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我は親鳥 鬼は雛鳥

 毛利元就は、ごろりと床に転がっている長曾我部元親を眺めていた。すやすやと穏やかな寝息を立てている彼の前には、少し飲み残しのある湯呑みと菓子の乗っていた小皿があった。
(本当に、効くのだろうか)
 ザビー教において伝説のタクティシャンでありエンジェルでもある元就は、ザビーの姿が見えなくなった今、実権を一手に担っていた。布教活動などは大友宗麟が精力的に行っていたが、それを手伝うつもりなどはない。君臨する神に近い存在として、元就は崇め奉られ、必要な時にのみ顔を出し用件を済ませる、という程度にしかかかわっていなかった。元就には、安芸を安寧に運営することのほうが重要だった。かと言って、信心が薄れているわけではない。薄れていれば、ザビー印の怪しげな薬を、この男に盛ろうなどと考えもしない。
 元親の持つカラクリの技術と、それを応用した造船技術。彼らの航海術を持ってすれば、教祖のザビーを探す手立てを得ることができる。そして海外との交易も、今よりも盛んに行うことができるだろう。
 西海の鬼と称してはばからぬ元親が、素直に元就の求めに応じるわけはない。元就からすれば、この男は呆れるほど単純な頭をしている愚物としか思えないが、領土を治めている者としての矜持は人なみにあるらしく、簡単に傘下に下るようなことはない。だが、彼はなぜか自分に親しみを持っている。ザビー教の教えが「愛」と知り、それを信仰している元就を非情ではないと断じ、喜色満面で名を呼んで来る。
 そこに、元就は付け入ろうと考えた。相談事があると文を出し、人をはばかるものだと記し、誰にも知られずに隠れ屋に来るよう乞えば、あっさりと引っかかった。元就が「まれに、何もかもを脱ぎ棄て、穏やかな我個人としての時間を過ごすための場所よ。何者にも明かしておらぬ」と言えば、同情的な目で微笑まれた。この男は、情に訴えれば赤子の手をひねるよりも簡単にだまされてくれる。
 そうして呼び出したものの、すぐに話をすることもなく、さみしげに見えるよう演じながら茶と菓子を出せば、何を疑うこともなく、この男は胃の腑にそれを収めた。
 薬が仕込まれているなどと、つゆほども思わずに。
「馬鹿な男よ」
 薄く唇をあけ、無防備な寝顔を晒す彼に元就が飲ませたものは、ザビー宝物庫の奥にあった薬であった。卵の殻をつけた雛鳥の絵がかかれたそれには、『目覚めた時に目にした動くものを親と思う雛鳥のように、これを飲ませれば眠りに落ちたのち、起きて最初に目にしたものを親と思い従う』という効能が記されていた。
 そんなものが、本当にあるのかと元就は疑ったが、試してみるのも悪くはないと、貴重な薬であるのだし、どうせならと元親を呼び出して茶に盛ったのだ。
 この薬は、とりあえず眠り薬としては使えるようだと元就は薬袋を見る。あとは、彼が目覚めて自分を親鳥のように思うかどうか。
 完全に信用しているわけではないが、違う誰か、または何か動くものを見られては困るので、他に人のいないこの場所へ、彼を呼び出した。元親に「何もかもを脱ぎ棄て」と語ったこの隠れ屋は、彼を呼び出すことに決めた後、古めかしく見えるよう計画を実行するために作ったものだ。この薬が偽物であったとしても、何かに利用できるだろうと踏んで、建てたものだった。
