毛足の長い、ふわっふわの白いファーが付いた布地。それで作ったショートパンツとチョッキ。それに手袋、靴下を装着した長曾我部元親は、姿身に自分を映して「よしっ」と満足げに力強く頷いた。頭には、同じ生地で作った三角形の大きな耳が。尻には、やはり同じ素材で作った尻尾がついている。
「どっからどう見ても、立派な狼男だぜ」
　にんまりとしながら、ふわふわ手袋であごをさする。
「毛利のやつ、びっくりすんだろうなぁ」
　ニシシと笑った元親は、足まで隠れる真っ黒なローブを身に纏い、部屋を後にした。
　廊下はジャック・オ・ランタンやお化けの飾りなどで、にぎやかに彩られている。
「おお、元親殿」
「おっ、幸村じゃねぇか」
　背後から声をかけられ振り向けば、丸い虎縞の耳を頭につけた真田幸村が、にっこりとして立っていた。
「ハッピー・ハロウィン」
　きらりと犬歯をきらめかせて元親が言えば
「はっぴぃ、はろいん、にござる」
　ぺこりと幸村が頭を下げる。今日は、この学生寮内すべてがハロウィンのパーティー会場となっていた。
「なかなか、いい耳と尻尾を着けてんじゃねぇか。虎猫か？」
　それに、幸村が少々むっとした。
「猫ではござらぬ。虎でござる」
「ああ、そうかい。すまなかったな。しかし、なかなかいい出来じゃねぇか」
　元親がふわふわ手袋に包まれた手を伸ばし、幸村の頭の耳に触れる。
「佐助の手製にござる。元親殿のその耳と手袋も、立派にござるなぁ」
　心からの褒め言葉に、元親は得意げに胸をそらした。隆々とした胸筋が前に押し出され、ローブの上からでも、その逞しさが感じられる彼の体躯に、幸村が羨望のまなざしとなる。
「まあな。ちぃっとばかし、作るのに苦労したけどよぉ。上々の出来だって、俺も満足してんのよ」
「元親殿は、手先が器用にござるからなぁ。して、今からどちらに行かれるおつもりか」
「ああ。ちょいと、毛利のところにな。アイツ、どうせ部屋に閉じこもって本ばっか読んでいるだろうからよ。せっかくの楽しい祭りに参加しねぇかと、誘いに行くところよ」
「なるほど」
「アンタは、政宗ん所だろう？」
　言い当てられた幸村が、アーモンド型の目を丸くした。
「そんな、驚かなくってもいいだろう。アンタと政宗は、俺と毛利みてぇな好敵手同士なんだ。イタズラか菓子を選べって言いに行くには、丁度いい相手だろう」
　それに、幸村がにっこりとして頷く。
「いかにも」
「そんじゃ、まぁ。お互いに健闘を祈りあおうぜ」
「はい」
　手を振り幸村と分かれた元親は、彼に褒められたことで機嫌良く廊下を進み、毛利元就の部屋のドアをノックした。
「おうい、毛利よぉ！」
　なかなか出てこないので幾度もドンドン叩いていると
「うるさい」
　抑揚の無い声で、元就が顔を出した。
「おっ。やっぱ仮装なんざ、していなかったな。おう、毛利。今日は寮内全部が祭りの会場なんだぜ？　今夜くらいは、派手に楽しもうとは思わねぇのか」
　ひややかな目で元親を一瞥した元就が、扉を閉めようとする。
「おっと！」
　あわててドアの隙間に足を入れた元親に、元就が忌々しそうな目を向けた。
「毛利」
　ふわっふわの手袋に包まれた両手を、元親が差し出す。
「ハロウィンといえば、なんだ？」
「知らぬ」
「ンなわきゃ、ねぇだろう。イタズラかお菓子か、だ」
　ほれほれと差し出した両手を、催促をするように上下に動かした元親に、元就は面倒くさそうに鼻から息を吐き出し、ドアを大きく開いた。
「入るがいい」
　諦めと呆れを浮かべる元就に、ふふんと鼻を鳴らした元親が
「おう。邪魔するぜ」
　楽しげに言って、部屋に入った。
「で、長曾我部よ。そのふざけた頭のものと、手は何だ」
「何だって……見てわかんだろ？　ほら」
　ばさりとローブを脱ぎ捨てた元親が、腰に手を当て自分の姿を見せ付ける。艶やかな白い肌をした美丈夫な彼の体を、毛足の長い真っ白な布で作られたショートパンツとチョッキが覆っている。
