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黒猫

 寒い時期は皆で鍋を囲み、酒を飲んで体を温めるのが一番と、兵舎に集まった者たちが宴会をしていた。上も下も無く彼らと付き合い、慕われている奥州の竜、伊達政宗も兵士らと共にほんのりと湯気の立つ酒を、楽しんでいた。
 その傍らに、彼の右目と称される片倉小十郎の姿は無い。宴会の盛り上がりを見た彼は、調子に乗りすぎ気分の悪くなるものが出る前に、介抱部屋を用意するべく、手配をしに行っていた。
 陽気に歌い踊り飲み食いをする兵士らの姿を眺めつつ、ほろほろと酒を楽しむ政宗のそばに、酒気をぷんぷん匂わせた若い兵士らが集まってきた。
「筆頭ぉお」
 ろれつが少し怪しくなっている。不服な事があるような顔をしている彼らに、政宗は光のある左目を柔らかく細めた。
「どうした」
「細身の肌のきれいな女ってぇのは、何処の誰なんスかぁ」
「あぁ?」
 いきなりそのようなことを聞かれても、答えようが無い。
「なんだそりゃ」
 政宗の返答に、別の兵士が答えた。
「俺ら、どんな女が好みかって話をしてたんスよ」
「やっぱ俺ぁ、ふっくらとこう、やわらけぇ餅みてぇな女がいいなぁ」
 理想の女を想像し、うっとりとする別の兵士の額を叩いて、説明を続ける。
「そんときに、片倉様がいらしたんで、好みの女を聞いたんス」
「ありゃあ、ぜってぇ思い当たる相手がいる顔でした」
 目をギラギラさせる兵士に、ふうんと政宗が首を傾げる。艶やかな黒髪が、さらりと頬を流れた。
「小十郎に、女ねぇ?」
「筆頭なら、知ってるんじゃないかって思って」
「語るときの片倉様のあの顔は、ぜってぇ誰かを思い描いていたに決まってるっス! あんな穏やかで幸せそうな顔、野菜以外に向けているの、見た事ねぇですから」
「過去の女かもしんねぇんスけど、どうなんスか筆頭」
 迫られ、少し仰け反りながら考えてみた政宗が返答をする。
「I can't imagine.」
 小十郎に、女――?
 返答の南蛮語の意味は理解できなくとも、政宗の心中の声を察したらしい兵士らは、残念そうにしながら、今度は政宗相手に好みの女の話をしはじめた。笑みを浮かべながら、彼らと会話をする政宗の心中は、むっつりと不機嫌に推し黙っていた。

 遠くから、まだ騒がしい声が響いてくる。そろそろ休まなければ体に障ると、小十郎が政宗に声をかけ、それに従った政宗と寝間への護衛も兼ねた小十郎は、館奥の一室にいた。
 しんしんと月光が降り注ぐ室内は藍色に染まり、かろうじて室内の様子を目に教えてくれている。
「温石で布団は温めてありますので」
「小十郎」
「は」
 政宗の声が、不機嫌に尖っている。すぐさま返答をした小十郎は、思考を巡らせ主の不機嫌の理由を探した。その理由らしきものが見つかる前に、政宗が言葉を継ぐ。
「華奢できれいな肌の女が、好みらしいな」
「は?」
 腕を組み、そっぽを向いている政宗の唇が不機嫌に尖っている。この主は、小十郎と二人だけになると、年よりも幼い顔をする。無器用な甘え方に、小十郎の頬が少しゆるんだ。
「この小十郎。女に現(うつつ)を抜かす余裕などございません」
 心底からの言葉に、疑うように政宗が小十郎を横目で見る。それに、小十郎は微笑みを肯定として見せた。帯に手を掛けた政宗が、すとんと着物を落として肌を晒す。
「抱けよ」
「政宗様?」
 唐突な誘いに、小十郎がまたたく。手を伸ばした政宗の瞳が、すがるように光った。
「俺だけで、他に目を向ける余裕が無ぇってことを、示して見せろ」
 言葉だけでは信用が置けないと、政宗は小十郎の熱を求める。
