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餞別

 潮の香りに包まれたここは、海上を進む要塞富嶽の上。船の持ち主は、もちろん西海の鬼、長曾我部元親で。その船に、奥州の竜、伊達政宗は乗っていた。
 竜鬼同盟の関係でどうのこうの、ではない。外ツ国に漕ぎ出す元親が、北の大地を目指すということで、奥州に立ち寄ったのだ。その折に、暇をもてあましていた政宗が、長く会えなくなるのだから数日ぐらいは自分を船に乗せて四方が海という景色を、選別の返礼として見せてくれと言ったのだ。
 むろん、竜の目付け役の右目が口を挟み反対した。けれど数年は会えなくなるかもしれないという見込みに折れ、三日の間ならばと承諾を得た。
 そんなわけで、政宗は四方が海という景色を堪能すべく、海風に吹かれていたのだった。
「おい。兄貴がなんか、みけんにしわを寄せているぜ」
「照り返しが、眩しいんだろ」
「風邪を引いちまったんじゃねぇのか。ここいらは、四国よりずっと北で寒いからな」
「ええっ、そりゃ大変だ。全員で兄貴の冷えた体をさすってやんなきゃあ!」
「何を、バカな事を言ってやがんでぇ。どうせなら、政宗に鯨の姿でも見せてやりてぇなと、海路を考えていたんだよ」
 長曾我部軍の面々の言葉に、元親がやれやれと返答をし、政宗は耳を疑った。あきれ顔の政宗にばつの悪そうな顔をして、元親が頭を掻く。
「ああ、そのぉ、なんだ。船室に入って、酒でも呑まねぇか」
「――Ah」
 にやりと口の端を持ち上げた政宗に、ますます具合の悪そうな様子になりつつ、元親は富嶽の奥、彼の私室に政宗を案内した。
 彼の私室に入るなり、政宗はクックと喉を鳴らす。むすっと唇を尖らせた元親が、酒を持ち寝台に腰掛けた。政宗がその横に座る。外国の酒瓶を開けた元親が、ぐいとそのまま口をつけ政宗に差し出せば、政宗も同じように飲んだ。ふわりと果物の香りが漂う。
「そんなに、笑わなくてもいいだろうがよ」
 むすっとする元親に、人の悪い顔をして政宗がからかう。
「アンタは、風邪を引いたらアイツラに体をさすって温めて貰うのか? You are very loved」
 南蛮語の意味はわからないが、口調で面白がられていることは通じて、元親は政宗の手から酒瓶を奪うと、ごくごくと喉を鳴らして飲んだ。口の端から、酒がこぼれて元親の喉を伝う。それに顔を寄せて、政宗が舐めた。
「っ、おい」
「こぼしてんぞ」
「だからって、舐める必要なんざ、無ぇだろう」
「酒に誘ったのは、そっちのくせに、一人で飲んじまうからだろう。こぼれた分を飲むしか、無ぇじゃねぇか」
「だからって、おい、ちょっと」
 元親の肌を伝う酒を舐める政宗の舌が、彼の唇の端に触れた。
「アイツラにさすってもらわなくても、溶けるほど熱くさせてやる」
「うえっ? ちょ、政宗、おい、んぅ」
 元親の唇を覆い、舌を伸ばして彼の口内に残る酒の名残を政宗は丹念に味わう。
「んふっ、んっ、んうっ、んっ、んぅう」
 しっかりと元親の顔を掴んで彼の舌を絡めとり引き寄せ、強く吸えば元親の肌が震えた。
「んふぅうっ」
 唇を重ねたまま寝台に押し倒し、角度を変えて呼気すらも奪うほど激しく口を吸えば、元親の鼻から甘えた音が漏れ、鬼の瞳がうるんだ。
「ふはっ、は、はぁ」
 唇を解放する頃には、元親の呼気は乱れ、肌はうっすらと赤みを差すほどに熱を上げていた。
「今更、やめろとは言えねぇよな?」
 政宗が膝で元親の下肢を押す。
「うっ」
 そこは、わずかに硬くなっていた。
「す、好きにしろぃ」
 目じりを朱に染めて、ぷいっと顔を背けた大男に政宗は歯を見せて笑う。その獰猛さを目の端に映し、元親は胸をどきりとさせた。
「Ok なら、好きにさせてもらう」
「ま、政宗」
