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隷属による自由

 まったく。憐れな存在だな――と、松永久秀はつぶやいた。

 馬小屋で、松永久秀は寝起きをしていた。
 馬小屋といっても、馬は一頭もいない。いるのは久秀のみである。久秀は裸身で、馬小屋に住んでいた。まったくの裸、というわけではない。彼の体には縄がかかっていた。後手に、手首から肘までをピッチリと重ね合わせ、厳重に縛られていた。その縄の先は厩の天井に繋がれている。馬房の中を、端から端まで動けるほどの長さがあった。
 久秀はこの状況を悲観するのではなく、むしろ楽しんでいた。なるほど、飼われるということは、こういう事かと観察をする余裕もあった。馬房は十分に藁が敷き詰められており、寝心地は悪くない。裸身で過ごしていても病になるような季節ではないことも、楽しむ余裕を作っていた。
 腕を縛る縄のほかは、髪紐さえも身につけていない久秀は、近付いてくる足音に「やれやれ」と息を漏らした。久秀を“飼っている”男たちが近付いてくる。久秀からすれば“飼われてやっている”となるのだが、男たちはその差異に気付く事なく、下卑た笑いを頬に張り付け、久秀の前に来た。
「可愛がりにきてやったぜ」
 男の一人が言う。男たちは、いずれも肉付きのいい壮健な体つきをしていた。彼らは久秀が滅ぼした、どこだかの兵だったらしい。ただ領主の持っていた茶器が欲しかった。それだけのために食い扶持を奪われた彼らは、久秀を恨み、こうして復讐と称して久秀を家畜のように扱っているのだという。
 久秀からすれば、鼻先で笑うほどのことでもないくらいに瑣末な理由であり、粗末な心根としか言いようが無かったが、彼らは本気でそう思っていた。
「おら、しゃぶりな」
 松永の髪を掴んだ男が、着衣のままで股間を久秀の鼻先に近付けた。
「着物を脱いでもらわなければ、出来ないのだがね」
 久秀の余裕ぶりに、男が気色ばんだ。
「この……自分の立場が、わかってんのか!」
「まぁ、待てよ。その通りだろうが。すまねぇな、松永さんよォ。アンタの口で脱がさせたかったんだよ。だがまぁ、そんな事は面倒だよなぁ」
 気色ばんだ男が振り上げた拳を、別の男が掴んで止め、ニヤニヤとしながら松永の肌を見る。好色を隠そうともしない瞳に、欲に素直な事は良い事だと久秀は思う。
 松永を捉えた彼らは、はじめ彼の首を跳ねようとしていた。だが、あっさりと殺してしまっては恨みが晴れないと、一人の男が久秀を殴った。それもそうだと、久秀は次々に殴られた。
 胸倉を捕まれ殴られている間に、久秀の胸元がはだけ、見事に鍛えられた胸筋が覗いた。地に倒れた久秀が身を起こし、自分を見下ろす男たちを、はるかな高みにいるような目で見上げた。その瞳に気圧された男たちは、この熟年の男が持つ妖気のような淫靡の香りを魂で嗅いだ。
 ごくり、と誰かの喉が鳴った。
 どうせなら、と欲のために渇いた声が提案した。
 どうせなら、生かして屈辱を与えてやろうぜ。
 そうして久秀は裸身で馬小屋に繋がれ、彼らの言う屈辱を与えられる生活を過ごす事となった。
「ん、ふ、じゅる、は……若いな」
 男たちが下肢をむき出しにして、久秀を囲んでいる。その中の一つを、久秀はしゃぶっていた。
「アンタと違って、こちとら働き盛りの欲盛りなんでな」
 さっさとしろよと陰茎を突きつけられて、久秀は鼻から吐息を漏らして口を開き、自分を囲む男根をしゃぶり、子種を飲んだ。中には順番が来るのを待てず、久秀の脇に陰茎を突っ込み、腰を振る者もいた。
「んはっ、は、ぁ、もう、そろそろ許してはもらえまいかね。顎が疲れてしまった」
 口内のみならず、顔中を精液で濡らした久秀が言えば、男たちは仕方がねぇなと吐き捨てた。久秀の顔に無骨な手が伸び、彼の口内に指が入った。久秀はおとなしく口を開いている。男は口腔を指でかきまわし、彼の口内にある子種と唾液を集めた。