 彼が自分を裏切ることなど無いと、知っている。どんなことがあっても、小十郎が自分から離れることなど無いと、腹の底から信じている。けれど、突然にそれが裏切られることを、温かな手が唐突に失われてしまうことを、政宗は幼少期に体験をしていた。それは、どれほどに強く相手を信じていようとも、ささいなことで不安の傷を疼かせる。言葉よりも体感として、言葉以上に饒舌な方法で、政宗はその傷を癒して欲しいと、小十郎に甘えていた。
 不器用な主の甘えに愛おしさを湧きたたせ、伸ばされた手を小十郎が掴む。しなやかな筋肉に包まれた細い手首を引けば、簡単に小十郎の胸の中に政宗の体が落ちた。抱きしめ、頬に手を添えて上向かせる。包み込むような瞳で政宗の瞳を通じ、魂ごと抱きしめてから、唇を寄せた。
 少し酒の味のする薄い唇を、小十郎は何度もついばむ。小十郎の表情を確かめるように見つめていた政宗が、薄く唇を開き舌先を覗かせた。それに応え、小十郎も舌を伸ばし、それ自体が意思のある生き物であるかのように、互いの舌先で存在を確かめ、絡んだ。
「んっ、ふ」
 口腔をさぐられ、政宗の鼻から息が漏れる。口付けで濡れた唇で、その甘い息も逃さぬよう、小十郎は政宗の鼻を口に含み、唇同様に愛した。
「ぁ、は」
 そのまま唇を持ち上げ、不安に揺れる目じりに触れ、右目を覆う眼帯に手をかける。それを取れば、政宗が幼い頃に小十郎がえぐった傷跡が現れた。小十郎の胸が、愛おしさで妬けるように熱くなる。その想いのままに唇を寄せ、虚となった瞳を舌で探った。
「ぁ、小十郎――more……Love it more」
 かすれた声でうわごとのように呟き、政宗が身をすり寄せる。小十郎の節くれだった温かな手のひらが、政宗の背を滑った。
「――ぁ」
 政宗の喉奥で、小さく音が爆ぜる。反った首に浮かぶ喉仏を唇で覆い、小十郎は自分の着物を脱ぎ捨て、政宗の下帯を落とし自分のそれも床に捨てた。
「は、ぁ、小十郎」
 鎖骨に滑り、肩を濡らして胸乳に進む小十郎の唇に目を細め、政宗が小十郎の頭を抱く。しなる体を両腕で逃さぬように包んだ小十郎の唇が、政宗の胸の色づきに触れた。
「ぁ、は」
 周囲を舌先でなぞり、尖りを唇で噛む。きゅっと吸えば、政宗の腰が跳ねた。
「んっ、はぁ、こじゅ、ぁ、は」
 硬くなった尖りを舌ではじき、指でつまみ捏ねながら、小十郎の唇は政宗の体を下りていく。少し立て長のヘソ横にうっ血を残し、舌をヘソと戯れさせれば、腹の下の茂みに包まれたものが、頭をもたげた。まだ完全に勃ちあがりきっていないそれの根元に、小十郎が吸いつく。
「はっ、ぁ、こじゅ、うろ」
「横に、なられますか?」
 下生えに唇を押し当てたまま小十郎が問えば、政宗が頷く。立ち上がった小十郎が政宗を横抱きにし、壊れ物を扱うように褥の上に横たえた。
「小十郎」
 横にされた政宗が起き上がり、小十郎の鍛えられた分厚い胸に手のひらを当てる。その手を滑らせ、小十郎の下肢の熱を握り確かめた。
「ぅ」
 小さく、小十郎が呻く。そこが硬くなっていることに、満足そうに政宗が口の端を持ち上げた。
「食わせろよ」
「は。しかし」
「いいから。しゃぶりてぇんだよ」
 ほら、と促され、小十郎が眉を下げて「仕方が無いな」と言いたげに、胡坐を掻く。満足そうに唇を舐めた政宗が、小十郎の足の間に顔を埋めた。
「んっ、はむっ、じゅ、は……でけぇ」
 楽しそうに、政宗が小十郎の牡と戯れる。いじればいじるほど熱を上げ硬くなり怒張するそれにじゃれる政宗は、蜜嚢すらも丹念に唇で愛撫した。
「は、ぁ、政宗様。私も、政宗様に触れたいのですが」
「んっ、うるせぇよ。おとなしく、俺に気持ちよくさせられてろ」
 しゃぶる政宗の呼気の熱に、小十郎は軽いめまいを覚えた。じわりと先走りが滲んだ牡先を、政宗が吸う。そのまま口内に飲み込み、頭を上下させながら、腰の疼きに内腿を擦り合せ腰を揺らす。しなやかにそらされた背の先にある小ぶりな尻の揺れに、小十郎は喉を鳴らした。
