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チカ、ん?

 数日前から、ずいぶんと評判のいい見世物小屋が建っているというウワサを聞きつけ、長曾我部元親はフラリとそれを見物にやってきた。なるほど始まる時間よりも前であるというのに、大勢の人が詰めかけ、少しでも見やすい位置を確保しようと、小屋が開くのを待っている。
「あれっ、兄貴じゃねぇですかい。兄貴も、見物ですかい」
「おうよ。かなり面白ぇって聞いたからよ。ちょっくら見ておこうと思ってな」
 声をかけてきたのは、このあたりの出店を仕切っている男だった。元親の言葉を聞いた男は、小屋の入り口で人々が押し入らないように見張っている男に言った。
「西海の鬼、長曾我部元親様の名前は、アンタも知ってるだろう。このお方が、その元親様だ。前の方で見られるように、取り計らってくれ」
「おいおい。そいつぁ、いけねぇ。俺ぁ、この通り人より図体がでかいからよ。俺の後ろにまわっちゃあ、見えねぇ奴らが出てきちまう。俺は、人の頭よりも上に顔が来るから、一番後ろの端っこでかまわねぇよ」
「さすがは兄貴だ!」
「元親様のお心遣い、ありがたいわぁ」
 人々の間からそんな声が上がり、元親が「よせやい」と照れる。わいわいと元親を囲み人々が話しかけてくる間に、演目の時間となった。言葉どおりに、元親は小屋の隅に立つ。しっかりと密閉された小屋の客席は暗く、元親のいる隅は雲のかかった夜のように真っ暗だ。舞台には行灯がいくつも灯され、常ならざる雰囲気をかもしだしていた。
「こいつぁ、すげぇな」
 元親が呟いたのは、演目にではない。まだ舞台の上に人は立っていなかった。身動きがとれぬほどに人が詰まっている事に、驚いたのだ。
 自分は一番後ろの隅で正解だったな、と元親は舞台に目を向ける。人一倍体躯の良い元親の頭は、人の頭の上にある。一番後ろであっても、舞台は十分に見えた。壁に背を持たせかけ腕を組み、元親は演目が始まるのを待つ。
 最初に出てきたのは小柄な男で、一礼をして口上を済ませ頭を下げ、顔を上げればそれは別人の顔となっていた。
「おお」
 小屋中がどよめき、小柄な男だったはずの人物が美しい女に代わっていた。
 しょっぱなからこれなら、人々が押し寄せるのも無理はないと元親は納得する。その不思議の糸口を見つけようと、通い詰める者もいると聞いたが、なるほどそうだろうと納得した。
 女は艶やかな衣に着替え、扇を振って花を咲かせる。見目に美しく楽しい演目に見入る元親は、妙な気配に気が付いた。
 下肢に、何かが当たる。これだけの人ごみで、どよめきが起こるたびに人が揺れるのだから、そういうこともあるだろうと始めは気にもとめなかったが、どうにもおかしい。何がおかしいかと自分で説明を付けられず、妙だなという感覚だけを浮かべていた元親は、どん、と舞台上で太鼓が鳴らされたと同時に、息を飲んだ。
「ひっ」
 いきなり短袴の両脇から手が差し込まれ、魔羅を握られたのだ。何が起こったのか理解できぬ元親は、ただ身を固めた。想像をしたことも無い出来事が、この身にふりかかっている。信じられぬ思いが、元親を金縛りにあわせた。
 舞台上では、そっくりな二人の男が滑稽な動きで操り人形のように踊っている。人々はそれに笑い声をあげていた。元親の魔羅を握った手は、ごそごそと動き下帯から魔羅を取り出し、クビレに紐を回して縛り上げた。
「いっ」
 きつく縛られ、思わず漏れた元親の声を遮るように、舞台上で大太鼓が叩かれる。二つの手は元親のクビレを縛ると、片方は蜜嚢を、片方は先端を手のひらで包み、揉み出した。
(こいつぁ、痴漢、てやつか)
 じわじわと元親が現状を把握し始める。だが何故、自分が痴漢にあっているのかがわからない。か弱く美しい少年ならば、まだ納得も出来る。だが、元親は鬼と呼ばれるほど隆々とした筋肉を誇る偉丈夫だ。海の男としては肌が白くキメ細やかだが、彼のたくましさが先に立ち、すぐにそれに気付くものは少ない。何よりも自分がそんなものの対象になるなどと、元親は思ってもみなかった。
「っ、ふ」
 女ならば、キャアと叫んで助けを求める事も出来ようが、海の荒くれ者どもを束ねる元親が、そんな真似をするわけにもいかない。
(もしや、女――?)
