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黒官の鬼穴掘り

 薄暗い穴倉のかがり火に、後ろ手に縛られ足かせを嵌められた長曾我部元親の姿が、ぼんやりと浮かんでいた。むっつりとした顔は、覚悟を決めているようにも不服そうにも見える。捉えられ座している元親の回りに、見張りも囲いも見えない。ただの穴倉の突き当たりに、元親は置かれていた。
 そこに、じゃらり、ずしりと重い物をひきずる音をさせて、黒田官兵衛が現れた。
「小生の掘り当てた金脈を、海賊のおまえさんが狙うのは、至極もっともな話だとは思うがね」
 前置きもなく、官兵衛は元親に語りかけた。
「あいにくと、この金脈はザビー教の資金として、しっかりと抑えられちまってるんだ。おまえさんも運が無かったなぁ」
 やれやれと溜息をつきながら、官兵衛は元親の前に胡坐をかいた。
「するってぇと、何か。アンタは掘り当てた金脈を、そっくりそのままザビー教に献上したってぇ事かい」
 元親の問いに、困ったように官兵衛が頬を掻くと、手枷についている鎖が、じゃらりと鳴った。その先に、クマでも余裕で座れそうなほどに、大きな鉄球がついている。それを意味ありげに流し見た元親に、官兵衛は軽く手を振った。
「ああ、この手枷は違う。これはまた別件でつけられたモンだ。小生とおまえさんの立場は、違うんだよ」
「ふうん?」
 わかったような、わからないような声を出して、元親はそれ以上の説明を官兵衛に求めなかった。
「金脈も献上するつもりはなかったんだが、色々と頭の働く連中がザビー教にはいてなぁ」
 肩をすぼめて盛大に息を吐く官兵衛は、人よりも体躯が大きく逞しいので、その様は滑稽にも愛らしいと思えなくも無かった。
「それって、まさか毛利の野郎じゃねぇだろうな」
 官兵衛に負けず劣らずの偉丈夫である元親が、わずかに前にのめって眉をしかめる。それに官兵衛は、肯定とも否定ともつかぬように、かぶりを振った。
「まぁ、そんなことは、今は関係が無い。とりあえず、おまえさんにザビー愛と罰を同時に与えてこいって言われてな」
 ふいと顔を上げた官兵衛が、長く豊かな黒髪に隠れた目で、まじまじと元親を見た。
「おまえさん、海の男だっていうのに、ずいぶんと色が白いんだな。穴倉暮らしの小生の方が、よっぽど海焼けをしているように見えるぞ」
 かがり火に浮き上がる二人の体躯は、共に人一倍大きく隆々とした筋肉を有しているが、纏う色彩は対象的であった。
 片や漆黒の髪に浅黒いとも言える褐色の肌。片や白銀の髪に白磁を思わせる白い肌。ぱっと見た限りでは、どちらも男臭いと言えるが、よく見れば無精ひげのよく似合う官兵衛と比べ、絹のような肌に長い睫に瞳を縁取られた元親の顔は、佳麗と言えた。
 ふうむ、と値踏みをするようにしげしげと眺めてくる官兵衛に、元親が紫の眼帯に覆われていない、右目をしかめる。
「なんでぇ」
「ザビー愛と罰を同時に与える方法、か」
 ぽつりと呟いた官兵衛は立ち上がり、けげんな様子の元親の横に鉄球をずるずると動かしたかと思うと、鎖を彼の上半身に絡めて力任せに引いた。
「おわっ」
 元親が腰を浮かせて頬を地に着ける。彼の体に巻きつけても、まだ鎖に余裕のあることを確認し、官兵衛は突き出す形になった元親の尻へ回った。
「いきなり、何をしやがるんでぇ」
 元親がもがくが、いくら力があったとしても戒めの身では、真横にある鉄球が重石となって、ままならない。元親の尻の前にしゃがんだ官兵衛が、こともなげに言った。
「ザビー愛と罰の両方を、同時に与える方法を思いついたんでね。それを行うんだよ」
 言いながら、手枷があると言うのに、官兵衛は器用に元親の帯を解き、ぺろりと細袴をめくって彼の白い尻をむき出しにした。白い肌に純白の下帯がキリリと締められている尻を、官兵衛がペチリと叩く。
「鍛え抜かれた、いい尻をしているな」
「は? おい、ちょっと待て。何をするつもりだ」
 元親の声がひきつっている。
「何って。そんなこともわからないような、初心じゃあ無いだろう? それとも、あえて言われたいのか」
