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鬼の霍乱

 長曾我部元親の元を訪ねた徳川家康は、太く形の良い眉をひそめた。
「三日も熱が続いているなんて、心配だな」
 声を落とした家康の前で、筋骨隆々とした髭面の、なめした皮のように日に焼けた色濃い肌をしている男が、今にも泣きそうに顔をゆがめた。
「ずっとうなされちまってて。薬湯や蜂蜜を口に流し込んじゃあいますが、一向に目を開いてくれねぇんでさ」
「そうか。……それなら、ワシの作った丸薬が役に立つかもしれないな。元親のところに案内をしてくれないか。ワシがしばらく看病をしよう」
「いや、それは、ありがてぇ話ですが、家康さんに移っちまったら、兄貴に顔を会わせらんなくなりやす」
「元親の身を案じて過ごすほうが、ワシには辛く体に悪い。それにワシは、高名な薬師から教えて貰った万能薬を、いつも丸薬にして持ち歩いているんだ。それを使って、看病をさせてくれ」
「しかし」
「うん?」
「万病に効くってぇのはつまり、強い薬っちゅうことでやしょう。副作用なんてぇもんは、その」
 身をかがめ、一回りは年下であろう家康を、髭面の男は上目遣いに見た。
「ああ、副作用はあるにはあるが、心配はいらないさ」
 さわやかに言い放つ家康に、髭面の男が顔をしかめる。
「そんな顔をしないでくれ。ワシが元親に危ないものを呑ませると思うか? 副作用というのは、その、あれだ。女が欲しくなる、というものだから、心配しなくていい」
 ほんのりと頬を染めながら答えた家康に、髭面の男はにこやかに愁眉を開いた。
「そんなら、女がいねぇから安心でさぁ」
 ささ、どうぞと案内されて、家康は元親の眠る部屋に通された。
「用がありゃあ、なんでも言いつけてくだせぇ」
 病人の周囲は静かにしておくのが一番だと、看護の者を一人置く以外には、人払いがしてあった。寝台に乗せられた元親の傍についていた男が、不安げな顔で家康に一礼をし、座を立った。残された家康は元親の傍に寄り、彼の顔を覗きこむ。
 細い眉はしかめられ、長い睫が苦しげに震えている。唇は薄く開き、海の男とは思えぬほどに白い肌は、熱のせいで真っ赤に染まっていた。
「元親」
 額に手を当てた家康は、その熱さに息を呑んだ。すぐに丸薬を取り出し、二粒を元親の口に押し込む。上から水を注いだが、元親はむせて吐き出してしまった。こぼれた丸薬を手のひらで受け止めた家康は、再びそれを元親の口に入れ、水を含んで口移しに飲ませた。元親の喉を開かせ流すため、舌を差し込む。飲むように促せば、元親の喉仏が上下し、家康はほっと唇を離した。
 元親の濡れた口元を傍にあった手巾で拭い、かたわらに腰を下ろす。三日も食べていないからか、元親の頬は削げていた。痛々しく目の奥を光らせた家康は、元親の肌がしっとりと汗で濡れていることに気付いた。部屋を見回せば、たっぷりの水樽と清潔な手巾が数枚、目に入った。真新しい着物と褌の横に、香油もある。汗を拭ってやろうと、家康は掛け布をずらした。苦しげにあえぐ分厚い胸板の筋に、汗の玉が光っている。家康は手巾を濡らして硬く絞ると、元親の体を丁寧に拭った。心地いいのか、元親の睫の震えがゆるんだ。それに口元をほころばせ、家康は元親の体を右に左に動かしながら、丹念に汗を拭く。
 人より頭二つ分は大きく、鬼と称されるほどの偉丈夫である元親を動かすのは大仕事だ。しかし家康も、元親には及ばないが、人の目を惹きつけるに値する精悍な体つきをしている。難なく元親の上半身を拭き終えた家康は、手巾を変えて足の指から上へと汗を拭った。足の付け根まで来て、家康ははっきりと盛り上がっている元親の褌に目を止めた。気付いてはいたが、見ないようにしていた。だが、これもきれいな物と取り替えたほうがいい。
