どっかと腰を下ろした長曾我部元親は、音を立てて酒壺を客人の前に置いた。「ずいぶんと、シケたツラしてんじゃねぇか、家康。なにがあったってんだ?」 鬼と呼ばれるほどに、立派な体躯の偉丈夫な元親は、笑うと人なつこい犬のような雰囲気になる。 常人よりも体躯がよく、透けるような白い肌と、クセの強い白銀の髪、左目を覆う紫の眼帯など、他者を畏怖させる要素をいくつも抱えている元親だが、ひとたび笑えば相手の警戒を溶かしてしまうほど、朗らかで親しみやすい気配を醸す。 それにつられたのか、床に落としていた目をわずかに上げた客人、徳川家康は、ぎこちない笑みを浮かべると、すぐさま視線をそらした。 健康的な肌に、短く硬い黒髪。爽やかという言葉そのものの、まぶしいほどの笑みをひらめかせる彼に似つかわしくない態度に、元親は首を傾げた。「とりあえず、一杯どうだ」「いただこう」 盃を取った家康に、元親が酒を注ぐ。一国の主でもあり、思春期の青年でもある家康の悩みは、どちら由来のものなのだろうかと思いつつ、元親は彼が口を開くのを待った。 こういう場合は、下手にあれこれと聞かないほうがいい。 ふたりは静かに盃を重ねた。 ややあって、家康が盃を床に逆さに伏せた。酒はもういらないという意思表示に、元親も盃を置いた。「あ、あの……な、元親」 視線を上げてはさまよわせ、家康は緊張を肌にさざめかせる。元親は包む瞳で、彼の告白を待った。家康はそっと自分の体を抱きしめ、頬を染める。それは少女が胸のふくらみを恥ずかしがる仕草に似ていた。「乳が、出るんだ」 ポツリとこぼれた言葉に、元親はキョトンとした。家康は腹を決めて、今度はまっすぐに元親を見つめて言う。「乳が、出るようになってしまったんだ」「ち……ち?」 呆然と繰り返した元親に、家康はうなずいて上半身をあらわにした。鍛え抜かれた肉体の、盛り上がった胸筋にポッチリと赤い蕾がついている。家康はそこに指先を当てて、声を震わせた。「ここから……出るんだ」 ようやく、家康の言っている意味を理解した元親は、それでも信じられなくて、家康の乳首をまじまじと見つめた。羞恥を堪えて、家康は元親の視線を受け止める。「……なんで」 かすれた元親の声に、家康は「わからない」と首を振った。「気がついたら、出るようになっていたんだ。どこからか、赤子の匂いがすると思っていたら……ワシの乳首から、乳が漏れていて……それで」 しゃべりながら、だんだんとうつむく家康の胸に、元親は手を伸ばした。乳首をつまんで、軽くひねる。「あっ、元親」 ぷくっと乳首の先に乳白色の液体が浮かんで、元親はうなった。「男も、乳が出るようになるなんてな」「どうすればいいか、知らないか?」 救いを求める目をされても、元親にもどうすればいいのかわからない。目の前の光景をうまく受け止められない元親は、記憶の中にある授乳中の女の言葉を口走った。「乳が溜まると、胸が張って仕方がねぇんじゃねぇか」「えっ、それは」「赤子に飲ませられねぇんなら、絞らなきゃならねぇって聞いたけどよ」 自分でもなにを言っているのだと焦れば、さらに思考が空転してしまう。内心では、かなり慌てている元親の表情は感情が交錯しすぎて、逆に冷静な顔になっていた。家康はそれを真面目に受け止め、恥じらう。「それは……そう、だな。ときどき、胸筋が張って、痛くなるときがある」 伏せられた家康のまつ毛が震える。元親は腰のあたりに熱を感じて、ゴクリと生唾を呑み込んだ。