のんびりと前田慶次が旅籠で過ごしていると、お客人がいらっしゃっていますと声をかけられた。「客? 誰だろう」「とんでもなく綺麗な、片目を隠していらっしゃる男の方です。身なりからして、立派な方かと」 ふうん、と首をかしげた慶次が「西の鬼か、東の竜か――。ま、どっちでもいいや。通してくれよ」 頭を下げて女中が去り、代わりに現れたのは奥州の独眼竜、伊達政宗だった。「ああ、東の竜だったか」「久しぶりだな、お祭り男」「ほんっと、久しぶりだよね。今日は何? どうしたのさ」「そりゃあ、こっちの台詞だぜ。領内に来てんなら、すぐに顔を出しに来いよ」 ゆったりと部屋に入ってきた政宗が、腰を下ろす。「もう、湯は使っちまったのか」「飲みに行くなら、着替えるけど」 くつろいだ襦袢姿で、髪も下している慶次に、政宗が光のある左目を眇めた。「夜の町に繰り出すには、長旅で疲れちまったって所か」「まぁね。元親の船に途中まで乗せてもらっていたけど、山を越えるのは疲れるよ」 ちらりと慶次が部屋の隅に目を向け、そちらに視線を移動させた政宗が頬を緩める。そこには、ぐっすりと眠っている小猿の夢吉がいた。「こっちに着いたばっかりだからさ。ゆっくり休んでから、訪ねようと思っていたんだよ」「一刻も早く、俺に会いたいとは思わなかったってことか」「っ……そういう、意地の悪いことを言わなくてもいいだろ」 ぱっと頬を赤らめた慶次に、政宗は皮肉に唇をゆがめる。そこに、失礼しますと女中が現れ、酒と肴、煙草盆を置いて行った。「政宗がお忍びで来たのは、俺に一刻も早く会いたかったからかい」 意趣返しとばかりに、杯に酒を注ぎ唇を濡らした慶次が言えば「そうだと言ったら、どうする」 煙草に火を点け吸い始めた政宗が、表情も変えずに返した。「そんなふうに、恋焦がれてもらえるなんて、ありがたいねぇ」「Ha――惚れた腫れたと騒がしいアンタが、言う台詞じゃねぇな」「じゃあ、なんて言えばいいんだよ」 深く煙を吸い込んだ政宗が、慶次に顔を寄せて紫煙を吹きかける。ごほっとむせた慶次に妖艶に目を細めれば、察した慶次が政宗の煙管に指をからめ、煙草盆に灰を落として火を消した。「俺は、男娼じゃないんだけど」「そういう遊びも、面白いんじゃねぇか」 顔を寄せあい、唇に触れて鼻を鳴らす。「じゃあ、煙を吹きかけられた俺が男娼で、政宗が客ってこと?」「花魁のアンタを買った、上客の遊蕩息子って所を演じてみようか」「遊蕩息子にならなくても、大名なんだから、そのまんまでいけるんじゃないか」「違ぇねぇ」 鼻先を突き合わせて同じ笑みを浮かべ、政宗が慶次の唇を舐める。慶次が顎を寄せて唇を押し付け、舌をからめた。「んっ、ふ……は、ぁんっ、んぁ、は」「甘いな」「政宗の、口吸いの仕方がだろ」 揶揄する政宗に、おどける慶次の襟をくつろげ唇を寄せる。「ぁ、は――」「相変わらず、良い体してんな」 派手な身なりで恋よ花よと口にする慶次は、身の丈ほどの大刀を軽々と振り回し、奥州筆頭である政宗の剣劇を受け止めることが出来るほどの腕を持っている。しなやかで厚い肢体に手のひらを滑らせながら脱がす政宗の襟に、慶次の手が伸びた。「政宗は、また痩せたんじゃないのかい。ここのところ、忙しそうだったもんな」 無駄なもの一切をそぎ落とされた政宗の体躯は、細身でありながら鞭のように筋肉がしなり、恐ろしいほどの握力でそれぞれの手に三本の刃を掴み、獲物を屠ることが出来た。