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はじまりの

 元服を終え、梵天丸から政宗へと名を改めた主の部屋で、片倉小十郎は緊張気味に風呂敷包みを主の方へ滑らせた。
「元服をなされたからには、こちらの勉学もお進めいただきます」
 政宗となった梵天丸は、無造作に風呂敷を開いた。宵の入りの暗い部屋で、灯明がなまめかしく包まれていたものを照らす。男と女が秘所をさらけ出し、結合している絵。それを政宗は一瞥し、つまらなさそうに鼻を鳴らした。
「梵て……いや、政宗様」
 政宗は、春画から小十郎へと視線を移す。眉目の整った幼さを残す顔が、ほんのりとした炎に浮かんでいるさまは、妙に色っぽい。端麗な顔にある不自然なもの――右目を覆う眼帯が、その美貌に凄みを与えていた。
 知らず、小十郎は喉を鳴らした。
「こんなモンを見るだけで、理解ができるとは思えねぇんだがな」
 挑むように、探るように政宗の瞳が光り、小十郎の心臓がわなないた。唐突に喉の渇きを覚えて、唾液を飲み込む。小十郎の心音が早まり、四肢が強張った。手のひらに、うっすらと汗が滲む。
「なぁ、小十郎」
 すいっと政宗の膝が進んだ。彼は褥の上にいる。穢れの無い手が、小十郎に向けて差し出された。
「頭の中でアレコレと考えるより、こういうモンは実地が一番なんじゃねぇか?」
 政宗の視線が、小十郎の一挙手一投足を見逃すまいと、ひたりと据えられている。小十郎はしかつめらしい顔をつくり、答えた。
「では、侍女の中より誰かを――」
「小十郎」
 鋭く、政宗が遮った。
「無防備になるんだ。信用の置ける奴じゃなきゃ、ならねぇだろう」
 小十郎が避けたものを、政宗が引きもどす。それを心の隅で期待していた自分を、小十郎は知っていた。
「それでは、いかがなさいますか」
 主の望みは察している。けれど小十郎の口から、返答として与えることはできない。
「わかってんだろう?」
 逞しくなるにつれ浮かべることが増えた、人を食ったような皮肉で楽しげな笑みを片頬に浮かべ、政宗は手招いた。
「お前が教えろ。小十郎」
 静かに、小十郎は手を着いて頭を下げた。
 二人の間に沈黙が降り積もる。けれど互いの鼓膜は、顔をしかめるほどにうるさい心音に打たれていた。
「女ではございませんが」
 平伏したまま小十郎が言う。
「衆道も女色も、基本は変わらねぇだろう? 違う部分は、言葉で説明しながら教えろよ」
 うわべだけの、小十郎の逃げ道はふさがれた。そのことに安堵している自分を出さぬよう努めながら、小十郎が顔を上げる。赤い光りに照らされた政宗の白い肌が、妖しく闇に浮かんでいる。
「この小十郎に、色欲を浮かべられぬときは―−」
「御託はいい」
 大人の逡巡など関係ないと、政宗は叩き伏せる。政宗の胸中には、早くこの男を隅々まで自分のものとしたい、という欲しか無かった。
「それとも、この俺の相手をするのは嫌か? 小十郎」
 一抹の不安を浮かべつつ、政宗は虚勢を張った。小十郎も自分を望んでいると、政宗は感じていた。この日が来るであろうことを予測し、小十郎を求めようと決めていた。
「抱かせろよ、小十郎。……Ok or No?」
 はっきりと口にした主に、小十郎はうっすらと笑みを浮かべて膝を進めた。
「手順は、おわかりか」
「sure」
 近頃この辺りに現れた、南蛮の宣教師から教わっている言葉を使った政宗は、小十郎の肩をつかみ、その手を頬に滑らせて顔を寄せた。
「ちゃんと、予習はしてあるぜ」
「それは重畳。ならば、この小十郎。その成果を、身を持って確認させていただきます」
 政宗の左目が妖しく光る。互いの唇が、やわらかく薄い皮膚を感じた。政宗の舌が小十郎の唇を舐める。小十郎は誘うように薄く口を開いた。
「んっ、ふ」
