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鬼宿

 簡素な神棚がしつらえられている部屋に、幸村はたたずんでいた。旅の途中、立ち寄った集落で借り受けた宿だ。野営でも構わないという幸村に、彼のことを任されたという若き侍は
「泊まれる家屋があるのに、幸村様に野営をさせるなど」
 と言って聞かず、村で一番立派な建物を、と集落の者たちが首を横に振るのを強引に押し通し、どうなっても知らないぞという言葉つきで、お堂の中に藁を敷き、布を被せて柔らかな寝床をしつらえさせた。
「鬼が休むところだで、供物にされても知らねぞ」
 ちら、と幸村に目を向けてから去った男が、強引にここを貸すように言った若い侍に吐き棄てる。
「紅蓮の鬼と謳われる幸村様だ。鬼のほうが逃げ出すに決まっている」
 去った背中に吐き捨て返し、ごゆるりとお休み為されませと幸村に頭を下げてから彼は辞した。
 残された幸村は神棚を眺め、その下にある干し肉など神事には向かない供え物を見つめ、村民らと同じように押し切られた形で与えられた寝床に横になる。
 柔らかな藁に包まれ、思ったよりも披露をしていたらしい体はすぐに眠りを貪った。
 どれくらい眠っていたのか。ふ、とむせるような気配を感じて意識が浮上する。目を開けるも、何の姿も見えない。が、複数の気配は動いている。濃密な気配に身動きが取れぬまま、幸村は鬼が来るという村民の言葉を思い出した。
――この尋常ならざりし気配は、まさしく鬼と呼ぶにふさわしい。
 けれど、不快さも禍々しさも感じない。ただ重厚な気配が部屋を満たしている。
 意識するまでもなく息を殺していた幸村が、気配を肌で追う。彼らは神棚に供えてあるものを手に取り、床に下ろし、座して、幸村に気が付いた。
 生臭い気配が、ふいに顔にかかる。そわそわとした空気が漂う。惑う気配に、幸村は押しつぶされそうな濃い気配を押し上げるように身を起こした。
「申し訳ござらぬ。某は、真田幸村。旅の途中、この集落に立ち寄り宿を願い出た者。貴殿らが参られると聞いており申したが、邪魔をする気は毛頭ござらぬ。どうぞ、常のように供えられしものを召し上がられよ」
 きちんと座して神棚へ語りかける幸村に、いつくかの視線が絡む。けれど、月光に浮かび上がる空間には何の姿も見えない。ふっ、と濃密な空気が動いたように見えた、と感じた目の前に、銚子が差し出されていた。小さな気配が目の前で凝っている。どうやら共に酒宴を、と誘われているらしい。
「これは、かたじけのうござる」
 断っては失礼と微笑んだ幸村の口に、銚子があてがわれた。そのまま注ぎ込まれる。
「んっ、ふ――」
 芳香が鼻に抜け、甘いものが喉を満たす。注がれるままに全てを飲干した幸村の前で、小さな気配は残りを傾ける。液体が銚子の口に見えたと思う側から消えていくのを、幸村は目を細めて眺めた。
「姿を拝見することは出来ませぬが、こうして酒を酌み交わすことが出来るとは、なんとも不思議にござるな」
 ふわり、と心臓が柔らかく跳ねたかと思うと、めまいがした。酔いが回るには少し早いような気がしながら、ふうと息をつく。
 つ、と首筋に空気の厚みを感じた。自分に酒をふるまったものよりもずっと大きな――敬愛する信玄ほどもありそうな気配が、寄り添っている。
「や、これは――心配をかけてしまい、申し訳御座らぬ」
 するりと指のようなものが首を撫で、幸村は大きく身を震わせた。
――なんだ……まるで、直に体の芯に触れられたような。
 意図せず、熱い息の塊が口から吐き出される。開いた口に、何かが侵入し、閉じることを禁じてきた。
「ふっ、ん、むっ――ぁ」
 背骨の中を毛虫か蛇が這い回っているような感覚が立ち上る。不快だと言い捨てられないそれは、妖しげな疼きを幸村の下肢にもたらした。
「んっ、ふ、ふんっ、ん」
 抗おうにも、みっしりとした気配が身を覆い動きが取れない。口内に差し込まれている何かは、たとえるなら人の指だろうか。数本がまさぐり、幸村の唾液を掬い、舌に絡めて遊んでいる。