「なんで、俺が忙しそうだってことを、アンタが知ってんだ」 政宗の手が胸乳の突起に触れて、爪で上下にはじきはじめる。「んっ……ぁ、は……だって、ぁ、惚れた相手のことは――っ、気になるじゃないか、ぁ、ああ」「How cute……アンタが女なら、側室にして俺の子を産ませるんだがな」「んぁ、ばっ……何、言ってんだよ」 両の胸の実をこねられて、慶次の息が荒くなる。ほんのりと朱に染まった肌に目を細め、彼の腰にまたがった政宗は尖りの周囲の色づきごと、胸乳を搾った。「いっ……ぁ」「Hey、色男。今夜はアンタ、男娼の役回りなんだろう。だったら、客の俺に奉仕をしてもいいんじゃねぇか?」 政宗が、腰から胸の下へと移動する。手を伸ばした慶次が、政宗の裾をくつろげ下帯の横から牡を取り出し、胸筋の間にそれを押し付けるようにして首を伸ばし、先端を舐めた。「Okay……わかってんじゃねぇか」「んっ……変態だな」「応じるアンタも、相当だと思うぜ」「んぁっ」 きゅりっと胸の実をねじられて、慶次が鼻にかかった声を出す。それに唇を舐めた政宗が腰を動かし、胸筋に牡を擦りつけた。「ほら、しゃぶれよ――慶次」「んっ、はむぅ、ん、うんっ、んっ」 胸の間から政宗の牡が浮かぬよう、しっかりと押さえつけ幹を扱きながら先端をしゃぶる。胸の実に触れていた政宗の手が離れ、慶次の下肢を後ろ手で探り取り出して、扱き始めた。「ずいぶんと元気だな。溜まってたんだろう」「ぁ、そういう政宗だって、んっ、先走りが、ぁ、ねっとりして濃い……はっ、あ」「アンタを見てたら、子種があふれて濃くなっちまうんだよ」「何だよ、それっ……ぁ、は、ぁんっ、ふっ、んぁ」 慶次に昇らされた政宗の牡に、臨界が迫る。それに合わせるように、政宗は慶次を扱いた。「出すぜ……っ、く」「んぁ、あっ、は、あぁあっ」 びゅる、と政宗が子種を吹き出しながら、慶次の鈴口に爪を立てる。腰を浮かせた慶次が放つものを指に絡めながら、思わず顎を反らし牡から口を離した慶次の顔に子種が降りかかるのを眺め、にやりとした。「ちゃんと咥えておかねぇから、顔中が子種まみれだな」「ううっ……政宗が、妙な所に爪を立てるからだろ」「妙な所ってのは、ここのことか」「ひんっ、ぁ、ばかっ」 放ったばかりの柔らかな牡に爪を立てられ、慶次がぶるりと大きく震えた。悪童の顔でそれを眺めた政宗が、慶次の顔にかかった自分の子種を舐め、慶次の口に移す。「ぅ、んっ……は、ぁ……濃くて、喉が渇いちまう」「なら、後で酒を飲めばいい」 慶次の上から下りた政宗が、ぺしりと慶次の膝を叩いた。「ほら、自分で足を抱えて広げて見せろよ。今夜は、男娼の役回りなんだろう」「もっと、色っぽく優しく扱ってくれても、いいんじゃないか」「Ha! そんなことをしたら、アンタは照れくさくて仕方がなくなるんじゃねぇのか……お望みなら、してやっても構わねぇがな」 声を低めて喉を震わせた政宗に、ごくりと慶次が唾を飲んだ。「い、いいっ……遠慮しとく」「なら、さっさとケツを広げて見せな」「その言い方も、どうかと思うんだけど」 ぶつぶつ文句を言いながら、慶次が膝を抱えて体を丸める。「Way to go」「んっ――」 慶次の蜜液で濡れた指を、彼の秘孔に押し付ける。くるくると入口を撫でてから、指を押し込んだ。