 女の中には、これと思った男を誘うために、不埒な事をする者がいるという。この手はそういう女のものなのだろうかと思いかけ、指の太さと節の感覚に違うと判じた。そうなると、ますます自分がこうされる意味がわからない。元親が混乱する頭で必死に現状を把握しようとする間にも、手は動き元親の魔羅を滾らせていく。
「んっ」
 ぶる、と元親が胴震いした。先端をいじる指が、蜜口に爪を立てこじ開けるように引っかいている。蜜嚢を包む手が、下ばえをくすぐり幹を扱いた。
 舞台の上で、楽器がかき鳴らされて人々の声を吸い込む。小屋中に響く音楽に合わせ、軽業が披露されている。
「っ、は、ん、んんっ」
 もてあそばれる元親の牡は、すっかり天を向いて先走りまでこぼしだした。こうなっては、余計に声を上げて相手を咎めることもできない。だが、このままでは大勢の人のいる中で、子種を放ってしまう。
(こんな、大勢の人間が集まっている中で――)
 ぞくり、と怪しい疼きが元親の腰に走った。
(っ! 俺ぁ……)
 そんな自分に、元親は驚く。
「んっ、ふ」
 クニクニと先端を揉まれ蜜口を掻かれ、幹が扱かれる。絶妙な動きに、元親は内腿を震わせた。クビレにかかる紐が食い込み、じんわりとした痛みがある。けれどそれも快楽の一部に感じられて、元親は息を飲んだ。
「んっ、ん、ぅ」
 なんとか声を漏らすまいと、奥歯に力を入れてせり上がる息を飲み込む。先走りは止まらず、揉む手が濡れて滑り、先端をきつく握り扱かれても痛みを感じない。強い刺激にクラクラとして、元親は足に力を込めた。
(どうすりゃあいいんだ)
 考えようとする端から、愛撫に思考を邪魔される。そうこうしているうちに魔羅は凝りきり、絶頂を迎えたいと野欲が意識に訴えだした。
(このままじゃ、まずい)
 声を何とか抑えてはいるものの、鼻息が荒くなっている。組んでいる腕に力をこめれば、元親の胸筋が盛り上がった。そこにある尖りが、触れられてもいないのにプックリと膨らんでいる。
「ふっ、んぅ、う」
 小刻みに震える元親を、じわじわと二つの手が快楽でなぶる。ぬらりと先走りで牡全体を濡らされて、巧みに指が動くのがたまらない。ここが大勢の人のいる日常の場でなければ、すぐにでも達したいと腰を突き出し荒い息をぞんぶんに吐いている所だ。
 ふいに、手の一方が牡からはなれた。
(飽きた、のか――)
 ほっとする反面、なぜか残念に思った自分に、元親はまたたく。
(もう片方の手も、離れてくれりゃあ)
 こっそりと小屋を出て厠に向かい、放つ事が出来る。身じろぎをして、手をふりほどこうとした元親は、力いっぱい牡を掴まれ、息を呑んだ。
「ひっ」
 どどん、どん、と太鼓が打ち鳴らされて、元親の声を消す。この痴漢は、演目を熟知しているのだろうか。だとすれば、この小屋で痴漢を働く常連ということか。
(ほうっては、おけねぇな)
 義憤を燃やした元親をくじくように、離れた手が袴の中に戻り、元親の蜜口に触れた。くりくりと確かめるように指の腹でなでたかと思うと、何かを蜜口に押し込んできた。
「ぃぐっ」
 ぱぱん、と爆竹が鳴って、元親の声を消す。ぐいぐいと押し込まれ蜜口を広げられ、元親は目じりに涙を浮かべた。
(なん、なんだ――こいつぁ)
 聞こえるはずも無いのに、クチクチと濡れた音がいじられる魔羅から響いてくる。放てぬもどかしさが体中に広がりにじみ、胸乳の尖りが疼いた。
(やべぇ)
 魔羅の限界が近い。けれど蜜口は塞がれているし、クビレは縛られているし、触れてくる手は緩急を付けて絶頂にいたりそうになれば、ひらりと欲を遠ざける。元親の肌はうっすらと汗ばみ、赤みを差した。足の震えが治まらず、尻に力を込める。すると、幹を扱いていた手が動き、尻を掴んだ。
(何を、する気だ?)