「ふんっ、んっ、お、おやめっ、くらふぁれっ」
 閉じられない口で声を発するが、気配は応じる様子が無い。するりと幸村の着衣が奪われ、立ち上がりかけている男の印が露わになった。
「んふぅ、んっ、んぐっ」
 口内のものの質量が変わる。髪をつかまれ、ガツガツと喉の奥に突きたてられる。息苦しさに涙が滲むのに、下肢の疼きは強くなる。
「ふっ、んふっ、んは、む、ぅうう、ぐっ」
 空気の塊が幸村の動きを封じた。飲み込みきれない唾液が顎を伝い、首筋を這う。どうして、と思った瞬間、気の塊が喉の奥に吹き付けられた。
「ふぐぅうううっ」
 弾けたそれは、幸村の体内に染み込み広がる。乾いた土に染み込むように幸村に浸透したそれは、脳髄を甘く満たした。
「ぁ、ああ――」
 体が、内側からしっとりと熱く濡れたものに包まれる。自分で自分をもてあます浮遊感に、幸村は形に成らない声を発した。
「ふ、ぁああ」
 するりと肌の上を何かが這う。触れられた箇所だけでなく、全ての肌が戦慄く。もっと、と欲する衝動が自分の意識を飛び越えて溢れた。
「ふぅ、んっ、ぁ、ああっ、あ、ぁああ」
 複数の何かが背を、肩を、腕を、腹を、胸を、足を撫で回す。幾万の羽が肌を撫で回しているようなもどかしさに、身じろぎすら出来ない体で幸村は身悶えた。
「は、んぁ、ああっ、ひ、ひぃい」
 きゅり、と乳首をつままれて高く細い悲鳴が漏れる。鋭い刺激に、村民の言葉が閃いた。
――供物にされても知らねぞ。
 その言葉通りであるなら、自分はこのまま喰われてしまうのか。
「んっ、はぁ、ぉ、く、ぅううっ」
 困る、と渾身の力をこめて逃れようとした瞬間、ズッと双丘の奥に咲く花弁が開かれた。
「ふっ、は、ぁああっ」
 思わず、仰け反る。傷がつくほどの太さではないが、うねうねとした空気の塊が虫が這い上がるような動きで進んでいく。
「は、ぁう、ぉお――く、はんぁあ」
 声を抑えようとしても、体に充満している何かが芯を溶かして力を奪う。変わりに、沸き起こる熱が唇を突き破って声になった。
「し、しりぃ、ぁ――お、おやめ、くだされぇえっ、ひ、ぁ……おくっ、おくぅうっ、そん、ぁ、はぅうう」
 小さな針が、あらゆる欲のツボを圧して回る。触れられていない牡は強請るように震え、子種を垂らしはじめた。その根元に、子どもの手くらいのものが触れる。
「はっ、ぁ、やめっ、ぁ、あああっ」
 同じく、子どもの口くらいの何かが亀頭を包み、猫の子が親の乳を吸うように、根元を交互に揉み押しながら吸い始めた。
「はんっ、ぁ、ああっ、は、ぁふぅうっ、ん、はぁ」
 牡が喜びに震え、細長いものを飲み込んでいる内壁が蠢動いて見えない何かを締め付ける。すると、内壁に触れているものが変化をしはじめた。
「ふぁ、あ、ああ、そんっ、ぁ、そんなに、ふ、ふくらんで、は、ぁああ」
 空気の塊が熱で膨張するように、幸村の内壁を波打ちながら押し広げていく。やがてそれはいびつな形で膨張を止め、ゆっくりと上下しはじめた。
「ひはっ、は、ぁあっ、は、ぁ、あはっ、ぁ」
 体内の空気が押し出されるように、幸村の口から息が漏れる。びくんびくんと跳ねる先から零れる幸村の子種は、何かに吸い取られるように消えていく。
「ふぁ、あ、も、ぁあっ、は、ぁああ、うぁ、あ、ひはぁあああああっ」
 内壁を擦っていたものが、唐突に弾けた。熱い気の塊が幸村を突き上げ、魂を絡め取る。高く吼えた幸村が放ったものが、夜気に吸い込まれるように何かに飲干された。
「はっ、はぁ、あ……ぁ、あ、あつぅ、ござ、るぅう」
 荒く浅い呼吸の合間に、うわごとのように呟く。それに応えるように、気配の塊は幸村を持ち上げ、こんどは最初から太い空気の塊が彼を突き上げた。
「ひっ、はぁあああああああっ!」
「幸村様ッ!」
 叫ぶと、呼ばれた。幸村をここに寝かせろと言った若い侍が、扉を開けて呆然とする。
「は、ぁ、や、見る、な、ぁ」
 きゅう、と幸村の内壁が羞恥と自尊心で狭まり収められているものを締め付ける。それが気に入ったのか、気配は幸村の足を大きく広げ、若い侍に向けて臍まで反り返り、涎を垂らしている欲にまみれた彼の姿を見せ付けた。
