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胸乳

 草を編み、籠を作る。その手先を、横でずっと眺めている主は、飽きないのだろうかと思いつつ、声をかけることもせぬまま、猿飛佐助は籠を編んでいく。
「よし、と」
 完成すれば
「ほう」
 幼君、弁丸が感心するように息を漏らした。
「っはー。さて、と」
 次は網を膝元に引き寄せ、ほころびが無いかを確認する。この網は、端に重りがついており、捕縛をする際に投げて用いるもので、ほころびがあれば逃げられてしまう。
 細かな部分まで確認していく佐助の手元を、やはり幸村は言葉を発さずに眺め続けた。
「ん〜」
 ほころび始めている部分を、縫う。それが終わるまで、やはり弁丸は言葉を発さずに、ただ見つめている。
「できた、と」
 その声に、弁丸の顔が輝いた。口の端だけで、彼にわからぬほどに笑むと
「さ、次は……と」
 周囲を探るようにすれば、たちまち落胆の色に変わる弁丸に
「そこの戸棚の二番目から、小瓶を取ってくれる」
「わかった!」
 小瓶が、佐助が遊んでくれる合図だと知っている弁丸は、飛び上がるように立ち上がり、戸棚に走り小瓶を手にして
「佐助ッ」
 うれしげに差し出した。
「ありがと」
 ニコリとして受け取ると
「俺様、すっごい疲れちゃったから、特別の按摩、してほしいなぁ」
 ちら、と上目づかいに見れば
「うむ」
 頷く弁丸が着物を脱ぎ始めた。それを見ながら前をくつろげた佐助が、小瓶の中身を牡へ垂らす。それを追うように、弁丸は舌を伸ばした。
「んっ――ん」
 甘味が、弁丸の口に広がる。
「はぁ――そう……んっ、上手」
「んっ、ちゅ、はふ、んっ、ん……」
 いつだったか、あまりに弁丸がまとわりついてくるので、追い払う気で「労ってくれるんなら、別だけどさぁ」と言えば、佐助の思惑通り、弁丸は項垂れ、そのまま何処かへ行くかと思いきや、この身で出来る事ならばと言い出した。うっとうしい、と思った佐助は絶対にしないだろうと、自らの牡を口で慰めるよう言った。
(まさか、本当にするなんてなぁ)
 懸命に口淫を行う弁丸の髪を撫でて、思う。了承をされ、引っ込みがつかなくなり、させてみれば当然のことながら下手くそで、それを理由に追い払おうと思えば、今度は練習をすると言い出した。これがどういうことかわからぬ弁丸が、自分以外の誰かに言ってしまっては事だと思い、これは特別の事で、自分以外とはしてはいけないと言い含め、教えるはめになった。
「んっ、ふ――ッ、ふ、んちゅ、んっ、ん」
 それから毎日のように、弁丸は佐助を労いたがり、しているうちに罪悪感が薄れた佐助は、これを楽しむようになった。
「はっ、ぁ――佐助ぇ」
「ん、気持ちいいよ」
 微笑めば、がぜんやる気になるらしい。小さな口で佐助を吸い、両手で擦りあげて
「――ッ、だすよ」
「んっ、じゅっ、じゅうぅ――んっ、んっ、ん……んっ、うふ、は、ぁ」
 言えば飲み干す弁丸に
「ありがと」
 笑いかけて、膝の上に抱きかかえた。
「よかったか」
 唾液と欲で濡れた唇のまま、無垢な瞳を向けてくる。その落差に、佐助の腰が疼いた。
「うん。上手になったね」
「まことか」
 嬉しげにするのを抱きしめつつ、心中で首を振る。彼のすべてを暴くことは、まだ、していなかった。
「佐助ぇ」
 肩に頭を摺り寄せて、甘えたようにしてくるのに
