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もっかい

 唐突に来た者など、いくらでも待たせておけばよい。こちらは内政に外交にと忙しいのだから。
 というわけで、茶でもしようぜと気楽な様子で訪れた長曾我部元親を奥の部屋に通して放置し、毛利元就は自身の予定をまずはこなした。
 元就のそういうところを十分に承知をしている元親は文句も言わず、おとなしく待っている。何のために彼が来たのかを、元就配下の者らは知らないし、わからない。主の元就が「会う約束などしておらぬわ」と忌々しそうに眉間にしわを寄せて言うので、そうなのだろうと思う。彼が来ると、魚介類や珍しかな舶来の品が土産として皆に与えられる上に、元就の機嫌が心なしか良いような気がするので、彼らは突然の元親の訪問を、元就の眉間のしわに触れぬように、こっそりと気配を殺して喜んでいる。
 積みあがっている、各地に潜ませている者らからの報告の文の山をあらかた片付け、元就は息を吐き目の辺りを軽く揉んだ。
 城内の者らの気がそぞろになっている。彼らは元就に気を使いつつ、元親の来訪を喜んでいるらしい。
(我に気付かれておらぬとでも、思うておるのか)
 ふんと鼻を慣らして、元就は腰を上げた。元親を待たせて、どのくらい経っただろうか。
「粗野な鬼は、まだ帰ってはおらぬのか」
 部屋の外に控えていた者に問えば、はいと頭を下げる。
「よほど暇と見える。……まあ、あれも使い道がある。会うてやるとしよう」
 億劫そうにつぶやいて行く元就の気配が、なにやら少し楽しげであることに、部下は気付いていた。
「茶を、お持ちいたしましょうか」
「いらぬ。あのような者に、もてなしなぞ不要ぞ」
「元就様の、でございます。政務にお疲れではございませぬか」
 ちらりと部下に目を向けた元就は、唇を少し迷わせて「いらぬ」と言った。
 予想をしていた返事に、部下は深く頭を下げる。元就は、元親と共に過ごす間、誰も部屋に近寄らせない。なのでいつも城の者は、元親を奥の部屋に通すときに、たっぷりと茶を入れた茶瓶と湯飲みを二つ。高杯に山と積んだ茶菓を先に出しておく。それなのに「茶を」と問うのは、儀式のようなものだ。元就もそのあたりをわかりつつ、やりとりをしている。
 廊下を進み縁側を行く元就は、昼下がりの穏やかな空気に包まれた。心地よい風が吹き、日の光りがやわらかく周囲を照らしている。
 元就の足が止まった。縁側の先に人の姿がある。海の男でありながら抜けるように白い肌をした、鬼と称されるにふさわしい偉丈夫。
 音を立てぬよう足を滑らせた元就は彼の傍らに進み、膝を折った。心地よさそうに目を閉じ、昼寝をしている彼を眺める。たくましく盛り上がった胸筋が、ゆるやかに規則正しく上下していた。長い睫に縁取られた目は閉じられ、元就の姿を映さない。
「これほど無防備であるとは。寝首を掻かれても文句は言えぬな」
 元就は細い指で元親の白銀の髪を撫で、左目を覆う紫の眼帯に触れた。
 元就は、じっと元親を見下ろす。あるかなしかの風が二人の間を通り過ぎた。吸い込まれるように身をかがめた元就は、薄い唇を元親の眠りにゆるんだ唇に押し付けた。
 元親の呼気が元就の呼気と絡む。緩慢に唇で唇に甘えた元就が顔を離せば、うわごとのように元親がつぶやいた。
「もっかい」
 ぎし、と元就が動きを止める。元親のつぶやきが寝言なのか寝たふりをしての発言なのか、判別しようと整った顔を眺める。
 いつまでも元就が動かないので、元親は目を開けて微笑んだ。
「なんだよ。もっかい、してくんねぇのかよ」
「四国のタヌキにタヌキ寝入りを教わったか」
 へへっと笑った元親が、大きな手のひらで元就の頭を包み引き寄せ、首を伸ばす。唇が触れ、うれしげに元親が目を細め、元就は鼻を慣らして目をそらした。
