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いまのうち

 私室の前で立ち止まり、片倉小十郎はやれやれと息を吐いた。
 室内に人の気配がある。誰何をする必要もない。整った眉をひそめて、小十郎は襖を滑らせながら声をかけた。
「政宗様」
 はたして小十郎が想像したとおり、室内にいたのは奥州の領主、伊達政宗だった。窓の障子を開けて、しらしらと注ぐ月光の中であぐらをかいている。
「よう、小十郎。遅かったじゃねぇか」
 政宗はニヤリとして、隻眼を細めた。
「御用がおありであれば、小十郎がうかがいに参ります」
 襖を後ろ手で閉めつつ言うと、政宗は西洋人のように軽く肩をすくめた。興ざめをした。あるいは、わかっていないな、というところだろうか。
 小十郎は膝をつき、政宗の傍ににじりよった。
「いかがなさいました」
「It is a tactless guy」
 吐息交じりにつむがれた言葉の意味はわからないが、しぐさや声のニュアンスでだいたいは察することができる。おそらく、無粋だの不愛想だの、堅物だのという程度のものだろう。
 そう考えた小十郎は、月光に浮かぶ端麗な政宗の左目の輝きを見つめた。
「これから、忙しくなるな」
「は」
小十郎は頭を下げた。昼間、田植えをしている姿を政宗は馬上からながめていた。小十郎は民とともに、田の中からその姿を見た。各所の田畑を見回った政宗に、なにか思うところでもあったかと、小十郎はめまぐるしく田畑の様子や民の声を脳裏でさらえた。
「小十郎」
 政宗の指が小十郎の左頬にある傷跡に触れる。小十郎は顔を上げた。
「なかなか、こうして忍んでもいられなくなるな」
 政宗が声をひそめる。小十郎は息を呑んで政宗の左目を見た。月明りに濡れたように光るそこに、艶やかなものが浮かんでいる。
 小十郎は思わず目を伏せた。
「what?」
「……いえ」
 小十郎は細く長く息を吐いた。
「そのような要件で、こちらに参られたのですか」
「小十郎にとっちゃあ、そのような、で片付くもんだったか」
 ひとりごちるように、やんわりと非難される。小十郎は答えあぐねた。
「野良仕事に精を出すと、俺の世話がおろそかになるだろう?」
「そのようなことは……」
「そっちの意味じゃねぇよ」
 わかっているだろう、と政宗の語尾にただよう無言の声に、小十郎はまた嘆息した。政宗の言う“世話”は、奥州筆頭の右目としての仕事ではなく、ただのひとりの人間として、ひそやかな関係を結ぶ相手としての“世話”を意味している。
「なあ、小十郎」
 うながされ、小十郎は肺の中の空気をすべて吐き出して、顔を上げた。
「抱かれるために、俺の部屋に来た……、ということでよろしいか」
「ほかに、なにがある」
 腰を浮かせた政宗が、誘うように小十郎の鼻先に息を吹きかける。小十郎は政宗の後頭部をわしづかみ、乱暴に唇を奪った。
「んっ、ふ……」
 政宗の腕が小十郎の首に絡む。そのまま床に押し倒し、口腔をむさぼりながら帯に手をかけた。
「ふっ、は……、小十郎、んっ、んぅ」
 政宗の手に小十郎の襟がくつろげられる。むきだしになった肩はたくましく、ひきしまっていた。
「んっ、はぁ」
 小十郎の唇から逃れた政宗の口が、小十郎の肩に触れる。小十郎も政宗の襟を広げて、しなやかな肌に唇を寄せた。
「は、ぁあ」
 小十郎の手が政宗の胸の色づきにかかった。そこを指の腹でつぶし、周囲をなぞれば、政宗の喉からにじむような嬌声が漏れる。小十郎は尖りを口に含み、舌で転がし歯を立てた。
「あっ、ああ……、小十郎」
 政宗の手が、発達した筋肉に包まれている小十郎の背をさまよう。小十郎は細く長い政宗の指を感じながら、彼の尖りと唇でたわむれた。
「ふっ、う、うう……、小十郎、ぁ、ん」
 政宗の脚が泳ぐ。小十郎の舌に触れる尖りは、甘く噛めば取れてしまいそうなほどに凝っていた。
「政宗様」
 低く呼ぶと、政宗が淫靡に濡れた目に小十郎を映した。白い肌が上気している。
「は、ぁ……」
 頭を起こした政宗の望むままに、唇を重ねた小十郎は政宗の膝を割り、下帯の上から下肢を握った。
「んっ、ふぁ、あ」
「もう、こんなに硬くなされて」
「あ……、お前はどうなんだよ、小十郎」
「愚問ですな」
 政宗の頬が持ち上がる。
「なら、さっさと俺を耕して種を撒け」
 返事の代わりに唇をついばんで、小十郎は政宗の下帯を解いた。凝った牡が現れる。それに指をかけて、顔を寄せれば、政宗の脚が肩に乗った。
「ふっ、ぁ……、あ」
 すこし湿っていた先端に舌を乗せる。鈴口を舌先でくすぐりながら根元をさぐれば、政宗がうっとりと息を漏らした。
「は、ぁあ」
 ねだるように政宗の指が髪に絡む。うながされるまま、小十郎は口内に政宗の牡を飲み込んだ。
「ぁはっ、は……っ、こ、じゅうろ」
 頬をすぼめてきつく吸えば、政宗の腰が浮く。舌で転がし歯を立てれば、政宗の身がくねった。のたうつ政宗を楽しむように、小十郎は政宗の牡を口腔でもてあそぶ。