 政宗の舌が好奇心をむき出しにして、小十郎の口腔を探る。しっかりと頭を固定してくる主の手を、目をそらすことを許さぬ強い瞳を、小十郎は神経を研ぎ澄ませて捕まえる。
「んふっ、んっ、んんっ、ん」
 ぎこちなく、けれど無遠慮に、政宗は小十郎の内側を味わう。歯の硬さ、舌の柔らかさ。上あごをくすぐれば小十郎の目が揺れて、舌の裏を舐めれば熱い息が漏れる。
「ふっ、んっ、んふ」
 主の舌が自分を確かめていることに、小十郎の息が乱れた。それを押さえようと四肢に力をこめる。下肢に熱が走り、凝っていくのを自覚しつつも、小十郎は彼を導くべく冷静さを失わぬよう、政宗の舌を吸った。
「っ……」
 政宗の瞳が、驚きに揺れる。けれどすぐさま、彼はそれをやり返した。ぶるっと小十郎の腰が震えた。
「ふはっ」
 互いの呼気が荒くなるまで、丹念に口吸いを繰り返した。顔を離した政宗が、小十郎の胸元に手を差し入れて、鍛え抜かれて盛り上がった胸筋をつかむ。
「女の乳房は、これよりもずっと柔らかく、まるいものです」
 あくまでも、子を成すための行為を教えるという態をとる小十郎に、政宗は楽しげに目を細めた。
「I know 小十郎。こうやって、外側から内側に揉み込むようにするんだろう?」
 政宗の両手が、小十郎の脇から内側に向かって胸筋を押し上げ揉んだ。弾力のある胸筋に、政宗の白い指が沈む。指の間から乳首が覗き、政宗はそれを吸った。
「っ……政宗様」
 チロチロと舌先でくすぐられ、小十郎はくすぐったさに身を捩りたくなった。それを堪えるために、力んだ胸筋が盛り上がる。政宗は丁寧に小十郎の胸乳を愛撫し、尖りを濡らして硬くした。
「っ……ふ」
 小十郎の下肢が震え、先端が下帯を湿らせる。丹念に胸乳を愛する政宗が、わななく小十郎の唇に気付いた。
「女は壊れやすい。だから、大切に扱わなきゃなんねぇんだろ?」
 あくまでも、女の代用で相手をしていると言い張るであろう従者に、政宗は主らしい配慮と意地の悪さを混ぜて告げた。
「どんなときも、Coolに……だろう?」
 南蛮語はよく知らないが、今の言葉の意味はわかる。小十郎は小さくアゴを引いた。声を発せば、甘い音を漏らしてしまいそうだった。愛撫の甘さだけではない、想いの疼きが小十郎の肌身を粟立たせている。それに気付いているのかいないのか、政宗は色づいた小十郎の肌に胸を昂ぶらせ、腰を熱くさせた。
 相手の牡が高ぶっていることに気付かず、小十郎はうわずる息を必死で堪え、政宗は小十郎を乱したい一心で繊細に舌を動かす。
「ふ、政宗様」
 たまらず、小十郎は片手で口を押さえた。指の間から淫靡な息が漏れる。潤んだ小十郎の瞳の輝きに、政宗の喉仏が上下した。
「小十郎」
 こぼれた政宗の息が掠れている。小十郎の背骨を、説明のできない高揚が駆け上がった。
「政宗様」
 うわずった小十郎の声を拾うように、政宗が唇を寄せる。
「取れそうだ」
「はっ、ぁ……」
 政宗の爪に乳首を弾かれ、小十郎がビクンと跳ねた。熟れきった乳首は存在を主張するように、硬く凝って震えている。甘痒い疼きがそこにある。もっとと求めてしまいそうな自分を制し、小十郎は行き場のない手で褥をつかんだ。
 小十郎の胸筋の谷に唇を滑らせ、ヘソと戯れた政宗が帯を解く。小十郎の下帯が押し上げられているのに目を細め、胸に湧き上がった愛おしさとも喜びともつかぬものに押されるままに、唇を寄せた。
「っ……政宗様」
「少し、湿ってんな」
 ぐっと息を詰めた小十郎の足を割り開き、下帯を剝いだ政宗は口笛を吹いた。ぶるんと現れた牡が、たくましく天を向いている。羞恥に目をそらした小十郎に、彼自身の反応を教えるように言った。
「女のホトは、感じれば濡れるんだろう? 小十郎の魔羅の先が、こんなふうに濡れているように」
「……っ、あ、そう、です」