「政宗様」
 熱くかすれた小十郎の声に、快楽が滲んでいる。政宗の胸に喜びが湧き、それに突き上げられるように、口淫を激しくした。
「んじゅっ、んっ、はっ、んふっ、ぁむ」
「っ、政宗様」
 喉奥まで使った行為に、小十郎の欲が限界まで上り詰める。このままでは主の口内に放ってしまうと、政宗の肩を押して口を離させた。
「んぅうっ」
「くっ」
 抵抗した政宗が小十郎の牡をきつく吸い上げる。かろうじて政宗の口内ではじける事を免れた小十郎は、その刺激に堪えられず、主の顔に放ってしまうことになった。
「っ、も、申しわけございません」
「あ〜あ、勿体ねぇ」
 顔にかかった小十郎の欲を指でぬぐい、ぺろりと舐めた政宗が挑むように、からかうように小十郎を見上げる。
「こんな程度で、謝ってんじゃねぇよ」
 政宗の腕が小十郎の首に絡み、鼻先が重なった。
「もっとスゲェ事を、してんだろ? 小十郎」
 ちゅっと音をさせて政宗が、小十郎の唇を唇でつついた。
「俺しか見えねぇ、俺に溺れているオマエを見せろ。小十郎」
「言われずとも」
 同じ笑みを浮かべた唇を重ね、小十郎が政宗に覆いかぶさる。口付けを繰り返し与え合いながら、政宗は足を開き、小十郎はそこに手を伸ばした。
「ぁ、は、んぁ」
 やわやわと敏感な箇所を揉まれ、政宗が甘えた音を唇から洩らす。しっかりと首にしがみつかれている小十郎が、政宗の耳に唇を寄せた。
「私にも、政宗様をしゃぶらせていただきたい」
 低くささやかれた声に、ぶるりと政宗の腰が疼く。思わず開いた政宗の唇を、小十郎が親指でなでた。それを合図に、するりと政宗の腕が解ける。小十郎から視線を外した政宗の目じりが赤い。大胆なのか、そうではないのか。その折々で気まぐれに変化する政宗の様子に、小十郎の意識が縫いとめられる。
「政宗様」
「んっ」
 首に吸いつき、鎖骨を滑りわき腹に赤い痕を残して、小十郎は政宗の山を駆ける獣のように伸びやかな足を抱えた。内腿にいくつも所有と忠誠、慈愛の痕を残す小十郎の頬に、もどかしさを乗せた政宗の視線が触れる。すぐそばにある政宗の下肢はヘソに付くほど反りかえり、蜜を垂らしている。クスリと息を漏らした小十郎が、茂みをさぐり根元に指をかければ、安堵のような熱っぽい息を、政宗が漏らした。
「ぁ、は、小十郎」
「政宗様。そんな、催促をするような声で呼ばないでいただきたい。これでも、この小十郎は必死に堪えているのですから」
 余裕すら漂う小十郎の言葉に、忌々しそうに政宗が歯を見せて手を振り上げた。ぐしゃぐしゃと小十郎の髪を両手で掻きまぜる。
「どこが、堪えてんだよ――ぁ、んうっ」
 小十郎が政宗の牡を口内に招く。クビレを舌先でくすぐり、舌と上あご、頬裏で丹念に形と味を確かめる小十郎の愛撫に、政宗が胸をそらした。
「はんっ、ぁ、はぁう、んっ」
 政宗の腰が浮き、尻と布団の間に出来た隙間に小十郎が手を差しこみ、尻を掴んで牡を舐(ねぶ)る。
「ふっ、はぁ、あっ、こじゅ、ぁ、んぅうっ」
 身もだえる政宗が手の甲を口に当て、小十郎の頭を何かを訴えるように叩く。小十郎が目を上げれば、頬を朱に染めた政宗が目先で部屋の隅にある道具箱を示した。それの意図を察した小十郎が、政宗の下肢から顔を離す。
「まったく。はした無いことを」
「オマエは余裕が無ぇんだろう」
 微笑む小十郎に、政宗が牙を剥く。毛を逆立てた子ネコのようで、小十郎には何の威嚇にもなっていない。政宗の鼻先に唇を寄せ、小十郎が道具箱から大ハマグリの軟膏入れを手にして戻る。首まで赤くした政宗が顔を背け、自分の膝を抱えて小十郎に下肢を晒した。
「余裕がねぇんなら、そういうそぶりをしてみせろ」
「そうなれば、政宗様の準備が整わぬままに、貫き貪ってしまいますので」
「Ha! 嘘くせぇ」
