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こしゃくな唇

 ほんのちょっとした好奇心。
 庵は、どんな顔をするんだろう。
 どんなふうに、女を抱くんだろう。
 気になったときに試すことが出来る機会があれば、試してみたくなるだろう?

 控え室で、草薙京はボンヤリと座っていた。足を開き、猫背気味なのに天井を見上げて薄く口を開いた状態。太ももにはだらしなく垂らした腕を乗せている。これ以上ないというくらいの、見本のようなだらけた姿勢。それを壁に凭れて腕組みをしつつ眺めていた紅丸が、肩で壁を蹴って歩み寄りながら言う。
「あのさ、京」
「んあ?」
 返事なのか寝ぼけた声なのか判別できないような音を出し、紅丸に顔を向ける。何かを言おうとしては口をつぐみ言葉を探す紅丸を、京はぼんやりとした顔のまま眺め、視線を外した。
「草薙さんッ!」
 バァンと勢いよくドアが開き、それと同じ勢いで真吾が入ってくる。そのままの勢いで京の前までやってくると、ジャケットを引っ張ってボタンを締めはじめた。
「うわっ、何だよオマエッ」
「何って、草薙さん自分が今どんな格好だかわかってんスかッ! このまんまじゃ、危険ですよッ」
「危険って、何がだよッ! あぁもうウゼぇ」
「ガッ――」
 京の拳がマトモに入り、仰向けに倒れこむ真吾。大きな音とともに、紅丸が片手で顔を覆った。
「ったく、何なんだよ」
 唇を尖らせて乱れたジャケットを元に戻しながら言う京に肩をすくめ、紅丸が苦笑する。
「わからなくもないけどな」
「何が」
 紅丸の視線が京の胸元に行く。そこには、柔らかく丸いふくらみがあった。




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