 ふる、と元親の長いまつげが震える。目覚めるのか、と元就は顔を近づけた。元親は、鬼との異名に恥じぬ、隆々とした筋肉を誇る偉丈夫だ。その力強さと見事な体躯に隠れているが、海の男であるにもかかわらず、肌は抜けるように白い絹のようだ。顔立ちも粗野な笑みを浮かべていなければ、繊細で美麗な容色をしている。小柄で痩身な元就の薄氷のような美しさに、負けぬ典雅さを持っていた。
 我知らず手を伸ばし、元就は元親の額にかかる白銀の髪をかきあげる。白い肌によく映える、左目を覆う紫の眼帯に指を滑らせれば、右目の瞼が持ち上がった。
 静かに元就は息をのむ。元親の目が眠気を払い焦点を結び、元就を見た。しばらくの沈黙の後に、元親はむくりと体を起こす。太い腕を天に突き上げ、ふあぁとあくびをすると首をかしげた。
「あれ。俺、寝ちまったのか」
 こめかみを掻く元親の様子に、変わったところは見受けられない。
(やはり、そうよな)
 落胆をすることもなく、元就は腰を上げた。それを、元親はきょとんと見上げる。見下ろした元就は
「我は城に戻る。貴様は我が来るまで、この隠れ屋で待っておれ」
「えっ」
 たわむれに命じて背を向け、まだ眠りから完全にさめてはいないのか、呆然とする元親を置いてさっさと城に帰っていった。

 それから数日後、元就は元親が行方不明であるという報告を受けた。彼が個人でふらりと出掛ける時に使う船も無いと、騒ぎになっているという。
(よもや……)
 元就は元親に別れ際、放った言葉を思い出した。
 もしや薬の効果は本物で、元親は自分の言葉に従っているのだろうか。
 すっくと元親は立ち上がり、すぐに確かめねばと部屋を出た。
「元就様。どちらへ」
「言う必要のない場所ぞ」
 歩きながら、元就は何の食材も置いていなかったなと、隠れ屋の備えを思い出す。あの離れ屋は人里からも離れている清水がわきあがっているので飲み水には困らぬだろうし、海も近いので魚を取り食いつなぐこともできるだろうと思いつつ、餅をいくつかと干物。酒と着物を持ち、城を出た。
「長曾我部」
 声をかけて土間に入れば、人の気配と物音があった。足を急かして廊下を進み、元親と最後に会った部屋に入れば、少しやつれた元親が、うれしげに元就を出迎えた。
「毛利」
 その姿に、元就は目を見開く。
「貴様。何をしておるのだ」
「何って。毛利が待ってろっつったんだろ」
 きょとんと首をかしげる元親は、まるで幼子のようだ。こけた頬に手を伸ばし、元就は眉をひそめた。
「魚を捕らえることも、いたさず待っておったのか」
「魚を取りに行ったら、こっから出ることになっちまうだろ」
 ぽかんと口をあけ、元就は薬が本物であることを知った。元親は、心の底からうれしそうに、少しすねてみせた。
「毛利が、ぜんっぜん来ねぇから、腹と背中がくっついて死んじまうかと思ったぜ」
 ずくん、と元就の胸がわななく。
「い、いろいろとすることがあったのでな。餅を持ってきた。焼いて食べるがよい」
「ほんとか! ああ、ありがとよ。毛利」
 無垢な笑みに、ずくんずくんと元就の胸が不思議な高鳴りを宿す。
「すぐ、火をおこして餅を焼くからよ。毛利は、いくつ食べる?」
「我は良い。好きなだけ、貴様が食らえ」
「……でもよぉ」
 しゅんとした元親に、元就は思わず手を伸ばし頭をなでてしまった。
「かまわぬ」
 自分の声が穏やかであることに気づき、さらに唇の端が持ち上がっていることを知り、元就は自分自身に驚いた。
「そんじゃあ、遠慮なく食っちまうな。あ、干物もあるじゃねぇか。酒も、持ってきてくれたのか」