 うわずりそうになる声を低め、小十郎が答える。政宗は自身の下帯を外し、小十郎に見せた。
「俺も、昂ぶってる」
 小十郎が息を呑む。淫靡な気色に、政宗は唇を舐めた。
「政宗様」
「わかってる。――小十郎。女ってのは、濡れ始めたら可愛がって開かせるモンなんだろう?」
 こういう風に、と政宗が小十郎の牡に唇を押し当てた。
「政宗様っ……ぁ、んぅ」
 あわてた小十郎に阻止されぬよう、政宗は先端を吸いながら扱きつつ、蜜嚢を揉んだ。小十郎の牡が脈打ち震える。太ももがわななき、足指を握って身を丸める小十郎の眉間に、くっきりとシワが刻まれている。懸命に堪えている小十郎の姿に、政宗の欲は荒波のように昂ぶった。
「んっ、く……っ」
 両手で口を押さえ、身を硬くする小十郎をもっと乱したい。政宗は逸る心を抑え、快楽の証を示す小十郎の欲を慈しむ。教え導く側であるはずの小十郎は、予想だにしなかった快楽と、愛おしさに満たされる胸中に戸惑いながら、政宗を見た。
 頬をすぼめ、政宗が小十郎の牡をしゃぶっている。小十郎はめまいを覚えながら、覚悟を決めきれていなかった自分を恥じた。
「政宗様」
 うわずった声で呼びかける。政宗はクビレに軽く歯を立てながら、目を上げた。二人の視線が絡み合う。
「女のホトには、魔羅の名残のようなものが、ございます」
「それを丹念に愛撫してやりゃあ、いいんだろう?」
 胸を喘がせる小十郎に、政宗はいぶかしげに答えた。小十郎は慈愛に満ちた微笑を浮かべ、政宗の髪をなでる。
「ですが、そこで繋がるわけではございません」
 はっと政宗が目を丸くする。
「濡らしながら、繋がる箇所をあやすのです」
 政宗が期待と緊張で心臓を震わせた。
「なら……繋がる箇所ってのを、あやしていいか?」
 小十郎は、静かに目じりをゆるませた。
「男は自然に濡れません。それを、ご存知か」
「丁子油がある。刀の手入れ用に、常備している」
「では、それで」
 政宗が、それとわかるほどに喜色を表し、いそいそと丁子油を取りに行く。その背に愛おしさを隠さぬ視線を向けて、小十郎は彼と繋がる覚悟を定めた。
「小十郎」
「政宗様。もっと、余裕を持った所作を」
 年長者らしく咎めれば
「すぐに余裕を奪ってやるから、文句を言うんじゃねぇよ」
 ふふんと政宗がアゴを突き出す。笑みを交わし、少々の緊張を浮かべつつも小十郎は足を開き、政宗は彼の足を持ち上げた。
「狭いな」
「やめておきますか」
「No」
 馴れぬ政宗は、あおむけでは尻の丘を広げにくいらしく、苦戦する。繋がると肝を据えた小十郎は、体を反転させた。
「逃げる気かよ、小十郎」
「いいえ。覚悟はできております」
 小十郎の意図がつかめない政宗の幼さに、尻を持ち上げ理由を示す。
「こちらのほうが、なさりやすいかと」
 目玉がこぼれおちんばかりに見開いた政宗は、示された小十郎の覚悟に笑みを広げた。
「すぐに、そんな気使いも無用な手練を覚えてやる」
 喜色満面な主の声に、小十郎の体は悦びに満たされた。危うさの残る主は、確実に前に進んでいる。前を見る力を得ている。見据える道筋のかたわらに、小十郎を据えることを望んでいる。それを今、身を持って感じることができる。
「うっ……」
 小十郎の双丘が開かれ、ひっそりと咲く菊花に丁子油が注がれた。そこに自身を埋め込み、小十郎を我が物にするのだと、政宗は肌身が裂けてしまいそうなほどの悦びに満たされていた。
「んっ、う……は、んぅ」
 政宗の指が秘孔を探る。そろそろと壊れ物を扱うように、頑なな内側を開いた。
「ふ、んぅ、んっ、んんっ」
 静かに、小さく、小十郎は呻いた。自分の内側を探られる異物感に、喉の奥にせり上がってくる何かがある。政宗は初めて見たものに恐る恐る触れる子どものように、小十郎の内壁を扱った。その指が、感触の違うものを探り当てる。
「ひぁっ」
