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言ってよ!

「佐助。佐助ぇ!」
 腹心の忍を大声で呼ばわる真田幸村は、普通の武将ならば訪れぬ草屋敷の戸を、当たり前のようにカラリと開いた。仕えるべき主が草屋敷に現れたというのに、そこにいた忍は誰一人驚くこともなく、平然としている。
 屋敷、という名をしているが、小屋を道場ほどの広さにしただけの造りなので、ざっと見渡せる。首を巡らせた幸村は、目当ての猿飛佐助を見つけられず、土間へ足を踏み入れた。
「幸村様。長なら、奥屋敷です」
「ぬぅ。奥か」
 奥、というのは色々な仕掛けのある屋敷であった。佐助のみの屋敷である。いざというときの砦として使えるようにとの名目で、普請してあった。
「わかった」
 くるりと背を向けた幸村に、あっと佐助の居場所を教えた忍が声をかける。ぴたりと足を止めた幸村に
「行かれるおつもりですか」
「用があるのでな」
 気まずそうな顔に笑みを向けて、幸村は奥屋敷へと向かった。
 特に、これといった任務があるわけではない。ここのところ顔を見せないのが気になっている、というのが幸村の用だった。何かの任にあたっているのならばまだしも、いるのであれば顔を出さないというのはおかしい。その理由を、幸村は野生的な勘の鋭さから察していた。
 佐助の闇の気配が、あちらこちらでひたひたと感じられるのだ。
 時折、佐助の闇はその濃さを増す。それを佐助は厭う。
 昔からそうだった。佐助がいないというのに、佐助の闇の気配を感じる。きょろきょろと探してみても、呼んでみても佐助が姿を現す事が無い。それが不思議で、幼い幸村は佐助を探してウロウロとした。そんな彼に大人は、佐助は任務に出ていると言った。佐助の気配があるのに任務に出ているとはどういうことだと不思議に思ったが、幼いなりに何かあるのだろうと、詳しく問うことをしなかった。
 そんなことが幾度かあり、大人になった幸村は「うそをつくな」と、佐助の気配を感じていることをごまかす相手に告げた。すると相手は、渋々ながら佐助がいる事を白状した。けれど決して探さないように、との言葉を添えて。
 誰もが自分を気遣っている。そのために佐助を隔離している。いや。おそらく佐助は自ら身を隠しているのだろう。それゆえの奥屋敷だと、幸村は思っている。さまざまな仕掛けを施し、その奥で闇を膨らませた佐助は、誰をもその闇で傷つけぬように、ひっそりと堪えているのだろうと。
 水臭いではないか、と幸村は思っていた。けれどそうする理由があるのだろうと、今までは我慢をしてきた。だが、自分はもう甲斐の若虎として一軍を任され、先陣を命じられる男となったのだ。佐助が心配をするようなことにはならないだろうと、幸村は自信をみなぎらせる。
 幸村は佐助に、幸村の炎で自分の闇が中和される、というようなことを言われたことがある。ならば佐助の増した闇を、この俺がおさめてみせようという気持ちもあった。
 奥屋敷に進むに連れて、闇が濃くなっていく。実質的ではない闇だ。気配、といったほうが近いだろう。昼日中の陽光が降り注いでいるというのに、ぞわりとした気配がまとわりつくような、宵闇よりもまだ深いもので奥屋敷は包まれている。確実に佐助がいる事を感じ、幸村は屋敷の戸を開いた。
「佐助! おるのだろう」
 ずかずかと上がりこんだ幸村は、闇に沈んだ奥屋敷を進む。廊下を進んでいると、ふいに足が沈んだ。
「ん?」
