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こじゅ茄子を食べたい

 土間で野菜を洗っている男がいる。身なりは農夫とおなじだが、体つきが妙にたくましかった。短袴から伸びている足はみっしりと引き締まり、袖から伸びる腕も力強い。野菜を手にしている指には剣ダコのようなものも見えた。左頬には古い刀傷があり、いかにも精悍な輪郭をしている。だが、彼の眼差しはいとし子を見守るがごとく、優しかった。
 彼の名前は片倉小十郎。ここ奥州の筆頭、伊達政宗の腹心であり軍師。荒くれ者の多い伊達軍隊を見事に取りまとめる彼は、まだ若くはあるが、だからこそ日ノ本中に名を知られた武将であった。
 伊達政宗の失われた右目とも呼ばれる小十郎はまた、野菜作りの名人としても名が高い。その彼が、摘みたての茄子を水で洗っていた。紫が深く漆黒となった茄子は艶光して、水をはじいている。ぷっくりと丸みのある太くて長い茄子は、自然のままに反り返っていた。それを小十郎は愛おしそうに洗いながら、どう料理しようかと考えている。
 足音に気づいた小十郎は、洗った茄子を笊に入れて振り向いた。廊下の暗がりから、窓から差し込む陽光の中に現れたのは、隻眼の美男子、小十郎の主である伊達政宗だった。懐手をしてぶらぶらとやってきた彼の、女性もうらやむ色の白くきめ細かな肌が、陽光を含んでかがやいている。目を細めて、小十郎は笑みを浮かべた。
「政宗様」
「土いじりは、終わったみたいだな」
「見事な茄子を収穫してまいりました。今宵の膳に上げますが、どのように調理いたしますか」
 興味を引かれた様子で、政宗が土間に下りる。近づいてきた主に、小十郎は笊を差し出した。立派な茄子がゴロリと積まれている。
 黒光りするそれをながめて、政宗はニヤリとした。
「Very wonderful」
 唇をゆがめた政宗の声に称賛を感じて、小十郎は目を細めた。
「いくつかは漬物にして、あとは煮物にでもいたしましょうか」
「そうだな。笊の中の茄子はそれとして、別の茄子を今すぐ食いたい」
「は?」
 いたずらっぽい主の表情に、小十郎はきょとんとした。茄子は笊の上にあるだけしかない。これとは別に、畑から収穫してこいというのだろうか。
「生で、いますぐ食わせろよ」
 笑いを含んだ政宗の声に、小十郎はますます困惑した。
「政宗様? 何を――っ」
 言い差して、小十郎は息を呑んだ。触れるか触れないかの繊細な動きで、政宗の指が股間に添えられている。
「お前の立派な茄子は、いつだって食べごろだろう?」
 喉の奥に笑いを含んだ政宗の左目が、ネコのように細く光った。淫靡な気配を醸す主に、小十郎の喉仏が上下する。
「ま、政宗様」
「野菜も、親に似るんだな」
 喉を鳴らした政宗のいわんとしているところを察し、小十郎は首筋を赤くした。すなわち収穫した茄子が、小十郎の短槍を連想させたというのだ。
「なぁ、小十郎」
 迫られて、小十郎は笊を抱えてたしなめようとした。しかし政宗の指がしっかりと男の弱点を掴んでしまったので、うめくしかできなかった。
「小十郎」
 甘く切なく名を呼ばれ、小十郎の胸と股間がドキリと跳ねた。手の中の反応を政宗が察しないはずもなく、主はますます妖艶に口の端を持ち上げる。チロリと顔をのぞかせた舌先で薄い唇を舐めた政宗の艶やかな気配に、小十郎は血をたぎらせた。
「政宗様……ですが」
「早く、これを食わせろよ」
「ここでは」
「thrillingだろう?」