「ぅ――」
 顔を背けた幸村を呆けた顔で見たまま、若い侍は後ろ手で扉を閉め、夢の中を進むような足取りで近づいてくる。
「ゆき、むら……さま」
「っ――ひはっ、ぁあ」
 顔を背けたまま奥歯を噛んだ幸村に、返事をしろと促したのか、乳首が強く引かれた。驚く若い侍の目の前で、何もないはずなのに幸村の乳首が伸び、くりくりと捏ねられている。
「はっ、ぁああっ、や、ぁあ」
 びくん、と幸村が太ももを震わせる。何かが触れているのか、戦慄く太ももの間で魔羅が子種を漏らしていた。それが、零れる途中で消えていく。まるで、何かに拭われたように――。
「こ、れは……ほ、本当に、鬼が――――」
「見、るな、ぁあうっ、ひ、ひんっ、や、ぁあ――はっ、はぁ、ああ」
 宙に浮いた幸村の体が上下に揺さぶられている。何も触れていないのに、幸村の尻穴が広がり、赤く熟れてめくれあがっていた。ごくり、と喉を鳴らした若い侍は、捏ねられていないほうの乳首におそるおそる指を伸ばし、強く抓ってみた。
「んひぃいいいっ!」
 途端に幸村の顎が仰け反り、ぷしっと子種が舞う。そうっと唇を寄せて鈴口に舌を這わせてみた。
「はっ、ぁあああああ」
 嬌声が幸村の喉から発せられるのに、若い侍は下卑た――猟奇的な笑みを浮かべた。
「幸村様、これは僥倖です」
「ぎょ、ぅこ……ぅ?」
「そう。僥倖です。鬼の気を注がれるなど、そうそうありますまい。強い気を注がれ――この四肢もお屋形様のごとき肉体になる近道となりましょう」
「は、ぁ、ああ、ぁ、ぁあ」
 わき腹をなぞられ、ぞくぞくと幸村の身が震える。内壁がひくつき、牡が震えた。
「鬼の方々も、今宵は存分に楽しみたいでしょう。どのようにすれば、より絞まるか――より乱れるか…………幸村様も、多くの鬼の強い気を注がれるにはどうすればいいか、お知りになりたいでしょう。その手伝いを、拙者にさせてくださりませ」
 胸に手を当て、うやうやしく頭を下げる若き侍が顔を上げると、瞳が猫目石のように変化し、額には瘤のようなものが盛り上がっていた。
「幸村様――どうぞ、自分に正直におなりになさいませ。体がどのようになっているのか、鬼の姿を見ることの出来ない某に、教えてくださいませ」
 耳朶に、とろりと言葉が注がれる。じん、と脳が痺れた。
「ぁ、あ――」
「さぁ」
 促され、ごくりと唾を飲み込み、寝言のように幸村の唇が言葉を紡ぐ。
「し、尻に――太い……ものが……ッあ、ふ」
 揺さぶられ、首を振る姿に目を細める。
「鬼の方々――穿たれると狂うツボというものが御座いますことは、存じておられますか?」
「ひっ、ぁ、は、ぁあっ、あ」
 それを探ろうとしているのか、幸村の体が左右に揺れる。
 ゆるくかぶりをふった若い侍は、失礼しますと幸村の足の間に膝を付き、見えない何かに広げられた穴に人差し指を突き入れた。
「がッ、はぁああああっ、ひ、ぁ、あぁ、ぅ、う」
 圧迫感に大きく口を開いて喘ぎ、逃れるように揺れる腰に唇を舐め、指は一点を掻いた。
「んはぁあああああっ」
 弓なりに体をしならせ、体中を痙攣させて勢いよく欲を噴出す幸村を、暗い笑みを浮かべた若い侍が見つめる。
「おわかりになったでしょう、鬼の方々。その一点を中心に、そう、そうです」
「はぁあっ、や、やめぁ、らめ、ぁ、あああっ、あひっ、ひぉおっ、くは、ぁあ」
 中空で幸村の体が踊る。放ったばかりの牡はすぐに膨らみ、子種があふれ出す。
「締め付けが甘いのであれば、放てなくすれば良いのです」
「ひぎぃいっ、ぁ、ぉおっ、おふぁ、ああっ」
 幸村の牡がくびれ、先端の小さな穴が広がるのに子種が溢れてこない。
「嗚呼、幸村様――鬼の姿が見えぬ拙者に、どうなっているのか、教えていただけますか」
 優しく頬を撫でると、涙の滲む瞳が彼を映した。
「魔羅、ぁあ、先、な、にかがっ、ぁ、ああ、は――ひふぅう」
「せき止められて、快楽が逆流しているのですね――そのまま、身を全て性欲に満たされ、ゆだねれば良いのです幸村様……もっと、快楽を貪れば良いのですよ」