　――が。
「プードルの仮装か？　それならば、耳の形が違うのではないか」
　いわゆる、プードルカットと呼ばれる、その犬種独特の姿のような状態に、元就が一瞥をくれて本を読むためにかけていたメガネを外した。
「なっ！　これのどこがプードルなんだよ。そりゃあ、ちいとばかし金が足りなくて、布が買えなかったから、こんな状態になっちまったけどよォ……この俺がプードルみてぇにお上品にかしこまったように見えるかよ」
｢見えぬな｣
　間髪いれずに、元就が答える。
「ならプードルとか言うなよ。狼だ、狼。立派な白銀の狼男に決まってんだろ」
　腰に手をあて、ぐっと胸をそらせた元親に、ほう？　と元就が目じりをキラリと光らせた。
「ま、そういうことで。ほら、毛利。イタズラかお菓子か、だ」
　何かよこせと手を差し出した元親に、やれやれと元就が息を吐く。
「どうせ貴様が来るであろうことは、予測済みよ。その椅子に座って、与えられるのを待つが良い」
　元就が先ほどまで自分が座り本を読んでいた椅子に目を向け、元親が「おう」と答えて腰掛けた。
「やっぱアンタ、俺が来るのを待ってたんだな」
　うれしげな元親に
「待ってなど、おらぬわ。貴様が来るであろうことは、安易に予想がつく。それゆえ、来た折の対処法を用意しておいたまでよ」
「素直じゃねぇなぁ」
　ごそごそと何かを取り出す元就に、元親がヘラリと締まりの無い顔をする。
「長曾我部よ。所望のことを、してやろう。ありがたく思うがよい」
「おっ」
　元就の用意をする菓子が美味であることを、元親は知っている。期待をして手を差し出せば、カシャリと首に何かを嵌められた。
「へっ？」
　きょとんとして、首に手を伸ばして着けられたものを掴み、鏡に目を向ける。そこには、首輪を嵌められた自分がいた。
「うぇえっ？　なんでぇこりゃあ！」
　驚いて立ち上がろうとする元親の、首輪についているリードを元就が思い切り引っ張る。立ち上がる勢いに負荷を与えられて、元親は前にのめって倒れた。
「うわっ。何すんだよ、も……うり？」
　文句を言おうと顔を上げた元親が、冷ややかに楽しそうな笑みを唇に乗せた元就を見て、ごくりとつばを飲み込む。異様な冷気と威圧感を纏った元就が、邪悪な笑みを漏らした。
「長曾我部よ。貴様、わかっておらぬのか」
「な、何をだよ」
　完全に気圧されて、元親がどもる。
「ハロウィンの、トリック・オア・トリートとは、韻を踏んだ掛詞のようなもの。日本語に直訳すれば、イタズラか菓子か、ということになるであろうが、韻を踏んではおらぬ」
「だ、だから？」
　頬をひくつかせる元親に、元就は勝ち誇った冷笑を満面に広げた。
「日本語で韻を踏むならば、菓子か下肢かになるであろう」
「は？」
　ぐん、と元就がリードを引いて元親の顔を今より更に上向かせる。
「貴様の下肢に、ぞんぶんにイタズラをしかけてやろう」
　抑揚の無い声の中に剣呑な愉悦を見つけ、元親は背筋をぞわぞわと震わせた。
「は？　いや毛利それなんか、おかしくねぇか。だいたい、イタズラか菓子かなんだから、韻を踏むってぇことを考えれば、イタズラって言葉に掛け――」
「つべこべ言うでないわ。なるほど狼であれば犬と同じ。我が存分に犬として愛でてやろう」
「うぇ？　毛利、ちょっと待て、ちょっ……んぅ」
　顎に手を掛けられて、唇をふさがれる。しゃべるために開いていた元親の口内に、元就の舌は易々と侵入した。
「んふっ、んぅうっ、んっ、んぅうううっ」
　逃れようとする元親の頭をがっちりと掴み、元就が口腔を蹂躙する。元親の抵抗が緩まるまで、執拗に頬裏をくすぐり上あごを撫で、舌を吸ってやれば、息苦しさに元親が目じりに涙を浮かばせて、快楽に肌身を小さく震わせた。
「んふっ、は、はぁ、あ」