 そう声を発しながら不穏なものを感じ、幸村は飛んだ。カカカッと小気味良い音がして、幸村の立っていた場所にクナイが刺さる。それを見ても眉一つ動かさず、幸村はさらに進んだ。ふっと足先に何かを感じたと思えば、矢が降ってくる。何かの気配を感じたと思えば、床が消える。そんなものを特に驚く風もなく、全て軽々と超えた先に、佐助はいた。
「佐助っ!」
 それはまるで闇の繭に包まれているような姿だった。駆け寄った幸村が手を伸ばせば、闇繭の佐助が逃れる。その動きは水藻のようにゆらゆらとしており、実体があるようには思えなかった。
「佐助、逃げるな」
 幸村の呼びかけに応えず、闇繭は逃げる。ぐっと歯を食いしばった幸村は、自分の火の性を吹き上げた。
「おぉおおおおおっ!」
 それにあぶられ、室内が明るくなり闇が収縮する。収縮した事で濃さを増し、透けて見えていた佐助の姿を覆い尽くした闇繭が、壁に向かって逃げた。
「逃がさぬっ」
 床を踏み抜く勢いで駆けた幸村は、壁に張り付いた闇繭を追い詰めた。
「佐助!」
 呼びかけながら壁に力強く手を当てた瞬間、かぱ、と音がして壁が動く。
「なっ」
 回転式の壁で、佐助は逃げようとしていたのか。そう判断しながら、幸村は闇繭もろとも壁の裏側に吸い込まれ、体勢を崩して仰向けに倒れた。
「ぐっ」
 その上に、闇繭が落ちてくる。
「佐助」
 抱きとめた幸村の目に、眉根にしわを寄せた佐助の顔がうつった。
「佐助」
 迷惑げな佐助の顔に、幸村は不安を滲ませた。
「俺は――」
 佐助の顔が闇を吸い込んだように凄みを帯び、艶麗な笑みとなる。
「迂闊だねぇ、旦那。ここがどこだと思ってんの?」
 ごくりと生唾を飲み込んだ幸村の肌に、佐助の闇がさらりと触れた。
「俺様がなんで、ここにいるのかって理由は、わかってるよね」
 佐助の声にも闇を感じ、幸村の背骨が粘り気のある冷気になでられた。
「俺の炎で、おさめようと……」
 喉を詰まらせる幸村に、彼が驚愕するほどの凄みを帯びた笑みを佐助が浮かべれば、闇が幸村の四肢に絡んだ。
「へぇ。じゃあ、ぞんぶんに闇を慰めて、おさめてもらおうかな」
「っ、佐助」
 べろり、と佐助が幸村の唇を舐める。身を硬くした幸村にクスクスと息を漏らし、佐助は獲物をなぶるような顔をして、闇に幸村の衣を解かせた。無数の小さな手のように、闇が幸村の褐色の肌に絡みつく。
「佐助、何を」
「わからないわけ、ないだろう? 何度も俺様とシてるんだから」
 カッと幸村の顔に血が上る。それにまたクスクスと息を漏らした佐助が、幸村の口に指を入れて口腔をまさぐった。
「んっ、んふっ、んっ」
「ふふ。旦那、かわいい」
 ゆるやかに絡まった闇が、幸村の動きを封じている。観察するように、佐助は幸村の口腔を繊細な指の動きで翻弄した。
「ふっ、ふんぅうっ、ふぁ、んっ」
 舌を指で挟まれ、頬裏や上あごをくすぐられ、沸き出る唾液を飲むために佐助の指を吸う形になる。長くしなやかな佐助の指を意識する行為に、幸村の腰は疼き瞳がうるんだ。
「すっごいヤラシー顔してるよ、旦那。おくち、気持ちいいんだ」
「ふはっ、んっ、ふ、ふぅ」
 ひたひたと、幸村にまとわりつく闇が肌に沁みる。それが野欲と相俟って、幸村の意識をとろかせた。
「ふぅ、ふんっ、んっ、む」
「ふふっ」
 指を抜いた佐助は、開いた幸村の唇に自分の唇を重ね、舌を差し込んだ。濡れた指で幸村の胸乳の尖りをつまみ、こねる。
「んふっ、んぅううっ、ふっ、んぅう」
 なすすべなく佐助と闇に乱される幸村の肌は上気し、潤んだ瞳は困惑に揺れた。それを見つめながら、佐助は口腔を貪り、胸乳をとらえる。
「ふはっ、は、はぁ、さ、すけ」
「たったこれだけで、そんな顔になっちゃうなんて。ヤラシーなぁ、旦那は。ココも、こんなに尖らせちゃって」
「ぁ、あっ」
