「小十郎」 火鉢の炭の具合を確かめている腹心の名を呼んで、伊達政宗は右目を覆っている眼帯を外した。長い前髪で隠されているその下には、古い傷がある。その傷をつけた腹心、片倉小十郎は生真面目な顔で振り向いた。「いかがなさいましたか、政宗様」「部屋は、もう充分にあたたまっているだろう? いつまで火鉢の前にいるつもりだ」「立春を迎えたとはいえ、夜はまだまだ冷える日が続きます。寒暖の差が激しい時期こそ、お体をいたわることが肝要かと」「そんなことは、わかっている。俺が聞いているのは、朝までずっと、火の番をするつもりなのかってことだ」「それは」 言いよどんだ小十郎を手招いて、政宗は夜具に身を横たえた。静かに近づいてくる年上の腹心の、堅苦しい態度を崩したくて艶めいた流し目を向ける。「そんなに俺を冷やしたくないのなら、体であたためてくれればいいだろう?」 からかいを含んだ声音に、小十郎はわずかに眉をひそめただけで、うろたえることはなかった。「また、そのようなおたわむれを」 きっちりと後ろに撫でつけられた小十郎の髪が、なぜだか憎らしくなった政宗は身を起こし、手を伸ばした。「っ、政宗様」 グシャグシャと小十郎の髪を乱した政宗は、フンッと満足気に鼻を鳴らした。「腹心としての時間はおしまいだ。今からは、俺のsweetieとしてふるまってもらうぜ?」「す、すぃて?」 困惑顔の小十郎の首に腕を絡めて、政宗は端正な顔を近づけた。フッと小十郎の唇に息を吹きかけて、左目を艶やかにきらめかせる。ゴクリと小十郎の喉が鳴り、腕が政宗の腰に添えられた。「政宗様」 かすれた声を唇で受け止めた政宗は、小十郎の唇を舐めて誘った。小十郎の口が開いて舌がのぞく。それを口内に引き入れて、小十郎のたくましい体に、しなやかな筋肉に覆われた自分の体を寄り添わせて、政宗は口内への愛撫を求めた。「んっ、小十郎……ふ」 誘惑に眉根を寄せつつ、小十郎はねっとりとした舌技を政宗に与えた。淡い官能に政宗は猫のように目を細めて、もっともっとと態度でねだる。「んっ、う……ふ……ぅ、んんっ、は……小十郎」 みずから着物をはだけた政宗の背を、小十郎の指が滑った。刀だけではなく、鍬も鋤も手にする指の皮膚は硬く無骨だが、肌を滑る動きは優しい。「もっと……なぁ、小十郎」 ふだんの、奥州を滑る竜の顔ではなく、甘ったるい表情を浮かべる政宗の要求にあらがう術を小十郎は持っていない。ゆっくりと寝具の上に寝かされた政宗は、首筋に触れる小十郎の唇にクスクスと笑みをこぼした。「は、ぁ……んっ、小十郎、ぁ、あ」 背にあった指が脇腹をなぞって胸筋に触れる。尖りをつままれて、政宗は鋭い声を発した。「あっ、ぁ……は、ぁあ……んっ、う」 ゆるゆるとした愛撫に、政宗は意識を集中させた。壊れ物をあつかっているような丁寧な愛撫に、細胞のひとつひとつが細やかに震えて、奥に眠る性感を呼び覚まされる。「んぁ、は……ぁ、小十郎、ぁ、はぁ」 白い肌を桃色に紅潮させて、政宗は小十郎の帯に手をかけた。「邪魔だ」 短く言えば、小十郎は裸身になった。視線で下帯を示せば、それも外した。「Super !!」 ニヤリとして、政宗は歓声を上げた。隠されていた小十郎の欲が、申し分のないほど隆々とそびえている。口の端を舐めて身を起こした政宗は、それを掴もうと手を伸ばした。「いけません、政宗様」 手首を掴まれてとがめられ、唇を尖らせる。「なんだ。俺に急所を取られるのが不満か?」「いえ」「じゃあ、なんだ」「小十郎の欲は、政宗様の手ではなく、深い場所に収めさせていただきたい」 かすかに乱れた小十郎の声にひそむ獣欲に、政宗の心臓が大きく跳ねた。劣情を目の奥に燃やす小十郎に、政宗は熱っぽい息を吐く。