「ふぁ、あっ、あぁ」
 うわずった政宗の声に、小十郎の下肢が熱く凝った。下帯がきつくなり、小十郎は政宗の牡を食みながら己の猛りを取り出し、しごいた。
「ふっ、ぁう……、小十郎」
 政宗が、かかとで小十郎の背をたたく。
「なぁ、お前の……、俺にも食わせろよ」
 小十郎は政宗を咥えたまま目を上げた。
「なぁ、いいだろう?」
 唇をなめた政宗に、小十郎の背骨が震える。思わず熱い息をこぼした小十郎は、身を起こした。小十郎の猛りを見た政宗が口笛を吹く。
「旨そうに育ってんじゃねぇか」
 淫らにかすれた声で言いつつ、政宗が身を起こして手を伸ばした。小十郎の牡を握ろうとする手首をつかんで止めると、政宗が目をすがめる。
「なんだよ。自分はさんざん咥えておいて、俺にはさせねぇつもりじゃないだろうな」
「いえ」
「なら、なんだ」
「それよりも、政宗様の奥に入りたく」
 小十郎が目を伏せると、政宗がきょとんとした。
「なりませんか?」
「Ha!」
 政宗が声を放つ。
「OK。いいぜ、小十郎」
 言いながら、政宗が小さな竹筒を取り出し小十郎に差し出した。
「たっぷりと、味わわせてくれよ?」
「政宗様がいやというほど、この小十郎を注がせていただく所存」
 剣呑な笑みを交し合う。政宗はごろりと横になって、膝を立てた。
「遠慮はなしだ、小十郎」
「わかりました」
 竹筒を開けて、逆さにすると油が流れた。それを指に受けた小十郎は、政宗の尻の谷に触れて秘孔を探る。
「んっ、ぅ」
 政宗がちいさくうめく。それを聞きながら秘孔のすぼまりを指の腹で撫でた小十郎は、「失礼」とつぶやくやいなや、政宗を反転させた。
「おわっ」
 うつぶせになった政宗の牡を掴み、持ち上げる。
「ふっ、ぐぅ」
 強い刺激に、政宗の牡から液がこぼれて床に落ちた。尻を突き出す格好となった政宗の尻を、小十郎は片手で開くと細い竹筒を秘孔に差し込んだ。
「うあっ、あ……っ、ぅ」
 政宗の尻が小刻みに震える。小十郎は油をすべて政宗の内側に移すと、竹筒を投げ捨てて指を入れた。
「ぁ、は……、っう、小十郎」
「遠慮をするなと申されましたので、好きにさせていただきます」
「っ、ああ、あっ」
 油と空気の混じる音が響くほど、激しく指で秘孔を開く。快楽に浮く腰を逃すまいと、小十郎は政宗の腰をがっちりと掴んでいた。乱される政宗の牡の先から、蜜があふれて床を濡らす。腰をくねらせながら、政宗は自身を掴んでしごいた。
「はっ、はぁ、あ、あ、小十郎、ぁあ」
「こらえられませんか」
「んっ、そんな……、いじくっといて、あ、ああっ」
 内壁の弱点を指の腹でえぐると、政宗が高い声を上げた。それをしおに指を抜いた小十郎は、秘孔の口に己の牡先をあてがう。
「よろしいか」
「んっ、もう待てねぇ」
 さっさとしろと示されて、口の端を持ち上げた小十郎はひと息に突き上げた。
「あ、ひぁあああっ」
 政宗が仰け反る。奥まで貫いた小十郎は、政宗の腰を両手で抑えてえぐるように律動を刻んだ。
「はっ、はぁあ、あっ、こ、じゅぅう、はげし、ぁあ」
「ゆるめますか?」
「んっ、もっとぉ、ぁ、熱く……、お前を、よこせ」
 政宗が身をよじり、腕を伸ばす。小十郎は身をかがめて伸ばされた指先に唇を当て、勇躍した。
「んはぁあっ、あっ、ああっ、あ」
 肌のぶつかる音を、液体と空気の混ざる音が追いかける。小十郎は歯を食いしばり、からみつく内壁に引きずられぬように政宗を高めた。
「あぁあっ、あ、はぁあ、小十郎、ぁ、こじゅ、ぅうっ」
 政宗が腰を揺らして求めるままに、小十郎は内壁をえぐり、熱を穿った。
「はふっ、ぁ、ああっ、小十郎」
「ふっ、政宗様」
 小十郎の息も上がり、呼ぶ声が熱く乱れている。
「ぁふっ、ふ、んぅうっ、もぉ、あ、よこせっ」
 政宗の叫びに呼応した内壁に牡を絞られ、小十郎はうめいた。
「ぐっ、う」
 小十郎の体の芯を快楽が貫く。腰にうずまいていた欲を放った小十郎にうながされ、政宗も絶頂を迎えた。
「ぁはぁああっ」
 小刻みな余韻を味わい、すべてを放ち終えたふたりは陶然と目を細め、腕を絡めて唇を求める。
「は、小十郎」
「政宗様」
 低いささやきで熱の名残を惜しみつつ、小十郎は政宗から己を抜いた。政宗が小十郎の首に腕を回して、身をすり寄せる。
「very best quality」
 一音ずつ、熱っぽい息交じりの声で耳奥に注がれる。どういう意味かと小十郎が目顔で問うと、政宗はいたずらっぽく目を光らせて唇を求めた。
「もっと食わせろよ。――収穫の時期までは、しばらく堪能できなくなっちまうからな」
 閑農期でなければ、小十郎を朝まで引き止められない。それを理解している主の求めを、拒めるはずもない。
「ぞんぶんに、こちらも味わわせていただきます」
 耳朶を食むと、政宗が満足そうな笑い声を立てた。

2016/05/15



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