 きゅり、と尖りをつままれて、幸村の体が震える。佐助が起き上がれば、闇が幸村を抱きかかえて浮かせた。
「は、ぁ、佐助、何を」
「ここまで来ても、わかんないとか言わないでよね。さっき、言っただろ?」
 佐助が手を伸ばし、幸村のひと房だけ長い後ろ髪を掴んで、唇を寄せた。
「慰めて、おさめてもらおうかなって」
 佐助の目じりに剣呑な妖艶を見つけ、幸村は全身を戦慄かせた。期待と恐怖の入り混じったような衝撃に、幸村は困惑する。そんな彼を楽しそうに見ながら、佐助は鍛え抜かれた幸村の肩から胸、わき腹から腰へと指を滑らせ、下帯を纏ったままの下肢に触れた。
「っ」
「ちょっと、硬くなってる」
「ううっ」
 羞恥に唸る幸村を暗い瞳で見つめ、佐助は跪き口を開いた。
「っあ、佐助」
 下帯ごと食われて慌てる幸村の足を、佐助は食いやすいように闇で広げた。
「ぁ、はっ、さすっ、ぁ、う」
 下帯の横から佐助が指を入れ、下生えをまさぐり蜜嚢をくすぐる。闇が幸村の盛り上がった胸筋を滑り、尖りに触れた。
「ふはっ、ぁ、さすぅ、ぁ、は」
「んふふ。気持ちいいんだ。こんなに硬くしちゃって」
「んあっ、ぁ、佐助っ、ぁ、こんなっ、ぁ」
「こんな? こんなのは、いや? じゃあ、どんなのがいいの? ねぇ、旦那。どんなふうなら、していいの?」
「ひっ、ぁふ」
 下帯の中に闇が入り、幸村の陰茎を包んだ。鈴口をくすぐった実体の無いはずのそれが、細い管の中へと進む。
「は、ぁおっ」
 闇に侵される幸村を、佐助はつぶさに観察するように、彼の下帯を掴んで解きながら、一歩下がった。
「ふふ。旦那の魔羅、すっごい元気だね。そそり立って、脈打ってる」
「ぁ、さすっ、もぉ、や」
「どうして? 闇をおさめてくれるんだろ。出来ないのなら、ここで止めてとっとと帰んなよ」
 ぴしゃりとほほを打つような鋭さに、幸村は息を呑む。こぼれるほどに目を開き、佐助を見た。闇にぼんやりと隠された佐助が、幸村には泣いているように見えた。腹に力を込めて覚悟を決めた幸村が、深く息を吸い込み言い放つ。
「これでおさまるのならば、好きにせよ」
 幸村に触れる闇がたじろぐ。
「へぇ。じゃあ、好きなようにさせて貰うぜ」
 一段低くなった佐助の声に、幸村の腹の奥が震えた。闇が幸村の肌にまとわりつき、胸乳を掠め蜜嚢をもてあそび、蜜筒を暴く。
「あっ、ぁは、は、はぁううっ」
 しばらくそれを眺めた佐助はおもむろに裸身となり、大蛤を開けて軟膏を指に掬い、幸村の秘孔にひたりと押し当てた。
「ぁはっ、ぁ、さす、け」
「ほんと、おばかさん」
「ひうっ」
 佐助の指が、幸村の内部に沈む。
「んぁ、はっ、ぁ、さすっ、ぁ、んんっ」
 内壁をまさぐりながら、佐助は幸村の口を唇で塞いだ。
「んふっ、ふ、んぅうっ、ふ」
 幸村が佐助を抱きしめようと、闇にとらわれた腕に力をこめる。二の腕の筋肉が、胸筋がふくらんで闇を押し返した。
「なぁに、旦那。やっぱり、いやになった?」
「違う。二言など無い。――逃げぬから、解いてくれ。佐助」
 胸をあえがせながら、幸村が乞う。穢れの無い強い瞳に、佐助は奥歯が鳴るほど噛みしめて幸村の腰を抱き、壁に押し付け闇の戒めを解いた。
「ああ、佐助」
 幸村の腕が佐助の首に絡む。
「なんで、アンタはそう――っ」
 苛立ちをそのままぶつけるように、佐助は幸村の秘孔を乱雑に暴いた。
「ぁ、は、さすっ、ぁ、はぁあ」
 素直に与えられるものを受け止める幸村の陰茎が、とろとろと喜びの蜜をあふれさせる。その先が、怒張した佐助の陰茎とぶつかった。
「旦那。扱いて」
 熱っぽく、佐助が幸村の耳にささやく。きゅっと下唇を噛み、幸村は佐助の首にまわしていた片方の腕を下肢に伸ばし、佐助と自分の陰茎を掴んだ。
