チャイムが鳴り、やれやれと息を吐きだし教科書をしまう猿飛佐助のもとへ「佐助ッ」 うれしげに真田幸村がやってきた。「あ、はいはい」 佐助が自分のスマートフォンを彼に渡し「すまぬ」 うきうきと受け取った幸村が画面に触れて遊ぶのを、目を細めて眺めた。「なんだ。最近、よく猿のスマホ借りてんな」 ひょいと顔を覗かせた伊達政宗が幸村の肩に手をまわしつつ、スマートフォンを見るのに、佐助が渋い顔をする。政宗は、わざとこうして佐助を不快にさせようとしている節があった。「なめこ殿を、育てておるのです」「なめこ?」 見れば、画面には木にニョキニョキと顔と手を持つ菌類が生えている画像があった。「これが、なめこ……か?」 茶色く、なめこと言われればそうかもしれない、と思える物の中に、妙な物体も生えている。「おお、レアなめこが生えておる」 嬉々として幸村が画面を撫でると、ぷつぷつぷつっと持ち上げられた菌類が、画面左下に据え付けられている収穫箱らしきものの中に移動した。「最近、旦那が夢中なんだよね」 何が面白いのか、という態の政宗に、不本意ながら同意だと佐助が声音に滲ませる。「面白うござるぞ」 顔を上げて、幸村が言った。「Fum?」 さして興味の無さそうな声で、にょきっと生えてきたものに指を伸ばす。ぷつっ、と持ちあがった菌類は、収穫箱に収められた。「面白い、ねぇ」 どこが、と言いたげな政宗のことなど知らぬふうに、幸村は心底楽しそうに画面に触れている。「ぬ」「どしたの」 とんとんっ、と画面を数度つつき、首をかしげ、再び画面を連打してから「佐助――反応せぬ」 不安げに、佐助にスマートフォンを差し出した。「ああ、感度が悪くなってんだね」「こ、壊したのか」「大丈夫、大丈夫」 おろつく幸村に、安心させるような笑みを見せた。政宗も自身のスマートフォンを取り出して画面を見る。「更新のTimingか」「そうみたいだねぇ」「更新?」 首をかしげた幸村に「えっと。パソコンが、時々、更新しますって言っているのは、知ってるよね」 こくり、と幸村が頷いた。「スマホは、半分パソコンみてぇなモンだから、更新が時々、あるんだよ」 佐助の説明を、政宗が引き継いだ。「そういう時、だいたい感度が悪くなる」 政宗が幸村の前に画面を見せると、スマートフォンは勝手に画面を暗くして、しばしの後に再起動をしはじめた。「おお」 幸村の目が、丸くなる。「予告も無しに、突然なるから困るがな」「そうそう。電話しようと思っているときとか、メール打ってる最中とかね」「そうなのか」「そ。だから、旦那――俺様との会話が突然切れても、怒ったりしているわけじゃないから、安心してね。ちょっと時間かかるけど、再起動したらかけなおすから」「うむ。――しかし、便利そうに見えて、不便な面もあるのだな」「なんでも、良いところだけってのは、無いからね」「アンタは、感度が落ちることも無ぇし、良いところだらけだけどな」 ニヤリとした政宗に、幸村が首をかしげ「ああ――」 と、納得したような声を上げた佐助に問うた。「何の話だ、佐助」「放課後、教えてやるよ」 なぁ、と政宗が佐助に目線で投げかけて「それじゃ、放課後は俺様の部屋に集合ってことで」「――わかった」 不思議そうな幸村がそう答え、そういうことになった。 放課後。