「んぃっ」
 思うと同時に尻の割れ目を探られ秘孔に指を押し込まれ、元親は目をむいた。まさか、そんなところまで探られるとは予想だにしなかった。再び硬直をした元親の秘孔を、指がねっとりとかきまわす。
(う、そだろぉ)
 情けない気持ちになった元親を、さらに追い詰めるように帯が解かれ、はらりと袴が落ちた。ぎょっとした元親が下を向けば、暗い中に自分の魔羅が縛られ、蜜口に銀色に鈍く光る何かが押し込まれているのが見えた。牡を握る手が蜜口に差し込まれているものをつまみ、上下させる。グチグチと蜜口を掻き回され、元親は甘美なめまいに襲われた。その動きに合わせるように、秘孔の指が元親をほぐす。
「んっ、んぅ、うっ、ん」
 快楽に流されて声を出してしまえば、どうなるのか。こんなところでたぎらせた魔羅を出している姿を見られたら、どうなってしまうのか。ぞわりと甘く濃厚な淫欲が、元親を捉えた。それを待ちわびていたかのように、ささやき声が元親に告げる。
「こんなに大勢の人々がいる中で、こっそりと野欲に浸る淫辱は、いかがですか元親様」
「彼らが、こんな元親様のことを知れば、どう思うでしょうね」
 いつのまにか、元親の背後に人が回っていた。
「芝居小屋の中で、男に突かれてヨガる西海の鬼というのも、なかなかに面白い演目だとは思いませんか」
「っ、てめ……っが、ぁ、あぉ、お」
 どどどんどん、どん、と激しく舞台上で太鼓が響き、火の輪が現れる。そこに細身の男が現れて、軽く飛びはね間合いをはかりだした。火の輪くぐりをするらしい。が、元親にそれを楽しむ余裕は無い。背後に回った男の魔羅が、元親の秘孔に深々と突き刺さっていた。
「声を上げても、かまいませんよ。俺たちは、いっこうに困りませんから」
「ぐっ、んぅ」
「困るのは、貴方ひとりです」
 すい、と元親の前に現れたのは、細面の涼やかな青年だった。その瞳が、獲物を狙う蛇のように細められている。
「何が、ぁ、目的だ」
「目的は、今、していることですよ」
 すとんとしゃがんだ青年が、口を開いて牡をしゃぶった。
「っ、んぅう」
 蜜筒をかき回しながらしゃぶる青年が、観察するような目で元親を見上げる。このやろう、とぶん殴ってやりたいところだが、急所を抑えられてはままならない。
「そちらばかり感じていないで下さいよ」
「ひふっ、んぁ」
 ゆさ、と腰を掴まれ秘孔を擦られ、元親が組んでいた腕を解いた。それを好機と、背後の男が腕を回し、たくましく盛り上がった元親の胸筋を掴み揉みながら、指の腹で尖りを潰す。
(ああ、くそ。本気で、やべぇ)
 理性が快楽に押し流される。声を抑え切れそうに無い。けれど嬌声を上げてしまえば、元親の周囲にいる人間が気付いてしまう。こんなところで犯されている自分を、見られてしまう。
 ぞくぞくぞく、と元親の背骨を快楽が駆け上がった。
「んっ、んふっ、ふ、んんぅ」
 背後の男に揺さぶられ、胸乳をもてあそばれ、しゃがんだ男に蜜筒をかきまわされながら、しゃぶられている。こんな性癖があると思われでもしたら、西海の鬼の名に傷が付く。自分を慕う者達は、どう思うだろう。
「んっ、んぅ、くっ、んふ、ふ、んん」
 涙をこぼしながら、元親は必死に快楽に抗う。けれどそれが野欲を煽る風となり、味わった事の無い甘美なものを元親にもたらした。
「んっ、ぁひ」
 人々の拍手喝采が小屋に響くと同時に、元親の内部で男の熱が弾けた。その瞬間、元親の中で何かが砕け落ちた。
「はひ、ぁ」
 秘孔から男が抜けて、しゃぶる男が立ち上がる。震える元親の袴を元に戻し、二人の男は怒張し震える元親の牡を撫でた。
「治まらなくて辛いでしょう? 小屋の裏で、続きを……ね」
 快楽に理性を滲ませた元親の濁った目に語りかけ、青年たちは元親の手をひいて人の流れに乗って小屋を出る。そのまま路地に入り、小屋の裏口から中に連れられた元親を、先ほど舞台に立っていた者らが出迎えた。
「ようこそ、おいでくださいました。元親様」
 何が起こっているのかわからない元親は、濁った瞳に男を映す。
「西海の鬼と呼ばれる貴方様がご覧になられると聞いて、他には出来ない最高の趣向をと思い、この二人を差し向けたのですよ」
「しゅ、こう?」
 ぼんやりと元親が答えれば、男は満面の笑みで「そうです」と答えた。
(んなこたぁ、どうでもいい。早く、イキてぇ)