 緊張気味に褌を取ると、天を突き刺そうとするかのように、隆々とそそり立った短槍が勢いよく飛び出した。怒張し脈打つその姿に、家康の腰がざわめく。いかんいかんと首を振り、家康は気を取り直して新しい手巾を手に、尻から拭いた。
 いよいよ肝心処の汚れを磨く段になり、ええい、ままよと家康は根元から丁寧に、冷えた水で濡らした手巾で、元親の短槍を包んだ。布越しに熱と硬さを感じ、家康の心臓がうるさくなる。
「う」
 短槍の穂先に触れると元親が呻き、その声音の艶やかさに家康は喉を鳴らした。ちらりと目を向ければ、隆々と盛り上がった胸筋が上下しているのが見える。その間から、元親の唇と形の良い鼻が見えた。熱くあえぐ胸の先に、熟れた突起がある。
「こ、このままじゃ……辛いな」
 自分に言い聞かせるように呟いた家康は、高まる心音と共に頬を染めつつ、口を開いて元親の短槍を咥えた。
「んっ、ふ」
 口内のそれは熱された鉄のように感じられた。猛々しい硬さと熱に、家康の下肢が疼く。女が欲しくなる副作用を持つ丸薬を呑ませたのだから、これも看病のうちだと自分に言い聞かせ、家康は元親をしゃぶった。
「んふっ、ふ、んむぅ」
 両手で根元を支えて舌をからませれば、苦味が口内に広がる。心地良さそうな元親の呼気が耳に届き、家康は瞳を潤ませ腰のあたりに切なさを感じながら、夢中で奉仕した。
「んぐっ、う、ぅうっ」
 元親の手が家康の髪に触れたかと思うと、強く押された。喉の口を短槍に突かれて呻く家康の下肢が、褌の中で跳ねた。どうしようもなく股間を疼かせながら、家康は元親が意識の無いまま望む通りに、喉の奥まで使い彼を昂ぶらせ、そこを膨らませている熱の汁を啜った。
「んっ、んんっ、ふ、ぅう」
 咳き込みそうになりつつも、なんとか筒内のものも吸い上げた家康は、口内のものが少しも衰えていないことに目を丸くした。口を離し、元親の顔を見る。心なしか、少し穏やかになった気がして、家康は胸を震わせた。ちらりと扉に目を向けて、他に誰の気配も無いことを確認し、香油を手にする。元親の体に使うはずのものだが、自分の肌を通して元親に塗付してもいいだろうと、家康は頭に浮かんだ考えに全身を赤く染めながら裸身となった。
 家康の腰のものも、元親に負けず劣らずたくましくなっている。
「元親」
 元親の腰にまたがった家康は、自分の槍の穂先を元親の先に当てた。それだけで官能が背骨を駆け巡る。
「ああ、元親」
 うっとりと名を呼びながら唇を重ねれば、元親が尋常で無い熱を有していることが知れた。水を含んで元親の喉を潤わせつつ、家康は舌を差し込み口腔をさぐった。そうしながら香油を自分の尻に垂らし、秘孔の準備を始める。
「んっ、ふ、はぁ……ああ、元親」
 病人に淫らな行為をしているという背徳感が、家康の欲を高めた。二つの熱された短槍がぶつかりあうごとに、火花のような快楽が散る。家康は自分の秘孔を指で広げつつ、彼の熱に貫かれる期待に意識を乱した。
「んんっ、は、ぁあ、元親、ぁ、元親」
 熱に上気した元親の肌のなまめかしさに酔い、家康は体中を熱くした。元親の唇に甘え尽くし、繋がる準備を整えた家康は、元親の分厚い胸に両手を添えて、秘孔の口に元親の短槍の穂先をあてがい、腰を落とした。
「は、ぁ、ああっ、あああ」
 仰け反り、圧迫に詰まる息を吐き出す。穂先さえ沈めば、柄の部分はすんなりと奥まで通った。鞘となった家康は、奥まで広がる官能に身を震わせ、元親の質量をしばし味わう。
「は、ぁ……元親。すぐに、楽にしてやるから」
