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途(R18版)
 月を見上げる家康を見止め、三成は寝室に向かう足を止めた。声をかけようかかけまいか悩む前に、視線が吸い込まれて動けなくなる。何かが、三成をその場に押し留めていた。
 どのくらいの時間が経過したのか。気が付くと、家康に見つめられていた。
「どうしたんだ、三成」
 貴様こそ――と声を発しようとして、止める。声をかけてきた家康は、いつもどおりの――三成からすれば能天気にすら思える笑顔で、先ほどまでの表情とは、かけはなれていた。
 迷子の子どものような、泣き出しそうな――先ほどの顔とは。
「部屋に戻る途中だ」
「そうか。もう遅いもんな。おやすみ三成。良い夢を」
 ふと、その表情に陰りを見つけた気がして、目を細める。家康が、首をかしげた。
「なんでもない」
「そうか。何か、悩みがあるのなら……ワシでよければ話を聞くぞ」
「貴様のような弱い人間になぞ、頼る必要など無い」
 吐き棄てると、ハハハと軽い声で笑われた。
「弱い、か――――三成からすれば、そう見えるか」
「弱くないとすれば、甘い――な」
 家康の目が、痛そうに細められる。
「何だ」
 軽く頭を振ってから、常より落ちた声で――顔も落として、言われる。
「もし、今日――オマエを止めたことを甘いといわれているのなら、ワシは――甘いままでかまわない」
「秀吉様にたてつくものなど、生かしておく価値も無い」
「考え方が、変わるかもしれないじゃないか! 話せば、わかるかもしれない」
「だから、貴様は甘くて弱いと言うんだ」
 家康の顔が、先ほどの――三成を留めた表情に変わる。
「なぁ、三成――ワシは……」
 言いかけ、首を振り言葉を止める彼の姿が酷く小さく思えて、戸惑う。
「――三成の言うように、弱いのかもしれない」
「何を……」
 家康が、自分の腕を押さえるように掴む。それが震えているのを見て取り、三成の目が泳いだ。何を――家康は何を震えているのか。
「なぁ、三成――生きるという事は、何だと思う」
 ぽつりと呟かれたものの意味が、わからない。
「平和な――皆が笑って暮らせるような世を作りたい。そう、思う。そう思うのに――それに向かうために多くの犠牲を払うのは、どうしてなんだろう。――――知り合って、深くかかわりあえばそれが絆となり、そんな相手には刃を向けたくは無くなるだろう。そんな――そういう繋がりを、絆の力を…………もっと広めて、そうすれば無駄な血を流さずにすむんじゃないか。そんなものを、大切にすれば――――」
 くだらない、と常ならば吐き捨てることが出来るはずなのに、何故かその言葉が浮かばなかった。現状を把握できずに混乱する。心音が、高くなってくる。呼吸が、苦しくなる。――――目の前のこの男は、本当に自分の知っている徳川家康なのだろうか。こんな、弱々しく苦しそうで、何かに迷っているような顔をする男だったろうか。
「絆――それこそが、この世に平和を、平定をもたらすものだと、ワシは思う。だから……もう戦う意思を放棄してしまったものを、斬らないでくれ、三成」
「――――何を言う。秀吉様に刃向かうことは慙死に値する。生きる価値も無い」
「そうやって斬れば、残されたものは――失ったものは、悲しむ。 怒り、恨むかもしれない。それが連鎖をすれば、また争いが生まれる。そうは思わないか、三成」
「思わんな――――秀吉様に賛同するものだけが、生きる世を作ればいい。貴様も、同じ思いでこの場にいるんじゃないのか」
 じわり、と泣き笑いのようなものが家康に滲む。すぐにそれは息苦しそうになり、落胆と苦笑の混じったものに変わった。
「――――そうか。わかった」
 何が、とは問わなかった。家康の顔は、どう見ても、納得できていないと書いてある。理解だけはした、ということだろうか。
「家康……」
 三成の腕が動く。それが家康に触れる前に、家康の手が重なった。
「家や…………」
 今にも泣き出しそうな顔が、視界に広がる。突き動かされる衝動のままに三成は彼を引き寄せ、家康の腕は彼の背に回った。
 近場の納戸に逃げ込むように入ると同時に、唇を重ねる。両手で肌をまさぐり、互いの熱を求め合う。
「んっ、う――ふぅ」
