突然の雨に降られ、伊達政宗と片倉小十郎は、遠駆けの馬を近くの社の軒先へ着けた。「とんでもねぇな」 何の前触れもなく湧き上がった雨雲は、みるみるうちに頭上へ広がり、樽をぶちわったような大雨を二人の上に降らせた。「まったく。雨をしのげる場所があって、幸いでした」 小十郎が空を見上げる。真っ黒に塗りつぶされた空からは、大粒の雨が間断なく降り注ぐ。屋根に当る音が重く、視界は雨に遮られて一寸先すらもわからない。(まずいな) 心中で呟き、小十郎は眉根を寄せた。この足音では、大人数が迫って来たとしても気付くのが遅くなるだろう。奥州を統べる竜とその右目が、遠駆けの軽装で小さな社に身を寄せていると知れば、剣呑なことを考えている連中には都合がいい。(早く、止んでくれればいいが) もし双竜が無防備であると知り、首を取ろうと思う輩がいるのであれば、その連中がここに来る前に屋敷に戻らなければならない。自領とはいえ、戦国の世では油断は出来ない。「小十郎。中に入って休もうぜ」 蝶番の甲高い音と共に、政宗の声が小十郎の耳に届く。「お待ちください、政宗様。先に私が内部を見てから」「It is a worrywart問題ねェよ」「あっ、政宗様!」 小十郎の言葉を遮り、政宗が社の中に入る。慌てて追いかけた小十郎が、はっと息をのんだ。 社の中には、鬼神の像があった。その前に小さな祭壇があり、榊と瓶子が置かれている。左右に太い蝋燭があり、政宗は火打石を見つけて明かりをともした。「It is a scary face」 ろうそくの揺らめく明かりに照らされた鬼神の顔は、怒りとも嘆きともつかない表情を浮かべている。雨音を締め出すように、小十郎が社の扉を閉めた。 小十郎と政宗が座るのでやっとの広さの社は、手入れが行き届いていた。埃ひとつ落ちていない。供えられた榊は青々としており、銚子から立ち上る酒の香りも豊潤で、先ほど供えられたばかりとしか思えなかった。「こんなところに、鬼神の社があるなんざ、聞いたことが無かったがな」「おそらく、近くの里の者の隠れ社ではないでしょうか」 飢饉で命を落としたり、口減らしで命を奪わなければならなかった相手の魂を、鬼神によって供養する。そういう場ではないかと、小十郎は判じた。「Fum――おっと」「政宗様っ!」 政宗の刀が、こつんと瓶子に触れた。ぐらりと揺れたそれが神棚から落ち、小十郎が慌てて手を差し出す。けれど瓶子は床に落ち、涼やかな音を立てて砕けた。 社の中に、酒の匂いが充満する。「お怪我はありませんか」「Ah、問題ねぇよ。しかし、派手に割っちまったな」 酒は、なみなみと入っていたらしい。雨に濡れた衣に、酒の匂いが滲みついた。「政宗様。とりあえず、御召し物をかわかさねばなりません。このような所で裸身になるは不用心かと存じますが、風邪を召されてはなりません」「Ah、そうだな。小十郎も、脱げばいい」 帯を解き、下帯姿となって着物と袴を叩く。どこかに吊るしておきたいところだが、かけられそうな場所は鬼神の像くらいしかない。「さて、どうしようか」 見回すほどの広さもないが、見落としがあるかもしれないと政宗が首をめぐらせる。すると「っ!」 着物と袴が浮き上がり、鬼神の像の腕にかかった。「どういう、ことだ」「政宗様」 背中を合わせ、周囲を警戒する。下帯姿で刀を携え、腰を落とす双竜の鼻に、獣の匂いが触れた。「なんなんだ」 忌々しそうにつぶやく政宗の目に、静かに意識を研ぎ澄ませる小十郎の目に、ろうそくの明かり以外の動くものは映らない。「いったん、外に出るとするか」「承知」 囁きかわし、共に扉へ向かう頃合いを計った瞬間「うぐっ」 圧縮した空気が、二人の口内に差しこまれた。「お、ぐ――ぅうっ」 次いで、手足を何かに捕まれる。引き倒され、刀を奪われ、下帯すらも奪われて「ぐっ、ぅ……こじゅっ、ろ」「ま、さむね――さまっ」 二人の体は、背後から逞しい何かに抱き上げられ、子どもに小水を促すような形で持ち上げられた。「What is going on?」 