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モブ×慶次
 人の気配に意識を覚まし、目を閉じたまま前田慶次は辺りをうかがう。そろりそろりと忍び込んでくる気配は、剣呑な気配を隠そうともしない。それを隠すほどの力量が無い、と判断し、押し込み強盗か何かだろうかと予測をつける。それにしては、気配が強い。それに、強盗が盗みたいと思うような物を持っている風体に、自分は見えないと思っている。ならば、かどわかしか。そうであるならば女、子どもや老人ならばまだしも、自分のような体格のいい男を攫うのは骨が折れるだろう。一体、何の用なのか検討がつかない。
 ミシ、と部屋に入った足が床を踏む。そろりそろりと入ってきた者たちが自分を取り囲む。相手は、三人。動きも気配の殺し方も、まるで成っていない。昼間に喧嘩をした相手だろうか。
 そう踏んだ慶次に、膨れあがった気配が向かう。夜具を蹴り上げ飛び起きて、窓の下に移動した。
「おいおいおいおい、兄さんたち。そんな物騒なモン持ち出して、一体この俺に何の用だい」
「アンタのほうが物騒なモン持ってんじゃねぇか」
 押し殺した怒鳴り声に、とっさに手にしていた得物に目を向ける。
「ありゃ。確かに――けど俺は、兄さんたちみたいに抜いちゃいないぜ」
 じり、と男たちが慶次との間合いを計る。鋭い気配の男たちとは裏腹に、慶次はどこか楽しそうな様相をしていた。月の明かりが射しているとはいえ、男たちの表情は見えにくい。さてどうするか、と心中で算段しながら下ろしたままの長い髪が肩にかかるのを払った。
「なぁ、なんでこの俺を狙ってんのか、訳を聞かせちゃくれないかい」
 慶次の言葉が黙殺される。男たちが少しずつ間合いをつめる。その時
「キッ」
 小さな声が聞こえた。この騒ぎに気付くことなく暢気に眠っていた小猿の夢吉が、男が滑らせた足に蹴られたのだ。
「なんだ」
「あっ」
「キキッ」
 全員の視線が夢吉に向く。蹴った男が夢吉をつまみ上げ、ニマリとして慶次を見た。
「オトモダチを傷つけられたくなけりゃ、おとなしくしな。何、タマぁ取ろうってぇ訳じゃねぇし、五体も不満足にするつもりもねぇよ。ちょっと恥ずかしい目を見てもらうだけでぇ」
「くっ、卑怯だぞ」
「卑怯で結構。この小猿がどうなってもいいってぇんなら、ぞんっぶんに抵抗してくれていいんだぜぇ」
「キキィイ」
 恐怖と焦燥を混ぜたような夢吉の声に、慶次が唇を噛む。相手の持っている小刀が夢吉の目元に切っ先を合わせた。慶次が動くと、すぐにそれは夢吉の眼球をえぐってしまうだろう。
「くっ――わかったよ。好きにしてくれ」
 大きなため息をつき、大刀を置いて胡坐をかいた慶次に、夢吉を捕まえている男が頷いてみせる。他の男二人が警戒しながら慶次に近づき、手ぬぐいを取り出した。
「手を、後ろで組め」
 言われたとおりに手を組むと、そこにしっかりと手ぬぐいが巻きつく。念入りに巻かれた手ぬぐいに、腰につけていた竹筒をはずして水がかけられた。
「ずいぶんと、用意がいいなぁ」
「軽口叩いてられんのも、今のうちだぜ」
 夜着の帯が解かれる。男たちの笑みの質が変わったことに、慶次は眉を寄せた。
「俺には、そういう趣味は無いんだけどな」
「何されるのかわかったのか。察しがいいじゃねぇか」
「全く分からないほど、子どもじゃあないんでね」
「わかってんなら、話が早い。おとなしく、ヤられろや」
「イヤだって言ったら、逃がしてくれんのかい」
「愚問だろうが」
「だろうね」
 申し訳なさそうな顔をして見てくる夢吉を、安心させるように笑んでみせる。
「理由くらい、教えてくれてもいいだろう」
「――――おいと、ってぇ娘。知ってんだろう」
 言われ、考える。しばらくして薬種問屋の娘だと思い至り、頷いた。
「なるほど。でもさ、惚れた腫れたの問題を、こういう形で意趣返しってぇのは粋じゃないとは思わないのかい」
「雇われただけで、俺らは事情なんざぁ知らねぇよ。アンタがどこの誰かも関係ねぇ。言われたことをして、おあしをもらう。それだけさ」
 すると、どこかのお店の若旦那あたりが惚れた相手が、慶次と仲良くしている娘を見て悋気を起こしたか、素性も身分も申し分ない慶次だが、町人と武家とでは結ばれるはずもなく、娘がたぶらかされているとでも思った親が仕向けたか――そう予想をつけた慶次は、深いため息をつく。
「じゃあ、兄さんたちに言い訳しようとしても、無駄ってことか」
「そうそう、無駄ってことだ。おとなしく、楽しんじまいな」
 うえぇ、と最高にまずいものを食べたような顔で、慶次が舌を出す。
「さっきも言ったけどさ、そういう趣味、ないんだけど」
「わりぃな。俺らはアンタみてぇのが男に組み敷かれて、ぴいぴい鳴く姿を見るのは好きなんだ」
 言いながらさりげなく、男が夢吉と小刀をちらつかせる。くだけた口調で話しかけてくるが、男の目は欠片も笑っていない。
