「ふう」 早朝の野良仕事を終え、井戸端で体を拭いさっぱりとした片倉小十郎は、袴姿で廊下を進み、主・伊達政宗の私室に足を向けた。 そろそろ、彼を起こす時間である。 奥州の領主を起こす役、いや、彼の身の回りの世話をおこなうのは、小姓でも侍女でもなく、副将と言われる小十郎の役目であった。 周囲はそれを、不思議に思わない。 政宗は幼少の頃、病により右目を失い、そのために不遇な扱いを受けた。その時代を支え、今日の政宗へと導いたのは小十郎と言っても過言ではなく、それゆえに小十郎にのみ、個人的な事柄に従事させることを許している。そう、周囲は考えていた。 奥州の竜とまであだ名される政宗を、唯一真っ向から叱り、諌める事ができるのは、失った右目と称される小十郎のみ。 無論、そういう側面もある。表向きは、そういうことになっている。だが、それだけではなかった。「政宗様」 私室の次の間の襖を開け、小十郎は主の寝室に身を滑りこませた。 主は布団の上に身を横たわらせたまま、返事どころか身じろぎもしない。ふっと息を吐いた小十郎は、ほんの少しの緊張を浮かべて襖を閉め、主ににじりよった。「政宗様。そろそろ、お目覚めになられる刻限です」「Ah」 面倒くさそうな声と共に、政宗が腕を持ち上げる。その手が小十郎の頬にある、古い傷跡をなでた。「Good Morning 小十郎」 形の良い唇を笑みの形に歪めた政宗が、気だるげな声を発する。「おはようございます。政宗様」 小十郎は政宗の指に傷跡をなでられながら、何かを堪えるように眉間にしわを寄せた。それに、政宗が悪戯っぽく左目を光らせる。「目覚めのKissが、まだのようだが?」 挑発的な声に喉を鳴らし、小十郎は体を折って横たわる主の唇に唇を寄せた。「んっ、ん」 唇の触れ合う濡れた音がこぼれるほど、目覚めの挨拶にしては濃厚な接吻が交わされる。政宗の両腕は小十郎の首にからまり、さらに深い口吸いをと無言の催促を示した。「政宗様」 小十郎が、咎めるようにささやく。「起き上がれねぇんだ。――わかるだろう?」 政宗が、淫靡な息を小十郎の口内に吹き込んだ。ごくり、と小十郎の喉が鳴る。目じりに朱を浮かばせた小十郎に、政宗は勝者の笑みを浮かべた。「疲れがたまって、抜けきれねぇ。体に眠気も留まっている。なぁ、小十郎」 唇を噛み、小十郎は身を引いた。立ち上がり、帯を解いて袴を落とし、着物を脱ぐ。下帯は、着けていなかった。「いつものように、してくれるだろう」「承知」 短く答えた小十郎は、政宗の足の間に身を置いて、主の寝着の裾を開いた。足の間に指を滑らせ、顔を寄せる。「んっ、ふ」 男の印を迷うことなく口に含み、若さを示すそれに舌をからめ、頭を上下に動かし、口腔で擦った。「ふっ、んっ、んふ」 奉仕する小十郎を、肘を突いて身を起こした政宗が眺める。小十郎の頬が凹み、それを内側から自分の牡が押し上げ形を歪ませているのに、政宗は唇を舐めた。「Is it tasty?」「ふはっ、んっ、んんっ」 小十郎は、返答の代わりに励んだ。それを政宗は面白そうに眺める。「は――小十郎」 熱っぽい呼び声に、小十郎は主の絶頂を悟った。喉奥まで深く飲み込み、吸い上げる。「くっ」「ごぶっ、ぐ、ぅ、ぶふっ」 咽頭に噴きつけられた欲液にむせながら、小十郎は懸命に吸った。生理的な涙を浮かべて、主の子種を零すまいとする小十郎に、政宗の腰は熱を治めるどころか、さらなる欲を昂ぶらせた。「小十郎」 熱っぽい声に、小十郎が顔を上げる。子種に濡れた唇が、艶々と光っていた。「Oh sexy」 うっとりとした政宗の呟きに、小十郎の肌が粟立った。