唸りをあげて真っ直ぐに迫り来る長大な槍の穂先をくぐり、手甲で叩き上げる。「ふんっ」 弾かれた碇のような槍に繋がる鎖を掴んだ徳川家康は、太ましい腕に力を込めて引き寄せた。「っとぉ! 俺と力比べをしようってのか、家康」 楽しげに声を弾ませた碇槍の持ち主、長曾我部元親が地を蹴った。それと同時に家康も駆ける。「おりゃあっ」「はあっ」 気合を迸らせた二人の拳は、それぞれ相手の腕に止められていた。にやり、と口の端を持ち上げた二人は腕を下ろし、身を包んでいた空気をゆるめた。「さすがだな、元親」「ずいぶんと、強くなったじゃねぇか」 ぽん、と気軽に家康の頭に手を乗せた元親に、家康は眉を下げて微笑む。まだ、彼の腹ほどの背丈しかなかった頃と同じ対応が、面映くも悔しく感じた家康は、眩しいほどに憧れた相手の笑みに、胸を疼かせた。「まだまだ、元親にはかなわないな」 ぽつりと呟いた家康に、光のある右目をまたたかせ、元親がにいっと歯を見せる。「よく言うぜ。天下人になった男がよぉ」「うわわっ」 ぐしゃぐしゃと髪を掻き混ぜるようになでられて、前かがみになった家康の目に、絹のようになめらかで白い元親の胸筋が飛び込んだ。誇るようにさらけ出された、盛り上がった胸筋の色づきに家康がごくりと喉を鳴らす。そんなことには気付かぬ元親は、腕を家康の首に絡みつけ、乱暴に彼の頭を片腕で抱きしめた。「中身も図体もずいぶんでっかくなっちまいやがって」 それは幼子の成長を喜ぶ保護者のような声音で、ちくりと家康の胸が痛んだ。「まあでも、抜かれる気はねぇけどな」 鬼と称されるほどの偉丈夫でありながら、元親は無防備な子どもと同じ笑みを浮かべる。元親のみっしりとたくましい腕から解放された家康は、そっと息を吐いた。「必ず、追い抜いて見せるさ」 おっ、と楽しそうに元親が眉を上げる。家康は元親の目を直視できず、左目の眼帯に視線をわずかにずらした。そんな些細な動きでも、気付かぬ元親ではない。首を傾げ、家康に顔を近付けた。「どうした。なんか、あったか?」 呼気が鼻先に触れそうになるほど顔を近づけられて、家康はぎょっとする。「も、ももも元親っ」「ん?」 このぐらいの距離で顔を付き合わせるなど、元親には何の不思議もない行為だった。家康が驚く理由がわからない。当の家康は、元親の睫の長さまでわかるほどの近さに、胸を早鐘のように鳴らしていた。天下人となった自分は、長年憧れ望んでいた相手と比べ、遜色の無い存在になったのではないかと、うぬぼれでは無く思っていた。奥の道場で人払いをし、思うさまに拳を交えての語らいを、互角に出来たことで自信を持った。だが、こうして誰の目も気にせず、旧友のままの状態になれば、敵わないと感じてしまう。それが照れくさく、歯がゆく、うれしくもあり、悔しくもあった。 そんな家康の心中など知る由もなく、元親は眉をいぶからせ、じっと家康の目を覗きこむ。「気がかりな事があるんなら、遠慮せず言えよ。俺とオメェの仲なんだからよ」 心底案じてくれているのだと、その声音が告げている。ぞわり、と家康の心臓が甘美なものになでられた。「元親」「お?」 物憂げな家康の吐息に元親がまたたく。家康は胸をなでた情動に促され、夢に浮かされたように元親の首に指を這わせ、顔を寄せた。「――?」 唇が触れ合う。あまりのことに思考が停止したらしい元親の目を見つめながら、家康はそっと舌を伸ばして彼の唇を舐めた。元親はまだ、現状を理解していない。その瞳がじわじわと困惑を浮かべ始めたのに気付き、家康はとっさに元親に足払いを食らわせた。