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フタナリ庵
 ソファの上で、ぼんやりテレビ画面を眺めていた京が、目だけを背後に向ける。少し細めた目が迷い、足を組みなおして視線の位置を元に戻す。しばらくしてドアが開き、室内の空気が重くなった。同時に、京の口の端が持ち上がる。重さの中心が京に近づき背後でとまると、顎を上げて背後の相手を視界に入れた。
「――今日はまた、エラく不機げ…………」
 言いかけて、止まる。庵の顔を見ようとする京の視界を遮るものが、あった。
「……ブリス?」
 にしては、違和感がある。いつもよりも、顔が幼くない。背も、少し高い気がする。
 首をかしげた京が体を回して庵に向かい、上から順に視線を下ろし、腰で止まる。パンツの上に、マイクロミニのスカート。これは、まさか――
「なりそこない?」
 ゴッ――と鈍い音がして、京の後頭部に衝撃が走る。勢いで、ソファの背に顔面が沈んだ。
「ぶっ……の、ヤロッ」
 わしっと胸をわしづかみ、文句を言おうとした京の顔がゆがむ。
「ぷっ」
胸を掴んだまま肩を震わせて笑う京の上に、鋭い視線が突き刺さった。
「あぁ、もぉヤッベェ」
喉を震わせながら庵の胸を叩き頭を振る。
「何そのマニアックボディ」
 ソファが揺れる。蹴りを入れた庵の足を諌めるように叩いてソファに登る京が、庵に顔を近づける。
「ふぅん? なかなか――」
「――何だ」
「ブリスまでいかない感じも、結構イイかもなぁって――あ、眉間にシワ寄せんなって」
 グリグリと、眉間に指を突き立ててくる京の手を払おうとした庵の手首が変わりに捕まり、強く引かれる。
「っ?! ――何の、真似だ」
 ソファに倒されそうになるのを堪え、ますます眉間のシワを深くした庵に、意外そうな顔で京が言う。
「違うのかよ」
 二人の視線がぶつかる。少しの間をおき、庵が京の横に座った。フフン、と満足そうに京が笑む。
「何か、飲む?」
「――いらん」
「オレは飲む」
言いながら、冷蔵庫に向かい缶ビールを二本取り出すと、片方のプルタブを開けて口をつけながら戻り、もう片方を庵の頭に置く。受け取ろうとしない庵に肩をすくめ、胸の間にソレを押し込む。
「飲まねぇと、マズくなんぞ」
「いらん」
「飲んどけよ。ちったぁアルコールが入っていたほうが、いいだろ」
 京が爪を缶にぶつけて軽い音を立てる。しばらく京を眺めてから、庵は缶ビールをテーブルに置き、立ち上がる。背中を見送ってから、庵が置いた缶ビールを手にする京。しばらくして、庵がウイスキーとグラスを二つ手にして戻った。グラスにウイスキーを注ぎ、片方を京に差し出しながら、自分はグラスに並々と注いだソレを一気に飲み干す。
「――おいおい」
「飲め、と言ったのは、キサマだ」
 ゆっくりと、低く唸るように言い、もう一度同じ量のウイスキーをあおる。その姿に苦笑しながら、肩を抱き寄せ耳元に唇を寄せる。
「ああ、言った」
 相手を射抜き殺せそうな庵の瞳に口付けて、体をまたぐ。そのまま唇を落とすと、つまらなさそうな顔で、庵が受ける。胸の間に顔を埋めながら、その表情に目を細め、服を脱がせていく。
「可愛い抵抗の仕方、してんじゃねぇよ」
 京のつぶやきに、片方だけ目を細める。
――欲しいクセに
 口の中で発せられた言葉は、庵に届かず消える。胸の輪郭を舌でなぞりながら、中心へ進んでいく。庵の手が拳の形にかわり、ゆっくりと瞳が閉じられる。無感動を決め込むつもりの庵に苦笑し、硬さを増した胸の中心を舌先で転がし、軽く歯を立てて引きながら、掌で胸の輪郭をくすぐるようになぞる。
「――っ、ふ」
 庵の口から漏れる息。それでも無反応であるかのように振舞おうとする庵の頬を、京は思い切り引っ張った。
「っ――何だ」
「何だ、じゃネェよ。何プレイしてぇワケ?」
払われた手で、庵の股間を掴む。
「こんなにしてるクセに」
あきれた顔を近づける。
「オレ相手に、無意味なことしてンじゃねぇよ」
 庵の手が京の顔面を掴み、ソファに沈める。下着ごとズボンを引き剥がし、京のペニスを引き出し噛み付く。
「っい、テェ……なコラ! どうせなら、その胸使えよなっ――痛ッ!」
 庵の爪がペニスに刺さる。とっさに膝を繰り出した京から逃れようと身を起こすが、胸の先が膝に擦れて顔をしかめる。
「身幅、わかんねぇか」
「チッ」
 後方に飛んだ庵に、口笛を吹く。