政宗の手が小十郎の頬に触れ、傷跡をなでる。顔を寄せた政宗は小十郎の傷跡を舌先でなぞり、唇をついばみ、彼を抱きしめた。「眠気覚ましの運動だ」 政宗が小十郎の肩に唇を寄せる。ぶるりと震えた小十郎が、聞こえるか聞こえないかの大きさで「はい」と答えて身を離した。「どうぞ、ご存分に」 羞恥を堪えながら、小十郎は自らの足首をつかんで広げた。ころりと転がった小十郎の、鍛え抜かれた四肢が強張っている。彼の下肢は天を向き、濡れ光っていた。「It's very cute」 政宗が小十郎の牡先を指で弾く。「ふっ」 びくりと小十郎の太ももが緊張した。「しゃぶっただけで、我慢汁を零すようになっちまったか」「っあ、申しわけございません」「咎めてねぇよ。ああ、いや。そうだな……小十郎。この俺の魔羅をしゃぶるだけで、たまんなくなっちまった浅ましい体を慰めて欲しいと、言ってみな」 小十郎が目を見開いて政宗を見る。政宗は、ニヤニヤとして小十郎を見下ろしていた。獲物をいたぶる獣の瞳に、小十郎の内側で何かが悦び、欲を増幅させる。唇を震わせ、小十郎は従った。「政宗様の魔羅をしゃぶるだけで、このようになってしまった浅ましき小十郎を、どうぞお慰めください」 言葉をつむげば、小十郎の胸が官能に震えた。それが面に差して、政宗の嗜虐心を誘う。「このようにっていうのは、どのようにだ?」「魔羅を滾らせ、我慢汁をこぼしております」「それだけか? なら、イカせりゃあいいんだな」 政宗がわざと言っていることは、わかっている。小十郎は主の望むものが、何であるのかを知っていた。そしてそれを発する事を、心地よいと感じる自分を、小十郎は認識している。「政宗様」 震える声で、小十郎は告げた。「政宗様の魔羅で、小十郎のはしたなく震える菊座をお慰めください。政宗様の情けを、この小十郎の体の奥に注いでいただきたい」「That will do」 政宗が口の端を片方だけ持ち上げて、丁子油を手にした。小十郎は自らの体を丸め、天井に尻を向けるようにして、主が望む行為をしやすくするようにした。「自分から、そんな格好ができるようになるなんてな。――竜の右目が、自ら尻を突き出して犯されるのを待つ姿なんざ、誰にも想像ができないだろうぜ」「んっ、ぅう」 丁子油が小十郎の秘孔に注がれる。政宗の細く長い、六爪を操る強さを持つ指が、丁子油を追うように秘孔に入った。「っは、ぁ、ぅう」「じっくり味わいたいんだが、この後の政務が滞っちまったら問題だ。たっぷりと楽しむのは、用事を片付けてからにしねぇとな」「ぁ、は、政宗様」「終わった後で、説教されんのも嫌だからな。A swift attack gives sex OK?」「ひっ、ぁ、ああぁああ」 政宗の指が、小十郎の秘孔を蹂躙する。丁子油の滑るにまかせ、政宗は息つく暇も与えぬほど、性急に小十郎を責めた。「は、ひはっ、ぁ、はぁああぉううっ」「いきなりじゃ、刺激が強すぎたか?」「ぁはぁぉおっ、ま、まさむっ、かはぁあ」 首を振る小十郎の髪は乱れ、目じりからは涙が溢れる。それでも自ら尻を差し出すように、足をつかんだ手を引き寄せて、与えられるものを受け止める小十郎のいじらしさと、快楽のために緊張しふくらんだ筋肉に、政宗は劣情をつのらせた。「最高だ、小十郎」「はっ、はぁああうっ、ぁ、あはぁあ」「どんな心地か、言ってみろ」 政宗の指が、快楽点をえぐった。「ぁひぃいっ」 ぷし、と小十郎の牡が先走りを噴き上げる。「どうした、小十郎」「は、はぁあ、あ、政宗様っ、ぁ、もぉ、奥が疼いて……っ、指では、指では……っあぁ」「指では、何だ?」