「ぁ、はっ――う、ううんっ、ぁ」「もっと足を抱えろよ」「ううっ」 慶次が足を持ち上げて、それを助けるように政宗が慶次の腰に肩を当てる。尻が天井に向き、政宗は指を食ませた横に、舌を差し込んだ。「ふっ、ぁ、んんっ、ま、さむね……」 ぬくぬくと指で解され、入口を舌先でくすぐられながら唾液を注がれ、慶次の牡が小刻みに震える。「もっと体を丸めりゃあ、自分の魔羅をしゃぶれるんじゃねぇか」「やっ、そんっ、う、ぁ、はぁう」 内壁をほぐしながら、空いた手を牡に伸ばして先を捏ねる。再び凝ったそこから溢れる先走りが、慶次の顔にしたたり落ちた。「自分の先走りで顔を濡らしてちゃあ、世話ねえな」「んっ、ぁふ……も、ぁ……あんまり、意地の悪いことを言わなっ……ぁ、でくれ、よぉ」 わななく太ももに唇を寄せ、政宗は慶次の尻をゆっくりと床に戻す。「なら、俺のイチモツを咥え込んで、俺の腹を汚すか? 慶次」「は、ぁ……政宗……んっ、早く…………指じゃ、物足りないよ」「素直な奴は、嫌いじゃねぇぜ」「自分が……は、ぁ、素直じゃないから……だろ」 ぴく、とこめかみを引くつかせた政宗が、慶次の膝を抱えて一気に貫いた。「がっ、ぁ、……あぁあっ、ひっ、いきなり、お、奥っ、そんっ――っ」「生意気な事を言うからだ」「はひっ、ぁ、ばか、ぁ、そんっ、したら……くるしっ、ぁ」「嘘をつくなよ。俺の腹にビンビンになって当ってるイチモツが、気持ちがいいと叫んでるぜ」「はっ、ぁ、ああっ、はっ、はげしっ、ぁ、そんっ……ひ、久しぶりでっ、ぁ」「ああ……久しぶりだ――っ、だから、こうなんだろう……一回出しゃあ、次は優しくっ……してやるよ」「ぁ、は、ぁあっ、そんっ、ぁ、何回、する気……っ」「アンタが意識失くすまでに、決まって……っ、だろ」「うそっ、だろ……ぁ、は、ぁあっ」 挿入の濡れた音と、肌が打ち合う乾いた音とを響かせながら、そんな言葉を交し合う。政宗の先走りが慶次の内壁を溶けるほどに熱くさせ、慶次の先走りが政宗の腹を濡らす。「ぁ、もぉっ、ぁ、はっ、ぁあっ、でるっ、ぁ、も、イクっ、ぁ、イクぅああっ」「くっ――ぅ」 大きくのけぞった慶次が、欲を吹き出しながら政宗を絞り上げる。それに誘われるまま、根元深くまで突き上げた政宗が弾けた。「はっ、ぁ、あはっ、ぁ、ああ」 残滓を振りまく慶次の牡を絞りながら、ゆるやかに腰を動かし全てを注いだ政宗が、顔を寄せて射精の余韻に胸を大きく上下させる慶次の唇に唇を押し付ける。「んっ、は、ぁ」 緩慢に腕を伸ばし政宗の首に絡めた慶次が、口を開いて政宗の舌を招き深い口づけを求めた。そうして互いの口腔を気だるげに堪能した二人は身を起し、体を離して杯を持ち、酌をしあってのどを潤す。「はぁ……まったく。ろくな会話も無しに誘うなんて、即物的すぎやしないかい」「それに乗ったアンタは、どうなんだよ」 政宗の返しに、慶次がひょいと肩をすくめた。「政宗」「Ah?」 杯を置いた慶次が、這うようにして政宗に顔を寄せる。「政宗の口から、飲みたいんだけど」 甘えるように肩に頭を乗せた慶次に「All right」 ささやくように答えて、政宗が酒を含み口づける。そのまま舌をからめ腕を回し、二人は情交を再開した。 そうして幾度も戯れながら肌身を合わせ、精も根も使い果たすまで身を重ねあった二人は、ぐっすり眠った夢吉がすっきりと目を覚ます頃には、子どものような寝顔を重ねあわせていた。2013/04/02