口内にあった空気の塊が消えている。「わかりません――くっ」 肉の筋が浮き上がるほど力を込めても、見えぬ何かに押さえつけられた体は、びくともしなかった。「物の怪の類ってぇところか」 そこで、はっと小十郎は思い出した。「政宗様、もしやこれは鬼神の供物とみなされたのではありますまいか」「鬼神の供物だと」「鬼に贄を捧げ、飢饉や病魔を遠ざけるという習わしを、聞いたことがございます」「備えの酒をひっかぶった俺たちが、供物とみなされたってことか。竜が鬼の供物になるなんじゃ、シャレになんねぇな――っ!」「政宗様……ぅ」 二人の体に、生臭い粘着質のある液体がぽたりぽたりと落ちてくる。それは、精の道のついている男にはなじみの匂いをしていた。「おいおい……冗談じゃねぇ」 政宗の頬がひきつる。「こんな、ことが――」 二人の肌身に落ちてくるのは、間違いなく男の子種としか思われなかった。「ヒッ」「ァアッ」 突然に、下肢に刺激が走る。見えぬ者が、二人の牡に触れて弄り始めたのだ。「んっ、ふ」「く、ぅう」 ごつごつとした空気の塊が、茂みを探り先端を絞り、傘の括れを刺激する。またたくまに、二人の牡は頭をもたげて先走りをこぼし始めた。「ぁ、は――こんなっ、ぁ、あ。小十郎」「ふっ、ぁ、政宗様っ」 身を捩ろうとしても、強い力がそれを遮る。見えぬ者に上らされるままに「はっ、ぁ、ああ」「くっ、ぅ、うううっ」 双竜は昇らされ、互いの腹に欲液を吹きかけあった。「はぁっ、は、ぁ」「んっ、ふ、申し訳ありません」「謝るんじゃねぇよ――そんなことより、この状況をなんとかしね……っ、と、ぁ、あ」「政宗様っ!」 小十郎の目の前で、政宗の秘孔がゆっくりと押し広げられる。どこからか湧き出た生臭い液体が、政宗の秘孔に流れ落ちていくのが見えた。「政宗様っ、政宗さ――ぅ」 小十郎の菊花が何かに割り広げられ、ぬるりと温かなものを塗り付けられる。とめどなく中空から湧き出てくるそれは、政宗の秘孔を淫窟へと変え、小十郎の花を熟れた果実へと変貌させた。「ぁ、はっ、ぁあっこじゅ、ろ……すげ、ぁ、こじゅ、の孔……っ、真っ赤にめくれて、広がって」「んっ、政宗様――そのような、ぁ、見ている場合ではっ……はっ、ぁ、政宗様こそ、淫猥に蠢いて、妖しげな液を注がれる傍から、ぁ……溢れさせておられます」 二人の淫孔は、女のそれのように濡れそぼり、注がれる鬼の子種を受け止めきれずに床に落としていた。「はっ、ぁ、ああ――く、こうなりゃあ、覚悟を決めるしかねぇぜっ、小十郎」「覚悟、とは」「決まってんだろ……逃れられそうにねぇんなら、さっさと鬼を満足させちまうほかはねぇ」 豪放に笑った政宗に、小十郎が目を見開く。「竜が、鬼に食われるかよ」 にやりとした政宗に、小十郎も腹を決めた。「無駄に抗うよりは、受け止めた方がよろしいと、そういうことですな」「It is such a thing――なら、楽しむ方が得だろう。おい、鬼神。この竜を供物と選んだことを、後悔させてやるぜ。逆にこっちが、アンタらを喰らい尽くしてやる」 政宗の言葉に答えるように、複数の気配が揺らめいた。「ひぐっ、ぅ、うう」「政宗様っ! ぁ、が、あぁああううっ」 ぐ、と政宗の秘孔が大きく広がる。見えぬ何かを受け止め揺さぶられる政宗の内壁の蠕動が、ろうそくの明かりで照らされ小十郎の目に見えた。その瞬間、小十郎の内部に、ずんと重いものが突き立てられる。体内の空気を押し出されるような圧迫に、小十郎が呻いた。「ぁはっ、あ、ひっ、が、ぁう、で、けぇ……はっ、こじゅっ、ぁ、すげ……アンタの尻孔っ、なんかに広げられて擦られてんのがっ……見えるっ、ぁ」 ぞくぞくと小十郎の乱される姿に腰に甘い痺れを走らせた政宗に「政宗様もっ、は、大きなイチモツを……っ、のまされていらっしゃ――ぁぐ、はっ、ぁあっ」「はっ、ぁ、こじゅ、ろぉ」「まさ、むねさまぁ」 二人の顔が近づけられ、互いが舌を伸ばして絡め、口を吸う。腕を介抱され、互いの首に腕を巻き付けて唇を貪れば「は、ぁんっ、ひぁあっ」「おふっ、ぁはぁおおおっ」 反り返った空気の塊が、乱暴に二人を突き上げた。