 舌を絡め、強く吸うと家康の鼻から息が漏れた。彼の肌は、酷く暖かく心地よく――――極上に不快だった。その熱を全て奪い去りたくて、喉笛に喰らいつく。
「っ、う――ぁ、痛っ……ん、三成――ァ」
 ぷくりと浮かび上がった血を舐め取り、それによく似た胸の実へと舌を滑らせる。舌先でつぶすように転がすと、家康の喉が上下し、細い息が漏れる。執拗に舐りながら、みっしりとした筋肉を両手で撫でさする。小刻みに震えるそれは、更に熱を高めて忌々しさを増していく。
「っ――家康……」
「んはっ――ぁ、三成ッ……みつっ――んぅ」
 自分の声が熱っぽいことに戸惑いながらも、三成の舌は――手のひらは家康の肌を這い回る。うっすらと汗ばみ始めた肌に桃の花びらを散らし、不必要なものを剥ぎ取る彼の髪に、家康の指が絡んだ。
「んっ、ぁ――は、ぅう…………く、んぅう」
 中心の猛りはすでに、先を濡らしている。それを口腔に引き入れ、熱を全て吸い取ろうと吸引すると家康の腰が跳ねた。
「んっ――ふぁ、んっ、んんっ…………三成ッ、ぁ――は、ぁうっ」
 甘ったるく細い声が、家康の口から漏れる。口内で熱を増すものから苦味のあるものが溢れてくる。
「ぁ――ダメだっ、三成――放せッ…………っ、アァ――でるっ、でるっ……から、ァアアッ」
 ひときわ大きく震えたかと思うと、それは三成の喉に多量に熱を吐き出した。むせそうになりながらも鼻から息を抜き、全て飲干す。ゆっくりと口を離し見ると、涙目の家康がばつの悪そうな顔をしていた。
「――なんだ」
「なんだって……三成、だって――――ぅ」
 たまらなくなった、というように顔をそらす姿に目を細める。ギリ、と何かが胸を締め付けた。太ももを抱え上げ、大きく開く。
「うわっ、ちょ――三成ッ?! みつ――ッヒ」
 顔を寄せて尻を割り、その奥にあるものに舌を伸ばす。わななく太ももを押さえつけ、窄まりに舌を入れてかき乱すと、収縮しながら三成の唾液を飲み込んでいく。ソコが収縮のたびに濡れた音を発し出してから口を離し、指に変えた。
「んっ、くぅう――ぁ、やめっ……三成ッ、や、ぁあ――は、ぁふっ」
 頑なに拒もうとするそれを指で広げながら、蟻のとあたりを舐める。ぶるりと震えた家康の体が弛緩した隙に指をより深く押し込め、はれぼったくなるまで同じ行為を繰り返した。
「んぁ――――っ、はぅ、くんっ…………み、つな――ぁ」
 鼻にかかった声で身をよじる家康の牡が猛り、時折プシプシと小さく液を吹き散らす。それの横腹に軽く歯を立てると、ヒクッと家康の喉が鳴った。
「ぁ――みつなりぃ」
 ぼろぼろと涙を溢しながら伸ばしてくる手に促されるままに顔を近づけると、唇を寄せられる。そのまましがみついてきた家康の足を高く上げさせ、三成は自身を彼に埋め込んだ。
「がっ――ぁ、くふぅうっ…………はっ、ぁ――はくっ、うう」
「ゥ――く、ふっ…………」
 指は滑らかに挿入できるようにまでした箇所は、三成の侵入に惑い、窄まる。ぎちぎちと圧迫される息苦しさに三成が息をつめると、家康の爪が背中に食い込んだ。
「はっ、くぅ―−三成っ、みつ、な……ぁあっ、はぅ――んっ、くぅう」
 片手を家康の牡に伸ばし、先端に指を絡めると緊張が解けた。その隙に一気に押し入り、根元まで納めてしまう。すぐにでも動き出したい衝動を抑え、圧迫が和らぐのを待とうとした三成の耳に、家康の息が触れた。
「いい――から……三成――――好きに、動いてくれ」
「貴様――こんなに狭い場所で、どう好きに動けと」
「――――はは、そうだな……すまん――っ、ぅ」
 笑った瞬間に収縮した内壁に、二人同時に眉根を苦しげに寄せる。それにまた笑った家康が、安堵したような泣き顔になった。
「三成――――」
「何だ」
「これも、絆のひとつだと…………三成と深い絆を作れたのだと、思っても――――いいだろうか」
「――――知らん、聞くな」
「では、勝手にそう思うようにしよう」
「フン、好きにしろ」
「あぁ、好きにするさ」
 声音が変わったことに片眉を器用に上げた三成に、なんでもないという代わりに唇を寄せてくる家康の熱を全て奪おうと――――代わりに自分で満たそうと、彼の中に深く穿ち、注ぎ続ける。
 近い未来に、途が別れるなど、露ほども思わずに――――


2010/10/23



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