 ひくり、と元親の片頬が痙攣した。
「冗談じゃねぇぞ! 野郎に貸すケツは無ぇっ」
「罰なんだから、嫌がることをするのが当然だろう。安心しろ。小生は穴掘りにかけては、ちょっとしたモンなんだ。罰以上に、ザビー愛をたっぷりと感じられるだろうよ。小生の洗礼名の元にな」
「ちょ、ちょっと待て、待て待てま……っ」
 ひょいと官兵衛が元親の尻の谷にかかる布を横にずらし、引き締まった双丘を割った。
「キレイなモンだな。おまえさんぐらいの器量が有るなら、引く手数多だろうに」
「笑えねぇよっ、ぁ、やめ」
 ぬらり、と官兵衛の舌が元親の菊口に触れた。舌先でくすぐり、ぐぬりと押し込み唾液を注ぐ。
「ひんっ、ぃ、く」
 ぞわりと産毛を逆立てた元親が、奥歯を噛みしめ怖気を堪えた。そんな元親の様子を気にするそぶりもなく、官兵衛は舌を押し込み唾液を注ぎながら、初心で頑なな菊口をあやす。
「んっ、ぅ、う」
「まあ、こんなもんか」
 官兵衛が舌を抜き、元親はほっと息を吐いた。その安堵の息を、官兵衛は菊口に指を押し込んで硬直させた。
「ひ、ぃ、うぅ」
「入り口は狭いが、中は上々だな。たっぷりとほぐせば、いけるだろう」
 耳に届いた官兵衛の呟きの意味を、あえて考えまいと、元親は目を硬く閉じた。
「どら」
「んっ、ぅう」
 ぐにぐにと内壁を探る官兵衛の指に、奥歯を噛みしめ元親が堪える。官兵衛は平素と変わらぬ様子で、元親の秘孔を指で探った。
「だいたい、この辺りなんだがなぁ」
「ひぁっ」
 ぐり、と官兵衛の指が予測をつけて内壁を抉れば、元親が甲高い悲鳴を上げた。
「おう。掘り当てたぞ」
 無邪気に喜ぶ官兵衛が、見つけた箇所を容赦なく抉り、内壁を広げる。
「はひっ、ぁ、そこっ、や、ぁ」
「いやなはずは、無いだろう。どんな傑物でも、腰砕けになるツボなんだからな」
 手首をひねりながら、楽しげに官兵衛が元親の秘孔を抉る。
「言っただろう。穴堀りは得意だと」
「んぁあっ、掘らなくていっ、ぃあ」
 官兵衛は色欲というよりも、玩具で遊ぶ子どものような無邪気さで、元親の野欲を攻め立てる。追い詰められた野欲に元親の体は従い、下帯の中で膨らんだ牡が先端を湿らせた。
「ほらほら。どんな心地だ?」
「っ、は、ぁあ、も、ぁあ」
 背を丸め、元親が必死に堪えている。官兵衛がニヤリと歯を見せた。
「おまえさん、そろそろイキそうなんだろう。小生の穴堀り術が、気持ちいいんだろう」
「っ、ち、ちが、ぁあ」
 口で否定をしても、元親の牡がそのとおりだと雄弁に語っている。ふうんと官兵衛はつまらなさそうに唇を尖らせ、それならと探る指の位置を少し上に変えた。
「強情は、損をするだけだと思うがね」
「ぁひっ、そ、そこっ、ぁ、ああっ」
 先ほどの攻撃的な快楽とは違う、下腹に湯が湧き立つような刺激に、元親はぶるぶると身を震わせた。先ほどよりは少々ぬるく、けれど決して甘くない疼痛に似た快感が、元親を攻めた。
「はっ、はひっ、や、ぁ、ああ」
「さて。我慢比べといこうか。小生が飽きるか、おまえさんが根を上げるか。これでも小生は、我慢強いほうでね」
 その言葉どおり、官兵衛は飽くことなく元親の秘孔を刺激しほぐし、あと一息で絶頂を迎えられそうな、もどかしい境界にさらされ続けた元親が折れた。
「っ、あ、もぉ、イキてぇっ、ぁ、イキてぇえっ」
「そうだろう、そうだろう」
 勝負に勝ったと満悦な官兵衛は、元親の願いを聞き入れるべく、指を下方にずらして存分に泣き所を刺激した。
「ひあっ、ぁ、でるっ、ぁ、でるぅううううっ!」
 岩をつき崩せそうな大きな声を上げ、元親が背を仰け反らせて尻を震わせた。思うさま放ったと見た官兵衛は、秘孔から指を抜き元親の前を、むんずと掴んだ。
「んひっ」
「おお。こりゃあ、たっぷりと出したな」
 放つ前に、さんざんに焦らされ漏らした先走りで、元親の下帯はぐっしょりとぬれていた。
「これだけぬれているなら、使えるだろう」
 やっと迎えられた絶頂に放心する元親から、官兵衛が下帯を手際よく外す。しっかりと濡れた部分を元親の菊口にあてがい、押し込んだ。
「ひあっ、ぁ、何」