「ひっ、ひぅう、もっと、ぁあ、太くて熱いもので、お慰めくださいっ」「抽象的だな」「んぅうっ」 政宗の指で掻きまわされる秘孔が、媚肉と化して蠕動する。切なくて、掻きまわして欲しくて、小十郎は叫んだ。「政宗様の魔羅で、この小十郎をグチャグチャに……っ、小十郎の浅ましく淫乱な孔を塞いで、掻きまわしてくださいっ!」「Ok 小十郎」 政宗の声が、一段低くなる。淫靡な声音に小十郎の背骨が溶けた。うわずった顔で弛緩した小十郎の手が、足から離れる。代わりに政宗が小十郎の足をつかんだ。「ああ、政宗様」「すぐに、俺で埋めてやる」 内腿に唇を寄せた政宗は、小十郎の足の間に身を滑らせ、秘孔に熱をあてがった。秘孔の入り口が、ねだるようにひくついて、政宗の牡の先をくすぐる。「しっかり受け止めろ、小十郎」「がはっ、ぁ、はぁあおぉおうっ」 一気に奥まで貫かれ、小十郎は仰け反った。政宗はそのまま乱暴に、小十郎を揺さ振る。「はひっ、は、はぁあ、はぁぉおぅっ」「くっ、そんなに締めつけんじゃねぇよ。――持っていかれちまいそうだ」「はひっ、ぁ、まさ……ね、さまっ、ぁ、もっと、ぁ、ああっ」 身をくねらせて求める小十郎が、政宗の体に手足をからませ、全身を擦りつけた。小十郎の牡が自分の腹と政宗の腹に刺激され、とめどなく欲蜜をあふれさせる。「ひっ、ひぁあ、早くっ、ぁあ、政宗様、ぁあ、お与えください……この小十郎の奥にっ、ぁ、政宗様の子種をっ、ぁ、子種っ、はやく、ぅう」「OK たっぷり注いでやるよ」 身も世も無く乱れる小十郎の望むまま、政宗は深く熱を突きたてて欲を放った。「くっ」「は、ぁあぁああああ――〜〜〜〜ッ!」 政宗の奔流に突き上げられ、小十郎も絶頂を向かえた。痙攣しながら噴き上げる小十郎の陰茎を擦りつつ、政宗は残滓をも小十郎に飲ませるため、ゆるく腰を振った。「は、はぁ、は、ぁ、あぁ」 ゆるやかに快楽の波を治め、政宗は小十郎から抜け出る。とろりと溢れた自分の子種に目を細め、政宗は張型を手にして小十郎の秘孔に押し込んだ。「ひっ、ぁう」「せっかく注いだんだ。こぼれ出ちまったら、勿体ねぇだろう」「ふ、ぅうっ」 ぶるっと震えた小十郎が、濡れた目で政宗を見る。「落とさねぇように、しっかり下帯で押さえてやるよ」「は、ぁ、ありがとうございます」 政宗が手ずから小十郎に下帯を巻いてやる。牡を潰すほどに強く締められ、小十郎は息を詰めた。「次に俺が下帯を取るまで、我慢してろよ」「わかっております」 そう答えた小十郎は、目じりに朱を残してはいるものの、平素と代わらぬ表情になっていた。その切り替えの早さに、政宗はぞくりと胸を震わせる。「なぁ、小十郎」 艶めいた声音で唇を寄せてくる主をかわし、小十郎はぴしゃりと言った。「朝餉の仕度が出来上がる頃です。早々に身支度を整えてください」 ふんと政宗が鼻を鳴らした。「ついさっき、この俺にねだってきた奴の言葉とも、思えねぇな」「政務に支障をきたされては、困るので」「時間短縮のために、誘ったってわけか」 しらけた様子で着替えを始めた政宗の背に、こっそりと小十郎は熱っぽい息を吐く。 先ほどの台詞は、自分に言い聞かせるためだった。淫奔な主よりも年上の、若さゆえと言い訳のできぬ自分が、淫蕩に浸らぬようにとの戒めだった。 だが、と小十郎は尻に力を込めて、政宗の手で埋められた玩具を締め付け、留められている主の欲を確認する。 このような辱めを悦ぶ自分がいる。そんな自分に、気付かされてしまった。「着替えたぜ、小十郎」「では、参りましょうか」 歩くたびに擦れるものを意識しつつ、小十郎はこの後、今日はどんな趣向の性務を命じられるのかと、胸を熱くさせていた。 2014/09/03