「ひぎっ――ぁああぁああああっ」
 のけぞり、遠吠えをする佐助を傷つけないよう深く沈めていく。弛緩していた体に力がこもり、躍動する内壁が小十郎の牡を甘く絞めつけ、最奥へといざなう。
「ぁ――は、猿飛っ……そんなに、欲しかったのか――ずいぶんと、歓迎をしてくれるじゃねぇか」
「ぁ、だからそんな――おやじくさいことっ……は、ぁあふぅ」
「からみついて、絞り取ろうとしてきやがるっ、く――ぅ」
「ぁあ、もっと、もっと――片倉のっ、だんなぁ」
 駄々をこねる子どものように、佐助が首にしがみついて顔を無茶苦茶に擦り寄せながら腰を揺らす。耳朶に、首に、髪に口づけながら抱えた体を揺らし、腰を回してそれに応えた。
「んぁあ――はっ、ぁ……ぅんんっ、ひぁあ」
「ふっ、ふ――くっ、すげぇな……気をすぐに、やっちまいそうなくれぇ――」
「あぁ――んぅ、もっと、ぁ、早くっ――熱いの、ぁあ」
 髪を振り乱し、佐助が求める。全身で小十郎がほしいと訴える。それに応えるように小十郎は速度を早め、佐助を満たす。
「あっ、はぁああ――あぁあ、く、ふぅうっ、はっ、ぁ、も――――ぁんっ、あぁああっ、く、ふぅぁあああっ」
「んっ、く――ぅ……はっ、はぁ―――ふっ、んっ――くぅっ」
 どっと熱いものが佐助の中に注がれる。きゅうと内壁でそれを絞りあげ、すべてを飲み干しながら三度目の絶頂を、佐助は迎えた。
「は――ぁ、あ……も、ダメ俺様――――」
 くたりと体を小十郎に預けて佐助が呟く。月光のような笑みを浮かべた小十郎が、佐助から自分を抜き、そっと横に寝かせて抱きしめた。
「ゆっくり眠ればいい――ここなら、気を張る必要も無ぇだろう」
「ん。ごめんねぇ、片倉の旦那ぁ」
「何がだ」
「もっと、相手できたらいいんだろうけどさ――ちょっと、無理そう」
「気にするな」
 優しく髪をかきあげて額に口づけると、もそもそと身を寄せてきた佐助の呼吸が眠りのそれに移行してゆく。それが完全に規則正しいものに変わると、小十郎もゆっくりと瞼を閉じ、眠りの淵に意識を向ける。
 日が昇り、小十郎が瞼を上げると、枕もとにはサンザシの枝が置かれてあった。
「まったく――――」
 それを手に取り、ほほ笑む小十郎の胸に飄々とした緑の風が吹く。
 
 
 ―了―
2010/08/28



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