煌々と明かりのついた佐助の部屋で、甘いすすり泣きが上がっていた。「ぁ、んっ、ぁ――ぁ」「ほら、旦那――こっち向いて」「ふ、ぁんっ、ん、ちゅ――んっ、はぁあ」 前に佐助、背後に政宗。二人に挟まれた幸村は、部屋に入るなり唇を奪われ、口腔を舐られ、首筋に舌を這わされながらシャツに手を入れられると、すぐに肌を泡立たせて抵抗をする前に力を奪われた。「ほんと、旦那ってば、ちゅうすると、感度上がるよねぇ」「ぁ、はっ、ぁふ、さすけぇ、ぁ、んっ」「こっち向けよ、幸村――猿とばっかKissしてんじゃねぇ」「んぅうっ、ん、は、ぁんっ、ん」「ふふ。よだれ、垂れてる」 政宗と口づけている横から、佐助が唇を寄せてくる。二人に交互に求められる唇はぬらぬらと光り、真っ赤に染まっていた。「ぁ、はぁ、あ――はっ、や、ぁ」「嫌じゃねぇだろう」「嫌じゃないでしょ」 同時に言った二人が、幸村の学ランを脱がし、シャツのボタンを外し、ベルトを緩めた。「こんっ、ぁ――お、教える、とは、こん……ッ」「実地が、一番わかりやすいだろう」「そういうこと」「ひっ、ん――ぁ、あ」 二人に胸を探られながら、顔中に、首すじに、耳に唇を寄せられて震える。くすくす笑う佐助が、幸村の股間に手を伸ばした。「ひぁ」「ほら、こんなに大きくして――触られていないのに、ね」「素直だよな、アンタ」「ぁひっ、ぁ、はぅう」 左右の耳に、熱っぽく低くささやかれながら外耳を舌でくすぐられる。政宗に乳首を捏ねられ、佐助にもどかしい動きで牡に触れられ、堪えようとする気力が軽々となぎ倒されて行く。「ぁ、ぁう、んっ、んく、ん」「ふふ。なぁに、旦那――言ってごらん? 言いたいこと、あるでしょ」 くるん、と佐助の指が幸村の牡の先端を包んで回った。「はひゅっ、ぁ、んん」 そのままくすぐるように滲みはじめた先走りを、爪ではじく。「ふぁ、ぁうん」「しゃぶられてぇんだろう」 ぐらぐらと揺れる幸村に、政宗がとどめを刺した。「ぁ、さ、すけぇ――く、咥えて、くれッ」「何を?」「ぅ、うう」 幸村の顔が羞恥に染まる。「ね、何を咥えてほしいの?」 きゅ、と歯を食いしばってから、答えた。「さ、佐助がいろうておる――その、俺の、を」 具体的な言葉を避けた幸村に「もっとハッキリ言やぁいいだろう」 政宗が言い「もう、恥ずかしがり屋さんなんだから」 楽しげな佐助は頭を下げ、幸村のズボンを下着ごとずり下したかと思うと「わ、元気」 ぱくりと食いついた。「ふぁ、ぁ、は、ふんっ、んぁ、ふ、ぅうん」 うっとりとした気色の声を上げる幸村に「なら、アンタは俺にしてくれよ」 体をずらした政宗が、自分の牡を取り出して幸村の鼻先に近づけた。「口、開けな」 色に濁った目の幸村が、おそるおそる口を開ける。「んぶっ」 そこに、政宗が自分の立ち上がりかけた熱をねじ込んだ。「あ、ちょっと! 旦那にひどいことしないでよね」「まどろっこしいのは、好きじゃねぇんだよ」「んぐっ、んぅ、は、んっ、んぅう」「ああ、もう旦那――かわいそうに。そんな汚くて臭いの食べさせられて、苦しいよね。すぐ、忘れさせてあげるからね」 佐助の舌が幸村の奥まった箇所に咲く花に伸び、指が牡をあやす様に弄んだ。「ふぐっ、ぐっ、ん、ぅうっ、はふっ、ぁ、はぁあ」「汚くて臭いなんて、よく言うぜ――口ん中、牡の匂いに犯されるのが好きなんだよな、アンタは」「んむっ、ちゅ――ぁふ、ぁ、んぐぅう」 口内を犯され、下肢を暴かれ、幸村の体がグズグズに溶けていく。