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> ヤンデレ天狐仮面(?!)
天狐仮面
 青空に、威勢のいい声が上っていく。
 快晴の甲斐、武田屋敷の庭で、紅い鎧を身に纏った青年、真田幸村が槍を奮っていた。
 本来ならば主である信玄と拳を交えあっている頃合なのだが生憎と来客があり、脳裏に想定した相手との訓練をすることとなった。
 彼の見据える見えない相手は、奥州の竜――伊達政宗。戦場で初めて相対した折に互いに好敵手と認め合った人物である。時折、攻撃を交わすように飛びながら奮う槍はなかなか相手に届かぬらしい。しかし、それを焦る様子も悔やむ様子も見えなかった。むしろ、楽しそうにそれを感受している。彼の唇には、笑みが浮かんでいた。
 ふと、彼の目の端にふわりとしたものが映った。気のせいにしてはハッキリとしたそれに顔を向けると、木々とは少し違う緑が見える。ちらりと相手が向けてきた顔に、幸村は笑顔を浮かべた。
「おお、天狐仮面殿っ! お久しゅうございまする」
 声をかけながら、近寄る。
「某、一人で鍛錬をしておったのですが、もしよろしければ――」
 ヒュッと飛んだ天狐仮面は、塀の上で幸村を見る。
「天狐仮面殿?」
 口元に笑みを浮かべた彼は、誘うように幸村に手を伸ばして指で招いたかと思うと、姿を消した。
「あっ」
 慌てて幸村も槍を使い、塀の上へ飛び乗る。少し離れたところに、こちらを見ている天狐仮面の姿を見つけた。かと思うと、彼は幸村に背を向けて走り出す。
「お、お待ちくだされっ」
 姿が見えなくなったと思うと、誘うような仕草で現れる。幸村は誘われるまま山へ分け入り、蔦のからむ大木の元へとたどり着いた。そこは、昼間だというのに妙に霧深く、なにやら甘い香りがしている。追いかける間に上がった息で、それを深く吸い込みながら周囲を見渡す幸村の前に、天狐仮面は姿を現した。
「天狐仮面殿、このような所に連れてきて、一体何用でござ…………?」
 目の前で指を鳴らされ、幸村の頭の中で何かがカチリと音を立てる。疑問を浮かべた幸村の顔が、すぐに当惑に変わった。
「な――っ、これは……」
 大木に絡まっていた蔦が、幸村の体に伸びて絡まる。
「くっ、天狐仮面殿――」
 幸村の指に、足に、腕に絡む蔦は彼の自由を奪う。それを薄く笑みながら眺めている天狐仮面の姿に、幸村は背筋を奮わせた。
「天こ――――っ」
 幸村のおびえた声音を唇で塞ぐ。両手を腰に当て、ゆっくりと肩まで撫で上げ不要な布を剥ぎ取りながら唇を啄むと、零れそうなほどに大きく開いた瞳が恐怖を滲ませた。ぞくり、と暗い歓喜が天狐仮面――猿飛佐助の胸に湧く。
「旦那は――本当に…………」
 うっとりと呟かれた声が熱い吐息に変わり、幸村の耳朶に染みる。蔦に縛られ身動きが取れないまま抱きしめられた幸村は、腕の優しさと声の妖しさに視線を彷徨わせながら、自分が置かれている状況を把握しようと懸命に頭を働かせる。しかし、どろりとした水あめのような甘い何かがそれを阻んだ。
「て、天狐仮面殿――――」
「怖がらなくてもいいよ――――気持ちよくしたいだけだから。一緒に、気持ちよくなりたいだけだからさ」
「気持ちよく……」
「そう――旦那を見ていると、苦しくなるんだよ……だから、俺様のこと――――助けてくれるよね」
「某が、天狐仮面殿を、助ける――」
