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久方ぶりに槍の手入れを

 ふらりと腹心の片倉小十郎をたずねた伊達政宗は、不在と聞いて鼻を鳴らした。
「こんな雪の日に、野良道具の手入れとはな」
 趣味の域を超えて野良仕事に精を出す奥州の軍師であり、勇猛な武将でもある小十郎の出かけた先を聞いた政宗は、美麗な顔に複雑な笑みを浮かべた。
 雪にまみれた冬の期間は、ヒマとは言わないがほかの季節よりもすることがすくない。時間を持て余した政宗は、話し相手を求めて来たのだが、とんだ無駄足になってしまった。
 戻ったとしても、することもなし。しばらくすれば帰ってくるだろうと予測し、小十郎の私室で彼の戻りを待つことにした。
 部屋に火鉢が運ばれて、茶の用意がされる。それらを整えたものをねぎらい、政宗はゴロリと横になった。黒く艶やかな髪が重力に従って流れる。人の気配のなかった部屋が、炭の火にジンワリとあたためられて、政宗の肌がぬくもりにゆるんだ。意識もトロトロまどろんで、いつのまにか寝入ってしまった。
 ふと目を開けた政宗の視界に、膝が映る。まばたきをして起き上がった政宗の体から、綿入れが滑り落ちた。
「お目覚めですか、政宗様」
 柔和な笑みを浮かべて、小十郎が火鉢であたためられた鉄瓶を持ち上げ、湯呑に注いだ。白湯を差し出された政宗は、それを受け取り慎重に唇をつける。じっくりと炭火であたためられた白湯に目を細め、政宗は眼帯をしていない左目で小十郎を見た。
「なにか、茶請けでも運ばせましょうか」
「いや、いい」
 湯呑を置いた政宗は、小十郎の左頬にある古い傷跡に指を伸ばした。そっと撫でながら膝を寄せて、生真面目な男らしい顔つきをのぞく。
「いかがなさいました」
「農具の手入れをしていたらしいな」
 政宗の美麗な唇が笑みの形に歪んだ。皮肉のこもった声音に、小十郎はいつもどおりの声を返す。
「あれも鉄で出来ておりますので。刀とおなじで、手入れをしてやらなければ錆びてしまいます」
「fum」
 鼻先で笑った政宗は、小十郎の着物の合わせ目に手を入れた。農具の手入れに使った丁子油の竹筒を取り出して、唇を押しつける。挑発的な上目遣いで顔を寄せた政宗は、互いの唇の間に油の筒を置いて言った。
「まだ、油はたっぷり残っているみたいだな」
「政宗様」
 小十郎の声がかすれる。彼の目の奥に劣情の熾火が灯るのを確認し、政宗は艶めいた息をかけた。
「この短槍の手入れも、しておかなきゃあ、錆びついちまうんじゃねぇか」
 クスクスと息を震わせ、政宗は小十郎の股間に手を伸ばした。布越しに、まだやわらかなままの下肢を撫でると小十郎が喉奥でうめく。
「この槍をたっぷり扱いて、専用の鞘に納めてやるよ」
 小十郎の唇を舐めながら、政宗は小十郎の帯を解いた。
「政宗様」
「I do not intend to stop it……それとも、おまえが手入れをしてくれるのか?」
 たくましい小十郎の肩に頭を乗せた政宗は、首を伸ばして蠱惑的な呼気を彼の耳に注いだ。
「なあ、小十郎」
 名を呼んだ政宗の背が床につく。押し倒され、唇に噛みつかれた政宗は愉悦に体を震わせながら、小十郎の頭を抱いた。
「んっ、ふ……はむっ、ぅ、んぅうっ」
 乱暴な口吸いに息を乱して、政宗は膝を立てて裾を開いた。獣のような接吻に息苦しくなりながら、興奮に胸をとどろかせる。
 小十郎の手に帯を解かれ、白い肌を手のひらでくすぐられて、政宗は身をよじった。
「ふっ、ん……はぁ、んっ、んむっ、んううっ」
