障子を全て開けはなし、床に横になった伊達政宗の目に、庭で槍を振るう男の姿があった。汗みずくになりながら、楽しげに舞い続けるのは自他ともに認める好敵手――真田幸村。 「よくやるぜ」 秋とは名ばかりの夏空に、うんざりとした目を向ける。 ここは奥州――筆頭である伊達政宗の居室であった。その庭先で、甲斐の若虎が修練に励んでいる。 天下泰平。 表面的には、徳川家康が天下人となり大きな戦は無くなったが、そこここに火種は残っている。それらを鎮めるために、また戦火の跡を消すために、大名は連絡を取り合い人や品を行き交わせている。 真田幸村が奥州へいるのは、表向き、そのような名目であった。 好敵手である二人が高め合うために、平穏の世で腕を鈍らせぬように、と見ている者も有る。 むろん、それもあった。 別の目的も、あった。 槍を振るい終えた幸村が、息を吐き縁側へ近づいてくる。政宗は身を起し、幸村が置いてある手ぬぐいへ手を伸ばすより先にそれを奪い「拭ってやるよ」「そのような――」「遠慮すんな」 草履を履き、庭に降りて井戸へ向かう。意見など聞く耳を持たぬと、背中で語る政宗の後ろを歩きながら、幸村は穏やかな空に目を細めた。 井戸水を汲み、手ぬぐいを濡らした政宗が「ほら」 促すのに、もろはだぬぎとなった幸村は両手を伸ばす。 指の先から丁寧に拭われ、井戸水の冷たさに気持ちよさげに目を細める幸村の、皮膚の下にある躍動を確かめるように、触れた。 腕を終え、首を拭き、脇を拭って背に回る。そうして背後から胸乳へ腕を回し拭こうとすれば「ま、政宗殿」「Ah――」「その、背後から拭かずとも……」「前に回るのが、面倒なんだよ。――なんか、問題でもあんのか」「あ、いえ……」 もごもごと言葉を口内でくぐもらせる幸村を抱きしめるように腕を回し、弾力のある腹筋を拭い「――ッ」 そのために密着した肌に、幸村の体が緊張した。「どうした」 耳元でささやけば「いえ……何も」 わずかに、頬が赤い。「そうか」 口の端を持ち上げながら、彼の肌を拭うのを再開する。胸筋の下――盛り上がりの影をぬぐい、揉み込むように中心へ手ぬぐいを進め「ッ――」 色づく箇所に触れれば、幸村の喉が動いた。「しっかり、拭わねぇとな」「ぁ、政宗殿……」「なんだよ」「いえ、もう……自分で、出来まするゆえ」「遠慮すんな」「――ッ」 蕾を抓んで転がせば、肌が震えた。「ぁ、おやめくだされ」 本気の拒絶でないことは、明らかで「なんだよ……自分じゃ、きちんとしねぇようなところを、人にしてもらう時には頼むほうが、良いだろう」「なれど、これは……」「Ah?」「いえ……」 こちらに全く他意のないことを示せば、初心な幸村が拒絶しきれぬことを、政宗は心得ていた。「っ、は――政宗殿」「なんだよ」「何ゆえ、そこばかり」「自分じゃ、こんなとこ適当に拭って終わるだろ」「そ、うでござるが」「ここのシワに、垢がたまったりすんだよ」「っ、は、あう」 手ぬぐいの角で、両の乳首の中心を撫でれば、幸村が甘い声を出す。それをあわてて両手で押さえた彼に「なんだ?」「いえ、何も……」 あくまでも、そのような意図は無いと言う声を出して行為を続けた。「っ、んっ、ふ、んっ、ん」 手ぬぐいの角で、乳腺の口をくすぐるように刺激すれば、幸村の肌は快楽を浮かべ始める。「ほら、わかるだろ……乳首のシワんとこに、汚れがあるのが」「ッ、ぁは……ぅ、んんっ」 もどかしさに震えはじめた乳首を強く抓み、捩じった。「ひ、ぁあう」 思わず声を上げた幸村に「変な声、出すなよ――俺は、アンタの体を清めでいるだけなんだぜ」「う、も……申し訳ござらぬ」 羞恥に染まる耳に唇を寄せ「じっとしてな」 囁き、強く乳首を抓んだまま、乳腺に爪を立てた。「ひっ、ぁ、あうっ、んっ」「シワの間の汚れ、掻きだしてやるよ」「ぁ、はぅうッ……」 必死に両手で口を押える幸村の、指の間から声が漏れる。下肢に目をやると、下帯が大きく膨らんでいた。先端にあたる部分が、染みている。「ほら……我慢しろ」「は、ぁあうっ、ぁ、あんっ、ぁ」 幸村の足がガクガクと震えはじめる。背後の政宗に身を摺り寄せてくるのは、無意識なのだろう。「あんまり声をあげてると、誰かが来ちまうだろ? 昼間から、変な声を出してんじゃねぇよ」「ぁ、な、なればっ、なれば……ッ、ぁ、も、ぁあ、も、おやめ、くだされ」「人の好意は、素直に受けな」「はふ、ぁ、あううっ」 きゅ、と強く抓み上げて最後とし、ほっとした幸村を裏切るように、下帯に手をかけて「あっ――」 抵抗をされる前に地面に落とした。「ずいぶんと、立派な事になってんじゃねぇか」 口笛を吹いて揶揄すれば、慌てて隠そうとする。その前に手ぬぐいを巻きつけるように握りこみ「体を拭かれて、こんなにして……変態だな、アンタ」 耳に舌を差し込めば、幸村の瞳が固く閉じられる。