　白い頬を上気させた元親を、面倒くさそうに元就が見下ろす。自分よりも一回り以上も体躯の良い元親を、屈服させ乱すのは心地よい。
「我に祭りを楽めと言う貴様の心根を、汲んでやろう。たっぷりと、その身で我を楽しませるがいい」
「ふぇ？　あ、違う毛利。なんかちょっと、ちがっ、ぁ、はぁおおおっ」
　抗議をしようとした元親の陰茎を踏みつけ、言葉を抑える。
「犬が我に意見をするでないわ。そのようなことが出来ぬように、タップリと躾けてやろう」
「んぁあっ、違っ、ぁ、毛利、あ、足っ」
　グリグリと下肢を踏みにじられて、元親があえぐ。
「なんだ。心地よいのであろう？　もっと踏まれたいか」
「ひんっ、や、ぁ、足、どけろって、ぁ、あ」
　力では、元親のほうが格段に強い。けれど急所を押さえられてはどうしようもなく、震える指で自分を踏みつける元就の足を掴むことしかできなかった。
「っ、は、ぁううっ、く、やめっ、ぁ」
「何を言う。素直に求めれば良いであろう。我の足の下で、むくむくと育っておるではないか」
「んぁうっ、ひ、ぁ、やめっ、毛利、ぁ、こんっ、うう」
「達するか？」
「えっ、ぁ、ちょっ、んぁあ、そんっ、ぁ、ぐりぐりっ、ぁ、したらっ」
　元就が、ふくらんだ元親の陰茎を足の裏で踏み潰し、先端をつま先で擦った。
「ひっ、ぁ、あぁあああっ」
　どくんと腰を震わせて、元親が喉を反らせる。足裏で彼の陰茎が弾けたことを確認し、元就は眉一つ動かさずに、リードを引いて射精後の弛緩を味わう元親を仰向けに引き倒した。
「んぁっ」
「心地よかったのなら、もっと可愛がってやろう」
　元就が、靴を脱ぎ靴下も外して、元親の下肢に足を乗せる。
「ぁひっ、は、ぁあ、毛利っ、やめっ、ぁ」
　放ち、萎えた陰茎をぐんぐんと踏みつければ、そこが再び膨らんだ。ショートパンツはどうやらゴムパンツであるらしい。足の指で掴んだ元親は、ショートパンツをずらした。ひょこりと元親の陰茎の先が顔を出す。
「ああっ」
「獣でも、行為の折にのみ魔羅を出すものがおるが……まさに今の貴様はそれのようだな。狼がそうであったかどうかは、覚えてはおらぬが」
　ぐり、と蜜嚢ごと足で持ち上げながら踏めば
「ひぅっ」
　ぷしっと先走りが飛び出した。それに目を細めた元就が行為を繰り返す。
「んはっ、ぁ、毛利っ、ぁ、やめっ」
　ふわっふわの手袋をつけたまま、元親が手を伸ばして陰茎の先を隠した。それに、元就が眉をひそめる。
「犬は、そのように出来ぬであろう。狼男となったのならば、犬らしく振舞おうとせぬか」
「だ、だっってよぉ。こんなの、変だろぉ」
　快楽に上ずった声で、情けなく声を震わせる元親に、ふん、と元就が鼻息を漏らす。
「この程度では、足りぬと見えるな。ならば、他にも用意をしてあったものを、与えてやろう」
　ごそりとポケットを探りながら、元就がしゃがむ。
「うえっ。いい、いらねぇっ、ちょ、毛利、いらねぇって」
　これ以上、妙なことをされてはたまらぬと、慌てて止めようとする元親の陰茎を、元就が思い切り握り締めた。
「ひいっ」
　阻止する手が止まった隙に、元就はすばやくポケットから取り出したものを、元親の陰茎に装着させて立ち上がる。
「出来たぞ。長曾我部よ」
　満足げに唇の端を持ち上げた元就の手のリードが、二本に増えていた。そのうちの一つが元親の下肢に伸び、陰茎のクビレに嵌められた首輪に繋がっている。
「なんだよ。コレぇ」
「首輪に決まっている」
「ソコは、首じゃねぇよ」
「つべこべ言うでないわ」
「ぁひっ」
　陰茎に繋がるリードを引きながら、元就が彼の陰茎を踏みつける。ピンと引き伸ばされ踏みつけられた元親の陰茎から、先走りが止まることを知らずにあふれ出た。
「これでは、せっかくに貴様が作った衣装が汚れるな。脱がしてやろう」
「っ、ぁ、いいっ、いらねぇっ、毛利」
「遠慮をするな」
「わぁああっ」
