新年の挨拶に来た者等との謁見を終えた伊達政宗は、私室で脇息にもたれかかり、ひと息ついていた。そこに、腹心の片倉小十郎が、折り目正しい姿勢で挨拶に現れる。「政宗様」「Ah」 それだけで、すべてが相手に伝わった。小十郎は膝で室内ににじり入ると、寸分の隙間もなく襖を閉めて、政宗の傍に寄った。「勝家は」「柴田なら、訪れたものの中に、古い話をよく知るものがいたらしく、妖の話を聞いてくると出て行きました」「Ha!」 ゆかいそうに、政宗は声を上げた。「ずいぶんと、ここ奥州になれたようです」「ほかの連中も、勝家になれたみてぇだな」「そのようで」 ふたりの視線が交錯する。そこに浮かんだものを汲み取り、小十郎は胡坐をかいた。政宗がその中へ腰を落とす。小十郎のがっしりとした肩に頭をあずけた政宗は、体中の緊張を抜くように、細く長い息を吐きつつ目を閉じた。漆黒のやわらかな髪が、透き通るほどに白い肌に寄り添っている。小十郎の喉には、固い鉄が触れていた。政宗の右目をおおう眼帯の結び目に、小十郎の指が伸びる。察した政宗が、甘えるように顔を上げた。 吸い込まれるように、小十郎はうつむいて政宗の唇を、自分のそれで軽く押す。そうしながら紐を解き、唇をついばみながら眼帯を床に置いた。幼い頃、政宗が得た病のせいで爛れた右目に残る、古い傷痕は小十郎がつけたものだ。膿んで腫れた部分を、小十郎が切り取った。それから、そこに触れるどころか、傷痕を目にできるものは、小十郎ひとりとなった。「んっ、は……小十郎」 政宗が薄く艶やかな唇を開く。小十郎は誘われるままに、舌を滑りこませた。「ふっ、んぅ、う」 政宗の腕が小十郎の首に回る。小十郎は帰ってくる政宗の淫舌に応えつつ、胸元に手を差し入れた。「んっ、ぅ……んんっ」 政宗の腕に力がこもり、より深い口づけを求められる。小十郎は薄いが、しっかりとした筋肉に覆われている政宗の胸乳をまさぐりつつ、上体をかたむけて、政宗の背を床に当てた。「はっ、小十郎」 小十郎の冷たい指に、胸の尖りを探られて、政宗が小さく息を飲む。「政宗様」 求めるように名を呼ばれ、政宗はニヤリとした。「Well, let it go! どうせすぐに、熱くなる」 小十郎は政宗の喉笛に喰らいついた。喉仏を強く吸われた政宗は、低くうめいて小十郎の頭を抱きしめる。「う……は、ぁあ」 むきだしになった政宗の肩を、小十郎の唇が撫でる。政宗は小十郎の襟元に手を差し込んで、自分よりも分厚い胸筋をまさぐった。「ぁ、あ……小十郎」「政宗様」 身を起こした小十郎が帯を解き、着物を脱ぎ捨てる。下帯姿となって圧し掛かってきた小十郎を、政宗は艶やかな笑みを浮かべて抱きとめた。「あ、は……小十郎、あ、あ」 政宗の白い肌に、梅の花弁のようなうっ血が散らされる。政宗は身をくねらせてそれを喜び、もどかしげに自らの帯に手をかけた。「政宗様。あちらへ、移動しましょう」 わずかに上がった息で、小十郎が提案する。「No,小十郎……そんな余裕なんざ、持ち合わせてねぇんでな」 政宗はいたずらっぽく左目を輝かせて、唇を舐めた。小十郎が喉奥でうめく。「しかし、お背中が」「……OK. 気になって、思いきり突けねぇってんなら、仕方ねぇ」 政宗は上体を起こして、小十郎の頬にある傷痕に唇を押し当てた。「最高の菊初めにしてくれるんだろうな?」「全力を持って、挑ませていただきましょう」「That'll do」 唇を重ね、小十郎は政宗を抱き上げた。寝所へ移動した政宗は、小十郎の下帯を引く。「いらねぇだろう? こんなモン。さっさと脱いじまえよ」「――は」 言われるままに従った小十郎の腰のモノに、政宗は口笛を吹いた。「ずいぶんとゴキゲンじゃねぇか」「政宗様に挑まんとしているこの身が、滾らぬはずはございません」 凄艶とほほえんだ政宗は、小十郎のそこに手を伸ばした。