「うぐっ、ふ、ふぁ、あう、う」
「飲むなよ」
 さんざんに命じられているので、わかっていると久秀が男に潤んだ瞳で告げる。優位に立っているのは自分たちであるのに、老獪な色を持った久秀の瞳に、こちらが支配されているような心地になって、男は忌々しそうに舌を打った。
「ほら。アンタのケツを濡らすんだからよ」
「おぐっ、お、が、ぁおうう」
 喉の奥まで指を入れられ、久秀が呻いた。息苦しさから涙が浮かび、それを見た男たちが薄暗い喜びを浮かべる。あふれる唾液を飲まないように、久秀は口を開き続けた。やがて男が久秀の口内から指を抜き、彼の顎を伝う唾液も拾って命じた。
「おら、ケツ出せや」
「もう少し、上品な言い方があると思うのだがね」
「こんなもんに、上品も下品もあるかよ」
「うっ」
 興奮に上ずった声で、肉厚な男の手が久秀の肩を掴んで地面に叩きつけた。別の手が久秀の足の間に入り、陰茎を掴んで腰を持ち上げる。
「ヒッ」
 思わず漏れた久秀の高い悲鳴に、男たちがゲラゲラと笑った。
「いい加減、従順になれよなぁ」
「おぐっ、う、うう」
 久秀の尻が開かれ、濡れた指が無遠慮に差し込まれた。グニグニと動く指が扱い慣れているように、久秀の肉壁を開く。
「いくらヤッても、締まりがいいな」
「そんだけ、鍛えてるってことだろ。いいケツしてるしよ」
 パァンと渇いた音が響いた。叩かれた久秀の尻が、赤くなっている。
「おっ。今、キュウって締まったぜ」
 指を入れている男が言って、再び渇いた音が響く。
「んぁあっ」
 叩かれた痛みになのか、秘孔の指のためなのか、久秀が鼻にかかった声で啼いた。
「おい、まだかよ」
 荒い息が久秀の肌に落ちる。
「早く、ぶっ込もうぜ」
「そうだな。――じゃ、解したモンの特権ってことで。俺からいくぜ」
 久秀の秘孔から指が抜け、逞しい熱が押し当てられた。
「ほぅらよっ」
「ぁがっ、ぎ、ぉああ」
 ギチギチと久秀の秘孔が悲鳴を上げる。喉を詰まらせ顎を仰け反らせる久秀に、男たちの興奮が増した。
「おっと。まだ解し足りなかったみてぇだな。ま、突っ込んでりゃあ、馴染むだろ」
 そう言って、久秀に陰茎を突き立てた男が座った。自然、その膝に久秀が座る事になった。
「ぁ、ああ、あ、は、はぁ、ずいぶんと、乱暴だな」
 あえぎながら久秀が笑えば、彼の持つ濃厚な欲の花が毒々しく咲き、艶冶さが漂った。
「丁寧に扱う必要なんざ、ねぇだろう?」
 久秀の前にしゃがんだ男が手を伸ばし、久秀の盛り上がった胸筋を掴んだ。ほどよい脂肪の混じった久秀の胸に男の指が沈み、跳ね返そうとする弾力を男が楽しむ。
「可愛がりにきたと、言われたように思ったのだがね」
 秘孔の息苦しさに呼気を乱しつつも、穏やかとさえ言えるほどの余裕を保つ久秀に苛立ち、男は彼の乳首を摘み、力任せに引いた。
「ひっ、ぃああ」
 ギリギリと乳首が捻られ、久秀が叫ぶ。
「いつまで余裕ぶってられるんだろうなぁ」
「はっ、は、ぁ、ああ、ぃいいいいっ」
 痛みを堪えるために、意識せず久秀は歯を食いしばった。苦悶の様子に溜飲を下げた男が、猫なで声を出す。
「おお、痛かったなぁ。舐めて慰めてやるよ」
「んはっ、は、ぁ、ああ」
 痛みに熱を帯び、痺れる久秀の乳首に舌が絡んだ。
「は、はぁ、あ、は、ぁあ、ふ」
「じっとしてねぇで、腰を触れよ。もう慣れただろ」
「ぁひっ」
 久秀を膝に乗せている男が腰を揺すり、久秀の秘孔が収縮した。
「ほら、動けって」
「は、はぁ、ふ、んふっ」
 久秀はおとなしく従い、腰を揺する。そうして最初の男の子種を受け止めれば、解れた久秀の秘孔を求め、男たちは好きに暴れ回った。
「は、はひっ、は、はぁああっ」
「おらおら。もっと腰を触れよ、松永さんよォ!」
 多量の子種を注がれた久秀の秘孔が、陰茎が出入りするたびに濡れた音を響かせる。
「んはっ、はぁ、あ、もっと、ぁあ、年寄りをいたわってくれても、は、いいと思うのだがね、ぇあああっ」