　ずり、とショートパンツをずらされて、脱がされてたまるかと元親が引き上げる。それに、元就がムッとした。
「おとなしく従わぬか」
「従わねぇし！　つうか、こういう流れになんのは、おかしいだろうが」
「何も、妙なことは無い。菓子を与えぬ代わりに、こうして下肢を可愛がってやっているまでよ」
「だから、それが変なんだって！　あううっ」
　抵抗をやめぬ元親のクビレを掴み絞り上げ、ビクンと彼が震えた隙にショートパンツをずらす。そうして再びポケットから取り出したものを、彼の尻にあてがった。
「も、毛利オメェ……ポケットん中に何を色々と入れてやがんだよ」
　尻の秘孔に何か丸いものを押し当てられて、元親が頬をひくつかせた。
「貴様が来ることを想定していたと申したであろう。貴様が、どのような格好で来るかも調査済みよ。その上で、どのようにして遊んでやろうかと策を練り、貴様のために用意をしてやったのだ。ありがたく受け取るがいい」
　く、と丸いものが押し込まれる。
「っ！　ありがたく無えぇえええっ」
　元親が吼えるのを尻目に、元就はビー玉ほどの大きさの球体を次々に元親の秘孔に食わせる。数が増えるごとに奥に押し込められるそれに刺激され、元親の陰茎がブルブルと震えた。
「っあ、やめっ、ぁ、毛利、そんな、ぁ、いっぱ、ぁ、挿れっ、ぁ、あ」
「これで最後よ」
「あぅ」
　ぐ、と最後の球体を、自分の指ごと元就が押し込む。ぎっちりと飲まされた球体を、元親の肉壁が締め付けた。すると、どういうわけか奥のほうから球体が溶けて、どろりとした液体に変わる。
「っ、あ、何……ナカ、ぁ、濡れて――？」
　疑問を瞳に乗せて元就を見た元親は、ぎょっとした。
「も、もももももも、毛利?!　オメェ、何を持ってんだよ」
　元就の手に、ふさふさとした立派な白銀の尻尾が握られている。その尻尾を生やしているものが、見事に反り返っている陰茎を模した玩具であることに、元親の驚愕を浮かべた目は釘付けになっていた。
「貴様の尻に挿れたは、潤滑油よ。あれだけを飲ませれば、あふれるほどに濡れるであろう」
「あ、ああ。いや、それも聞きたかったんだけどよォ……その、毛利……手に持ってるモンは」
　おそるおそる、ひきつった笑みを浮かべた元親が逃げ腰で問うのに、元就はなんでもないことのように、さらりと答えた。
「尻尾はショートパンツから生えるものではなく、尻から生えるものであろう？」
　ひたりと、尾の着いた大人の玩具を元就が秘孔に押し込んだ。
「ひぎっ、ぁ、やっぱり、ぃあああっ」
　元就の言うとおり、多量に食わされた球体が全て溶け、元親の肉壁はドロドロに濡れていた。球体で多少なりと広げられてはいたものの、挿入されたものの容量に対応できるほどではない。顎を仰け反らせて圧迫感から逃れようとする元親に、元就は容赦なく玩具を根元まで埋め込んで、立ち上がった。
「これで、立派な犬となれた。感謝をするがよい」
「ぃひっ、ぁ、は、ぁあ、太ぇ、ぁ、抜い、毛利」
　手を伸ばして尾を掴もうとする元親を見下ろし、元就はおもむろにコントローラーを取り出してスイッチを入れた。
「ぁはぁああっ、ひっ、ひぃい、ぁ、ぁおっ、も、ぉりっ、ぁ、ああっ」
　元親の秘孔に埋め込まれたものが、唸りを上げて暴れだした。ぶるぶると震えながら先端を回転させるそれに、元親は野欲を翻弄されて目を白黒とさせながら腰をくねらせる。
「はひっ、ひぁおおっ、はげしっ、ぁ、回っ、ぁあ、やめっ、ぁ、止めてくれっ、ぁああ」
　首を打ち振り身悶える元親の肉壁が、玩具と潤滑油によって蜜壷へと育てられる。それを眺めながら、元就は再び元親の陰茎を踏んでリードを引いた。
「ひぁおおおっ、あはっ、ぁ、もぉりぃいいっ、らめぁ、あっ、狂うっ、ぁ、狂っちま、ぁはぁおお」
「狂うほど心地が良いか。極楽を見せてやるゆえ、心から我に感謝をするが良い」