「っ、てぇ」 派手に転んだ元親に馬のりになり、彼の腰についている飾り布を奪って、手早く元親の腕を頭の後ろにひねり、後頭部に沿うように肘から手首までをぐるぐる巻きにして固定した。「い、家康っ、何――んぅっ」 乱暴に元親の顎を掴み口を開かせ舌をねじ込む。子どものままの扱いをする彼に、家康は無性に自分が一人前の男である事を示したかった。「んふっ、ぁ、家康っ、おい」 腕を固定された元親は、首を振り足をばたつかせて家康から逃れようとする。家康が何を考えて、こんなことをしているのかが元親には理解が出来なかった。「んっ、ぷは。はぁ、何してんだよ」 息を荒らげわずかに頬を上気させた元親の目には、まだ年長者の余裕がうかがえる。戸惑いと心配を浮かべる元親からは、怒りも危機感も見えないことに、家康は悔しさを爆発させ、その激しさに奮えながら薄らと笑みを浮かべた。見た事の無い家康の笑みに、元親の背が悪寒を走らせる。「い、え、やす?」 急速な喉の渇きを感じながら呟いた元親の声は、掠れていた。「元親。ワシは、ずっと元親に憧れていたんだ」 家康の手が元親の頬に添えられる。「その憧れが、いつしか欲に変わっていた」「――え?」 苦しげに、泣きだしそうな顔で無理に笑う家康は、迷子の子どものようだった。「家康、オメェ……」「大勢の人間に囲まれて、慕われて。元親の豪快さに隠れて、皆が気付かないだけで」 家康の手が、元親のたくましい胸筋をなでる。脇から寄せるように手のひらでなでられて、元親は手付きの妖しさに白い肌を震わせた。「元親がどれほどきれいなのか、ワシは知っていた」「っ、家康!」 元親の胸に顔を寄せた家康が、胸の色づきに舌を伸ばす。舌先でくすぐり、軽く歯を立て、赤子のように吸い吐く家康の、思い詰めたような眼の色に、元親は唇を噛んだ。「元親」 吐息と共に吐き出された呼び名の切なさに、元親の胸が絞られる。「家康」 苦しげに呻くように吐き出された自分の名に、家康は自嘲した。「笑ってくれ、元親。ワシは、ワシは……」 ぐっと奥歯を噛んだ家康が元親の胸に顔を埋め、肩を震わせた。それを眺めた元親が、そっと息を吐く。「腕、ほどけよ」 ぽつりと、空間に投げ出すように元親が言う。はっと顔を上げた家康が、あわてて腕で目を擦り、すまないと呟いて元親の腕の戒めを解いた。起き上がった元親が腕をさすり、家康を見る。目をそらした家康が、膝の上で拳を握った。「軽蔑、しただろう」 うつむき、顔をそらした家康の頬しか、元親からは見えなかった。がりがりと呆れた顔で頭を掻いた元親が「おい」 ぐい、と家康の肩を掴み振り向かせ、唇を押し付けた。「っ?!」 目を白黒させる家康に、にやりと元親が勝ち誇った笑みを浮かべる。「仕返しだ」 油に火が灯ったように、一気に顔を赤らめた家康を、楽しそうに元親が眺める。「っな、も、も、元親っ」 声を裏返して叫ぶ家康に、元親がゆったりと胡坐を掻いて語りかけた。「なあ、家康。なんでオメェは、一人で抱えて一人で悩んで、自己完結させちまうんだ。水臭ぇじゃねぇか」 元親の様子に親身さを感じ、家康は自分の気負いがストンと落ちたのを感じた。「水臭いもなにも、本人に懸想をしているなんて、そう容易く言えるはずは無いだろう?」「ま、そらそうか」 家康が先ほど行った事を気にするそぶりの無い元親を、家康はまじまじと見つめた。「怒って無いのか?」 おそるおそる問う家康に、ああそうかと思い出したようにゲンコツを握った元親は、それを家康の頭に落とした。「痛っ!」「こんぐれぇで、勘弁しといてやるよ」 叩いた箇所を、大きな手のひらで元親がなでる。その笑顔に、心の底から敵わないなと家康は喜びに似た悔しさを浮かべた。