「うん、そうだね」
 咥えて感じた弁丸の、幼い牡が存在を主張しているのが目に入った。
「ね、弁丸様」
「ん?」
「今日は、何をしていたのか、教えてくれるかな」
「ん……今日は、槍の鍛錬をいたした」
「へぇ――どんなふうに」
 問いながら、佐助の両手は弁丸の胸に色づく箇所を撫でる。
「っ――ぁ、両手で……ッ、槍――を、操る法を……っ、ぁ、あ」
 尖りの周囲を撫でながら、弁丸の話に頷き
「それで?」
 促した。
「んっ、りょ、両手で――槍っ、ぁ、は…………したらっ、ぁ、柄が、ぶつかって――ッ」
「ぶつかって?」
「お、思うようにっ、ぁ、あ、ぁあっ、ぁ」
 きゅう、と尖りを摘まんで転がすと、言葉が嬌声だけになった。
「ね、どうしたの――ぶつかって、どうなったの?」
「はっ、ぁ、あっ、ぁ、ぁ、あぁ、あ、ぶつかっ、ぁ、て……思うように、振るえぬっ、ぁ、あ」
「そっかぁ」
「ひぁ、ぁっ、ぁ、ぁあ」
 佐助の指が、手遊びの軽快さで弁丸の胸を弄う。震える彼の牡が先走りをこぼし始めたのに目を細め
「最初は、誰でも上手くはいかないからね――練習あるのみだよ」
「んっ、はっ、ぁ、れん、しゅ……ッ」
「そ――俺様とだけの、特別の按摩も、最初はすっごく下手だったけど、今はずいぶん上達したでしょ」
「ッ、あ、ぁあ――はっ、ぁう」
「ねぇ」
 強く尖りを抓めば
「ひっ、ぃいい」
 弁丸が縋りついてきた。
「いっぱい練習して、自在に操れるようにならないとね」
「ぁ、は――はぅ、うっ、んっ、んんっ」
「他には、どんなこと、したの?」
 弄る力を強めながら言えば
「ぁあう、そっ、そんしっ、ぁ、そんしのっ、へいほっ、へいほぉ」
「孫子の兵法?」
「ふっ、んっ、んんっ、ぁ、うんっ、ぁ」
「それを、どうしたの?」
「っ、はっ、ぁ、しょっ、しょもつっ、ぁ、ろ、ろうど……ろうどくッ」
「孫子の兵法を、朗読したの?」
「んっ、ぁ、しっ、した――ッ、は、あ、ぁ」
 弁丸の太ももが、もどかしそうに擦りあわされる。
「朗読した部分、憶えていたら、俺様に教えて?」
「ぁ、は――ッ、ふ、ぁ、ぁあ、ゆっ、ゆえにっ、ぁ、はっ、はやきことっ、かぜのっ、ぁ、ごとく……ッは、ぁうう――そのっ、ぁ、しずっ、かなることぉ、ぁ、はやしのっ、ごとくっ、ぁ、あう、んっ、んんっ」
「それから?」
 身悶える弁丸が、懸命に応えるのを邪魔するように、彼の胸を弄る佐助の指が、さらに巧みな動きに変わる。
「しんりゃっ、ぁ、しんりゃくするっ、ことぉ、ひっ、ひのごとっ、くぅう――ッ、んぁ、うごかざるっこと、やまっ、ぁ、あぁ、やまのぉ、ごとくぅうッ――ひっ、ぁ、ぁ……」
「それで、おしまい?」
 ふるふると首を振った弁丸が
「しりっ、がたきことっ、ぁ、かげのっ、かげっ、ぁ、は、ぁあ、ぁあ……ッ、かげっ、かげっ、ぇ、ぁあぁあああッ」
 耐え切れなくなった弁丸が、放った。びくびくと震える牡に目を細めつつ、胸を弄る手を止めず、目じりに涙を称え、射精後の恍惚と途切れることなく与え続けられる胸への快楽に、餌をねだる魚のように口を開閉する彼の耳に
「続き、教えて?」
 囁いた。
「はっ、ぁう――」
「知りがたきこと、影の、何?」
「ぁ、はふっ、ぁ、かげのぉ、ごとしぃ……んっ、ん――はっ、ぁ、うごくっ、ことぉ、らいめいのっ、ぁ、らいめいのぉおっ、ごとしっ、ぁ、あふっ、ぁ、んふっ、ぁ、さす、けぇ」
 強請るように呼ばれ、目じりの涙を口で吸い