「自分で、絞ってんのか」「だれかに、頼めるものでもないだろう」「そりゃあ、そうだが」「与える赤子もいないしな……吸ってみるか?」 気まずさを払しょくしようと発した家康の冗談に、元親は乗った。甘くなつかしい香りのする胸筋に顔を寄せて、舌を伸ばす。「えっ、元親……んっ、ぁ……ほん、とに……っ」 キュウッと吸った元親は、喉を通る液体に目を細めて、家康を床に倒した。のしかかられた家康は、両腕で顔を隠して元親の好きにさせる。「んっ、ぅ……は、ぁ……くっ、んぅっ、う」 軽く歯を立てられた乳首から、乳があふれる。盛り上がった胸筋をグッと押せば、勢いよく乳が吹き出した。「んぁっ、あ……元親、あっ、あ」「酒より、酔えるな」 口の端を舐めた元親の目が、獣欲に輝いている。ドクンと心臓を跳ねさせた家康の腰が、甘い疼痛を覚えた。「も、とちか」 かすれた声で、家康は興奮から来る緊張を伝えた。「たっぷりと、搾り取ってやる」 ニヤリと犬歯を見せた元親は、家康の乳首を舌で転がし、吸いつきながら、もう片方の胸筋を揉んでほぐした。「あっ、は、ぁあ……はっ、ぁあう……んっ、元親……あっ、ああ……は、ぁあ、く、ぅうんっ」 吸われていない乳首から、あふれた乳が家康の肌と元親の指を濡らす。親指と人差し指でつまんで絞られ、家康は高い悲鳴を上げながら、乳を噴き上げた。 甘ったるい匂いが室内に広がる。「すげぇな……いくらでも、あふれて止まらねぇ」「んっ、元親……もっと、絞ってくれ……張って、辛いんだ」「辛ぇのは、コッチだけじゃねぇだろう?」 元親の膝が、家康の股間を擦る。「ぅくっ、ふ……元親」「安心しろよ、俺だっておんなじだ」 チュッと乳をひと吸いしてから、元親は家康の下肢をむき出しにして、自分の欲を彼に見せた。 ふたりの隆々と天を向いている雄が、顔を合わせる。「元親」 身を起こした家康は、たくましい元親の陰茎に手を伸ばした。握られて、元親は目を細める。家康は手の中の熱さに、吐息をこぼした。「すごいな」「人のこと、言えんのかよ」 額を重ねて、ふたりは笑いあった。「久しぶりだ……元親の熱に触れるのは」「奥に入りてぇ」 家康の髪に唇を寄せて、元親は悩ましく願った。家康の瞳が淫靡に潤み、唇はひかえめな笑みにゆがんだ。はにかむ家康の額に唇を寄せて、元親は彼をふたたび横たわらせると、脚を持ち上げて尻の谷に顔を伏せた。ひそやかな菊花に舌を伸ばして、そこをほぐす。「はっ、ぁ……ああ、元親……あっ、んっ、は、ぁあ」 たっぷりと唾液を含ませて濡らしても、渇いた箇所に力強いものを含ませるには足りない。元親は指で隘路をほぐしつつ、家康の陰茎を擦って先走りを集めた。「はぅ……くっ、あ、元親……っ、さ、先に……イッてしまう」「イカせるために、してんだからいいんだよ。それで奥を濡らすつもりだからな」「ふっ、ぁ……それなら、元親も……ワシだけが……先に、は……っ」「俺の魔羅を心配してくれてんのか?」 身を起こそうとする家康の胸筋の谷に唇を押し当てて、元親は秘孔から指を抜くと陰茎の先を押し当てた。「なら、このまま扱いて、飲ませる……ふたりぶんありゃあ、しっかり濡らせるだろ」 はにかみながら、家康はうなずいた。「んっ、元親……あっ、あ」 元親は家康の欲を昂らせつつ、己も扱いて息を乱した。家康の乳首からは、乳がトロトロとこぼれている。舌を伸ばして吸うと、家康の背が跳ねた。「はっ、ぁううっ、ん……あっ、元親、元親」 ギュウッと元親の頭を抱いて身もだえながら、家康は絶頂を迎えた。