「何が年寄りだ。こんな胸筋しといて、よく言うぜ」
「んううっ、は、ぁ、ああ」
「年寄りなら、俺らより子種の量が少ないだろう。ただでさえ、こっちのほうが人数が多いんだ。枯れられちまったら困るから、栓をしとくか」
 誰かが久秀の陰茎を掴み、敷き詰められている藁の一本を蜜口に差し込んだ。
「ぁぎっ、い、は、ぁあ、あおぉおおう」
「栓をするだけじゃ、子種を吹き上げるときに、抜けちまうかもしれねぇぞ。縛っておこうぜ」
 別の男が藁で久秀の陰茎をきつくしばった。食い込む藁と、広げられた蜜筒に、苦しげに呻く久秀を、男たちは容赦なく突き上げ揺らした。
「ぉ、ひぐぅ、ほ、ぁおうう」
 達せぬ久秀の陰茎が脈打ち、のたうつ。そのさまを楽しみながら、男たちは自分たちの性のすべてを久秀に打ちつけ、ぶちまけた。
「ほうら、ほらほら。まるで女みてぇに、ジュブジュブに濡れちまってんなぁ」
「はんっ、はんぁあっ、ひっ、ぁ、ぬ、らしたのは、卿ら、ぁあぅ」
「咥えこんで喜んでんのは、アンタだろうが、松永ァ」
「はひっ、はぁおおぅ」
「全員の子種が尽きるまで、ケツに入れるのはさすがに可哀想だからよ。年上のアンタをいたわって、口も使ってやるよ」
「おぶっ、んぶぅううっ」
「いいざまだなぁ、松永! 子種がようっく似合ってんぜぇ」
「げはっ、は、ぁはぁおうううっ」
「ヒャハハハ――は」
 男の甲高い笑い声が、唐突に途切れた。ドサリと倒れた男に、狂気のような淫蕩を浮かべた男が顔を向ける。
「おい、どうしたんだ……ヒィイイイッ!」
 恐怖の悲鳴に、男たちの意識が野欲から引きはがされた。
「おい、どうし……な、なんだよコレぁ!」
 笑いが途切れた男の顔が、二つに割れていた。藁が血を吸って赤く染まっていく。
「は、はぁ――ああ、来たか」
 犯されていた久秀が、静かに言った。
「来たかって……」
 誰が、と問いを発する事も出来ずに、久秀の口腔を陰茎でかき回していた男の首が落ちた。
「ど、どこからっ」
 久秀を取り囲んでいた男たちが次々に打ち取られていくが、彼らを屠っている者の姿が見えない。
「なんだよ、これぇえええっ!」
 最後に、久秀に陰茎を突きたてていた男が、胸を貫かれて仰向けに倒れた。それにつられる久秀の体を、しなやかな筋肉を纏った腕が捕まえる。男はそのまま倒れ、久秀の内側からズルリと陰茎が抜けた。
「やれやれ。ずいぶんと無駄な体力を使ってしまったな」
 腕の戒めを解かれた久秀が、固定されていた腕の動きを確かめるため、拳を握り開き、腕を振った。それを、男たちを屠った男が無言で眺める。その男は鼻先まで隠れる庇のついた兜を着けているので、どんな表情をして救い出した久秀を見ているのかは、わからない。
「さて、風魔。汚れを落としてから着物を着たいのだが。井戸まで、案内して貰えるかね」
 風魔と呼ばれた男は頷き、やはり無言のまま歩き出した。久秀は滑るような足取りで彼の後を追った。
 馬小屋の周囲で動いているものは、久秀と風魔小太郎のみとなっていた。
「まったく。つまらない戯れだったよ」
 物言わぬ風魔に、久秀は体を拭いながら話しかける。
「しょせん、命じられて動くことしか出来ない人間は、命じられる事を求めてしまうものなのだと、よくわかった。彼らは私を支配しているつもりで、私に隷属をしていたのだよ。この意味がわかるかね、風魔」
 風魔は何の反応も示さず、腕に久秀の着物をかけて立っている。
「自由というものは、何かに縛られてはじめて手に入れる事が出来るというものだ。それを再確認する以上の何も、得る事は出来なかったな」
 つまらないことをしたと言いつつ、久秀はどこか楽しげであった。
「さて、風魔よ。次は何をして戯れようか」
 寸分の隙もなく身支度を整えた久秀に、風魔はやはり無言を返した。

2014/07/01



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