「なんだよ。つれねぇな。ま、いつものことか」
 元就を抱き寄せながら、元親は起き上がった。元就はおとなしく元親の腕に包まれる。華奢で小柄な元就の体は、逞しい元親の腕の中に簡単におさまってしまう。細い元就の頤に指をかけ上向かせた元親が、再び唇を寄せた。
「もう、仕事は終わったのか」
「終わっていないと言えば、どうする」
「俺の相手をしに来たんだから、急ぎの用事は無ぇんだろ」
 部屋に入り障子をぴっちりと閉めた元親は、腰を下ろしつつ元就を膝に座らせた。
「同じ事を続けていれば、集中力が落ちる。まったく違うことを行い、思考の精度を保つも必要ぞ」
「ああ、そうかいそうかい。俺は、政務の気分転換ってことか。そんなら、頭を使うのとはまったく違う、体を使う事をしようじゃねぇか」
 元親がニヤリと歯を見せて、元就の帯に手をかけた。元就の形の良い眉がひそめられる。
「貴様は獣か」
「俺ァ、鬼だ」
「んっ」
 元就の唇を唇で塞ぎ、元親は器用に彼の着物を脱がしていく。 元親の舌が元就の唇を撫で、促された元就は唇を開いた。招かれた元親の舌が元就の前歯に挨拶をし、舌と出会う。
「ぁふ、ん、んは」
 元就の眉がしかめられる。元親の節くれだった硬い手のひらが、元就の薄くしなやかな胸を滑った。白く薄い肌に、元親の白くたくましい手のひらが吸いつく。指先にかかった色付きを指の腹で潰せば、元親の口内に元就の呻きが流れた。
「んふっ、ふ、んぅうっ」
 身じろぐ元就をしっかりと抱きとめ、口腔を貪りながら胸乳をさぐる。乱暴な舌と繊細な指に、元就の肌は薄桃に染まり熱を上げた。
「すげぇ、色っぽいな」
 濡れた元就の目に、元親の唇が触れる。元親の目も猥らに濡れていることに、元就は口の端を持ち上げた。
「我が欲しいか」
「ああ、欲しいね」
 元就の指が元親の髪に絡んだ。
「そうか」
 ふふと息を漏らした元就が、元親の首に甘く噛みついた。
「イテェ」
 痛くも無いのに、たわむれで元親が言う。歯形もつかぬほどの力で、元就は元親の首を噛み、顎に唇で甘えた。いたずらな唇を元親の唇が捉える。
「どうせなら、魔羅を咥えてくんねぇか?」
「下郎が」
 楽しげに元親を罵り、元就は分厚い彼の胸を押して体を離した。あぐらをかいている元親の足に顔を寄せ、帯を解き下帯を外す。ぶるんと勢いよく、鬼の欲角が飛び出した。
「あさましき鬼よ」
「鬼は自分に正直だって、相場が決まってんだろ」
「ふん」
 元就の形の良い唇が開き、元親の陰茎を包む。ぬるりと熱いものに刺激され、元親の腰が震えた。ちろりと見上げ、元就は元親の陰茎を食む。こちらの反応を確かめながらの元就に、元親は獰猛に口を横に開いた。
「すげぇ、そそる」
 小馬鹿にしたように元就が鼻を鳴らし、元親の陰茎をしゃぶる。薄い元就の頬がすぼまり、内側から元親の陰茎に押し上げられている。ゆがんだ彼の面に、元親の野欲が強まった。
「ふ、毛利」
 苦しげにゆがめられた元親の唇から、熱い息がこぼれて元就にふりかかる。それが元就の意識を淫欲に浸した。
「は、毛利、なぁ、出る」
 元親が元就の髪を撫でる。元就の口内にある熱は、苦味のある液をあふれさせ、絶頂が近いことを示していた。
「そのまま、我に屈せばよい。んふっ、は、ちゅ」
「っ」
 元就の舌が元親の陰茎のクビレをくすぐり鈴口を押し、上あごと挟んで幹を擦る。元親の鼻が心地よさにひくつき、それに元就は心中でほくそ笑んだ。
(そのまま、我の手の内で果てよ)
 元就の思うままに、元親は果てた。喉奥に吹き込まぬよう舌で抑え、慎重に受け止めた元就は勝ち誇った笑みを浮かべて身を起こす。とろけた顔で元就に吸い込まれるように顔を寄せた元親に、元就は飲み込まなかった元親の欲を移した。
「んっ、んんっ、うぇ」