すこし遅れて元親も達する。元親の精を注がれた家康の秘孔がヒクヒクと痙攣し、先端をくすぐられた元親は熱っぽい息を吐いた。「たまんねぇ……このまま、突っ込んじまいてぇ」「っ、ワシも……もう、欲しい」 チュッと軽く音を立てて、元親は家康の口を吸う。元親の唇は、乳の味がした。自分の味だと、家康は羞恥と喜びに笑みを浮かべる。「壊すわけには、いかねぇからな」 わざとおどけて獣欲をごまかした元親は、家康の乳を吸いながら濡れた指を秘孔に戻してまさぐった。「ふはっ、ぁ……はぁう、んっ、ぁ……は、元親……あっ、あ……ああっ、んっ、ふ」 家康の乳が、どんどん元親に吸われていく。胸先から全身に広がる愛おしさに、家康は魂をあたたかくふくらませた。はやくすべてを満たされたくて、脚を広げて元親の腰に絡める。「元親……もう」 飢えて渇いた家康の声に、元親は行動で応えた。グッと腰を近づけて、待ち焦がれている箇所に陰茎を押し込む。「かはっ、ぁ、う……くっ、んぅう……は、ぁ、ああ」 重量のある熱杭に、隘路が支配される。圧迫感にうめく家康の胸筋を握って、元親は体を揺らした。「ぅはっ、ぁ、元親……っ、あっ、あ」 元親が動いて重みが胸に乗ると、乳液があふれ出る。家康は元親の太い腕を掴んで、下唇を噛んだ。「絞られながら突かれるのは、趣味じゃねぇか?」「んっ、そうじゃ……ない……っ、は、元親は……嫌じゃないのか」「なんで、嫌だなんて思うんだよ」「っ……こんな、乳が出る体は……おかしいだろう」 ニイッと笑って、元親は不安に揺れる家康を抱きしめた。「いい匂いだ……甘ったるくてよぉ……すげぇ、不思議な感じがする」「元親」「酒よりも、ずっと酔える乳なんざぁ、めったとねぇお宝だ。なぁ、家康」 軽く頬に口づけられて、家康は元親にしがみついた。クシャリと家康の髪をかき混ぜてから、元親は激しく腰を振り立てて秘孔を乱した。揺さぶられる家康は短く鋭い悲鳴を上げて、元親の熱を味わう。「はふっ、は、はんっ、は、あぁあうっ、元親……あっ、元親ぁ」「家康……家康」 揺さぶりながら抱きしめて、耳や頬に唇を寄せながら家康の内壁を味わう元親は、グンッと深く奥をえぐって極まった。「ひぐっ、ぁ、はぁおぉおううっ!」 えぐられた衝撃に目の奥をチカチカさせて、家康も弾ける。腰を突き出して細かく痙攣する家康に、元親は残滓を擦りつけてから抜け出した。「ふぅ……ベタベタだな」 息をついた元親は、ふたりの胸や腹をしとどに濡らす乳液をピチャリと叩いた。余韻に胸を喘がせながら、家康が問う。「元親……その、ワシの乳が張って痛むときは……また、吸ってもらえるだろうか」 おずおずとした物言いに、元親は小首を傾けた。「張って痛む前に、たっぷりと吸わせてもらいてぇんだがな」「えっ?」「こんなに旨くて酔えるモンは、ほかにねぇからよォ」 いたずらっぽい元親の笑みに、家康は安堵した。「元親も乳が出るようになった時は、ワシに吸わせてくれないか?」「互いに乳を吸い合うってぇワケか。――そんなことになったら、乳臭くてかなわねぇだろうなぁ」 ほがらかな笑い声を立てる元親の快活さに、家康の悩みが溶けていく。問題が解決したわけではないし、原因が突き止められたわけでもないが、元親が受け入れてくれるなら、このままでもかまわない。「元親」「ん?」「ありがとう」 笑みで顔をクシャクシャにした元親は、愛おしさをにじませる家康を魂ごと抱きしめた。2018/03/15