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淫樹

 目を開ければ、そこは見知らぬ空間だった。
 しっとりとした湿気を含む場所は、ほのかな明るさに満ちている。ヒカリゴケか何かだろうと推測し、真田幸村は体を起こした。軽く頭を振り、周囲を見回す。雪解けも終えていない山を駆けているときに、足を取られた。しまったと思った時はすでに遅く、視界に映る天地は逆となり、幸村の体は中空に放り出されていた。
 ここは、どこなのだろうか。
 洞窟とは違う、と感じた。では何だと言われれば、困る。
 岩のようで岩ではない。
 両手を広げたよりも少し広い空間は、円形をしている。すん、と鼻を鳴らした幸村は、自分が樹木の中にいるのだと悟った。
「これほどの古木が……」
 立ちあがった幸村は、壁に手を添え耳を当てた。水を吸い上げる音がして、この木はまだ生きているのだと知った。
 気の遠くなるほどの年月をかけて育った樹木の洞に、自分は落ちてしまったらしい。足元がふかふかと柔らかいのは、湿った木肌の上にコケが生(む)しているからだろう。
「ん?」
 ふと自分の腹のあたりに突き出ている枝に気付き、幸村はしゃがんだ。木の内側に枝が生えるとは知らなかったと、それをよく見ようとした幸村は、とたんに顔を赤くした。
「んなっ、はっ、はれっ、破廉恥なっ」
 枝は、枝ではなかった。陰茎を模したものが幹に飾られていたのだ。蜜嚢にあたる部分には、かなり色あせてはいるが男女の交合の絵が、陰部を誇張して描かれている。どこかの誰かが、うんと昔に奉納をしたらしい。古木は時に、祈りの対象となる。
「こっ、このようなっ」
 慌てて飛びのいた幸村は、背を幹の壁に預けて胸を抑えた。ばくばくと、うるさいほどに動悸が激しくなっている。
『破廉恥とは、よう言うたものだな』
 突然、洞に声が響いた。驚いた幸村が目を見開き周囲を見回す。
「誰だ」
『何ゆえ、それが破廉恥と思うた』
 声は幸村の質問には答えず、問いを発した。
「何故も何も、破廉恥ではござらぬか。こっ、このような」
 秘画にちらりと目を向けて、幸村は真っ赤になった。
『おろかな。実りの行為を破廉恥とは』
「実りの行為?」
『どのような生き物であろうとも、交合なくば子を成さぬ。それは草木とて同じ事。これは生あるものの本能であり、本質である。それを破廉恥とは』
 声には、呆れと嘲りが含まれていた。
「それは、某とて承知しておりまする。なれど、なれど、その、なんというか……」
 真っ赤になって口ごもる幸村に、姿の見えぬ相手の視線が絡みつく。
『破廉恥と否定するか。なれば貴様に、その本能を教えてやろう』
「え……」
 降り注いだ言葉の意味を理解するより早く、四方から伸びてきた蔓が幸村の手足を捉え、持ち上げた。
「なっ、こ、これはっ」
『生き物の本能というものを、教え尽くしてやろう。丁度良い……春を迎えるに、貴様の炎気はおおいに役に立つ』
「何をっ、ぁ」
 蔓はぬるりと、蛇のような粘着質のある液体を纏っていた。それが幸村の着物の内側に滑りこみ、彼の肌に液を塗りつけるように絡む。
「くぅ」
 音に聞こえた武人である幸村は、槍を振るい戦場を駆ける強靭な己の四肢に力をこめる。ぐん、と膨らんだ筋肉に力がみなぎり、歯を食いしばって蔓を引きちぎろうとするが、びくともしない。
『愚かな事を』
「あっ」
 蔓が、まるで人の手のように器用に幸村の着物を剥いだ。手の先や足の先に布をひっかけた形にされた幸村の、下帯が地面に落ちる。見事に鍛え抜かれた彼の体が、しっとりと湿った空気にさらされた。
『よい体つきをしているな』
「ううっ、く……何をするっ!」
『何を――? 決まっておろう。ぞんぶんに、貴様の子種を絞り芳醇な春の供えとするのよ』
「何――あっ、何をっ、く」
 幸村の足に絡んでいた蔓が滑り、彼の蜜嚢を捉えた。擦りながら絞られて、幸村は奥歯を噛みしめる。
「んっ、く」
 蔓の纏う液に幸村の下生えが塗れ光り、堪える幸村の内腿がくすぐられ、尻が割られた。
「ぁ、何を」
『何を何をと、問わずともすぐに知れる』
「ひっ、ぃ」
 細い蔓が、幸村の秘孔に進んだ。そのような箇所を人に触れられた事のない幸村の、全身の産毛が逆立つ。ぬるぬると秘孔の奥に進んだ蔓は、はじけるように樹液を吹き出した。
「ふあっ、ぁ、何、ぁ、は、はぁ、あ」
 吹きつけられた樹液が、とろりと幸村の肉壁に浸みる。それを手助けするように、蔓が内壁を擦った。
「ぁ、は、ぁ、あつ、ぃ、ぁ、あ」
 樹液が浸みるのに合わせ、幸村の体が熱く甘く疼く。わななく幸村の肌を慰めるように、蔓が這った。