 元就は舌で元親の欲液を押し込み、彼に嚥下させる。自分の欲を飲まされた元親は、口をゆがめて舌を出した。元就がふふんと鼻を鳴らす。
「テメェ、この野郎」
 楽しげに戯れながら元就を押し倒し、今度は元親が元就の陰茎を口内に包んだ。
「っは、ぁ、ふ」
 挑戦的な目で元就の反応を見ながら、元親は元就の牡を口内でもてあそび、大きな手のひらで蜜嚢を包んであやす。
「んっ、ぁあ、は」
 元就の足が泳ぎ、しなやかに伸びて元親の背を踏んだ。ゆらめく腰を追いかけ、元親は元就を追いたてる。
「は、ぁ、あふ、んっ、んぅう」
 吸われ擦られ、元就の肌に浮かぶ汗が淫靡な香りを放った。
「ぁ、は、はふっ、んぁあ」
 鼻にかかった元就の甘い声を堪能すべく、元親は彼の絶頂を巧みにかわす。追い詰められた元就は、かかとで元親の背を叩いた。
「は、はぁあ、ちょ、そかべっ、ぁ、あ」
 濡れた元就の瞳に、勝ち誇った元親の笑みが映る。雄々しい笑みに歪んだ元親の唇から自分の陰茎が覗いていることに、ぞくりと元就の心臓が震え、野欲がそれに呼応した。
「っは、ぁ、あぁあああ」
 元親の髪に縋り、元就が放つ。それを筒奥にあるものまで吸い上げた元親は、元就の欲を含んだまま身を離し、ちょいと軽く唇を重ねて手のひらに口内の欲を出した。元親の口からこぼれる自分の欲蜜に、ぶるりと元就が身を震わせる。
「そんなエロい顔すんなよ」
 うわずった元親の声に、元就は甘い息を返した。
「すげぇ、たまんねぇ」
 心底の気持ちを言葉にし、元親は元就の細い足を持ち上げる。手に受けた彼の欲蜜を双丘の谷に塗りつけ、つつましい菊花に指ごと押し込んだ。
「ひはっ、ぁ、あは、ぁあ、あ」
 唇を舐め、元親は元就の秘孔を探る。うねる媚肉とともに、元就の身も快楽に波打ち元親を受け入れる。
「ふ、は、ぁあ、うっ、はぁあ」
 元就の乱れた髪が汗ばむ肌に張り付き、快楽に翻弄される彼の指が床を掻いた。ゴクリと元親の喉が鳴る。
「我慢できねぇ」
 熱の塊に音を乗せ、元親は元就に覆いかぶさった。
「繋がりてぇ」
 熱っぽくささやく元親に、元就は満足そうな顔をして腕を伸ばした。
「許してやる。入るがよい」
「そりゃ、どうも」
 唇を重ね、元親は元就の足を抱えた。元就が元親の首にすがり、鼻先に唇を寄せる。それを合図に元親は腰を進めた。
「っは、ぁ、あ、あ、あ」
 元親の熱が元就を開く。キュウッとすぼまった元就の媚肉は、最初は拒むように、やがて誘うように、元親の牡にまとわりついた。
「は、毛利」
「んぁ、はっ、はんっ、は、ぁ、ちょ、そかべ、ぁ、はぁう」
 元就の声が震える。元親の腰に元就の足が絡み、求められるまま、自分の望むままに元親は腰を打ちつけた。
「んぁ、あっ、ちょおそかっ、ぁあ」
「毛利、もぉりっ」
 肌身を絡め、それ以上の繋がりを求めて、切なく詰まった声を重ねる。意識の全てが熱に呑まれ、五感の全てが相手に向かう。魂までもが支配され、融合した瞬間に意識が白く弾けた。
「っ、くぁ」
「――〜〜〜〜っ!」
 深く繋がりはじけた元親の熱に、溶けた元就は声なく叫ぶ。元親はのけぞる細い背をしっかりと抱きしめ、元就は全てを包むほどにたくましい身にしがみついた。
 余韻の震えも共有し、体中で味わい尽くしてから唇をついばみ、名残を惜しむ。
「ふぅ……。早く退くがよい、長曾我部よ。貴様の無駄に重量のある体躯は邪魔ぞ」
 そう言いながら、元就は元親の首から腕を解かない。
「アンタが細すぎんだろ? もうちょっと飯を食って、しっかり運動したほうがいいいんじゃねぇか」
 ニヤリと元親が犬歯を見せて、人懐こく目を細めた。
「な、毛利。もっかい」
 小首を傾げて求める鬼に、しぶしぶといった態で楽しげに、元就は唇を寄せた。

2014/05/28



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