「男に、二言は無ぇよなぁ」
 ぐっと言葉に詰まった元親は、観念したように手足を投げ出した。それにクッと喉を鳴らし、政宗は彼の白い喉元に食らいつく。
「っ、あ、痕はつけんなよ」
 あわてて注文をつける元親を、政宗はつまらなさそうに見た。
「野郎どもに、なんて言やぁいいんだよ」
「そのまんま、素直に言えばいいだろう」
「言えるかバカ野郎」
 ゆでたタコのような顔で怒鳴る元親の頬に、政宗はなだめるように唇を押し付ける。
「見えねぇ所なら、かまわないな」
「へっ?」
 言うが早いか、政宗は元親の細袴の帯を解き下帯を脱がし、足の付け根をきつく吸った。
「ひっ、ぁ」
「こんなトコ、誰にも見せねぇだろう」
「んぁ、けどっ、は、ぁあ」
 元親の茂みに政宗は舌を絡め、牡の根元に軽く歯を立てる。猫が水を飲むように幹を舐め、先端を指で摘んでこねれば、それはすぐに脈動して天を向いた。
「さすが、鬼の珍宝だな。ずいぶんと立派じゃねぇか」
「何、くだんねぇ事を言って、ぁはっ」
 政宗の爪が蜜口をグリグリと押し広げるように掻いて、元親は腰を震わせた。
「ぁ、政宗、それっ、ぁ、あぁ」
「イイんだろう? 触れても無ぇのに、胸の実が熟れてやがる」
「ひんっ」
 たくましく盛り上がった元親の胸筋をつかみ、政宗は凝った尖りを指の腹で押しつぶした。
「どっちのほうが、気持ちがいいんだ? 元親」
「ぁ、はぁ、あっ、んっ、答えられっかよぉお」
 もどかしげに腰を揺らす元親の姿に、政宗は唇を舐める。
「そうだよな。アンタは、それよりも気持ちがいいモンを、知っているからな」
「えっ」
 得意げな悪童の顔になった政宗は、帯を解き竜の根を元親に見せた。
「これで、思いきり突き上げられんのが、一番の好みだろう? Lewd ogre」
 ごくり、と元親が喉を鳴らした。
「あいにく、潤滑油を持ってねぇんだが。変わりになんか無ぇのかよ、元親」
 元親の顔をまたぎ、彼の鼻先に自身の牡をつきつけて、政宗が無言でしゃぶれと促す。喉を鳴らした元親が口を開き、舌を伸ばして政宗の牡を口内に引きいれながら、寝台の横にある棚を示した。元親にしゃぶらせたまま、政宗は手を伸ばして引き出しを開け、香油の瓶を見つけた。
「こんだけありゃあ、十分だ」
 しゃぶる元親を褒めるように、政宗は彼の白銀の髪をかきあげる。
「起きろ、元親。俺が横になるから、ケツをこっちに向けて乗れよ。しゃぶりあおうぜ」
 元親の頬を撫で、彼の口内から牡を引き抜けば、元親が中途半端に脱げた着物を全て外す。政宗も裸身となり、寝台に横たわった。ためらいながらも元親は政宗の顔をまたぎ、彼の牡に顔を寄せる。
「OK Good ogre」
「ぁひっ、んっ、んぅう」
 元親の白い尻を開き、鬼孔に香油を垂らす。指を入れて塗り込めれば、元親の牡が震えて先走りをこぼした。
「ふはっ、ぁ、あんっ、ぅ」
「おいおい。何のために、この格好になったと思ってんだ? 元親。口が、お留守だぜ」
「うるせぇよっ、んっ、はふっ、んぅう」
 文句を言いつつ、元親が政宗をしゃぶる。政宗は元親の蜜嚢をしゃぶり、陰茎の先を捏ねながら香油で秘孔をたっぷりと濡らした。
「んふっ、ふぁ、あんっ、は、ぁ、政宗っ、ぁ」
「あえいでねぇで、しっかり咥えろよ」
「んはっ、ぁ、だって、ぁ、こんな」
「ヨすぎて、咥える余裕も無ぇか」
「はひっ、ぁ、そこっ、ぁ、ああっ」
 秘孔の弱点を強く擦れば、元親が背を反らして身悶える。自分よりも隆々とした筋骨を持つ、白い肌の鬼が見悶える様に政宗の牡が野欲に震えた。
「鯨が見えたっつって、誰かが呼びに来ちまったら大変だな」
「ぁはううっ、や、ぁ、んぁ、そんっ、言う、ぁ」
「想像したか? 締まりが良くなったぜ」
「ひぁうっ、んぁ、も、ぁ、オメェもあえがせてやる」