 心の裡が顔に出たのか、男が慌てて手を打てば、華奢な女が元親に近づいて着物を落とした。そこにあったのは、薄い男の体だった。
「ここにいるのは、全員が男でございます。おなじ男でありますから、どこをどのようにすれば心地いいのか、よく知っておりますれば。今から元親様に、浄土のような快楽を味わっていただきますね」
 きれいに微笑んだ女のような男が、元親の唇を紅を引いた口で塞いだ。ぬらりと舌がさしこまれ、口内をまさぐられる。
「ふっ、ん、ふ」
 たったそれだけのことなのに、この上も無く心地いい。口腔をねぶられ、うっとりとする元親の四方八方から手が伸びて、元親をあっという間に裸身にした。
「おお、これは立派な体躯。これほどに見事な肉付きは、はじめて見ました」
「これほどの体躯をなされておられるのならば、なまなかな行為では満足なさいますまい」
 無数の手が元親の肌身をさすり、胸乳を揉み筋肉の筋を舌が這う。膝立ち姿の元親に見世物小屋の男たちが寄り集まり、手指や舌をぞんぶんに動かして惜しげも無く奉仕を行う。
「んふっ、ふぁ、あっ、は、ぁあっ」
「元親様。いかがですか。俺の舌技は。乳首、気持ちがいいでしょう」
 言いながら男が乳首に舌を絡め、元親がぶるると震えた。
「なんの。そんなものより、こちらのほうが」
 対抗する男が乳首にやわらかく歯を立てて、こりこりと動かす。
「ぁひっ、は、ぁあう」
「どちらのほうが、心地いいですか」
「んぁあ、どっちも、ぁ、いいっ」
 少し痛みのある刺激も、ゆるやかな愛撫も捨てがたく、同時にされれば相乗されて意識をとろかせた。
「元親様の魔羅、こんなになって」
「蜜筒をかき回すと、ここちよさそうになされていたぞ」
「は、ぁひっ、ぃあう、そんっ、あ、とこっ」
 蜜筒がかき回され、詰まった子種があふれでる。それを舐めようと二つの舌が先端にからみついた。
「はっ、はんぁあ、ぁひっ、それっ、ぁ、ひぃううっ」
「クセになると、たまらなくなりますよ」
「んぁあ、らめぁ、そんっ、クセになったら、ぁ、困る、からぁ」
 とろけた顔で力無く抗議する元親に、クスクスと男たちが笑う。
「では、こちらはどうですか」
「ぁおっ、お、ふぅうう」
 ずん、と背後から貫かれ、元親が天を仰いだ。そのまま揺さぶられ、元親がだらりと舌を覗かせる。
「たっぷりと、溶かしてさしあげますよ。心地いいでしょう? 心配なさらずとも、もてなしが終わる頃には、こちらだけで子種を吹き出す事が出来るようになりますよ」
「んぁあっ、そんなのっ、ぁ、困るっ、ぁ、こまっ、は、はぁあうう」
「こんなにキュキュウと締め付けておいて、困るとは不思議な事を仰いますね。元親様」
「んはっ、はんっ、はんぁあっ、らめぁ、も、イキてぇ、あ、ぁあ」
「ダメですよ。もっともっと、どろどろに溶けた顔になられるまでは。もてなしに手を抜くことは、できませんからね」
 ぶるぶると首を振り、元親が身悶える。
「も、ぉ、じゅうぶっ、ぁ、じゅうぶんっ、ぁ、から」
「半刻後には、そんな事が言えなくなっていますよ、元親様」
 その言葉を合図に、元親へのもてなし行為が濃厚さを増す。
 そして言葉どおりの半刻後。
「んひっ、ひぃい、ぁ、もっとぉ、ぁ、らめぁ、あ、ぐちゃぐちゃにっ、子種、もっとくれよぉお」
「ふふ。欲張りですね。さすがは、海賊の頂点に立たれるお方だ」
「元親様、こちらはどうですか」
「んひっ、んっ、いいっ、ぁあ、魔羅んナカぁ、もっと、ぁ、もっと広げて、ぁ、ぁひっ、はぁおぉおう」
「おしゃぶりは、いかがですか元親様。ほら、こんなに滾った魔羅が目の前に」
「んっ、いるぅ、ぁ、食わせっ、はむっ、んじゅっ、んはっ、は、はぁううっ、おいひっ、ぁあ、もっと、奥にもっ、ぁ、ああっ」
「もてなし、気に入っていただけましたかな」
「はんっ、ぁ、すげぇ、ああ、いいっ、いいからぁ、もっと、ぁ、もっとぉおお」
 腰を振りたて求める元親に、見世物小屋の者たちが唇を舐める。
「ええ。ぞんぶんに」
「はひぁあん、おふぅうっ、いいっ、ぁ、きもちぃ、もっとぉ、もっとぉお」
 それから、元親はしばしば小屋に足を運び、裏口へと向かうようになった。
 いつからか演目の合間に、獣の咆哮のようなものが漏れ聞こえると人々はうわさし、新しい演目が加わるのではないかと胸を高鳴らせた。
2014/02/05



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