「はぁっ、おくっ、ぁあ、でけぇっ、は……小十郎のっ、ぁ、ちくびっ、すげ……ぐにぐに、うねって、ぁ、はあ」「んんっ、政宗様ッ、は、政宗様の御胸もっ、ぁあ、何かに押しつぶされて、は、捏ねられておられ――っ、ひ」 見えぬ手が、双竜の肌を蹂躙し子種をまき散らす。鬼の子種を全身に浴び続けながら、竜も子種を吹き上げた。「はっ、ぁ、はぁあっ――ぁ、は、すげ、ぁ、こじゅっ、びゅくびゅくっ、ぁ……んっ、やめっ、あ、待てっ、達ったばっかで、ぁ、そんっ、擦っ……ひ、くうぅん」「ああぁああっ――はっ、ひぐっ、ぉふっ、政宗様こそっ、ぁあ、ぶるぶる震えて……はっ、ぁ、やめっ、ぁ、蜜口をいじるんじゃっ、ぁ、ひぎぃいっ」 政宗の放ったばかりの牡が扱かれ、小十郎の蜜口が見えぬ何かにふさがれ精の道を乱される。「はぁ、すげっ、あ、小十郎のっ……は、前も、ぁ、広がって……はっ、ぁひっ、ひぐっ……ぉ、おおうっ」「政宗様もっ、ぁ、同じく……っ、ひ、ひぎぃ、ぁううっ、ぐっ」 互いの痴態を確認しながら複数の見えぬ鬼に乱される。それらに心に闇を浮かべれば喰われると、双竜は互いの姿に意識を向けて、陰気に飲まれぬように努めた。「ぁあっは、こじゅっ、ぁ、すげ……俺のナカっ、ぁ、も……呑みきれねぇのにっ、ぁ、鬼の子種がっ、ぁ、いっぱ、ぁ、そそがれて……はっ、ぁあ」「んっ、ふ……床に、ぁあ、こぼれているのが見えておりますっ、ぁあ、政宗様っ、この小十郎もっ、ぁ、広げられ……っ、う、疼いてたまらぬのをっ、ぁあっ、太いのでっ、ぁ、ふとっ、ぁああっ ふとぃいいいっ」「ぁひっ、ひぃい、こじゅっ、ぁ、らめぁ、も、ぁあ、達くっ、ぁ、達きてぇのにっ、あ、塞がれてっ、ひっ、ひぃいい」「政宗様っ、政宗様――っ、私も、同じっ、ぁ、おなっ、おっ、おふぅううっ」 雨に隔絶された薄暗く狭い社の中で、鬼と竜の精液が絡み合い充満し、地獄のような淫蕩の極楽を作り上げる。体中あますところなく欲液に濡れそぼり、秘孔が塞がるいとまも無いほどに鬼に乱され突き上げられて、竜の意識が白く塗りつぶされていく。「はひっ、ぁあ、こじゅうぅうっ、もぉ、ぁ、らめぁ、いいっ、きもちぃっ、ぁあ、とまんねぇ、とまんねぇよぉお」「んぁあっ、まひゃむれしゃまっ、ぁあ、こじゅっ、もぉ……らめっ、ぁ、おくぅうっ、あつっ、あつくっ、とけっ、とけるっ、とけてしまぁあああっ」 見えぬ鬼の蹂姦は、雨が降りやむまで続いた。「う――」 いつの間にか、眠ってしまっていたらしい。身を起こした政宗は、ぼんやりとした頭を振って意識を整え、自分の体を改めた。「んっ……政宗様」「小十郎」 身を起こした小十郎が、頭を片手で押さえながら政宗に目を向ける。「妙な、夢を見ていたようにございます」 二人は、一糸乱れぬ姿のまま床に横になっていた。鬼神の像に着物はかかっておらず、瓶子は倒れてはいなかった。獣の匂いも、精の香りも無い。「鬼に犯される夢だとか、いわねぇだろうな」 政宗の言葉に、小十郎が目を丸くした。「案外、夢じゃねぇのかもしれないぜ」 立ち上がって伸びをした政宗が、扉を開いた。地面がぬかるんでいなければ、雨が降ったとは思えぬほどの青空が広がっている。「何故、夢では無いと思われるのですか」「なんとなく、な。――身の奥から、何か得体のしれねぇ力が、湧き上がってくるような気がしてんだよ」 小十郎が息をのむ。自分も、同じように感じていた。「ま、どっちでもかまわねぇがな」 言った政宗が、意地の悪い顔を小十郎に向けた。「乱される小十郎は、最高だったぜ」「なっ――」 喉の奥で笑う政宗に「政宗様こそ。あれほどに淫らになられるとは、思いもよりませんでした」「Ha――魅せられすぎて、夢に見るんじゃねぇか」 軽口を叩いた政宗が馬の傍に寄る。小十郎も社を出て、扉を閉めた。「帰ろうぜ、小十郎」「ええ。帰りましょう」 馬にまたがり、二人はゆっくりと社から遠ざかっていく。 社の扉がわずかに開き、榊の葉が舞い出て双方の馬の尻に憑りついた。 2013/04/23