「はぁ、そう。そのまま、扱いて」
「んっ、ふ、ぁ」
 促されるままに、幸村が扱く。稚拙で単調な動きであるのに、佐助の興奮はきわまった。
「もっと、もっと二つを一つにするように、ねぇ、旦那」
「ぁ、はぁあ、さすけっ、ぁ、ここちよいのか」
「うん。いいよ、旦那。だから、もっと」
「はっ、ぁ、ふっ、んぅう」
 秘孔を暴かれながら、幸村は佐助の荒く熱い息に励まされ、本能の塊を天へと昇らせた。
「ふっ」
「くはっ、ぁ、ああっ」
 二人の欲が絡みながら噴きあがり、互いの腹を濡らす。絶頂の呼気を舌に乗せて相手の口内へ注ぎ、余韻を口吸いと共に味わいながら、佐助は幸村の片足を持ち上げ、自分の腰に絡ませた。
「もっと、熱くなりたい。闇を、旦那の炎で溶かしてよ」
「佐助」
 佐助の哀願のような切なさを、幸村の笑みが受け止めた。
「ぁ、は、ひぅ、ふ、んぅう」
「は、旦那」
 幸村に、佐助が沈む。十分にほぐされた幸村の媚肉は、佐助の来訪を快く受け入れ包んだ。
「旦那、すごく熱い」
「ぁ、さすっ、は、ぁ、ああ」
 揺さぶられるままに幸村は声を上げ、佐助にしがみつく。幸村の両足が佐助の腰に絡まり、背を壁に支えられつつの、宙に浮いた形となった。
「ふっ、ぁ、あうっ、さすっ、ぁあ」
「ねぇ。旦那の奥に、出していい?」
 こくこくと幸村が頷き、佐助が小さく「ありがと」と呟く。腰を落とし幸村をあおむけに寝かせた佐助が、腰使いを荒々しいものに変えた。
「ひはっ、はぁあうっ、さすっ、ぁはっ、はっ、はぁううっ」
 縦横無尽に突き上げられて、幸村が顎をそらして声を上げる。
「ああ、旦那。すごい、溶けそう」
「んはぁあっ、ぁ、さすぅうっ、ひぁう」
 胸乳を噛まれ、幸村が甲高い悲鳴を上げた。その刺激が秘孔を収縮させ、佐助の牡を絞る。
「く、ぅ」
 ど、と佐助の欲が幸村の内側に注がれて、それに押し上げられるように、幸村が弾けた。
「っはぁあああああっ!」
 腰を突き出し痙攣する幸村が、全て吐きだせるように佐助が扱く。残らず放った幸村の四肢から力が抜けて、佐助は彼の中から自分をそっと抜き出した。
「旦那」
 とろりと眠たげな目で、幸村が佐助を見る。
「ごめん」
 幸村が小首を傾げて佐助を眺め、ふしぎそうな顔をくしゃりと楽しげにゆがめた。
「一人で抱えずとも良い」
「うん」
 充満していた佐助の闇が、その勢力を弱めている。
「俺に言え」
「うん」
 佐助が幸村に甘えるようにかぶさり、幸村は気だるい腕を持ち上げて、佐助の背に乗せた。
「旦那ぁ」
「うん?」
 甘えたような佐助の声が、幸村の心をくすぐり少し得意な気にさせる。
「いいんだよね」
「何がだ?」
 右肩に顔を埋めている佐助に、幸村は顔を向けた。顔を上げた佐助が、たくらみごとをしていると満面に乗せて唇を持ち上げる。
「俺様の闇、まだまだ暴走中だから。いっぱい、好きにさせてもらうぜ」
「なっ!」
「二言は無いんだろ」
「ぐ、ぅ」
 どこか子どもじみた気配を漂わせる佐助の姿が嬉しくて、うなりながらも幸村は朱に染まった頬を膨らませ、顔を背けて「好きにせよ」と呟いた。
「あはは。旦那ってば、顔が大火事」
「うるさいっ! するなら、さっさとしろ」
「もう。色気が無いなぁ」
 幸村は声を弾ませる佐助の口付けを受けながら、これから彼が一人で堪える事が無くなるのだと、子どもの頃から頼りなくも無力な自分に歯噛みしていた事柄を、自分の身で救う事が出来るのだと、心を充足に満たした。

2014/04/12



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