 舌を吸われて、政宗の腰が跳ねた。甘い刺激が下肢に走って、股座に血を集める。小十郎の唇は政宗の口から離れ、首を滑って胸に落ちた。
「はっ、ぁ……小十郎、あっ、ん……ぅ」ぅ」
 胸の尖りを口に含まれ、舌でたっぷりとねぶられて、政宗の下肢は隆々とそびえ立った。いつになく性急な小十郎の愛撫にとまどう肌が、それでも淫欲の熱に昂っていく。飢えた獣がむさぼるような小十郎の舌使いに、政宗は喜色を満面に広げて嬌声を上げた。
「ああっ、小十郎……っ、ん、はぁ……あっ、は、ぁあ」
「政宗様……このように、はしたなくされて」
 下帯の隙間から入った小十郎の指に魔羅を掴まれ、政宗は息を呑んだ。ゆるゆると扱かれて、心地よさに尻を揺らす。
「んぁっ、おまえが……っ、は、がっつくから……ああっ」
「それならば、ゆったりと手入れをさせていただきます」
「say what? おわっ」
 くるりとうつぶせにされた政宗の着物がまくられ、下帯が外される。小ぶりに引き締まった尻を左右に広げられたかと思うと、谷に冷たいものが流れた。
「ひぁっ」
「しばらくぶりですし、丁寧に手入れをせねばなりませんな」
 低められた小十郎の声音に、政宗は胴震いした。淫靡な悪寒が背骨を駆け抜け、妖艶な吐息に変わる。
「は、ぁ……小十郎……んっ、ぁ、あ」
 たっぷりと油を垂らされた尻の谷に、小十郎の指が這った。指の腹でそっと撫でられた政宗の肌が、ゾクゾクと粟立つ。
「んはっ、ぁ……ああ」
「すぼまりを、まずは小指でほぐしましょうか」
「ふはっ、ぁ……んぁ、あ」
 秘孔に小指の先を呑まされた政宗の喉仏が上下した。ゆるゆると、小十郎は小指の第二関節までを秘孔に入れたり出したりしながら、油を足してはほぐしていく。その手つきはさながら、細かな細工の隙間を掘っているように、緩慢で丁寧だった。
「はふぅ……あっ、は、ぁ、小十郎……んぁっ、は、ぁあ……あ」
 もどかしい刺激に、政宗の秘孔の口がヒクヒクとうごめいて、さらに奥へと小十郎を誘いはじめる。それでも小十郎は指をはやめることをせず、秘孔の口をあやしては油をたっぷりと含ませた。
「んっ、ぁ……小十郎、そんな……っ、ぁ、ぬるい行為じゃ……っ、は、ああ」
「手入れを望まれたのは、政宗様です。ひさしぶりに使うのですから、このくらい丁寧に扱っても、まだ足りぬかと」
「っ、の……っ」
 下唇を噛んで、政宗は小十郎の股間を蹴った。足裏に当たったものは、硬く凝っていた。ゾクリと興奮に心臓をわななかせた政宗は、唇を舐めて提案する。
「OK、小十郎……それなら、俺にも短槍の手入れをさせてくれ。使うのは久しぶりだろう?」
 不敵に笑った政宗の提案に、小十郎もおなじ笑みを浮かべて承諾した。
 仰向けになった小十郎の顔をまたいで、政宗は彼の股間に顔を寄せた。下帯を力強く押し上げている短槍に喉を鳴らして、包みを外す。
「準備万端じゃねぇか」
 口笛を吹かんばかりの口調で言って、政宗は根元を掴むと口を開き、口内に引き入れた。モゴモゴと短槍を口腔で包んで扱き、舌を絡めて脈打つ筋をからかうと、先端の切れ込みから欲の予兆がにじみ出る。それを吸いながら口淫をする政宗の蜜嚢が、小十郎の口に含まれた。
「んふっ、ん……ふむぅ……ふはっ、んっ、んぅうっ」
 尻をほぐされながら蜜嚢を吸われ、政宗は日向ぼっこをするネコのように目を細めて、小十郎の短槍に口で甘えた。たくましく熱いこれを収める鞘が、小十郎の指にほぐされ広げられる。はやくこれを突き入れられたいと、政宗は腰を揺らして小十郎の先走りを味わい、うっとりとしながら興奮に胸をあえがせた。
