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騙浴

 蒸風呂は、戦国の世では広く知られた入浴法であった。もうもうとたちこめる蒸気にあぶられ、毛穴が開き汗が出る。汗で浮かんだ汚れを、竹でできたヘラで垢をこそげ落とす。
 大衆の風呂屋には、赤をこそげ落としてくれる女がいることもあった。
 薬草などを浸した湯をわかし、浴堂の中に湯気を入れて疲れを癒す、今でいうサウナのような入浴法であった。

 むわん、と息が詰まりそうなほど湯気のたちこめている浴堂で、真田幸村はゆったりとかまえるように座り、目を閉じていた。
「旦那。垢すりに来たよ」
 扉が開き、が息が入り込んでくる。それに目を開けた幸村は、柔和に頬を緩めた。
「すまぬな」
「他の誰にも、こんなこと頼めないでしょ」
 裸身で無防備に肌を擦られるのだ。あまり人を疑いたくはないが、いつなんどき、どのような行為で命を奪われるかしれぬ戦国の世で、心身ともに緩めることができるのは、やはり寸分も疑う余地のない相手となる。
「俺も、後で佐助の垢すりをしよう」
「遠慮しとくよ。旦那の馬鹿力で擦られたら、俺様の皮が全部むけちゃいそうだし」
「ぬぅ」
 残念そうに唇を尖らせる幸村を促し、竹のヘラで浮いた垢を削いでいく。丁寧に指の股までをも擦る佐助の所作に、幸村はうっとりと心地よい息を漏らした。
「さ。旦那」
 佐助が、小さな竹楊枝を取り出して、幸村は緊張気味に頷いた。
「細かいシワの垢も、綺麗にしないとね」
 そう言った佐助が、幸村のヘソを竹楊枝で擦る。くすぐったさに身を捩りそうになるのを、幸村がぐっとこらえた。
「ふっふ〜ん」
 鼻歌交じりにヘソを綺麗にした佐助が、竹楊枝を手ぬぐいで拭い、乳首へとそれをあてがった。びく、と幸村が緊張に身をこわばらせる。
「もう。そんな毎回、緊張しなくてもいいだろ」
「う……む」
 ごくりと幸村が喉を鳴らして拳を握り、目を閉じる。佐助の目が意地悪く光り、幸村の乳首の周囲を竹楊枝で擦り始めた。
「んっ、ん」
 擦られるたびに、乳首が硬く尖っていく。頃合いを見た佐助は、乳首を抓んで中心に集まるシワを擦り始めた。
「ふっ、ぅ……ぁは」
 思わず逃げようと体を引けば、つままれた乳首が引かれて声を上げる。
「ほら、旦那。おとなしくしてて」
「ぬ、ぅ……すまぬ」
 ぎゅっと乳首を抓み、中心のシワを丁寧に竹楊枝でなぞり続ければ、幸村の下肢に熱が凝り膨らんでいく。彼の足の間に体を入れて、太ももを閉じられないようにしながら、佐助は丁寧すぎるほどに、幸村の乳首のシワに残る垢をこそげおとしていく。
「んっ、ふ……っ」
「はい、右は終わり。次は、左ね」
「ぁふっ」
 きゅっきゅと手ぬぐいで右の乳首を拭えば、幸村が甘い息を漏らした。彼の下肢はすでに凝りきり、ぷっくりと先走りを浮かばせている。劣情を目じりに浮かべた佐助が、唇を舐めた。
「旦那」
「んっ……ふぁ」
 左側も同じように竹楊枝で擦れば、幸村がもどかしそうに腰をゆらめかせる。凝りきった牡は、とうとう先走りをこぼし始めた。
「ほら。もうちょっとだから、ね」
「ぁはっ、ぁ、う……んっ、ん」
 触れられていない右の乳首がふるえている。それに吸い付きたい衝動を抑え、佐助はあくまで性的な意図は無いという顔をしながら、股間を膨らませていた。
「はい、おしまい」
「んひぃっ」
 最後にシワの中心を強くえぐれば、幸村が顎をのけぞらせた。
「はい、次はコッチね。旦那、もっと足を開いて」
「は、ぁ……ぁうっ」
 羞恥に赤くなりながら、幸村は素直に膝を立てて足を開く。屹立した彼の牡は、ぶるぶると震えながら欲蜜をこぼし、てらてらと光っていた。
「ああ。こんなにこぼして。もう、仕方ないなぁ」
「す、すまぬ」
「んふ。いいよ。じゃ、こっちもするね」
「は、ぁあ、ぁ」