 言い放った政宗に、小十郎が目を光らせる。その鋭さに、政宗の喉が鳴った。
「では。嘘ではないと証明して差し上げましょう」
「こじゅ、あっ」
 ぱくりと政宗の牡に食いついた小十郎が、指に軟膏を掬い政宗の尻を開いて秘孔に押し付ける。ひくりとわなないたそこに、容赦なく指を突きいれ軟膏を押し込むと、すぐさま指を抜き再び軟膏を掬って塗りこめた。
「ぁはっ、はんぁ、あっ、こじゅっ、はぁあ」
 目を白黒させて、荒波のように襲い来る快楽に、政宗が戸惑う。恐ろしい速度で絶頂に導かれ
「っは、ぁあぁああ」
 放てば、小十郎が蜜筒の奥にあるものまで、強く吸い上げ飲み下した。
「は、はぁ、あっ、んぁ、こじゅっ、ぁ、待っ、ぁあ」
 絶頂の余韻と気だるさを味わう間もなく、政宗は秘孔を小十郎の指に探られ牡を吸われ、髪を振り乱す。ぐちぐちと乱暴な指使いであやされる秘孔は、すぐに戸惑いの硬さを脱ぎ去り、小十郎の指に絡んで求めだす。放ったばかりの陰茎は、小十郎の口内で熱と硬さを取り戻して蜜をあふれさせた。
「ひっ、ひんっ、ひぁあうっ、こじゅぅ、あっ、はひっ、ひぁうう」
 息をつく間もないほど快楽を与え続けられ、政宗の目から涙が溢れる。小十郎の肩を掴む爪が食い込み、彼の皮膚を裂いた。
「ぁはあううっ、ぃああっ、こじゅっ、ぁ、はぁあああっ!」
 二度目の絶頂を向かえた政宗の蜜を飲みほし、小十郎が頭を上げる。胸を激しくあえがせる政宗の上にかぶさり、腰を掴んで引き寄せ、猛る自身をもって政宗を貫いた。
「ぁぎっ、はぁおぉおお」
 体内の何もかもを押し出されるような圧迫に、政宗が首をそらして吼える。その衝撃の抜け切らぬうちに、小十郎が政宗を突き上げ内壁をえぐった。
「ぁひっ、ひっ、ひぁあうっ、ぁはおっ、は、はひゅっ、はんあぁあ」
 酸欠にあえぐように、政宗が泣きながら嬌声を上げる。のたうつ腰を逃さぬように抱えた小十郎は、苦しげに眉根を寄せて獣のような息を吐き、体を揺らした。
「はぁ、政宗様」
「ぁはぁううっ、こじゅ、ぅろっ、ぁ、はぁあっ、んぁあ」
 本能のままに自分を求める小十郎の、淫蕩に苦しむ顔に政宗の野欲が揺さぶられる。魂ごと熱に穿たれ、政宗は小十郎の頭を掴んで首を伸ばし、唇を求めた。
「んふっ、んんっ、んはっ、ぁ、こじゅっ、ぁ、もっと、はぁ、ぜんぶ寄越せっ!」
「言われずとも……ッ!」
 小十郎の腰が震え、政宗の体内で熱がはじける。
「っは、ぁはぁあああっ」
 爛れそうなほど熱い奔流に、政宗も欲を放った。強く抱きあい、残滓もすべて吐き出し終えて、ふたりは長く熱い息を吐き出し、瞳を重ねて微笑みあう。唇を寄せ、軽く重ねて政宗が小十郎の首に甘えた。
「ったく。とんでもねぇな」
 うれしげな呟きに、汗に濡れた額に唇を寄せて小十郎が答えた。
「政宗様が、余裕の無い私を御所望になられましたので」
「俺のせいかよ」
 恨めしげに、首に甘えたまま目だけを上げる政宗の右目に、小十郎の唇が触れる。
「この小十郎。後にも先にも、これほどに余裕無く求めるは、政宗様のみと覚え置きください」
「俺は、頭が悪ぃからな。忘れちまうかもしんねぇぜ」
 ニヤリと政宗が唇を歪ませ、小十郎のアゴに吸いついた。
「それならば、何度でも、その身に味わっていただきましょう」
「Oh  Terrible」
 くすくすと楽しげに、政宗が小十郎に絡みつく。小十郎の大きな手のひらが、汗をかき艶やかに光る政宗の黒髪を撫でた。
「小十郎」
「は」
「もっかい」
 政宗が唇で、小十郎の下唇を軽く噛んで甘える。
「今度は、ゆっくり」
 月光にいたずらっぽく光った左目に
「仰せのままに」
 少しおどけて、小十郎が唇を寄せた。

2013/12/18



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