 言うが早いか、政宗は身を沈めると小十郎の腰帯を解いてしまった。一瞬の遅れが命取りになる戦場で鍛えた反射力を発揮して、飛び退ろうとした足首を掴まれる。土間に草履が滑って尻もちをついた小十郎の手から、茄子が飛んだ。
 獲物を狙う猛禽の目をした政宗が、小十郎の下帯に躍りかかる。倒れた拍子に開いた膝の間に体を入れられ、腰のあたりに顔を伏せられた小十郎は観念した。何より、凛々しくも美しい、心底惚れている主に抗い切れるわけもない。
「承知いたしました。政宗様、ですが、せめて場所を部屋に移してください」
 顔を上げた政宗は、小十郎がうまく自分を丸め込むつもりでいるかどうかを計った。視線を絡ませ、互いの目に艶やかな劣情の炎が揺れているのを見つけて、政宗はおとなしく立ち上がると散らばった茄子を拾い集めた。小十郎も起き上がり、身支度を整えて茄子を笊に集めた。
「小十郎」
 顎先で行くぞと示され、小十郎はうなずいた。手拭いて汗をぬぐい、足の土を洗い落として政宗の後に続く。主の肌をいただくのなら、水浴びをしてさっぱりしたいところだが、燃えた主はその間も与えてくれそうにない。
 それどころか、小十郎は彼の部屋に引き入れられた途端に、唇に噛みつかれた。
「んっ、う……ふぅ」
 情熱的な接吻を抱きしめて、小十郎は政宗の口腔をむさぼった。どうやら主は激しく求められたいらしい。小十郎の太腿に押しつけられる政宗の股間は、すでに硬くなっていた。
「んぅ……う、ふ……んっ、んんっ」
 世にふたつとない宝を、念入りに磨いて高め、いつくしみたいところだが、当の宝はそれよりも、すこしでも早く手に入れたがっている。それならばと小十郎は、政宗の尻をわし掴んで引き寄せると、足の間に太ももを入れて、彼の股間を下から押し上げるように圧迫した。
「んっ、ふぅ……はっ、ぁ、小十郎」
 顎をそらした政宗の解放された唇から、高く切ない声がこぼれた。小十郎はそれを追いかけ、唇を舐めると首筋に舌を移動させて鎖骨に吸いついた。
「はっ、ぁ」
 満足気な政宗の吐息に、小十郎は身を沈めた。政宗の膝が折れて、折り重なるように床に座ると押し倒し、帯を解いて前をはだけた。白い肌が興奮のために桃色に染まっている。その中でもひときわ目立つ胸筋の上にちょこんと乗った濃い色に、小十郎は舌を伸ばした。尖ったそこは小十郎の舌をよろこび、小刻みに震えて刺激を求める。舌先を器用に動かしてもてあそべば、政宗の喉から甘えた音が漏れた。
「ん、ふぅ、ぁ、は……っ、くぅ」
 手のひらを移動させ、政宗の下帯を梳いた小十郎は元気にそびえる中心を握り、先端を手のひらに包んで揉んだ。先走りに濡れるを幸い、潤滑油代わりにして扱き上げると、政宗の尻が浮いた。
「ぁはっ、こ、小十郎……っ、んっ、YES……YESッ!」
 気持ちがいいという意味だと、小十郎は知っている。そのまま扱き続ければ、たっぷりと先走りをこぼして己の筒内を潤した政宗が極まった。
「んはっ、ぁ、ああ!」
 ドクリと放たれた精液を漏らさず手に受けて、彼の足を肩に乗せる。尻の谷に濡れた指を差し込んで探れば、ひそやかな花がヒクリと動いた。政宗自身の液ですぼまりを解しながら、指の第一関節までを沈めて抜き差しをする。
「は、ぁうっ、んっ、ぁあ、は、あっ、あ」
 もどかしく腰を揺らす政宗の陰茎が、ふたたび力を取り戻す。立ち上がっていく興奮を見守りながら、小十郎は主が食べたがっているものを差し上げる準備を続けた。
「んぅうっ、も、ぁ、小十郎」
「なりません」
「はっ、ぁあ、なら、もっと」
「承知」