「覚悟を決めろってぇ事か」
「多少、アンタも楽しめるようにはしてやるよ」
 慶次の傍にいた男が、夢吉を捕まえている男の腰についていた巾着をはずして丸薬と軟膏の小瓶を取り出す。
「何をしてもいいってぇ言われちゃいるが、お武家に恨まれるのも困るんでな。まぁ、コッチが考える双方立てた方法ってぇのが、これしか無ぇんだよ」
「ほら、口開けな」
 巾着を持った男が丸薬を見せてくる。口を開け、それを飲み込むと、ほろ苦く甘い味と共に鼻腔に花の香りのようなものが抜けた。
「媚薬だよ――すぐに好くなる。無理やりでもコッチは問題ねぇんだけどな」
「せめてもの温情ってぇところかい」
 軽く肩をすくめただけで返答をせず、男は顎で二人の男に指図する。頷いた男二人が、おもむろに魔羅を取り出した。
「臭ぇだろうが、我慢してしゃぶってくれや。オトモダチの目玉を地面に落としたくは無ぇだろ」
「キッ、キィイイ」
 月光で切っ先がきらめく。ぶるぶると震える夢吉に、慶次は目を細めた。
「言われたとおりにしていけば、夢吉を傷つけないんだな」
「言われたとおりにしなけりゃ、逆らうごとにオトモダチの体が少しずつ地面に落ちるぜ」
 きゅっと唇を噛んでから、ゆっくりと口を開けて舌を伸ばす。片方の男がそこに魔羅を乗せた。
「噛んだりしても、あの小猿の無事は保障しねぇぞ」
「はじめてなんだ。その辺は、考慮してほしいね」
 さっさとしろと言いたげに、男が腰を突き出す。ぐっ、と喉につめそうになりながらも逃げ場を探し、魔羅に舌を絡ませる。野卑な視線が自分に絡んでいることを感じながら、馴れぬ口淫をしているうちに体の中心に熱が集まってきた。
「んっ、ふ――んぐっ……ぁむ、ふ」
 口内が性器であるかのように、行為をすればするほど甘い疼きが広がっていく。下帯の中で自らのモノが起き上がり始めているのを自覚しながら意識しないように、早く終わらせて夢吉を救出しようと、それだけを頭に浮かべてみるが一度自覚したものは簡単に拭いきれない。
「む、ぁんぅ――ふ、くぅ」
「クスリが、いい具合に効いてきたみてぇだなぁ。イイ顔になってきたぜ」
 クックと笑いながらかけられた言葉に、自らの牡がビクリと震える。咥えている男の足が、慶次の下肢に触れた。
「ふっ、あ――」
 下帯を器用に足の指で掴んでずらし、飛び出した慶次の魔羅を指の間に挟む。慶次の頭を押さえつけ、体の均衡を保ちながら足淫を始めた。
「っ、ぁ――は、ぁあっ」
 肌の上を緩やかな熱が走っていく。思わず腰を揺らした慶次に、男たちは下卑た笑みで唇を舐めた。
「口が留守になってんぜ、慶ちゃんよぉ」
「んぐっ……ぉぶっ、んぅう」
 頭を押さえつけられ、飲み込まされる。息苦しさから逃れるために、それをしゃぶった。
「んっ、ぐぅ……じゅ、ぅうんっ」
 苦しそうに眉根を寄せる慶次の右で、手の空いている男が腰を下ろす。耳に舌を這わせ、胸の突起に指が伸び、尻を揉まれた。
「ふっ、んぅう――ぐっ、ぁふ、むぅうう」
「こら、暴れんじゃねぇよ」
 ぞくぞくと背筋を這い回る快楽に身を震わせる慶次の動きを封じながら、愛撫が繰り返される。もどかしさと不自由さに、慶次の中の何かが大きく膨らみ、それが飲まされたものの効果を増幅させた。
「んぅうっ、ふぐぅう……んっ、はぁああっ」
 激しく頭を振り、口内から牡を吐き出して声を出す。体の中を小蛇が這い回っているような感覚に、体中で喘ぐ慶次を二人の男が弄ぶ。
「逃げるんじゃねぇよ」
「ひっ、はぁあ――も、ぁ、だめだっ、や……ぁあっ」
「逃げてもいいけど、オトモダチが残念なことになるぜ」
「キィイ」
 夢吉の声に、慶次がはっとして顔を向けた。申し訳なさそうな顔の小猿の目のそばに、刃物のきらめきがある。唇を引き結び、怯えながらも泣き出しそうな夢吉を見つめた。
「大丈夫だよ、夢吉。俺は、女の子じゃないから傷物だといわれたりなんて、しないからさ」
「……キイィ」
 安心させるような笑みを浮かべてから、慶次が深く息を吸い、ゆっくりと吐き出す。目を閉じて身に走るものを自覚し、受け止め、瞼を上げる。
「兄さんたち、手荒なことはしないって言ったよね――俺も、このままじゃ辛いし…………覚悟を決めるよ。どうせなら、楽しんだほうがいいとは思わないかい」
 怪訝な顔で、男たちが顔を見合わせる。それに、挑むような目で唇の端を持ち上げ、ささやいた。
「祭りも喧嘩も、派手なほうが楽しいだろう」
 慶次の声音に、喉を鳴らした男の手から夢吉に向けられていた刃物が落ちる。刃物とともに落とされかけた夢吉は、ひょいと掴んでいた男の腕にしがみつき、体を伝って床に下りた。
「ごめんな、夢吉。ちょっと外で遊んでいてくれ」
 男たちの手が慶次に伸びる。それを受け入れながら微笑む慶次が月光に溶けるのを、夢吉は呆けたように眺めていた。


2010/09/23



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