「OK 小十郎……俺という名の鞘に、その危ねぇ槍を突き立てな」 挑発的な目をした政宗の体が、ふたたび横たわらされる。部屋の隅にある違い棚から軟膏を取った小十郎のために、政宗はうつむいて尻を持ち上げた。「ほら……小十郎」「はしたないことを、なされますな」「嫌いじゃないだろう?」 自分で尻を左右に割った政宗の脚の間に、小十郎が腰を下ろす。「では、失礼いたします」 物言いがおかしくて、クックッと喉を鳴らした政宗は、尻に触れた軟膏の冷たさに息を呑んだ。「政宗様」 ヒクリと震えた尻に、小十郎の案じ声がかかる。「んっ、ぁ……すぐに、熱くなるだろう?」「ええ……すぐに」「ひっ、ぁ」 節くれだった指が繊細な箇所に押し込まれる。軟膏をたっぷりと塗りたくられて、痛くはないが違和感が生まれた。しかし、それもすぐに消え去って、軟膏が体温に溶けると快感が生まれた。「は、ぁ……ああっ、あ、んっ、あ、はぁ……ふ、ぅう……小十郎、ぁ、あ」 淫靡な刺激に体がしびれて、尻を広げる指に力がこもる。政宗の視界には、あぐらをかいた小十郎の股間が映っていた。恐ろしいほどに怒張しているそれに呼応して、政宗の股間も疼いた。触れられてもいないのに、先走りがこぼれ出る。「なぁ、小十郎」 熱っぽく呼べば、小十郎の指が止まった。「もう、いいだろう? Can't take it」 腰を揺らして訴えた政宗の秘孔から、指が抜けた。代わりに硬くて熱いものが、尻の谷にあてがわれる。「は、ぁ……小十郎、なぁ、早く」「ええ……お求めのままに」「がっ、ぁぐ……ぉ、は、ぁああっ」 ひと息に突き入れられて、政宗は低くうめいた。圧迫に詰まりそうになる息を、小十郎の抽送から生まれる快感が嬌声に変える。「は、ぁあっ、あっ、あ……ぁう……く、はぁあ、あっ、小十郎、ぁ、ああっ」 ズッズッと繰り返される動きは、緩急をつけて政宗を追い立てる。角度を変えてえぐるように浅く突かれたかと思うと、最奥を目指してまっすぐに突き立てられて、縦横無尽に乱された。「かはぁっ、あっ、ひぅうっ、んぁ、あっ、あ……こじゅっ、ぁ、こ、じゅうろ……あっ、あっ、んぅうっ」 トロトロと内壁がとろけているのは、軟膏のせいだけではない。小十郎の先走りが内側をたっぷりと濡らしている。滑りのよくなった欲望はさらに勇躍して、政宗を絶頂へと追い立てた。「は、ぁあううっ!」 奥の扉を突き破られて、政宗は絶叫した。最奥に小十郎のしぶきが吹きかかるのを感じながら、精を漏らして痙攣する。「は、はぁ……あっ、あ、はぁ、あぅ、う」 喉を震わせる政宗の肌は、うっすらと汗ばんでいた。胸を喘がせて乱れた息を整えながら、充足の笑みに唇をゆがめる。「はぁ……Bully……っ、ふぅ」 気だるい息を抜いた政宗の内側から、小十郎は慣れた。キュッと閉まった入り口が名残を惜しみ、パクパクと空虚を訴える。「小十郎」「は」 起こせと指先で指示した政宗は、小十郎の膝に抱きかかえられた。たくましい首に腕を絡めて唇をねだり、軽く口を触れ合わせる。「はぁ……」「お疲れになられましたか」「疲れた? No……余韻を味わっているんだ。この程度で疲れるわけが、ないだろう?」 いたずらっぽく目を光らせた政宗は、小十郎の首に噛みついた。「っ、政宗様」「おまえだって、たっぷりと体力は有り余ってんだろう? まだまだ、戦も野良仕事もon breakだからな」 だからもっとと言外でねだりながら首筋に顔を擦りつけた政宗は、小十郎の陰茎に指を絡めた。「今度は、座って……な? 小十郎」 違う体位でもう一度と誘いながら、政宗は小十郎の腰をまたいだ。「寒い夜は、まだまだ続くんだ……ひと足早い春を、たっぷりと楽しもうぜ」 妖艶にほほえんだ政宗の甘い息が、小十郎の唇に注がれた。 2019/02/04