「はぁ、も、旦那――俺様限界……ね、ひとつに、なろ?」「チッ――今回は、先に譲ってやるよ」「旦那はアンタのモンじゃないよ」「はっ、ぁ、あう、んっ、ひっ、ぁ」 二人の言いあいに挟まれ、愛撫の手が止められた幸村が身悶えた。「あ、ごめん旦那――止まると、辛いよね。ほら……俺様の熱いので、すぐかき回してあげるからね」「ひぐっ、ぁ、お、ぉ、ぁ、さすっ、ぁ、さす、けぇ」「おい、俺を忘れてんじゃねぇよ」「ぐっ、ん――じゅ、は、ぁう、んっ、ま、まひゃむぇ、ろの、ぁむ」「上手にしゃぶって、飲んで見せろよ」「はぁ――旦那ぁ、んっ、次、俺様のも、しゃぶって、ね――くっ、すご、熱い」「さっさと出して、代われよ猿」「うるさいな、旦那に浸ってんだから、邪魔しないでくれる」「ぁんっ、ふ、ぁふっ、ひ、ぁあ」 二人の口げんかは、だんだん幸村の発する熱にあてられて「あぁ、旦那――すご、はぁ、んっ」「幸村……すげ、最高だぜ、アンタ、くっ」「も、もぉ、ぁ、らめぁ、あ、ひっ、ぃいっ、ぁうう、こわれっ、こわれてしまっ、ぁ」「大丈夫だよ、旦那――怖くないから」「もっと、本能のままに狂っちまいな」「んひぃいいっ」 欲に抗う術が、淫靡な熱にとろけて消えた。 絶望的な顔で、幸村が佐助のスマートフォンの画面を眺めている。それに声をかけられず、佐助と政宗は、ちろりと互いを横目で見ては、幸村と彼の手の中のスマートフォンに視線を戻した。「ねぇ、旦那――」 ややあって、佐助が口を開いた。「…………なめこ殿が、みな、枯れてしもうた」 睦みあっている間に、なめこの餌となる養分が切れ、幸村の可愛がっていたなめこ達は、変色し、しおしおのぱーとなりながらも健気に原木の上に立っている。 事が終わり、ほっと一息を付き、二人に挟まれ甘い口づけと優しい手を感じながら微睡んでいた幸村が「なめこ殿ッ!」 はっと気づいて身を起そうとし、けだるさと腰の痛みに起き上がりきれなかった幸村に、佐助が微笑んでスマートフォンを渡し、機嫌よくアプリを起動させてヨボヨボな枯れなめこの姿を見た瞬間、三者三様に硬直したのだ。「旦那、あの、さ」 口をへの字に曲げて画面を食い入るように見つめている幸村に、佐助が笑みを引きつらせて声をかける。「新しいの、生やせばいいだけだろう」 どうせただのゲームだ、と指を伸ばして枯れたなめこを全て収穫し、なめこの餌の中から適当な時間を保つものを選んだ政宗に「おっ」 ギッ、と強い視線を向けた幸村が、無言で背を向けて佐助に向いた。「ほんっと、竜の旦那は情緒に欠けるっていうかさぁ」「ゲームに情緒も何も、無ぇだろうが」「旦那は、解する人なんだよ」 ぎゅう、と佐助が幸村を抱きしめ、むっとした政宗も、幸村に腕を回して体を寄せる。二人の男に挟まれた幸村が、妙におとなしいことに顔を見合わせ、そっと見ると、彼は静かに寝息を立てていた。「疲れさせちゃったからねぇ」「ぞんぶんに、絞り上げたからな」 柔らかな佐助の声と、肉感的な政宗の音が口づけとなって幸村の髪に降った。「今夜は、仕方が無いから泊めてあげるよ」「仕方がねぇから、泊まってやる」 ふっ、と目じりを柔らかくし、幸村に誘われるように、二人は意識を夢のふちへ向かわせた。2012/5/23