 がっしと政宗の牡を掴んだ元親が、口淫に励んだ。牡のクビレを舌でくすぐり、先端を吸い上げながら幹を扱いたかと思えば、喉の奥まで使い、上あごと舌で扱く。尻を突き出し頭だけでなく上半身をも上下させて、激しくしゃぶる元親に合わせ、政宗も腰を動かしながら彼の媚肉を押し広げた。
「んふっ、んぅうっ、ふぁ、んっ、んぅうっ」
「どうした。動きが鈍っているぜ」
「うるせぇっ、んっ、んじゅっ、はふ」
 まるで喧嘩のようなやり取りをしながら互いを高め、乱す。そろそろか、と政宗は元親が頭を下ろすのに合わせて腰を突き出し、彼の喉奥に子種を放った。
「くっ」
「んぶっ」
 それと同時に秘孔の弱点を強く掻き、元親の牡を弾けさせる。
「っはぁあううう」
 政宗の目の前で元親の牡が震え、ここちよさそうに子種を噴きあげる。
「は、はぁあぁああ」
 うっとりと声を震わせる元親をあやすように、秘孔を探り蜜嚢を吸った。
「んっ、んふ、は、ぁあ、政宗ぇ」
 とろりとした元親の声に、政宗が彼のひきしまった尻を叩けば、元親はごろりと横になった。起き上がった政宗が顔を覗けば、淫蕩と政宗の子種、涙とヨダレで顔を濡らしている。
「すげぇ顔だな」
 鼻先に唇を寄せれば、元親の腕が政宗の首に絡んだ。
「んっ、早く」
「淫乱」
 政宗が耳元でささやけば、うるせぇよと元親が呟く。
「鬼は、欲望に素直なんだよ」
「Surely so」
 政宗の腰に元親の足が絡み、求められるまま政宗は鬼孔に沈んだ。
「はっ、ぁ、あう、ぁううっ、ふ、ぁ」
 進むごとに睫を震わせる元親に口付けながら、政宗は根元まで沈めて息を吐いた。
「しばらくは味わえなくなるんだ。たっぷりと、堪能させてやる。元親」
「そいつぁ、こっちのセリフだぜ? 政宗。俺が欲しくなっても一人で思い出して慰められるように、しっかりと堪能して覚えてやがれ」
 悪戯の共犯者のような顔をして唇を寄せ、二人は腰を揺らめかせた。
「はんっ、は、はぁあ、んぁっ、あ、政宗っ、ぁ、もっと、ぁあ」
「心配しなくても、足腰立たなくなるまで、グチャグチャにしてやるよ」
「ひんっ、ぁ、それは、困るっ、あ、そこっ、ひぁうう」
 元親の嬌声と政宗の熱い呼気、穿ち繋がる淫靡な音が室内を満たす。
「ぁはぁううっ、政宗ぇ、あっ、早くっ、ぁ、奥に、ぁ、ぶちまけやがれっ」
「催促すんじゃねぇよ、鬼が」
「んぁあっ、も、ぁ、出そうなクセにっ、ぁ」
 元親が激しく腰を振りたてて、政宗の熱を求める。応えるように政宗も深く激しく元親を突き上げ、熱を放った。
「っ、ふ」
「んぁっ、あはぁああううっ」
 受け止めながら絶頂を迎え、元親が背を反らし政宗の背に爪を立てる。その痛みもしばらくは、もしかすればもう二度と味わえないかもしれないと、政宗は遠い海に漕ぎ出す鬼を抱きしめた。
「はぁ、はっ、ぁ、あん、ふ、ぁ? 政宗、ぁ、ちょ、待てって」
 余韻の息を漏らした元親が、それに浸りきる前に政宗が再び動く。
「Ah? 何を待てってんだ」
「何って、ぁ、俺、イッたばっか、ぁひっ」
 ぎり、と胸の尖りを捻られて、元親が短い悲鳴を上げて尻を締めた。
「俺だって、イッたところだ。こんぐれぇで根を上げるんじゃねぇぜ、西海の鬼。それとも、竜にはついてこれねぇってのか?」
 みえみえの挑発に、元親が楽しそうに牙を剥く。
「へっ、何を言ってやがる。んぁ、鬼が竜なんかにっ、ぁ、後れを取るわけがねぇだろうが。はっ、ぁ、もう枯れて動けねぇって泣きを入れるまで、搾り取ってやらぁ」
「Now you are talking」
 唇を重ね、腕を絡めて身を寄せて、竜と鬼が互いを貪り、自身を相手の魂に刻み続けた。
2014/02/14



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