 聞いたことのない、小十郎の甲高い声に政宗が驚く。発した小十郎も驚いた。
「Well I'll be damned」
 触れたものが何であるのか察し、政宗は低く呟いて指を蠢かせた。
「あっ、ぁあ……っ、政宗様、そこはっ、ぁ、ああっ」
「快楽のツボってのは、ここなんだろう? 小十郎」
「はっ、ぁ、ああっ」
 抑えきれぬ声が漏れる自分に、身を揉んで震える小十郎の秘孔を、政宗の指は容赦なく探り広げる。
「ふっ、ぁ、ああっ、政宗様、政宗様……っ、あぁ」
 小十郎の陰茎が震え、蜜を零している。それを見ながら、指を誘うように蠢く肉壁をあやしながら、政宗は痛いほどに張りつめる自身に我慢を強いた。
「んぁ、あ、政宗様、もうっ、ぁ、ああっ」
 探る指の性急さに気付き、足の間から見える政宗の陰茎が怒張しているのを目にして、小十郎は手を伸ばした。
「なんだよ、小十郎」
 政宗の息が荒い。
「もう、かまいません。大丈夫ですから、どうぞ……」
 そこから先は、言葉に出来なかった。小十郎の求めと許しに、政宗は太い息を吐いて腰を浮かせる。小十郎の腰を掴み、ひくつく入り口に牡をあてがった。
「……小十郎」
「どうぞ、お好きに」
 ごくりと喉を鳴らして、政宗は腰を進めた。
「が、ぁぐっ、ぉ、ふぅう」
 背骨がじりじりと砕かれ、別の物に満たされるような圧迫感に、小十郎が呻く。進む政宗の牡を温かな肉が包み、入り口付近では排除しようと動いたものが、途中から奥へと求めるような動きに変わった。
「っ、小十郎」
 心地よさに、若い政宗は抗う事ができなかった。苦しげに呻く小十郎を知りながら、欲の促すままに隙間無く沈んで揺さ振る。
「ぁがっ、は、ぁはぁおううっ」
 脳髄まで突き上げられているような感覚に、小十郎は身をそらせて吼えた。手負いの獣のような声を発する小十郎を、政宗は若さに任せて味わい開く。
「はっ、はぁあ、ぁ、あぅうっ」
「小十郎」
 切羽詰った主の声に、小十郎は息苦しさを悦びとして受け止めた。繋がり、求めてくる主の熱に、もう一つ扉を開いて欲しいと望む。
「ぁぐっ、ぉ、は、政宗様っ、ぁ、ご遠慮なさらず、思うさま……吹きあげてください」
 注がれたいと望む小十郎に、政宗の本能が弾けた。
「くっ」
 ぶるっと腰を震わせ、小十郎の奥へと子種を注ぐ。
「は、ぁあ、ああ――」
 流れ来る、政宗が欲情をした証の熱に、きわまった小十郎の心が射精を促した。ぎゅうぎゅうと政宗の牡を肉壁が締めつけ、緊張した尻にエクボが浮かぶ。互いに残滓を零すまで恍惚を味わい、糸が切れたように弛緩した。
「は、ぁ……小十郎」
 小十郎から抜け出た政宗が、荒く上下している背に唇を押し当てる。
「政宗様」
 呼気に名を含ませた小十郎が、政宗の頬に手を伸ばした。政宗も小十郎の頬に触れて、どちらともなく唇を寄せる。
 額を重ね、視線を絡めて吹き出した。
「くっ、はは」
 笑い声を立てながら、唇をついばむ。腕を、足をからめて身を寄せながら、ひとしきり笑いあって口を吸い、先に想いを言葉にしたのは、政宗だった。
「つまんねぇ意地は、必要ねぇだろう? 小十郎。俺は、お前を抱きたい」
「――伊達家の跡継ぎを産めませんが」
 政宗が半眼となり、唇を尖らせた。
「この期に及んで、つまんねぇことをほざくんじゃねぇよ」
 目を伏せた小十郎が、咳払いをする。
「お手柔らかに願えますか」
 薄明かりの中でも、小十郎の目じりが朱に染まっているのが見えた。そこに唇を押し付けた政宗は、いたずらっぽく耳朶に声を注ぐ。
「お前から欲しがるように、してやるよ」
 瞼を上げた小十郎の目を、政宗が覗きこむ。互いの瞳の中に――心の中に相手が映っていることを確かめるように、唇が重なった。

2014/10/10



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