 佐助が根元を指で包めば、安堵したような声を幸村が漏らす。しっかりと彼の牡を掴んだ佐助は、牡のくびれや溝を、竹楊枝で擦り始めた。
「んふぅ、ぁ、は、ぁあぁう」
 幸村の声が震える。根元を掴む指で扱かれたいと思いながら、浅ましく反応をする自分を恥じ、足の指を握りしめる。堪える幸村の姿に、ますます股間を熱く膨らませた佐助は、そっと熱い息を漏らした。
「こっちの裏側も、しっかり磨いておこうね」
「ぁはっ、はぁううっ」
 袋の裏側まで擦られて、幸村はたまらずのけぞり、床に背を着けた。びくんびくんと震える牡に、必死に堪える幸村の姿に、佐助の中で嗜虐心がむくむくと育つ。
「こんなに溢れさせて。仕方ないなぁ」
「ひっ、ぃいっ、ぃあぁあっ」
 竹楊枝で欲蜜をあふれさせる口を擦れば、幸村の腰が跳ねた。そのまま竹楊枝を蜜筒に押し込み、ぐりぐりと刺激しながら牡を扱く。
「はひゅっ、は、ぁあうっ、さすっ、は、ぁあ」
「うん。もうちょっとだから、我慢してね。奥の方まで全部、出しちゃわないと綺麗にならないから」
「ぁひっ、はっ、ぁ、はぁううんっ」
 ぐちぐちと蜜口を竹楊枝で掻きまわされ、根元から括れまでを扱かれる幸村が腰をくねらせる。尖った乳首が触れてほしそうに震えて、佐助は吸い付きたい衝動を股間の熱とともに抑え込んだ。
「ほら、旦那」
「んはぁあああっ!」
 絞るように扱きあげながら、竹楊枝を抜く。びゅるりと勢いよく欲蜜を吹き出した幸村の牡に、佐助は素早く吸い付いた。
「ふはっ、ぁ、は、ぁあ……んっ、ぁ、もっと、ぁ、強くっ」
 佐助の髪に指を絡ませ、幸村が望む。望まれるままに、佐助は喉の奥まで牡を含み、じゅうじゅうと吸い上げた。
「ふはっ、は、ぁ、ああ、ん」
 全てを吸い上げた佐助が、ちゅぽんと口を離す。ぐったりと横たわる幸村の胸が、大きく上下し喘いでいた。
「じゃあ、こっちも綺麗にするね」
 キュポンと小さな竹筒の栓を抜いた佐助が、幸村の腰を押し上げ下肢を天井に向ける。竹筒を傾け、とろりとした液体を幸村の秘孔へ垂らしながら、指でそれを内部へと流し込んだ。
「ぁはぁううっ、ひっ、ぁうんっ」
 ぷちゅりと濡れた音をさせ、幸村の秘孔は竹筒の中にあった液体を全て飲み干した。
「はい。広げて綺麗にするよ。足、持ってて」
「う、うむ」
 腕を伸ばした幸村が、自らの膝に腕を回して肩に寄せる。尻を天に向けて丸くなった幸村に、満足そうにうなずいた佐助が、秘孔のシワをくすぐりはじめた。
「はっ、ぁ、あふ、ぅ、んぅうっ、ぁ」
 性行とするには弱すぎる刺激に、幸村が小さな嬌声を上げる。放った彼の牡がゆっくりと硬さを蘇らせ、佐助の指で秘孔が淫孔へと育つ間に凝りきり、先走りが糸を引いて、ぱたりと幸村の顔に落ちた。
 ぞくり、と佐助の胸が震える。
 佐助の股間はもう、痛いほどに張りつめていた。
「旦那。しっかりとほぐれたけど、奥まで指が届かないから、いつもみたいに俺様で擦るね」
 劣情を隠し、平素とかわらぬ調子で言えば、自分だけが淫蕩を浮かべていると思い込んでいる幸村は、唇を引き結び目じりに朱を差して頷いた。
「すまぬ」
「いいってことよ」
 幸村の腕を、自分の首に回すように導く。彼の足を自分の腰に絡ませて、猛る熱を幸村の淫孔へと押し込んだ。
「はふぁああぁあうっ」
 待ち焦がれていたような嬌声に、佐助の胸が熱くなる。包まれた佐助の熱欲は、幸村の媚肉に優しく包まれ抱きしめられた。
「は、ぁ……旦那」
 ゆっくりと抜き差しをしながら、存在を主張する乳首に口を寄せる。
「ぁはっ、ぁ、はぁうんっ」
 幸村が足を強く佐助の腰に絡め、求めるように腰を揺さぶった。
「はぁ、旦那ってば。はしたないなぁ」
「んんっ、す、すまぬっ……なれど、お、奥が疼いて」
 瞳を潤ませ眉を下げた幸村が、息を乱して佐助に願う。
「掻きまわして、かゆみを治めてくれ」
「うん。いいよ、旦那」