「すっげぇな、ソレ」
 顎で庵の胸を指す。脱ぎきっていないブラウスが、胸の形を強調している。無言で臨戦態勢を取る庵に、イタズラをする前の子どものような顔で近づき、威嚇をするも攻撃をしてくる気配の無い相手にキスをした。
「まどろっこしいのは、オレらにゃ向かねぇだろ」
 もう一度キスをしようとした京の体が壁に押し付けられる。姿勢を低くした庵に警戒をした瞬間、ペニスが柔らかいものに包まれた。
「オイオイ、えっらいサービスだな」
「黙れ」
 肩をすくめて庵の髪に触れる。胸に挟まれ突き出た先端を、庵の舌が突く。にじみ出た先走りと唾液がペニスと胸を濡らし、口付けているような音がしはじめた。
「足んねぇ」
 つぶやいた京が、一歩前に出る。のけぞる形になった庵の寄せられた胸を片手で掴み、突起を指の間に挟む。
「しっかり、咥えてろよ」
 手に力を込めて庵の胸を固定すると、強く腰を打ち付ける。つかまれた胸と指の間で潰される敏感な箇所への痛みに顔をしかめながらも、首を動かし動く京を捉える庵。それからワザと逃れるように、京が動く。
「ッ、ク――」
 ビクッと跳ねた京の先端から吐き出されたものが、庵の顔に広がる。
「あぁ、だからしっかり咥えてろっつったろ」
 ニヤニヤ笑いながら、髪に飛んだソレを指で伸ばす。
「髪に付いたら、取れにくいの知ってんだろ――ッ!」
 庵の爪が、京の腹をえぐるように動き、とっさに蹴りを入れながら避けるも、裂かれた皮から血がにじむ。
「チッ」
 忌々しそうな庵が、指先に付いた血を口に含んだ。
「んなスネんなよな」
 一瞥をくれて去ろうとする庵をあわてて抱きしめる。
「離せ」
 低く唸る声に、首筋にキスで返事をする。口付けを繰り返しながら庵の体を自分のほうへ向けて、尻の肉を掴み、揉みながら口内へのキスをした。
「ンッ…………ふっ」
 口内をまさぐられながら尻を割られ、庵の体で弛緩と緊張が交錯する。強く腰を重ねて足を絡め、互いの体で互いのペニスをすり潰すように体を揺らした。
「ぅ――ン、くふっ」
「は、ァ……」
 うっとりとため息をついた京が体をずらし、庵の足を自分の背後に招いて彼の中へ沈む。
「ッガ――ァ、ぎ、……ッ」
 気をつめる庵をあやすようにキスを繰り返しながら、ゆっくりと深く沈んでいく。ソファに移動し、繋がったまま庵を転がすと、彼の足を肩に乗せ、更に深く身を寄せる。
「ひぐっ――ッ、アァ…………」
「あっ、ちィ……火傷しそ」
 クックと喉の奥で笑いながら庵の鼻に噛み付く。庵も首をめぐらせ、京の鎖骨に噛み付いた。
「痛ッ――ァ、コラ」
 ギリギリと歯を立てられて皮がめくれる。ヒリヒリとした痛みに苦い顔をして、グンと深く庵をえぐった。
「ア――――」
 庵が顎を仰け反らせ、京の鎖骨から歯が離れる。それでも狙う瞳の色を残す庵に、口を大きく横に開いて、腰を打ちつけた。
「はっ――ァ、ッ」
「ンうッ……ァ、うァ――」
 あえぐというよりも吼える、という態の庵の熱に指を絡ませ、さらに追い詰める。
「あ、ッ――ひっ、……あぎっ、ぐ、ウゥ――」
 舌なめずりをする京の目に、恍惚が浮かぶ。どんなに跳ねても離れることの無い互いの視線が、細められ――――
「ひぐっ、う……アァ――」
「っ――くぁッ」
 全てが白く、弾けた。

 気だるい余韻を楽しんでいると、モゾリと庵が動いた。先ほどまでと比べると違和感のある、いつもの感触に首をかしげて掌を庵の胸に当てると、硬かった。確かめるようにまさぐると、手の甲をペチリとはたかれる。
「ちょっと位、いいだろが」
 唇を尖らせると、忌々しそうなため息で返事をされた。立ち上がり、浴室へ向かおうとする庵に声をかける。
「ちょい待て」
 ソファから跳ね起きて台所へ向かい、缶ビールを取り出しざま投げる。怪訝な顔をして受け取った庵に、自分用を取り出しながらウインクをして見せた。
「ソレ、そのまま洗ったら広がるだけで、落ちないだろ」
 自分の前髪をいじり、庵の髪についたものを指す。ビキ、と庵の手の中で缶ビールが悲鳴をあげた。ニヤニヤ笑う京に背を向け、壁に一度拳を打ち付けてから浴室に消えた庵に、肩を震わせて笑う。
「やっべ、スゲーかわいい」
 プルタブが、さわやかな音を立てた。


END
2009/06/27



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