「何って。おまえさんのを使って、たっぷりとぬらしておくんだ。小生のイチモツは人に誇れるシロモノだからな。ぬらしておかんと、辛いぞ」
 え、と元親が肩越しに振り向く。官兵衛が、ぼろんと自慢のイチモツを取り出した。その逞しさに、元親がギョッと目をむく。
「な、ぁ、ぁ……」
「どうだ。なかなかのモンだろう」
 ふふんと得意げな官兵衛に、元親が牙を剥いた。
「そんなデケェもんが、入るわけねぇだろうがっ!」
「だから、入るようにしているんだろう。こうやってぬらして」
 言いながら官兵衛が、ぐいぐいと元親の秘孔に、捻った下帯を押し込んだ
。「はひぃ」
 ぐり、と元親の尻に押し込んだ下帯で内壁を捻る。収縮した媚肉が、下帯に浸みた元親の蜜を絞った。
「このぐらいで、大丈夫だろう」
 ずるりと下帯を抜いた官兵衛が、牡の先を菊口にあてがう。その熱に元親が腰を引き、官兵衛は後ろ手に縛ってある元親の手を掴んだ。
「この太いので貫けば、さんざんいじくった、おまえさんの泣き所もゴリゴリと擦れる。そうなれば、怖いのなんのと考える暇もなくなるさ」
「こっ、怖がってなんざ、ねぇよ」
「それなら、捕まった不運を嘆きつつ、甘んじてザビー愛と罰の双方を同時に受け止めるんだな」
「ひぎっ、ぁ、あ、あぁ」
 ずむ、と官兵衛の牡の切先が菊口を押し開く。喉奥まで見えるほどに口を大きく開けて顎をそらせた元親に、ゆっくりと官兵衛が進入した。
「ふ、ぅ……やはり、狭いな。だが、行けないことはない」
「はひっ、は、ぁ、ああお、ぉう」
 慎重に、元親を傷つけぬよう官兵衛は進み、ついに根元までを埋め込んだ。
「ふう。なんとか入ったな。どうだ、小生の味は。なかなかのモンだろう」
「ぁはっ、く、くるし、ぁ」
「うん? ああ、これだけギチギチなら、まぁ、そうだろうな。動いているうちに、いい塩梅になるさ」
 ぐ、と官兵衛が元親の手を握り、慎重に腰を動かす。
「ぁ、は、ぁあ、や、抜けっ、ぁ」
「そう急ぎなさんな。これから、これから」
「や、ぁは、ぁうっ」
 官兵衛の取っ掛かりが、元親の泣き所を掻いた。びくんと腰を跳ねさせた元親に、ほらなと官兵衛がつぶやく。
「これだけ、みっちりと繋がっていれば、ゴリゴリ擦れて気持ちが良いだろう」
「ぁひっ、や、ぁ、よく、なんか……無ぇ」
「強情だな、おまえさんは。すぐに素直にさせてやるよ」
「ふひっ、ぁはぁおおっ」
 だんだんと速度を上げ、官兵衛が元親を突き上げる。元親の媚肉が官兵衛の熱に絡み、蠢いた。
「ふっ、なかなかの名器じゃないか。おまえさん、この調子で男を陥落する術を身につけちまったら、いいんじゃねぇか」
「ひぁおぅうっ、そんっ、ぁ、やめっ」
「素質はあると思うがね。ほら、ゴリゴリ擦れて、気持ちが良いだろう。認めてみればいい」
 促しながら、官兵衛が元親の泣き所を深く抉る。
「ぁひぃいいっ、ぁ、ゴリゴリぃ、ぁ、きもち、ぁあ」
「そうそう。人間、素直が一番だ」
「ぁあっ、ふ、ふといっ、ぁ、熱いぃい」
 元親の嬌声が壁に反響し、わんわんと響く。それを耳に受けながら、官兵衛はさらに腰を速めて自らと元親を追いたてた。
「小生は、もうそろそろなんだが……そっちは、どうだ」
「んぁあっも、ぁ、イクッ、あ、でるぅ」
 ぼろぼろとこぼした涙で地面をぬらす元親の声に、よしと頷き官兵衛は、勢いをつけて深く貫き自分の欲を解き放った。
「く、ぅ」
「っは、ぁあ、あつ、ぁ、あつぅあぁああっ!」
 深い所に熱いものを注がれ、目を白黒させながら元親が果てる。数度痙攣をしてから、ぐったりと弛緩した元親から自分を抜き、官兵衛はふうと息をついた。
「我ながら、良いことを思いついたな。淫欲の愛でザビー教の虜としつつ、罰にもなる。しっかりと罰を与え続けて、ザビー教に入信させ……いや、まてよ。小生の手勢に加えれば……」
 恍惚とした疲れに身をゆだね、眠る元親の横で官兵衛がぶつぶつと考えを呟く。
 その企てが成功したかどうかは――。
「な、なぜじゃぁあああ!」
 この叫びが全てを、物語っていた。
2014/04/17



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