 幸せそうに微笑んだ佐助が、幸村の唇に唇を押し付けた。
「俺様の熱を飲めば、旦那のかゆみは治まるんだよね」
「んっ、は……早く、佐助の熱を奥に」
 じんわりと、佐助の胸が熱くなる。
 無垢であどけない弁丸。全身を自分に投げだす様に甘えてきた幼君。彼を誰にも奪われたくなくて、佐助は性のなんたるかを彼が知る前に、こうして自分を求めるように仕込んだ。
「旦那」
「ぁ、佐助」
 そうして望んだとおりに、幸村は佐助を求めるようになった。初心なままの幸村は、性に関する事柄を破廉恥と言って遠ざける。それでもいつか、この行為が許されぬ事であると知られるだろうと思いながら、佐助は幸村が自分に溺れていると思わせ続けるために、彼に求められるために、真相を知られ首を落とされても構わないと、幸村をだまし続けていた。
「んっ、は、佐助っ、さすっ、は、ぁあうっ、もっと、ぁあ、おくっ、ぁあ」
「うん。旦那、奥に、いっぱい注いであげるね」
「はひっ、はっ、ぁ、あ、さすっ、ぁあ、佐助を、もっと、俺にっ」
 求める言葉が蔓となり、喜びと罪悪で佐助の心臓を縛り上げる。
「うん、うん。旦那、旦那」
「ぁはっ、は、ぁああっ」
 何度も唇を寄せながら、佐助は幸村の肌身を貪り続けた。
「ひっ、ぁ、もっ、ぁあ、佐助っ、もうっ」
「んっ、いっぱい、注ぐよ……くっ、う」
「っあはぁあああぁあああ――っ!」
 どっ、と佐助の想いの奔流が、幸村の奥に注がれる。それを受け止めながら、幸村は凝った愛欲を吹き上げた。
「はぁ、はぁ――は、はぁ」
 絶頂の余韻にあえぐ幸村の額に口づけ、ゆっくりと佐助は抱きしめてくる媚肉から離れた。どろりと幸村の秘孔から、自分の欲があふれ落ちるのにツバを飲み込む。
「は、ぁ。旦那。体を拭って、外に出ようか」
 手ぬぐいを持ち、佐助が幸村の腹に飛んだ欲蜜を拭う。その手首を、幸村が強く掴んだ。
「何?」
 目を向ければ、射抜くほどに強い瞳を向けられた。気圧され言葉を飲んだ佐助は、背中に冷たいものを走らせる。
 もしや、この行為が何なのか、知ってしまったのではないか。騙していたことに、気付かれたのではないか。いや、しかしそうならば、幸村がおとなしくされていた理由がわからない。
「佐助」
 佐助の全身に、緊張が走る。幸村の手が持ち上がり、鋭い視線がさらに強まって、佐助は覚悟を決めて目を閉じた。
「――え」
 殴られると覚悟をした佐助を、幸村がやわらかく抱きしめる。驚き目を開いた佐助に、照れくささに憮然とした幸村が、唇を押し付けてきた。
「えっ、えっ」
 これは、いったいどういう事なのだろうか。混乱する佐助の耳を、鼓膜が破れそうなほど強く、幸村の呼び声が打った。
「佐助ぇっ!」
 キィン、と耳が鳴る。その後で小さくつぶやかれた言葉は、まったく聞こえなかった。
「えっと。旦那、ごめん。ぜんっぜん聞こえない」
「だから、……と、言うておる」
「えっ?」
「だから! 俺とこのようなことをしたいと望むのであれば、正々堂々と求めよと、言うておるのだ」
「へっ?」
 今度は、しっかりと聞こえたが何を言われたのかがわからない。呆然とする佐助から手ぬぐいを奪った幸村は、立ち上がり乱暴に自分の体を拭った。
「とうに、これがどのような意味であるのか、知っておるわ」
 ぷい、と怒ったように乱暴な足取りで浴堂から出て行った幸村を見送り、佐助は首をかしげる。
「えっと」
 幸村の言葉を反芻し、ぶわりと佐助の足元から喜びの風が巻き起こった。
「うそだろぉ」
 ゆるむ唇に手を添えた佐助は、自分の唇を指で押してみる。不器用な幸村の口づけを思い出し、ぱたりと横になった。
「かなわねぇなぁ」
 喜色に溢れた喜びを、たちこめる湯気が温かく包み込んだ。

2013/05/02



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