 はしゃぎながら台所に向かう元親の背を見送ると、元就は自分の胸に手を添えて、床に座り込んだ。
(なんだ、これは)
 元親の全身を委ねるような笑みに、胸がうずく。あの薬は、飲んでいなくとも親鳥役となった者に、保護欲を沸き立たせるというのか。
(いや――)
 種族が違っても、幼子を可愛く思い保護欲に駆られるのは、動物の常だという。その動物よりも崇高なる存在である人が、その情動を持たないわけがない。神は、万物に愛を注ぐという。ザビー教の信条は『愛』だ。その教えを受けている自分が、どのような相手であれ自分の雛鳥となった者に保護欲をかきたてられぬはずはない。
(ザビー様も、おっしゃられていた。憐レニ振ル舞エバ優シクサレルネ☆ と。それは、裏を返せば憐れな者には手を差し伸べよということ)
 不可解な自分の変化に、なんとか納得のできる理由を見つけた元就は、ほっと胸をなでおろした。
「毛利、毛利ぃ。ほらほら、すっげぇ旨そうに焼けただろ」
 ばたばたとあわただしく戻ってきた元親が、全身で甘えた気配を発してくるのに、元就はキュウンと甘く胸を絞られた。

 それから、元就は時間を作ってはひっそりと、元親の待つ隠れ屋へ、食糧や着物を持って訪れるようになった。近頃の元就は、どこか楽しげに気もそぞろになると、元就のそばに仕えている者たちは「囲う者でもいるのだろうか」「いやまさか」などとささやき、好奇心と想像を膨らませていた。
 そんなうわさが立っている事など、重々承知でありながら、元就は元親の元へ足しげく通い、去り際には後ろ髪をいつも引かれていた。
「ではな。長曾我部」
「ああ、うん。またな」
 寂しげな笑みを浮かべて見送られると、去りがたく手を伸ばしてしまう。すると元親のほうが体躯が良いのに、何故か元就の腕の中に収まり甘える。いつだったか、感情に任せるままに唇を寄せれば、元親はおとなしく受け入れ、照れくさそうに頬を赤らめた。それ以来、別れるときはいつも唇を重ねる。まるでそれが、次回の約束をとりつける行為であるかのように。
 そして今日も元就は元親に口付け、ではなと夕暮れに去ろうとすると、元親が元就の袖を掴んだ。
「どうした」
 そんなことを、彼は今までしたことがない。
「ん。いや、なんでもねぇよ。――帰らなきゃ、いけねぇんだろ」
 眉根を寄せて、懸命に笑みを作る元親に胸を絞られる。だが、帰らないわけには行かない。
「じゃあな。また、来てくれよな」
「ああ」
 きゅっと下唇を噛んだ元親に見送られ、元就は城へ帰る。帰りながら、あの表情は何を示しているのかと考えた。だが、わからない。そんな元就の耳に、部下の会話が届いた。
「なんだ。今日はずいぶんと急いで帰り支度をしているな。さては、女か」
「明日、俺は非番だからな。たまには朝まで共に過ごしたいと、甘えられたのよ」
 いつもなら聞き流す会話に、元就は耳を止めた。
 ――たまには朝まで共に過ごしたい。
 もしや、という気持ちと元親のさみしげな笑みが交錯し、元就は雛鳥となった鬼のいじらしさに愛おしさを募らせた。
(もし、そうであるのならば)
 一夜、共に過ごしてやらぬでもない。そう考えた元就は、時間を作るべく差配した。

 夕暮れになっても、元就が腰を上げる様子の無い事に、元親がそわそわと身を揺すっている。
「どうした」
「いや、その。なんでもねぇよ」
「なんでもない、という顔では無いな。申してみよ」
「うう……」