 指を根元まで差し込んで、内壁を擦りあげる。膝を震わせる政宗の手に肩を捕まれ、小十郎は隘路をまさぐりながら、片手で自分の帯を解き、下帯を外して猛るものを取り出した。
 気配で察した政宗が、片頬を持ち上げる。呼応した小十郎も笑みを浮かべて、主の望むままに指を増やして肉筒を押し広げた。
「は、くぅうっ、あっ、あはっ、あ……んぁあっ、く、ぁうっ」
 すでに政宗の猛りは力を取り戻し、先走をトロトロとこぼすまでになっていた。それを指で掬いつつ、潤滑油として活用する小十郎の息は荒い。すっかり興奮しきっている小十郎の、劣情に彩られた表情に政宗が高ぶりを極めた。
「もう……ッ、Give it early!!」
 主の叫びを受けて、小十郎は大きく彼の膝を持ち上げると、ひと息にヒクつく箇所へ己を沈めた。
「がっ、ぁう……っ、ふ、くぅう」
 唐突な圧迫にうめく政宗の、反り返った喉に唇を寄せる。細かく痙攣する政宗の四肢が落ち着くのを待ってから、小十郎は体を揺らした。
「んはっ、はんっ、ぁ、小十郎、こ、じゅぅ」
 恍惚に瞳を濡らした政宗に、小十郎は存分に茄子と称された熱い反り身を食わせ続けた。みずみずしく張り詰めた先端から、雄臭い汁がこぼれ出る。蠕動する肉壁がそれを啜って、なお求めるままに小十郎は与え続けた。
 うまそうにしゃぶる肉筒に、もっともっとと煽られるまま、小十郎は肌に汗をにじませて主の求めに励んだ。荒々しく呼気を乱す小十郎の首にすがって、政宗が歓喜の声を響かせる。唇を寄せて拾いながら、小十郎は思い切り腰を打ちつけ、最奥に到達したところで息を詰めて胴震いした。
「くっ、ぅ」
「っ、あぁああ!」
 吹き出した小十郎を受け止めて、政宗の背中がしなる。奔放に快楽をむさぼった主は、充足に唇をゆがめて余韻を楽しんでいる。恍惚とした表情に、小十郎はほほえんだ。互いに汗まみれになるほど励んだふたりは、上がった息が整うまで、繋がり抱き合ったまま床に転がっていた。
 やがて小十郎は身を起こし、ゆっくりと主の体内から抜け出した。小さくうめいた政宗の指が、小十郎の古傷を撫でる。唇を突き出されて、小十郎は軽く顔を重ねた。
「はぁ……最高にうまかった」
「それは、なによりです」
 ふっと流し目をくれた政宗は、まだ淫らな気配を宿している。ドキリとしながら、小十郎は体を離した。
「なんだ。もう終いにする気かよ」
「夕食の支度がございますので」
 挑みたい気持ちを抑えて、小十郎は涼やかな顔を作った。
「Fum……まあ、食後に残りを楽しむのも、悪くないか」
 身を起こした政宗の思惑を察して、小十郎は苦笑した。
「酒の肴になさるおつもりか」
「悪くないだろう?」
 胡坐をかいた政宗の指が、小十郎の鎖骨をなぞった。
「では、収穫した茄子は浅漬けにでもしておきましょう」
「汁気は俺が搾り取ったからな。すっかりしなびているじゃねぇか」
 顎で股間を指されて、小十郎はフフッと息を漏らした。
「すぐにまた、張りのあるものに育ちます」
「I swear it's true」
 キラリの目の端を光らせた政宗の唇をかすめ取って、小十郎は立ち上がった。
「汗をかいてしまいましたな。手拭いを濡らしてまいります」
「Ah……笊の茄子みたいに、丁寧に洗ってくれるか?」
 からかう声に、小十郎はおなじ調子で返事した。
「茄子よりも丹念に、磨いて差し上げましょう」

2018/08/15



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