 頬にあった手がすべり、胸の輪をなぞる。強い刺激と共に与えられるもどかしさに、幸村は全身で暴れた。
「んひっ、ァ、あはあぁあああっ、やめ、ぁ、も、あぁあっ」
「逃れたいのですか。それとも、より強い刺激を求められているのですか」
 唇を震わせながら、涙をこぼしながら、訴えるべき言葉を見つけられない幸村の姿に笑みを抑えることの出来ない男の手が、自分の衣服にかかる。ゆっくりとそれを落としながら、熱い息を吐いた。
「幸村様――鬼に堕ちかけている生成の子種も、受けてみませんか」
 男の牡がそそり立っている。その形容のいびつさに、幸村は息を呑んだ。複数の突起がついたそれが、自分にあてがわれる。逃げようと腰を引こうにも、見えない何かが自分を抱えている。
「嗚呼、幸村様――」
「やめ、ぁ、ひ、ひろがるっ、ぁ、ひろげてはっ、ぁ、あぁっ、ご、ごりごり、ぁ、ああっ、ひっ、ひふぅあぁああ」
 甘い声が快楽に震えている。満たされたような恍惚とした笑みを浮かべて、男は全てを埋め込んだ。
「なんとも、心地よいですな――幸村様」
「やめ、ぁ、ああっ、う、動いてはっ、う、うごっ、ぁああっ、ひ、ぁ、ひふぅうう」
 抑えきれないものに突き動かされ、髪を乱す幸村の体に鬼が絡み、肌がたわみ、朱に染まる。
「ぁ、もぉ、ぁ、ひっ、ひぉおぉおっ、らめぁ、い、達かせてっ、くだされっ、はっ、ぁ、もぉ、は、破裂してっ、は、はれつっ、ぁ、あふっ、く、ぃひぁああ」
「ああ、いいですね――紅蓮の鬼が鬼に乱され、欲に溺れて泣き叫ぶ――――桃源郷に成る仙人の実を喰ろうている心地です」
「もぉ、ぉぁ、らめぁ――らめ、ぁ、も、はっ、ぁ、あああっ、あ」
「鬼の方々。どうぞ、堰きとめられて濃密になった果実の汁を、味わわれませ」
「ひっ、ひ、ひ、はっ、ぁ、ああああああっ〜〜〜〜〜〜! ぅ、と、とまら、ぬぅう、ぁ、あああっ、そんっ、そんなに、吸っては、吸っては、ぁああ」
 放った幸村の牡が何かに吸われているように形が歪む。
「んぁああっ、や、ぁあ、ち、くびぃ、やめ、ぁ、ああ」
「鬼の方々、そのように乳を搾っても、そこからは出ませぬ――どれ、もう一度……そう、そのように堰きとめて、蜜を溜めましょうぞ」
 床に這わされ、尻を高く持ち上げられる。後ろから穿たれ、犬のように吼えた。
「はっ、ぁああ、こわれりゅっ、こわれてしまいまするぅうっ、はぁんあぁあっ、は、あぁあああっ、らめ、ぁ、あああ」
 乳首が捻られる。鈴口に差し込まれた何かが、時折細い穴の入り口を擽る。これ以上ないほど広げられた内壁は、爛れるほどに熱くなる。
「ヒィイイッ、ひっ、もぉ、ぁ、ああっらめぁ、は、ぁ、あつぅうぁああ、もぉ、ぁあ、と、とけっ、とけてしまっ、ぁ、あああっ――――あぁああああああああっ!」
 鬼の好きに乱された幸村は、最後の欲を放ちながら意識を手放した。

 瞼の裏が赤く燃えている。まぶしさに目を開けると、乱れた形跡の無い神棚が見えた。
「――――」
 ゆっくりと見回し、はっとして自分の体を見る。寝乱れ程度で、それ以外は何も変わりは無い。
――あれは、夢、だったのだろうか。
 そう思うと、羞恥に身を隠したくなる。自分は一体、何を思ってあのような夢を見ていたのか。
「幸村様――お目覚めですか」
 声に、びくりと震える。扉が開き、夢の中で生成となった男が現れた。
「おはようございます、幸村様」
「う、うむ」
 笑みが引きつっているのを自覚しながら頷いてみせると、扉を閉めて膝を進めてくる。わずかに仰け反りつつ迎えると、変わりない笑顔を向けられた。
「朝餉を、召し上がられますか」
「うむ」
 やはり夢であったかと、ひそかに息を吐いた幸村の頬に手が伸びた。
「では、鬼の精気を存分に、召し上がりませ」
「何――んぅっ」
 間近にある瞳は、蛇のそれと同じ虹彩を持っている――――

2011/11/20



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