 言い訳がましく呟きながら、家康は腰を振った。元親の短槍に抉られる内壁が、悦び踊る。家康の短槍の先から欲熱があふれ、元親の見事に割れた腹筋を濡らした。
「ああ、元親、元親ぁあっ」
 夢中になって腰を振り、家康は元親の胸にすがりついて悶えた。目の前にある元親の胸乳に舌で甘え、自らの短槍を扱いて体を揺する。そうして昂ぶった家康が頂点を極めて媚肉を絞れば、元親が熱の奔流を家康に注いだ。
「あっ、ぁああああ――〜〜〜〜っ!」
 切ない声を上げた家康が、くたりと元親の上に身を投げる。だが、体内に呑んだ元親の熱は、いささかも力を失わなかった。
「……はは。すごいな」
 家康は首を伸ばし、元親のあごを吸うと、腕に力を込めて、再び体を揺すりだした。
「ああ、元親」
 元親を蝕む熱の全てを自分の身に受け止めようと、家康は彼の上で淫らな息を紡ぎながら踊り続け、自らの熱を迸らせて元親の腹をしとどに濡らした。

 寝台に突っ伏して眠っていた家康は、髪に何かが触れたことに気付き顔を上げた。眠りから覚めたばかりの、ぼんやりとした視界の焦点がゆっくりと定まる。少し頬は削げているが、健やかな笑みを浮かべた元親の姿に、家康は喜色を浮かべて飛び起きた。
「元親!」
「よぉ。心配をかけちまったな」
「もう、いいのか?」
「おかげさまでな」
 ニヤリとした元親の腕が、家康を引き寄せる。寝台の上に倒された家康は、元親に圧し掛かられて目を白黒とさせた。
「も、元親?」
「ずいぶんと、熱烈な看護だったじゃねぇか、家康」
 口を吸われながらのささやきに、家康の顔が赤くなった。
「なっ、お、起きて……」
「まさか家康が、俺の上で何度も腰を振っ」
 元親の口を慌てて両手で押さえた家康は、真っ赤な顔のまま彼をにらんだ。元親の目は、完全に面白がっている。
「とにかく。熱が下がったのなら良かった。他の皆も心配をしている。早く知らせにいかな……っ!」
 ごそごそと肌身をまさぐられ、家康が言葉を切った。
「元親、やめっ」
「なんだよ。人の寝こみを襲っといて、それは無ぇだろう? 家康」
 力強くたくましい笑みと淫靡な瞳に、家康の心臓が跳ねた。
「だ、だめだっ。とにかく、何か食べてくれ。頬が削げて、いかにも病人という顔だぞ、元親」
 まさぐる手を留めようと必死になりつつ、家康は元親をにらみつけた。心底の心配を滲ませた目を、人の心の機微を読むに長けた元親が気付かぬはずはない。軽く肩をすくめて嘆息し、やれやれと家康の上から退いた。
「たしかに。腹は減ってるな」
「そうだろう? 三日も食べていなかったんだ。何か、精のつく雑炊でも頼んでこよう」
 いそいそと寝台から降りようとした家康の腰に、元親の太く力強い腕が回った。
「うわっ」
 引き寄せられ、うなじに唇を押し当てられて、家康が硬直する。
「元親っ」
「スッポンの雑炊でも作らせて、しっかり精力をつけねぇとな。なんせ、あんなに情熱的に俺の上で乱れた奴を、たっぷり相手しなきゃなんねぇからよぉ」
 全身から火を吹いたように真っ赤になった家康が、唇をわななかせる。震える家康の唇に、楽しげな元親の唇が重なった。
「一方的にやられっぱなしで、俺が済ませるわけがねぇだろう? ちゃんと愛させてくれよ、家康」
 魅惑的な男らしい微笑みに逆らえず、家康は不機嫌そうに尖らせた唇を元親の口に当てて返事とし、広い肩に頭を預けた。
「心配かけちまったな」
 深い労いの声と包んでくれる腕の強さに、家康は安堵の息を漏らして瞼を伏せた。

2015/04/13



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