「ひぁおふぅうっ、やらぁあっ、もぉりっ、も、やめあぁあああああっ」
　ぐい、と根元から押し上げ踏めば、元親が腰を突き出し欲蜜を吹き出す。びゅるりと飛んだそれが、元親の胸を覆うチョッキにかかった。
「ぁひっ、ひぃいあぁあ、止めっ、ぁ、らめぁ、イッたのに、ぁあ、尻っ、ぁ、らめぁおおっ」
　射精をしながら媚肉を刺激され、絶頂の終わりの余韻を迎えられず、苦しいほどの快楽に元親がボロボロと涙をこぼした。その姿に胸をキュンと絞られて、元就はうっとりと恍惚を面に乗せる。
「長曾我部よ。よい舞いぞ。褒めてやろう」
「はひっ、ぁ、はぁううっ、もぉりぃい」
　リードを離した元就が、元親のチョッキを脱がして盛り上がった胸筋を細く長い指で掴む。ぐいぐいと外側から内側に寄せるように揉み、白い肌に赤く色づく箇所を指の腹でなぞった。
「はんっ、はんぁあっ、毛利っ、ぁ、もぉりぃ」
　鼻にかかった甘い声で、元親が啼く。それにたまらなくなった元就が、元親の顎に唇を寄せた。
「長曾我部よ――貴様に、我が子種をくれてやろう」
「は、ぁ、もぉり」
　涙に濡れた睫を震わせる元親の唇に、元就が唇を寄せる。その重なりに慈しみを感じて、元親もほんのりと微笑んだ。
「んぁうっ」
　ずるりと、動いたままの玩具を引き抜かれる。ごとりと放り投げられた玩具は、ブブブと床でのた打ち回った。
「もう少し、膝を上げよ」
「んっ、毛利ぃ」
　甘えるように呼びながら、元親が膝を上げた。褒めるように元親の鼻先に唇を寄せた元就が、自身の猛りを元親に埋め込む。
「ひぎっ、ぁが、はぁおううっ」
　玩具よりもわずかに太く、比べようも無いほどに熱いそれに元親が吼える。
「ふっ、……っ」
　からみつく媚肉に陰茎を絞られ、元就が眉根を寄せた。その表情に、ぞくりと元親が胸を震わせる。
「毛利っ、ぁ」
　首を伸ばして元就の唇を求める元親に、やわらかく応えて根元までを埋め込む。
「っ、ふ。長曾我部、たっぷりと味わうがいい」
「んっ、ぁ、枯れるまで、搾り取ってやるよ」
　くすりと笑みを浮かべた唇を重ねて、宣言どおりに彼らは互いを貪りつくした。

　ぐったりとベッドの上で横たわる元親をよそに、元就は何事も無かったかのような態度でメガネをかけ、本を読んでいる。
「毛利よぉ」
　眠気と気だるさを隠そうともしない呼び声に、ちらりと元就が目を向けた。
「なんだ」
「コレ、いつまで着けておくんだよ」
　元親が首輪を示した。ああ、と気付いたように眉を上げて、本を閉じ立ち上がった元就が、首輪の鍵を取り出して外す。ふうっと息をついた元親が、恥ずかしそうに目じりを朱に染めて目をそらした。
「も、もう一つの首輪も、外してくれよ」
　陰茎のクビレに着けられたものを指した元親に、元就は少し首を傾げる。さらりと、彼の真っ直ぐで柔らかな髪が流れた。
「外す必要など、無いであろう。それがあっても、放てぬわけではあるまい」
「っ、そういう事じゃなくって。こんなモン、くっつけておきたくねぇんだよ」
　起き上がり、唇を尖らせて睨んでくる元親は、常人よりも抜きん出た身長と逞しい筋肉を誇っているというのに、愛玩用の小さな獣のように見えた。愛らしさに胸を絞られた元就が、思わず唇の端で笑みをこぼしてしまう。
「何、笑ってんだよ」
「貴様は、それを着けておけばよい」
「いや。だから、外せっつってんだろ」
「我の所有の者との証。それほどに嫌か？」
　きょとんとした元親が、言われた言葉の意味に気付いて、全身を大火事のごとく赤く燃やした。
「も、ももも、毛利っ、それっ、それって」
　あわわわ、と唇をわななかせる元親に、元就は一段上に立つ者の笑みを向ける。
「貴様は所詮、我が手の内にしか生きられぬ。死んでも逃さぬゆえ、覚悟をするが良い」
　止めを刺された元親が、くらりとめまいを覚えながら、撃沈した。

2013/10/15