「火傷しそうに、熱いな」「政宗様のお姿も、お見せいただきたく」「Of course, you may.好きなだけ見ろよ」 言いながら、政宗は自らすべてを脱ぎ捨てた。白い肌にくろぐろとした茂みが現れ、その中心に猛る竜がそびえている。「待ちきれねぇんだ。……なあ、小十郎」 足を開いた政宗は、自分の内腿を撫で上げて小十郎の視線を誘導する。ゴクリと喉を動かした小十郎は、政宗の足の間に身を沈め、天を向く竜を口に含んだ。「あ、あ……は、ああ」 すっぽりと過敏な場所を咥えられた政宗は、仰け反りながら、小十郎のきっちりと後ろに撫でつけられた髪を乱した。小十郎は髪に絡む政宗の指の動きと口内の熱と硬さで、相手の悦楽の度合いを計る。「あぅ、ん、小十郎、ああ」 政宗は小十郎の耳を引っ張り、次に自分の求めていることを示した。しかし小十郎は唇を離さない。ますます激しく、政宗の竜をねぶり高めていく。「はぅっ、あ、こじゅ、うう……んっ、ぁ、あ」 政宗は身を丸めて、小十郎の耳をさらに強く引いた。それでも小十郎は無心に政宗をしゃぶり続けている。「ああ、小十郎っ、イッちまう、から……あ、ああ、く、ぅうっ」 歯を食いしばり、なんとか射精を踏みとどまろうとする政宗を、小十郎はあっさりと陥落させた。小十郎の口内に、政宗の子種があふれる。筒内にあるものも全て吸い上げ、飲み干した小十郎は、やっと顔を上げた。文句をつけてやろうと、にらみつけた政宗は、炯々と輝いている小十郎の瞳に息を飲む。「しばし、お待ちください」 乱れた髪を掻きあげながら、小十郎は政宗から離れた。政宗は小十郎の気色に呑まれ、返事もできずに彼を見送る。「政宗様」 交合に必要な丁子油を手にし、戻った小十郎は、呆然としている政宗の口を吸った。それで呪縛が解けた政宗は、小十郎の唇を求めて彼の首に腕を絡めた。「ふ、んは、ぁ、あ」 小十郎の瞳が政宗の意識を愛撫し、淫蕩に揺れる政宗の目が、小十郎の情欲を高める。「は、小十郎……ああ、早く」「ええ」 甘えるように懇願する政宗の望みを汲み取り、小十郎は彼の菊座に丁子油を丁寧に塗りこめた。「ぁう、ふ……あ、ああ、あ」 政宗はなるべく口を大きく開き、背を伸ばして膝を折り曲げ、腰を浮かした。小十郎の指が菊座の奥へと突き進む。「はふっ、小十郎、ああ、もっと、早く」「まだ、足りません」「んっ、いいから、早く……指じゃ、足りねぇ……っ」「なりません」「はぁ、あ、うう」 求める政宗に劣情を煽られつつ、小十郎は冷静に菊座の奥の肉を淫らに広げた。「小十郎、なあ、あっ、もう……早く、なあ」 目じりに涙を浮かべ、政宗が呼び続ける。小十郎は息を詰めて、いきり立つ自分自身をなだめながら、政宗の肉体の準備を整えた。「小十郎っ!」「そんなに煽られては、困ります」 小十郎は菊座から指を抜き、政宗に圧し掛かった。小十郎の欲熱が、政宗の菊座に当たる。「煽ってんのは、どっちだよ」 政宗は安堵したように頬をゆるめて、小十郎にすがった。「早く、寄越せ」「今すぐに」 口吸いとともに、小十郎は政宗に身を埋めた。「んっ、う、うう……んはっ、あ、あはぁ」 開かれる喜びと息苦しさに、政宗が仰け反る。浮いた腰を支えるべく、腕を差し入れた小十郎は、息を詰めて慎重に根元まで差し込んだ。「は、ぁ……あ、小十郎」「政宗様」 情艶に濡れた瞳で見つめ合う。「やっと、俺の鞘に納まったな」「この小十郎は、御身の一部でありますから」 小十郎が、独眼竜と呼ばれる政宗の、失われた右目――竜の右目と称されていることを、交合に引っ掛けてたわむれたふたりは、魂すらもひとつにせんと勇躍し、あらゆる動きで相手を求め、高め昇って互いに誓う。 その身は己のものであり、己は御身のものである、と――。 2016/01/01