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――しよ、旦那
 月光の中、真田幸村の瞼が、ぱ、と上がった。
 らんらんと輝くそれは、獲物を求める獣のように闇に浮かんでいる。
 はぁ――と、息が漏れた。
(高ぶっている)
 肌が、熱を帯びている。血が、湧いていた。
(先の戦――)
 高ぶりを放てぬまま、帰還となった。
(眠れぬ)
 身を起すと、さらりと掛け布が落ちる。それがたまったところが、凝っていた。
(嗚呼)
 猛りが、命の種を生み出したらしい。
(どうするか)
 収まるまで、静かに心を落ち着かせることは、今の自分にはできそうにない。
(気が引けるが)
 処理をするしかないだろう。
(情けない)
 そう思いながら帯に手をかけると
「旦那」
 闇の中に声が浮かんだ。
「佐助か」
「俺様だけど――そうやって、最初から警戒をしないってのは、どうかと思うよ」
「佐助が居るのに、不審な者が入り込めるわけが、なかろう」
 おまえは優秀なのだから、と言われ「まぁね」と軽い調子で応えた佐助が、月明かりの中に姿を現す。
 小袖姿の彼に
「どうした」
 首をかしげた。
 佐助の唇に浮かぶ笑みが艶やすぎる。ふうわりと舞うように傍に来た彼の気配が、甘く薫った。
「さ、すけ?」
「旦那のあの様子じゃあ、治まらないだろうな、と思ってさ」
 そ、と佐助の手が幸村の股間に触れた。
「なっ」
「ほら、やっぱり」
 くすくす、と佐助が幸村の鼻先に顔を近づける。
「このままだと、痛むでしょ」
「う、ぅう」
 目じりを朱に染め、視線を逸らした幸村に
「旦那、かわいい」
 ささやき、頭を落として猛るものを取り出し、食んだ。
「んっ――」
「はぁ、んっ、ん、ちゅ……こんなにして――すごい、熱い」
「ぁ、佐助――ふ、ぅ」
「はぁ……旦那ぁ」
 うっとりと、佐助の舌が幸村に絡み付く。時折、見せつけるようにしてくる瞳が、淫らに光った。
「佐助――」
「旦那の味、すごい……久しぶり」
 言いながら帯を解いた佐助が、自分の尻を開いた。
「なっ」
「俺様も、すごい――猛ってんの、ぁ」
 吐息交じりの声に、佐助の肩を乱暴に掴み起し、そのまま押し倒してかぶさった。
「あ――」
 ぞく、と佐助の背が震える。獲物を捕らえた幸村の瞳に、淫蕩に酔い始めた自分の顔が映っていた。
「佐助」
「うん――しよ、旦那」
 両手を伸ばし、幸村の首に絡み付く。唇が下りて、重なった。
「ん――ん、は、んっ、んんっ」
 角度を変えて重なる唇は、舌も使い深く深く、互いの呼気を相手に沈める。
「ふぁ、ん」
 幸村の指が、佐助の薄い――けれど締まった胸を這い、尖りを捕らえた。
「ふっ、んっ、ん、ぁ、だんなぁ」
 甘える声に笑みを浮かべると、拗ねた顔で
「うっ――」
 股間を握られた。
「旦那――ね?」
「まだ、慣らしておらぬだろう」
 ふふん、と佐助が鼻を鳴らす。
「今すぐにでも、ぶちこみたいくせに」
「は、はしたないことを申すな」
「違うの?」
 かわいらしく首を傾げられ
「――違わぬ」
 拗ねたように、答えた。
「俺様も、旦那が欲しくてたまんない」
 だから、と耳元でささやかれる。
「いいよ」
 佐助の手が、幸村の牡を菊花に添えた。
「ほら」
 ひく、と動いた入口が、幸村の先端に招くように触れて動く。
「なれど――」
 佐助の体を気遣う幸村の腰に足をからめ
「ふぅ、んっ、んん――ッ」
「ぁ、くぅ」
 腰を浮かせて飲み込んだ。
「ぁは――すご、熱い」
「さ、佐助っ」
「だぁいじょうぶ、んっ」
 あわてる幸村に全身で絡み付く佐助は、息苦しそうではあるが痛みは浮かんでおらず
「旦那が猛って、どうしようもない顔しながら帰還してたろ」
「そんな顔を、していたか」
「うん――すごく、そそられた」
 かぷ、と耳を噛まれた。
「ずっと、ご無沙汰だったから――あの目で、その熱で、俺様を蹂躙してほしいなぁ、なんて思ってさ」
 熱い吐息が、耳に沈む。
「気持ちを散らそうかと思ったんだけど、旦那の目が、熱がよみがえって」
 ちろ、と外耳に舌が這った。
「おさまんなくて」
 きゅう、と幸村を呑んだ肉が絡み
「一人でしたら、よけいに切なくなって」
 ごくり、と幸村の喉が鳴った。
「一人、で……?」
「うん、したら……よけい、たまんなくなって」
 だから、ちょうだい――と甘い声が幸村の脳に染み込んだ。
「ッ!」
「ぁはっ――ぁ、んぁああっ、だんっ、ぁ、はぁああ」
 佐助の足を抱え上げ、ガツガツと乱暴に突き上げる。自分で解したらしい佐助の肉は、雄々しさを包み込み、絡み、強請るように蠢いて
「ぁあ、も、ぁ、だんなっ、ぁあ、すご、ぁ――熱いッ」
「ふっ、ふ、さ、すけっ、く、ぅう」
 意識を白ませ、理性を剥ぎ取り、本能のままに幸村を突き動かす。
「あぁああっ、いいっ、ぁはっ、だんっ、ぁ、は、も、ぁ――おくっ、ぁ、ぜんぶっ、ちょぉだい――ッ、旦那のっ、旦那の子種ッ、ぁ、呑ませてッ」
「ふっ、佐助ッ、んっ、ふ――くっ、う、はっ、は――く、ぅああっ」
「ひっ、ぃあぁああああッ」
 どぷ、と湧き出たものが牡の届かぬ奥へ熱を進ませ
「あはぁ――旦那ぁ、は、ぁああ」
 うっとりと、佐助を淫悦に浸らせた。
「ふぅ――ふ」
「んっ、ぁ」
 すべてを飲み干そうと、幸村に絡み付く肉壁が、放ち終えた彼を逃すまいと絞り上げ
「もっと――ね、いいだろ」
 甘えた仕草に愛おしさと
「旦那ぁ」
 ぬらぬらと光る唇と淫猥な瞳に囚われ
「佐助」
「ぅんっ」
 互いの乳をこねくりあい、唇を重ね、戯れるように抜き差しながら
「だんなぁ」
「ん、佐助」
 甘えた声をからめ、やがて獣の動きとなり、外が白むころまで絡まりあった。