「ああ、まぁ、しかし、なんだ」 豪快な笑みを引っ込めた元親が、目をそらし言いよどむ。「オメェが、どんだけ思い詰めてるのかは、伝わった」 ちら、と家康を見た元親が、すぐに目をそらして唇を尖らせ、気付かなくて悪かったな、とごにょごにょ言う。そんな元親の姿に、家康の胸が熱くなった。「元親」 ん? と元親の目が自分に向いたのを見計らい、家康は言う。「好きだ」「んなっ」 今度は、元親が酒を食らったように赤くなった。「ばっ、なっ、ぁ、うう、その」 忙しく目を泳がせる元親を、家康は心底いとおしく愛らしいと思う。にこにことする家康に、むっつりとした元親がぶっきらぼうに問うた。「どっち側だ」「え」「どっち側だっつってんだ」 きょとんとする家康を、目元を赤らめた元親が睨み付ける。「どっち側って。何がだ、元親」 全身を赤く染めた元親が、唸りを上げて腕を振るった。あわてて床に伏せて交わした家康は、そっと元親を見上げて問われた内容に気付き、全身を熱くさせる。「元親、それって、その、アレのことか」 これ以上赤くはなれないだろうと言うほど赤くなり、元親は怒ったような顔をして、家康に背を向けて腕を組んだ。あれほどに思い詰めた家康を、無下に出来ないと頭で思いつつ、元親は自分の胸に湧き上がったものがあふれ出ないように、しっかりと押さえ込む。家康の告白に沸き起こったのは、嫌悪ではなく愛おしさだった。言われて初めて気付いた自分に、元親は照れていた。 元親の心境に気付く余裕などなく、家康は元親の広い背中を眺める。元親が目の前に留まっている。それだけではなく、どっち側かと問うている。それは、期待をしてもいいのだろうかと、家康は腰を浮かせた。「元親」 呼びかけた家康が背後から抱きしめれば、元親が身を強張らせる。それが拒絶では無いことを確かめるように、家康は元親の胸乳に手のひらを沿え、うなじに唇を寄せた。「何度も、元親の肌を貪る夢を見た」 ごくりと元親の喉が鳴る。「元親を思い浮かべながら、幾度も自分を慰めた」「――家康」「どうしようもないほど、元親が欲しくてたまらないんだ」 血を吐くような告白に、元親は腹を決めて家康の手を握った。「くれてやる」「え」「だから。くれてやるっつってんだ。その代わり、オメェの魂を俺に寄越せよ。家康」「それって」 元親の肩に乗り出し、家康が叫んだ。「抱いていいという事なのかっ?!」「ばっ! そんな、でっかい声で言うんじゃねぇ――っ」 元親が牙を剥き、噛みつくように家康に顔を向ける。すかさず唇を奪った家康は、幸せを全面に浮かべて元親を抱きしめた。その顔にほだされ、元親はばつの悪そうな顔をして目をそらし、口付けを受け止める。家康が舌を伸ばし、元親がそれを受け止め口内へ導いた。「んっ、ふ、んんっ、ん」 飲みきれない唾液が、元親の口の端からこぼれ顎を伝う。丹念に元親の口腔を味わう家康の手が、元親の胸乳を掴みしめ、指の腹で突起をころがした。「んっ、んんっ、ん」 わずかに眉根を寄せ、息苦しさに瞳を潤ませる元親に、家康の胸がはちきれそうになる。夢ではないのだと確かめる家康の、とろけるようなまなざしに、元親は体を疼かせた。「ふっ、ん、ぁ、家康」「元親、ああ」 うっとりと呟いた家康の唇が、元親の首に触れる。くりくりと家康につままれころがされる元親の乳首が、むずがゆい甘さに震えて凝った。「すごく、硬くなってる」「んっ、ばかやろ、ぁ」 まさか自分のそんなところが心地いいなど、夢にも思った事の無い元親は、家康の好きにさせながら戸惑い、反応を示す下肢を隠すように、膝を立てて引き寄せた。