 自分よりも体躯のいい男が、背を丸め言いよどむ姿を、元就は愛らしいと感じていた。うっすらと口元に笑みを漂わせれば、元親はそれに勇気を与えられたのか、唇を尖らせて目をそらし、ぼそりとこぼした。
「日が落ちてから帰られたんじゃ、余計に寂しくなるだろう」
 言った後、きゅっと体を小さくする様も言いようの無いほど愛らしくてならず、元就は頬を緩ませた。
「今宵は、泊まって行こうと思うておったが。――帰れと言うのならば、帰るとするか」
 わざと突き放すように言って、元就が立ち上がる。目を丸くした元親が、去ろうとする元就の足に縋った。
「ま、まってくれよ、毛利! い、今……なんて?」
「帰るとするか、と言ったのだ」
「違ぇよ。その前!!」
「泊まって行こうと思うておったのだが」
「ほんとかっ!」
 元親の声が跳ねる。
「だが、帰って欲しいのだろう?」
 つんと元就が言えば、ぶんぶんと首を振った元親が飛びあがり、元就を抱き締めた。
「夢じゃねぇんだな、毛利」
 喜びを全身にみなぎらせる元親に、元就の目がやわらかく細められる。
「ああ。今宵は、共に過ごす」
「そんならよ、俺、湯を沸かしてくるから。毛利はゆっくりしといてくれよ!」
 言うが早いか、足取り軽く部屋を飛び出た元親が、湯を沸かす合間にも元就が部屋にいるか、時折確認をしに来る姿に、元就はあたたかな苦笑を浮かべた。
 そうして眠る頃になり、いそいそと褥に横になった元親は、隣に来た元就に「へへっ」と照れくさそうに笑って抱きついた。
「毛利」
 声を弾ませる元親の髪をなでる。
「寝るの、すっげぇ勿体ねぇな」
「起きておっても、することも無いだろう」
 夜の海でも眺めに、と言いかけた元就は、元親の姿が万一、誰かに見つかってしまっては困ると言葉を止めた。
「そっか」
 しゅんとした元親の髪をなでれば、心地よさそうにする。思わず唇を寄せれば、元親はうれしげに頬を擦り寄せてきた。
「毛利ぃ」
 甘え声の元親に唇を寄せ、元就は舌を伸ばし、彼の唇をくすぐった。
「少し、口を開けよ」
 首を傾げながらも従った元親の口内に、舌を差し入れる。どうして自分がこのような事をしているのかわからぬまま、元就は元親の口腔をさぐった。
「んっ、ふ、ふん、ぁ」
 頬を手で包み、丹念に口腔を撫で舌を誘い出して吸えば、鼻にかかった息を漏らして元親の体が小さく跳ねる。
「んふっ、ふぁ、んっ、ん」
 たっぷりと彼の口を味わった元就が顔を離せば、潤んだ瞳で元親が見つめてくる。ずくん、と元就の胸が跳ねた。
「もぉりぃ」
 情けなくも甘い声で元親が言う。もぞもぞと体を揺する彼の鼻先に、元就は唇を押し付けた。
「どうした」
「ううっ、俺、その」
 赤くなった元親が、内腿を擦り合わせる。
「言ってみよ。我に、隠し事なぞ必要ない」
「っ、ま、魔羅が」
「魔羅が、どうした」
「……変、だ」
「どう、変なのだ」
 うう、と唸った元親に、言えぬのならば見せてみよと言えば、のろのろと起き上がった元親が膝を立て足を開く。恥ずかしげに着物の裾をまくる姿に、元就の腰が疼いた。
「む、むずむずする」
 下帯を付けぬ下肢の間で、茂みの中に頭を持ち上げ震える魔羅があった。
「なるほど」
「あっ、毛利」
 元就の細い指が、元親の牡に絡む。軽く擦ってやれば、元親は腰を揺らした。
「心地よいのか」
 目じりを赤く染めて、元親がこくりと首を動かす。
「ならば、もっとしてやろう」
「っ、あ、毛利」
 元就が擦れば、元親は腰を揺らめかせ荒い息を吐く。なすがままおとなしく乱される元親の、長い睫が濡れて震えている。