 身支度を整える佐助の背を、横になったまま幸村が眺める。
「何? 旦那」
「ん――いや」
 目を逸らされ、首をかしげた。
「どうしたのさ」
「いや、その――なんだ」
 歯切れの悪い幸村が、佐助に何か言いたいことがあることは明白で
「なぁに」
 にじりよった佐助が顔を覗き込むと、ぱ、と頬を赤らめて背を向けられた。
「もう、かわいいなぁ」
 くすくす笑う佐助に、不機嫌な気配が幸村から上る。
「あ、拗ねちゃった? もう、子どもだなぁ旦那は」
 くしゃ、と柔らかな茶色の髪に触れると、手首を掴まれた。
「子どもじみたことと、笑うなよ」
「言ってくれなきゃ、笑うこともできないけど」
 しばし、逡巡の間があって
「朝餉の時間まで、添い臥せ」
 きょとん、と目を瞬かせた佐助が
「もう、弁丸様は甘えたなんだから」
 弾んだ声で彼を幼名で呼び、甘やかすように甘えた手つきで彼を抱きしめ横になった。
「佐助」
「ん?」
 ちゅ、と軽く唇を重ねられ、照れくささに拗ねた顔になる主の額に唇を寄せる。
「もう、かっこいいのか、可愛いのか。どっちかにしてよね」
 俺様の心臓が、もたないから――という佐助に、それはこちらのセリフだと幸村が返し、額を重ねて笑いあい、唇を重ね、瞼をおろし、穏やかな微睡に身を投じた。

2012/04/24



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