「元親、かわいいな」「ふざけたことを、言ってんじゃねぇよ」 元親の文句が、快楽に震えている。「感じてくれているんだろう?」 耳朶に舌を差し込みながら、家康がささやいた。きゅっと乳首をつままれて、喉の奥で元親が小さな悲鳴を上げる。「っ、ばかや、ろっ、ぁ」 否定をしない元親に、家康は唇を押し付け胸乳の手を滑らせた。腹筋の筋をなぞり、ヘソをくすぐり、その先に手を伸ばす。元親が快楽に肌を震わせながら、下肢に延ばされた家康の手を太ももで挟んだ。「っ――!」「元親。これじゃ、触れない」「ううっ」 うめく元親は叱られた子どものようで、家康はくすりと鼻を鳴らした。「ワシも、元親に触れているだけで、痛いほどに大きくなっているんだ」 元親の手を取り、家康が自分の下肢に導く。触れた元親が、瞳がこぼれそうなほどに、目を見開いた。「な?」 むっと唇を尖らせた元親が、乱暴に家康を引きはがして体ごと振り向いた。「見せろよ」「えっ」「出せっつってんだ。俺も、出す」 拗ねた顔をした元親が、着物を脱ぐ。脱がしたかったんだがな、と口内で呟いた家康も、着物を脱いだ。裸身になった二人は、互いの牡がこれ以上無いほど猛っているのを目にし、手を伸ばした。「元親の、しゃぶりたいな」「それじゃあ、家康は気持ちよくなんねぇだろう」「言っただろう? 元親に触れているだけで、こんなになったんだ。元親を心地よくさせることが、気持ちがいいんだ」 だから、と家康は元親の耳に唇を寄せる。「元親の味を、知りたい」 声にならない声を発し、体中の毛を逆立てた元親が、床に大の字に寝転がった。「勝手にしろっ!」「ああ。好きにさせてもらう」 家康が元親の足を持ち上げ、開かせる。ちらりと様子を見た元親は、腕で顔を隠した。「こんなに、大きくして。ワシに、感じてくれたんだな」 うっとりと呟いた家康が、自分の指に唾液をつけて、元親の足の間に座る。「膝を曲げて、もっと足を開いてくれ。元親」「ううっ」 うめきながらも、元親が足を開いた。「ありがとう、元親」 初心な反応を示す元親の尻に、塗らした指を添わせて谷をなでつつ、家康は元親の牡に舌を伸ばした。「っ、は、ぁ」 牡を舌先でくすぐられた元親が、淫靡な声を漏らす。それに腰を疼かせて、家康はひっそりとした元親の秘孔に指を差しこんだ。「っ、あ、家康、何」「何って、ここにワシを受け止めて貰うんだ。やはり、嫌か?」 不安げな家康に、元親は何と言っていいのかわからず、許したのは自分なんだと胸に浮かべてそっぽを向いた。「勝手にしろ」「嫌になったら、言ってくれ」 ぽつりと落ちた家康の声音の暗さに、元親は身を起こし、その勢いのまま頭突きを食らわせた。「っ、元親、何」「俺は、好きにしろっつっただろうが。信用ならねぇってのか」「そういうわけじゃないが。やはり、その、元親も男だから、その、い、いれられるのは嫌なんじゃないかと」「オメェは、俺を縛りつけてまで、しようとしたじゃねぇか。そんだけ、したかったんだろう? そんだけ、思い詰めてたんだろう。それなのに、俺がやっぱ嫌だっつったら、やめられんのかよ。こんなにデカくしといて」「うっ」 力任せに元親が家康の陰茎を掴んだ。ふんっと鼻息を漏らした元親が立ち上がり、道場の四隅にある灯明皿を集めて戻る。しゃがんで、ずいと全てを家康の鼻先に突き付けた。「どんぐれぇの量がいるか、わかんねぇからよ」「元親、これは、その」「つべこべ言わずに、俺のケツに油垂らしていじくりやがれ。突っ込みてぇんだろうが」 やけくそのように言い放った元親が、家康に背を向けて自分の尻を叩いた。「魂を、くれるんだろう? 家康」 肩越しに振り向いた元親に、家康は憧れ求めた笑みを見た。