「は、ぁ……小十郎っ、ぁ、ああっ……もう、いい……っ、欲しい」
「手入れと呼ぶには、いささかはやすぎるかと」
「ガマンならねぇんだよ……おまえだって、こんなにしてんだ。異論はねぇだろう」
「うっ」
 政宗が短槍の根元を握ると、小十郎がうめいた。
「こんなにでっかくしやがって……相当、溜まっていたんじゃねぇのか?」
「それは、政宗様がよくご存じなのではありませんか」
「quite right」
 ニヤリとした政宗が身を起こし、体を反転させる。小十郎の顔から彼の下肢へと腰を移動させた政宗は、鍛え抜かれた胸筋に手のひらをついて白い歯をきらめかせた。
「錆びついていないかどうか、試させてもらうぜ」
「この小十郎の槍働きを、お疑いになられると?」
「どうだろうな……っふ」
 腰を落とした政宗の秘孔に、小十郎の槍の穂先が呑まれる。押し開かれた秘孔はよろこび、穂先のクビレにしがみついた。
「はっ、ぁ……ぅ、んんっ」
「政宗様こそ、鞘の滑りが悪いようですね」
「っ、ユルユルよりは、いいだろう」
 息を詰まらせた政宗の腰が掴まれ、引き下ろされた。
「ひぎっ、ぁ、はぁああっ!」
 一気に根元まで呑まされて、政宗は背をそらして天井に嬌声を放った。小十郎の腰が上下に動き、政宗を翻弄する。
「んはっ、ぁ……小十郎っ、あ、こじゅ……は、ぁあっ」
 ガクガクと首を揺らして、政宗はひさしぶりの突き上げから振り落とされまいと、腿に力を入れて小十郎の腰を挟んだ。尻に力が入り、媚肉が締まって短槍を圧迫する。眉根を寄せた小十郎の腰の動きがさらにはやまり、政宗は小十郎の胸に乗せた腕を突っ張って、暴れ馬めいた小十郎の揺さぶりを受け止めた。
「んはぁあっ、あっ、ああ……そこっ、ぁ、お……んぅうっ」
「このくらいで音を上げられるおつもりですか」
「っ、まだ……あっ、もっと……小十郎ぉ」
 足りないとうったえた政宗の視界が反転する。繋がったまま組み敷かれた政宗の足が高々と持ち上げられ、さらに深くなった小十郎の突きに見舞われた。
「ひぁあっ、あ……はっ、ぁあうっ、こじゅっ、んぁあ……はふっ、はぁ、あぅうっ」
「っ、政宗様」
 息を切らした犬のように、呼気を乱した小十郎の肌に汗がにじんでいる。全力で突き入れられる短槍と、必死になって求めてくる小十郎の顔つきに政宗はほほえんだ。
「ああ……小十郎、んっ、ぁあ、あっ、あ」
 政宗のたぎった短槍が揺れて、先端から淫らの予兆が振りまかれる。ふたりの腹に飛び散ったそれが、互いの汗と混ざって垂れた。
「ふぁあっ、あっ、くぅう……はふっ、ぁあうっ……こじゅっ、も……あっ、は、はやく……っ、よこせ」
「承知……っ」
 小十郎の律動がさらに激しく、大きくなって、ひときわ深く突き入れられたかと思うと、小十郎が短くうめき槍がはじけた。
「ひぁっ、は……はぁあああっ」
 熱い欲の奔流に奥を叩かれ、政宗も極まりを迎える。腰を突き上げ硬直し、放った政宗の短槍に小十郎の指が絡んだ。筒内のものを絞られた政宗が、ほうっと忘我の息を吐く。それを小十郎の唇が拾った。
「小十郎の槍は、錆びておりましたか?」
「NO」
 たのしげに、政宗は小十郎の首に腕をまわした。
「だが、まだ足りねぇ……そうだろう? 小十郎」
「ええ……ぞんぶんに、遺漏無きよう手入れを行き届かせましょう」
 久方ぶりの歓喜に湧いた、二匹の竜の咆哮が空気を震わせあたためる。

2018/01/09



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