『破廉恥だ破廉恥だと言っておったが、貴様の魔羅も十分にそうではないか。本能の疼きに従い、隆起しておるぞ』
「んうぅっ」
 蜜嚢に絡んでいた蔓が伸び、幸村の陰茎に絡んだ。絞るように絡んで滑る蔓の先が、鈴口を確かめるように撫で、ずぶりと蜜筒に進入する。
「はひっ、はっ、ぁはっ、ぁ、そっ、ぁ、そのよ、ぁうふ」
 蜜嚢を、陰茎を絞られながら蜜筒をかき回され、幸村は目を白黒させながら腰を震わせた。蔓が上下に動くたびに、幸村の子種があふれ出る。
「はひぁ、あはぁ、おおっ、ふひっ」
『破廉恥なことと否定をしても、貴様も本能には逆らえまい。自分の子種の湧きあがるのを、感じるだろう』
「ぅひっ、ぁ、やめっ、ぁ、そんっ、ら、ぁ、とこぉ」
 体中に染み渡った樹液が、幸村の中に眠っていた快楽を引き出し、増幅し、わずかな刺激でさえも掬いあげるほど敏感にしていた。鍛え抜かれた幸村の筋肉の筋を、慈しむように蔓が這い回るたび、あわあわとはじける嬌乱な刺激が幸村を襲う。
「ぁはひっ、ひぁあおぉう」
 ぼろぼろと涙をこぼす幸村の理性は、淫樹の愛撫にあっけなく蹂躙された。
「も、ぉ、やめっ、ぁ、おやめくださっ、ぁはぁあ」
『やめる? この期におよんでも、そのような事を言うとは。もっと、思い知らせてやらねばならぬらしいな』
「ぁはっ、やめぁっ、やっ、あはぁおおっ」
 さらなる蔓が幸村に伸び、彼の秘孔にもぐりこんだ。先にあった蔓と後から来た蔓が、媚肉の中で絡み合い、縄のようになる。
「かはっ、ぁ、はぁおおっ、ふ、ふとぃいっ、ぁ」
 内壁を押し広げる蔓が、絡まりながら幸村を犯す。秘孔でかき回される樹液が泡立ちあふれ、幸村の陰茎から湧き出す子種と混じり、地面に滴り落ちた。
「あひぇあ、らめぁ、も、おやめくらされぇ、はんぁあっ」
『なかなか、強情な』
「ひはぁううっ」
 過ぎた快楽に身をよじる幸村を、求めるように育てようと蔓が這う。ぷっくりと硬く凝った胸乳の尖りに、蔓が絡んだ。
「んぁあっ」
 巻きついた蔓は尖りを絞り、乳腺をくすぐる。その刺激が下肢に走り、幸村の陰茎は痛いほどに怒張した。
「ひぃいっ、ぃ、ぁあ、魔羅ぁ、そ、某の魔羅ぁ、あ、い、痛いっ、ぁ、あ」
『破廉恥と言う貴様の魔羅も、本能に従うということを理解したか』
「んひっ、ぁ、もぉ、イカせっ、ぁ、イカせてくだされっ、ぁ、はぁおぉうっ」
 涙で濡れそぼった顔で哀願する幸村に、蔓は無慈悲に蜜筒を掻き混ぜ塞ぎ続ける。
「んぁあっ、らめでござっ、ぁ、こわれてしまっ、ぁ、某の魔羅ぁ、こ、こわれっ、ぁ、はひっ」
『ふむ。壊れてしまっては、困るな。では、望みを叶えてやろう』
 蜜筒から蔓が抜け、幸村の陰茎が扱かれ秘孔が掻きまわされた。
「ぁひっ、はんっ、ぁ、でるぅうっ、ぁ、でるっ、は、はぁあああああっ!」
 腰を突き出し、幸村は子種を激しく吹き上げた。それを踊るように蔓が受け止めれば、花が咲いた。
『ふうむ。思うより良い豊穣の種をしている。その働きがあらば、春を早く芽吹かせられるやもしれんな』
「んぁひっ、ひっ、ぁ、と、とまらぬぅうっ、ぁ、子種っ、ぁ、は、はぁあ」
 放つ幸村の秘孔を、蔓は犯し続けていた。途切れぬ射精の快楽に、幸村の脳は淫蕩で満たされる。恍惚の笑みを浮かべた幸村に、蔓が絡まり我も花を咲かせんと、彼の子種を求めた。
『我が子らは、貴様の種が気に入ったようだ。それら全てに花を芽吹かせるまで、豊穣の舞いを続けて貰うとしよう』
 そんな声も、乱される幸村の耳にはもはや、届かなかった。
「んひぁあっ、魔羅ぁあっ、おかひっ、ぁ、疼いてっ、ぁ、は、もっと、ぁ、扱いて、ぁ、くだされぇえ、んううっ、乳首ぃ、ぁ、きもちひっ、ひぃあううっ、あ、奥っ、ぁ、もっとぉ、ぁ、えぐって、ぁはっ、ふといっ、ぁ、ぬるぬるっ、ひっ、ぃいぃい」
 幸村の嬌声に、蔓は嬉々として挑み、次々に花を咲かせる。すべての蔓が花を咲かせるまで、幸村は蹂躙され続け、肌身にも意識にも本能の快楽を刻み教え込まされた。
「んはぁああっ、きもちぃ、ぁはぁああ、もっとぉ、ぁ、もっとぉおおっ」
 幸村の嬌声は古木の幹に吸い取られ、蔓の動きを励ました。

 甲斐の春は、例年になく爆発的な勢いをもって訪れた。その影に幸村の炎気の種が作用をしているなど、本人すらも知る由もなく、幸村は乱れた記憶を失い、屋敷に戻っていた。
 自分の奥底に激しく強い淫獣が息づいていることすらも、幸村はしばらくの間は忘れて過ごすこととなる。
 あの、苔むした甘い樹液の香りを嗅ぐまでの、しばらくの間は――。

2014/03/27



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