「そう、助けて欲しいんだ。一緒に気持ちよくなって、拒絶しないで――――受け入れて、獣みたいに本能に素直に従って、欲しがって――――旦那だって、男の子だから…………わかるだろ」
 佐助の手が、幸村の背中に弧を描く。わずかに身を震わせた幸村の思考が、甘美な痺れを受け止める。
「某にも、天狐仮面殿のような面をつけるのでござろうか」
 夢の狭間にいるような声音に、佐助はクスリと息を吐く。
「さしずめ、天の虎と書いて天虎仮面ってところだな。読み方が同じで、なんだか――――」
 うっとりとした呟きを、幸村の口内に注ぎ込む。濃密な霧が浸み込んだ幸村の意識は、白濁した甘い何かに支配され、佐助の唇を甘受した。
「んっ、う」
 濡れた音を立てて口内を愛撫する舌に丸薬を乗せ、喉の奥へ押し込む。
「ごめんね、旦那」
 泣き出しそうな声に疑問を口にしようとした幸村の心臓が跳ねた。
「な――に――ぁ…………つい」
 急激な乾きに襲われ、幸村があえぐ。開いた唇に指を入れ、口腔を掻き回しながら佐助は下肢に手を伸ばす。
「ふむっ、ぅん――っ、はむぁ」
「いやらしい顔、沢山見せてよ」
「はふっ、ぁ――ひぇんふぉ、ふぁめふ、ろのぉ」
 指を噛まないように配慮しながら名を呼んでくる幸村の顔を眺めつつ、指先で彼の牡の形を探る。半勃ちになっているそれに直接指をからませて緩く扱くと、佐助の指に痙攣の振動が返ってくる。
「本当に、素直だねぇ、旦那は――――俺様、心配になってきちゃうよ」
「は、んんっ――――ぅ、あ」
 幸村の顎を、唾液が伝う。朱の差してきた肌と濡れた瞳に、佐助の牡がむくりと起きた。
「そのまま、堕ちちゃってよ――――意識も全部、委ねて」
 佐助の指が、再び鳴らされる。幸村の体に絡んでいた蔦が消え、崩れ落ちる体を抱きとめた佐助は、ゆっくりと大木に背を預けるように座らせた。薄く荒い息を繰り返す幸村の瞳からは、正気が消えている。丸薬と香が十分すぎるほどに効いていた。
「すぐにこんな風になっちゃうなんて、本当――危なっかしくて、目を放せらんないよ」
 皮肉めいたものでゆがませた唇を、幸村の唇に重ねる。
「それとも――そのくらい俺を信用してくれていた?」
 チリ、と熱さと痛みを伴ったものが佐助の胸によぎる。
「そんなに親しくも無いはずの天狐仮面を、何の疑いも持たないくらいに信用しているってことかよ、旦那」
「ぁ――っ、んぁああ…………」
 湧き上がる感情のままに、幸村の牡に指を絡め、攻め立てる。
 自分に嫉妬をしている――馬鹿げていると理解はしていても、心が納得をしない。幸村の中で、猿飛佐助と天狐仮面は別人なのだ――似ている知人という認識で、まったくの別人なのだ。
 指を絡め、弾き、捏ねて潰す。佐助の指の動きに合わせて、幸村は声をあげる。声をあげながら手を伸ばし、すがり付いてきた。
「はんっ――ぁあ……、ぁうっ」
 首筋に頭を擦り付けられ、絶望と怒気が佐助の中に渦巻く。意識を混濁させ、篭絡したのは自分であるはずなのに、言い知れない後悔と哀切が佐助を包んだ。
「っ――ぁく、ぅ」
 しがみついてくる幸村を力いっぱい引き剥がし、立ち上がる。肩で息をしながら見上げてくる瞳が求めているものは、猿飛佐助ではない――自分が仕組んだことであるのに、情欲に支配された幸村を通して自分自身への憎しみに奥歯を噛んだ。
「――俺様のことも、気持ちよくしてよね」