「毛利、ぁ、はぁ、あっ、んっ、くる、ぁ、毛利」
「そのまま、放てば良い」
 ちゅ、と口吸いをして手淫を強くすれば、元親は元就の首にしがみつき、腰を突き出し子種を吹いた。
「っはぁああああ」
 びゅ、と飛び出る子種の残滓も絞るように、根元からきつく擦り上げる。背を丸め、ビクビクと震えた元親が涙をこぼし安堵の息を漏らした。元親の目元に唇を寄せ、元就が問う。
「心地よかったか?」
 こくん、と頷いた元親が、艶やかで無垢な瞳を元就に向けた。
「毛利も」
「ん?」
「これ、すげぇ気持ちいいから。だから、毛利も」
「我の魔羅を、扱くというのか」
「嫌か?」
 眉を上げた元就に、元親が眉を下げる。その顔を見つめてから、元就は着物をくつろげ下肢をさらした。
「ならば、長曾我部よ。貴様の口で慰めよ」
「口、で?」
 きょとんとする元親の髪を撫で、そうだと元就がつぶやく。
「歯をたてぬよう、気を付けろ」
「わかった」
 きりっと返事をした元親が、口を開けて元就の牡に顔を寄せる。おそるおそる舌を伸ばし舐める元親に、丹念に舐めた後は口内に含んでしゃぶれと指示をする。
「んっ、ふ、ぉむっ、じゅ、んふぅ」
 根元を掴んで懸命に奉仕する元親の手を、そっと解いて腰を掴ませた。
「喉奥まで飲み込み、いたせ」
「んふっ、ぇう、んはっ、はんっ、じゅっ」
 言う通りにしゃぶりつく元親の目じりに涙が溜まり、こぼれる。それを指でぬぐい髪をなでれば、元親はますます励んだ。
「んふっ、んっ、んじゅっ、はむぅう」
「ふ、くぅ」
「っ! んぐふっ、げほっ」
 元就の子種にむせる元親の口から、唾液と子種があふれて落ちる。涙を流し見上げてくる元親の瞳は、元就だけを頼りに生きているのだと告げている。
「もぉりぃい」
 ぐすっと鼻を鳴らした元親を撫で、口内に指を入れる。
「んふっ、ぁう」
 ぐちぐちと元親の口内をかきまわし、唾液と自身の子種で指を濡らした元就は、元親にあおむけになり足を抱えて広げろと命じた。
「んっ、こう、か?」
 おずおずと従った元親の無防備な従順さに、元就の胸は甘く暗いもので満たされた。
「そのまま、しっかり足を抱えておれ」
「何すんっ、ぁ、あ、毛利っ」
 濡らした指を元親の秘孔に押し込めば、元親が信じられないと目を大きく見開いた。
「おとなしく、我の指に意識をむけておればよい」
 元就は元親の太ももに唇を押し付け、そのまま舌でなぞり牡を含んだ。
「んぁ、そんなトコっ、ぁ、なんでっ」
 しゃくりあげる元親の泣き顔が、豊かな胸筋の山の向こうに見える。困惑する元親をもっと見たいと、元就は牡をしゃぶり秘孔を掻きまわした。
「ひぁあうっ、毛利っ、ぁ、やだっ、ぁ、なんか変、ぁ、はぁうっ」
「ここが、心地よいのか」
 元親が高い声を上げた肉壁を強く押せば、彼の腰が大きく跳ねる。
「ひんっ、ぁあ、毛利っ、ぁ、らめぁ、そこっ、ぁはぁあ、変っ、ぁ、変になるっ、ぁあう」
「なっても、かまわぬ。我の前であれば、どのような姿になっても、かまわぬ」
 秘孔を探りながら、元就は元親の泣き顔に唇を寄せた。
「ふっ、毛利ぃ、ぁあ」
 尖った胸乳に舌を伸ばし、吸いながら秘孔をほぐせば元親の顔がとろけた。
「こうされるのが、好きか」
「はぅあっ、わ、からねぇ、ぁ、はぁあ」
「心地よいかと、聞いている」
 顔を真っ赤にして、元親がうなずく。
「きちんと言わねば、帰ってしまうぞ」
 ささやけば、はっとした元親が元就にしがみついた。