「Oh well――こんだけデカくしてりゃ、裏側も拭いやすい」「っ、は、ぁ……政宗殿ッ、そこは拭わずとも」「言っただろ。普段、きっちりしねぇところをするって」「なれど、そこをされてはっ――」「つべこべ言うんじゃねぇよ。ほら――根本と袋……ちゃんと自分でできてんのか」「ぁ、っ、はぁうっ、んっ、ぁ、ああ」「裏筋も、しっかり拭ってやんなきゃな」「ひっ、ぃあ、あううっ」「括れは、丹念にしてやるよ」「ぁひっ、ぁ、そこっ、ぁ、そこは、ぁっ、ぁ、ああ」 牡の括れを手ぬぐいで包み、捩じるように擦れば声を抑える余裕も無くなった幸村が、顎をのけぞらせて政宗の腕にしがみつく。先走りを湧き上がらせて昼日中に声を上げる姿に、政宗の喉が鳴った。「さっきから、だらしなくコッチの涎が垂れまくってるぜ?」「ぁ、はぁううっ、んぁ、ああっ」 答える余裕も、無いらしい。「コッチの先も、さっきみてぇに拭うとするか」「ぁ、やっ、ぁっ、あひっ、ひ、ぃいっ」 括れを擦りながら鈴口に爪を立て、掻きだすようにすれば幸村の膝が崩れた。「おっと」 抱き止めれば、背後に腕を回した幸村に「へ……部屋へ」 淫蕩に濡れた瞳で告げられた。「OK――隅々まで、拭ってやるよ」 唇を寄せ、抱き上げる。部屋に運び込み、足で障子を閉めて幸村を下せば、しがみつかれた。「政宗殿――」「なんだ」 恥ずかしげに肩に額を寄せた彼が「普段、自分でせぬところを申されるなら……き、菊の座も………………ッ」 腕の力を強める。意外な申し出に、少し眉を上げた政宗は「Doubtless――シワを広げて、たっぷりとな」 唇を寄せた。 両手で顔を覆った幸村が、足を広げて待つ。膝を押し上げた政宗は、舌を伸ばして菊の座へ触れた。「っ、ふ……」 丹念に、シワの一つ一つをなぞりながら広げ、解し、指を差し込み内壁を解していく。「はっ、ぁ、あっ、あ」 震える牡に口づけて、溢れる先走りを指で拭い、潤滑剤として幸村の体内に戻す。 宣言通りの丹念さに「政宗殿――ッ」「なんだよ。やめろとか、ぬかすんじゃねぇだろうな」「違ッ――その、お、奥……に」「Ah?」「ゆ、指では届かぬところも……その、していただきたく――ッ」 言い終えた後、体を真っ赤に染めて身をこごめる幸村に「Agreed 太くて熱いモンで、たっぷりと奥を擦ってやるよ」 覆いかぶさりながら告げれば、足と腕を巻き付けた幸村が、こくんと頷いた。「しっかり、受け止めな」「っ、は、ぁ、あぁ、あっ、あ、あぁああッ」 ず、と政宗の牡が幸村に飲み込まれる。待ちかねたように蠢く内壁は、奥へ奥へと政宗を招き、絡んだ。「は――すげぇ、な」「ッ、ふ、ぁ」「絡み付いて、絞り上げてきやがる」「ッ、は、そ、れがしの……」「Ah?」「はっ、あ、ナカ……で、んっ、今度は、政宗殿を――ッ、拭っ……ぁ、あ、さしあげ……ッ、は、ぁううっ」 乱され切りながらも、そのようなことを口に上せる幸村に、政宗の唇が不敵に歪んだ。「OK――たっぷりと、アンタに絞られ拭われようじゃねぇか」「んっ、存分に……」「遠慮はしねぇぜ」「もとより、遠慮などッ、ぁ、ああっ、あっ、あぁああっ」 幸村の言葉が終わる前に、政宗は絡み付く内壁を擦りあげ、精根尽き果てるまで幸村の身に欲を注ぎ続けた。 日が沈めば、流石に秋の風情となる室内で、幸村と政宗が転がっている。汗と精にまみれた体を拭おうにも、おっくうで動くことが出来ぬほど、二人はまぐわいあっていた。「はぁ……しかし、あんな積極的に求められるとはな」 ニヤリとする政宗に「先に煽ったは、政宗殿にござる」 ぷう、と幸村の頬が膨らむ。「あのように、昼日中の庭先で……意地が悪うござる」「なんだよ。抵抗しなかっただろ」 ごろり、と転がり近寄れば、ぷいと顔をそむけられた。見える耳が、赤い。「政宗殿が――あのような趣向を好まれておるのかと……」「ん?」「な、なれば……お応えいたしたいと――」 ぽかん、と口を開けた政宗が「Ha!」 声を立てて笑い出し、幸村を抱きしめた。「アンタの方が、一枚上手だったてぇ訳か」「――意味が、わかりませぬ」「アンタ、最高だ」 唇を強く押し付け「こっち向けよ。真田幸村」「お断りいたす」「俺の趣向に、応えてくれるんだろ」「ぬぅ……」「男に二言は、無ぇよな」 しぶしぶと顔を上げた幸村の唇を、柔らかく押しつぶし「愛してるぜ――真田幸村」「ッ――そ、某も……でなくば、このような事いたせませぬ」 ちゅ、と瞳に口づけて「なら次は、もっとすげぇ趣向に、付き合ってくれよ」 そっと、それを耳打ちすれば「破廉恥でござっ――んぅ」 拳を振り上げ叫ぼうとした幸村の腕を掴み、唇をふさぎ、甘えあう口づけを繰り返す。 ゆったりとしたまどろみに、互いの身を浸しはじめた。 2012/9/19