「ああ、そうだ。元親、ワシの魂は、もうすでに元親のものなんだ」「なら、それをしっかり俺に伝えろよ」「元親」「なんでぇ」「出来れば、顔を見ながらしたいんだが」 おずおずとした家康の申し出に、ばかやろうと元親が叫ぶ。「んな、恥ずかしい事ができっかよ」 尻を向けることは恥ずかしく無いのか、という言葉を喉元でせき止めた家康は、わかったと返して元親の背を押し這わせ、尻肉を広げて灯明皿に残る油を、指を添えて秘孔に注いだ。「ひぁっ、ん、く」「冷たいか? 元親」「ぐちゃぐちゃ言ってねぇで、さっさとしろ」「ああ、そうするよ」「んっ、んぅう」 油を全て注いだ家康が、元親の狭い秘孔をいたわるように慈しむ。油と空気の混ざる音に、元親の唇から漏れる媚声に、家康は幸福に上ずる自分をおさえきれない。「元親の孔が、ひくついて指に絡んでくる。すごく、あたたかいな」「は、ぁ、黙って、ぁ、しやがれ」「うれしいんだ。幾度も求め、自分を慰めては叶うはずはないと虚しくなっていたのに。それが、現実になっているんだから」「んぁ、心にとどめてっ、ぁ、言わなきゃいいだろ」「ワシの魂が、元親のものだということを伝えろと、言っただろう? 心に浮かぶものを全て、元親に伝えたいんだ」「ひっ、ぁ、態度だけで、じゅうぶっ、ぁん」 家康の探る指に野欲を滾らせ、揺れそうになる腰を留めようと元親が尻に力をこめる。きゅっと締まった元親の尻にえくぼが浮かび、家康はそこに唇を寄せた。「元親、もう、限界だ」「ぁはっ、ぁ、家康」 家康の指が抜けていくのを感じ、元親はいよいよかと緊張を浮かべる。「繋がろう、元親」 家康が熱に浮かされたように呟き、元親の尻肉を割り牡を押し当てた。「元親っ!」「がっ、ぁ、は、ぁああああおっ」 貫かれた衝撃に背を反らした元親が、獣のように遠吠える。ぎちぎちと牡をしめつけてくる媚肉に、家康は片目をすがめた。「くっ、は、すご、食いちぎられそうだ」「ぁ、は、はぁ、あ、ぁおっ、ぉふ」 ぶるぶると震える元親を見下ろし、ぴったりと根元まで彼と繋がっているのだと、家康は喜びを胸に噛みしめた。「これが、元親の……」「はっ、ぁ、いえ、や、ぁす、ぅうっ」「苦しいか? 元親。こんなに狭いんだ。当然だな――だが、すまない。元親が馴染むまで、ガマンができそうにない」「ひっ、ぁがっ、ぁ、ぁおおぅ」 歯を食いしばり、家康ががむしゃらに腰を打ちつける。初めて味わう圧迫感にあえぐ元親は、落ちつく間もなくかき回されて、野生の獣のように吼え続けた。「ぁはっ、ぁおおっ、は、ぁうううっ」 苦しげにも聞こえる声を放つ元親の牡は、萎えるどころか先走りを滴らせ、揺さぶられる動きに合わせて跳ねている。ぼろぼろと涙をこぼし叫ぶ元親の顔を見たいと思いつつ、今更体勢を変える気になれず、またそんな余裕もなく、家康は思うさま元親の奥へ陰茎を擦りつけた。「元親、元親」「んはっ、ぁ、あはぁおおっ、ひっ、ひううっ」 首を振り、髪を乱して嬌声を上げる元親の姿に、家康がきわまった。「くっ、ぅ」「っ、あぁああああ――〜〜〜〜っ!」 ど、と家康が想いの奔流を元親に注ぎ、のけぞった元親がそれを受け止めながら欲を放つ。ぶるるっと震えて全てを吐き出し終えた二人は、幸福な虚脱感に包まれた。「ふは、ぁ」 くたりと元親が全身を床に投げ出す。その背に身を繋げたまま、家康が倒れこんだ。「元親」 広い背に呟き、腕を回してしっかりと掴む。「やっと、繋がれた」 家康の魂の吐息を受けて、元親は頬をゆるめて手を伸ばし、家康の頭を軽く叩いた。 しっかりと、魂は受け取ったとでも言うように――。2014/03/13