「郷を掠(かす)むるには、衆を分かち 地を廓(ひろ)むるには、利を分かち 権を懸(か)けて動く。迂直の計を先知する者は勝つ。 此れ軍争の法なり」
 残りを諳んじて聞かせ
「今度は、俺様が弁丸様の魔羅を、労ってあげるね」
 床に寝かせて、蜜をこぼし続ける牡を、口に含んだ。

 あれから数年がたち、弁丸は幸村と名を改め、人々に一目も二目もおかれる武将へと成長した。
「ふぅ」
 鍛錬を終え、もろ肌脱ぎになった幸村の胸から腹にかけて、晒しが巻いてある。それをほどいて体を拭おうとしている所に
「ただいま、旦那」
 任務を終えた、猿飛佐助が帰ってきた。
「ご苦労であったな」
 幸村が晒しをほどきかけているのを目にして、佐助がニヤリとした。
「旦那――久しぶりだし、ゆっくりと会わなかった間の話、聞かせてほしいんだけど」
 それに、顔を赤くした幸村が無言でうなずき
「すぐ、大将に報告して、部屋に行くね」
 佐助が姿を消した。
 身綺麗にし、そわそわと落ち着かぬ様子の幸村の背後に
「おまたせ」
 佐助が姿を現し
「あっ……」
 という間に着物の合わせ目から手を差し入れ、幸村の胸の尖りを指に絡めた。
「俺様がいない間、どうしていたか、話、聞かせて――」
 耳朶を食み、言えば
「ッ、は――ぁ、か、変わらず、修練を……ッ」
「一人で?」
 首を振った幸村が
「おっ、お館様と――ッ、ぁ、は……他のっ、ぁ、方々、とも――んっ、ぁ」
 佐助が、背後から抱きしめるように、左右の胸の尖りを弄る。
「ちゃんと、毎回、晒しを巻くか戦装束を着るか、した?」
 質問に、何度もうなずく幸村に
「そうだよねぇ――ちょっと擦れただけで、気持ちよくなっちゃうから、しっかりと保護しなきゃだもんねぇ」
「ぁ、はんぅう――ッ、だ、誰のっ、せいだ……ッ」
「了承したのは、旦那なんだから、お互い様でしょッ」
 あれから、佐助と二人で話をするときは、習慣のように胸を弄われながら、というようになっていた。そのようなことを続けている間に、幸村の胸は、ほんのわずかな刺激にも反応し、そこだけの刺激で用意に達することが出来るように、なっていた。
「はっ、ぁ、んっ、さすっ、ぁ――さすっ、けぇ」
 強請るように名を呼ばれ、幸村の手が佐助の股間に触れる。
「ぁ、も――話は、後、で……ッ、ぁ、はっ、はやく――」
 久しぶりの手淫に、幸村の牡は猛り狂い
「あ、れ――?」
 袴の脇から手を差し入れた佐助は
「下帯……つけてないの?」
 すぐに生身の牡に触れ、先端を握りこんだ。
「はっ、ぁ、ああっ、さすっ、ぁ、はぁ」
 幸村の手が、強く佐助の牡を握る。
「んっ、ちょ、痛いッ……痛いって、旦那ッ」
「ふっ、ぁ、んっ、んんっ、ん――」
「もう、しょうがないなぁ」
 嬉しげにつぶやいた佐助は幸村を離し、前をくつろげて
「繋がる準備、しよっか」
 頷いた幸村が、口を開けて牡を飲み込む。
 そうして、知らぬ頃から佐助に身も心も手なずけられた、戦場では紅蓮の鬼と称される、無垢で初心だと評判の幸村は、淫蕩に耽り佐助の牡を貪る、艶なる獣として、本能のままに咆哮し、身を躍らせ続けた。
「旦那の乳首、ほんっと、敏感すぎて危険だよねぇ」
 くすくす笑う、調教師の望むままに――――。

2012/7/19



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