 わざとおどけた口調で言いながら、猛る自らの牡を取り出して幸村の眼前に寄せる。幸村の視線が、ゆっくりとそれに移動した。
「今の旦那には、大好きな団子よりも美味しく感じるはずだぜ?」
 皮肉の色は、自分に向けたものだ。じっと牡を見つめている幸村の姿が、赤子のように見える。ズクリと痛む胸に、良心と肉欲が混在していた。
 咥えて欲しい――咥えないでくれ。
 じっと牡を眺めていた幸村の口が大きく開く。ゆっくりと近づき、くびれている部分までを躊躇う事無く口内に納めた。幼子が母の乳を求めるような口淫に、甘い疼きと眩暈を覚える。
「ん――んっ、はむ、ぅん」
 幸村が与えてくるもどかしいばかりの快楽に、佐助の牡は心に浮かぶ苦味と同じくらい濃いものを滲ませる。
「ちゅ――はふっ、んむ」
「――――旦那」
 無垢にそれを吸う幸村の姿に、仮面の下に泣き笑いのような顔を浮かべて彼の頭を両手でつかみ、喉の奥へと牡を突き立てた。
「んぐっ――おぶっ、ぁおお…………っぐ」
「はは――――ほんと、俺様ってば何やってんだろうねぇ、旦那ぁ」
 乾いた声で言いながら、容赦なく幸村の口内を牡で掻きまわす。息苦しさに、幸村の瞳から涙が滲む。
「ねぇ、旦那――おいしい? おいしいよねぇ……そういう薬を飲ませたんだからさ」
「おぐっ、んん――――っ」
 自分を嘲りながら、佐助は容赦なく幸村の口腔を犯し続ける。
「こんなことされて、旦那ってば気持ちがいいんだ――――ぶるぶる震わせて、子種を溢れさせて」
「んあ――――っ」
 佐助の足が、幸村の牡を潰す。のけぞった幸村の口から佐助の牡が外れ、彼の顔に先走りを撒き散らして頬を打った。
「ほんと――俺様ってば、どうしようもない奴だよねぇ…………旦那に酷い事をしているのに、すごく――――――っ」
 幸村が、外れた牡を咥えなおす。必死に頭を動かして愛撫する彼に、佐助は驚き、いたたまれなさに顔を歪めた。
「っ――――!」
「んふっ、ぐ――――ぁむっ、ふ、んんっ」
 何かを振り払うように、足で幸村を追いたてながら、再び彼の口内を掻き回す。必死に喰らいついてくる幸村の姿に、仮面の下で嗚咽を漏らしながら乱暴な行為を続けた。
「――――くっ」
「ごぶっ――ぁ、ぐふ………っあぁ」
 喉の奥で、放つ。咳き込みながら、幸村も絶頂を迎えた。
「は――は、ぁ――――旦那……旦那」
 射精の余韻に震えながら、涙と唾液――佐助の牡液にまみれた虚ろな顔を、しゃがんだ佐助に向ける幸村が、緩慢に手を伸ばして仮面の頬を指で撫ぜる。その手を両手で握り、頬にすりつけ唇を寄せる佐助の耳に、かすかな声が届いた。
「――さ、すけ……泣くな――――俺が居る…………佐助」
 力強さの欠片も無いはずの声に強く打たれ、目を見開いて幸村を見る。その瞳は、濁ったままで何も映しては居ない。それでも彼は手を伸ばし、言葉を紡いだ。
「泣くな――――佐助」
「――――っ、旦那」
 仮面をはずした佐助の声が、涙に震える。うわ言のように繰り返される言葉に、佐助は強く、しがみつくように幸村を抱きしめた。
「俺が居る――――佐助」
「うん――うん、旦那……旦那――――大好きだよ、旦那」
 幸村の唇が柔らかくゆがむ。そのままゆっくりと意識を手放した彼の頬に、佐助はそっと唇を寄せた。


2010/07/30



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