「っ、きもちいっ、ぁ、気持ちいいっ、から、ぁ、毛利、帰るなんて、言うなよぉ」
 ぐずっと鼻を鳴らした元親にたまらなくなり、元就は指を抜き自身の牡を秘孔にあてがった。
「毛利――?」
「今から、我と一つになるのよ」
 意味がわからぬらしい元親が、またたく。
「嫌か」
 ぶんぶんと首を振った元親が、ぎゅうっと元就を抱きしめた。
「嫌じゃねぇ」
「ならば、貴様の中に入るぞ」
 元就の肩に顔を押し付け、元親が頷いた。元親の髪に唇を寄せて、元就が腰を進める。
「ぁがっ、ぁ、あはぁあぉお」
「くっ」
 狭い秘孔を過ぎれば、媚肉が元就に絡み誘うように蠢いた。
「は、はぁお、おぅうっ、も、ぉりぃ」
「苦しいか」
 問えば、元親は元就の腰に足を絡めた。
「ぁ、はぁう、いっぱ、ぁ、ナカ、なんか、入って」
「我が、貴様の内に入ったからぞ」
「これ、も、ぉり?」
「そうだ」
 苦しげに眉を寄せたまま、元親が顔をクシャクシャにして笑う。
「俺、毛利とひとつになってんのか」
「そうだ」
「へへっ」
 全身で甘えてくる元親を抱きしめ、弾力のある分厚い胸を掴み、円を描くように揉みほぐし、元就は腰を静かに動かした。
「ぁ、は、はぁ、毛利、ぁ」
「痛いか」
「んっ、ふぁ、い、たくねぇ、けど」
「なんだ」
「あ、つい……毛利ぃ」
 求める声に、口付けで応える。
「まだまだ、一つに溶け合うには熱が足らぬ」
「もっと、毛利とひとつになれんのか?」
「そうだ」
「なら、それ、早く」
 切なく求める瞳に口付け、元就は思うさま腰を打ち付けた。
「んひぁあっ、ぁ、はぁああ、毛利ぃ、ぁ、もぉりぃい」
 身をくねらせて叫ぶ元親の首を食らい胸乳を吸い、元就は白い肌に所有の印を付けながら穿つ。
「ひんっ、ひっ、ぁ、毛利ぃああ、も、くるっ、ぁ、また、くるっ」
 絶頂が近いと知らせてくる元親の首を抱き、元就は耳元にささやいた。
「同時に、放つぞ」
「ふっ、ふんっ、ぁ、毛利と、ぁ、いっしょぉ、あぁ」
「そうだ……ほら、っ!」
 どく、と元就が熱を注げば、大きく背を反らした元親が獣のように吼えた。
「っはぁああああぉおおおお」
 元就の腹に擦れた元親の牡が、勢いよく子種を吹き上げる。互いに震え、全てを吐き出し終えた二人は、淫欲よりも清純で、野欲よりも本能に近いあたたかさを唇に乗せ、無言でささやきを交わした。

 穏やかな寝息を立てる毛利元就の寝顔が、月光に白々と浮かび上がっている。それを無言で眺める長曾我部元親は、穏やかな苦笑を浮かべていた。
 そっと手を伸ばし、彼の顔にかかる絹糸のような髪をかきあげた。
 怜悧さをたたえた刃物のように鋭い瞳は、柔和な気配を宿して閉じられている。薄い唇からは、警戒の気配もない安穏とした寝息がこぼれていた。
「ったく。つまんねぇシロモンを、盛ってんじゃねぇよ」
 元親は、元就からの文が届いた時点で、なにかあるなと感じていた。常よりも友好的に感じた彼の態度に不審を募らせた元親は、元就が少し席を立った間に茶を庭に捨て、菓子を軒下に投げ捨てた。そして倒れて眠るフリをして、元就が薬の効能を呟くのを聞いていたのだ。
「こんな、まわりくどいことをしなきゃ、素直になれねぇなんざ。難儀な奴だぜ、まったく」
 やわらかく呆れた息を漏らした元親は、元就の額に唇を押し付け横になり、彼を抱きしめ眠りについた。
2014/02/08



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